外壁塗装と聞いて、塗料に含まれているシンナーの嫌なにおいを想像する方は多いと思います。独特のにおいなので苦手という方がほとんどですし、においに敏感な方は体調を崩してしまったり、頭痛がしてしまう事もあります。また、赤ちゃんやペットがいる方はにおいの影響が無いか心配だと思います。
施工中、近所の方に塗料のにおいで迷惑をかけてしまわないかも気になりますよね。確認しておきましょう。
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塗料のにおいは体に影響は無いの?
結論から言えば悪影響はあります。厚生労働省もこれらの塗料を扱う仕事には特殊健康診断、作業環境測定、蒸気の発散源対策、作業主任者の選任などを義務づけるほど危険な作業なのです。
外壁塗装に使用される塗料の内、臭いがきつい物は基本的に溶剤としてイソプロピルアルコール、1ーブタノール、メタノール、キシレンなどのシンナー(有機溶剤)が利用されており、その刺激臭を長く吸い過ぎると健康被害などを引き起こす可能性があります。
シンナーの吸い過ぎによる健康被害の中には、軽度の物でも吐き気、めまい、睡眠障害、頭痛、月経不順などの月経症、目、口(またはのど)、鼻などの粘膜に刺激を感じたり不快感が出たりします。長期的にシンナーを吸い続けると、不妊(男性は男性不妊)、ノイローゼ、シックハウス症候群、呼吸困難、などに陥る可能性があります。
「シンナーを吸う仕事についてからアトピーが悪化した」という話もあります。花粉症などと同じように突然、化学物質過敏症になる場合もありますので、極力、シンナー等にさらされる状態(暴露)にはならないようにしましょう。
外壁塗装業者さんの中には「水性の塗料なので大丈夫ですよ」という場合がありますが、それはシンナーを利用した油性塗料に比べれば臭いが少ないだけの話であって、無害ではありません。大なり小なりの悪影響が塗料には存在します。水性塗料であっても上記の症状は起こりうるので気をつけておきましょう。
完全に密閉してしまったとしても、換気扇等はどうしてもつける必要があるので(つけないと室内に臭いが充満し危険)、出来るだけ塗装から出る臭いを吸わない工夫は必要です。
外壁塗装のにおいの元(シンナー)が身体に及ぼす影響
身体の部分 | 症状 |
目 | かすみ、視力低下、二重に見える、光を感じやすくなる、ちかちかする、乾く、涙が出やすくなる、ごろごろする、かゆい |
鼻 | 鼻水が出る、鼻づまりを起こす、かゆい、鼻血、鼻腔に流れる感じがする |
耳 | 耳鳴り、痛み、かゆい、聞こえづらい、敏感になる、中耳炎、めまい |
口、喉 | 乾く、よだれが出やすくなる、味がわかりにくくなる、喉が痛い、ものが飲み込みにくくなる、声がかすれる |
消化器 | 下痢、便秘、吐き気、おなかに痛み、圧迫感、小腸炎、大腸炎 |
腎臓、泌尿器 | 頻尿、尿が出しづらい、膀胱炎、インポテンツ、性的興奮が少なくなる |
呼吸器、循環器 | 咳、くしゃみ、呼吸回数が多くなる、胸の痛み、脈が速くなる |
皮膚 | ニキビが出来る、湿疹、かゆみ、汗が多くなる |
筋肉・関節 | 肩こり、筋肉痛、関節痛 |
女性機能 | 汗がおおくなる、手足の冷え、おりものが増える、生理不順、不妊症、いらいら、頭痛、感染症にかかりやすくなる |
精神・神経 | 頭痛、手足が震える、けいれんする、うつ状態、不眠症、思考力定価、食欲減退、起こりやすい |
その他 | 貧血、甲状腺機能障害 |
※化学物質過敏症支援センターの資料より作成
上記の表からもわかるように、有機溶剤による中毒の症状は非常に多岐にわたります。中毒にならないようにするためにはとにかく有機溶剤をすわないようにすることです。
その他、有機溶剤による中毒災害事例は有機溶剤を使用した業務では様々な物があり、実例を厚生労働省のサイトで見ることが出来ます。
皮膚からも体内に入る!?
有機溶剤は揮発性が高く、ガス状になって吸収されていきますが、呼吸により口や鼻から入るだけではなく、油脂にも溶ける性質があるので、皮膚からも入り込んでしまう怖い物質です。
それ故、作業員さんは、長袖、長ズボンを着用しています。もちろん塗料が直接肌に触れるのも身体に良くありません。
工事現場には基本的に近づかずに、肌を出すことも極力避けましょう。
赤ちゃんや妊婦(胎児)への影響は?
シンナー等の化学物質の悪影響は、大人よりも赤ちゃんへ強く影響してしまいます。
例えば、マニキュアの除光液に含まれる有機溶剤ですら、赤ちゃんへは悪影響です。実際に部屋にマニキュアを使って手足の指20本をに除光液を塗り終わるまでに赤ちゃんは中毒になり、嘔吐やぐったりしてしまったなどの事例が挙げられています。
妊娠中の場合は、母親が吸ってしまったシンナーが濃縮されて赤ちゃんに届く可能性もあるので(残留農薬の生体濃縮などの話もあります)、極力吸わないようにしましょう。あまり長く吸い続けると、つわりが酷くなる可能性もあります。職業上の被爆でもなければ避けるべきものです。
「心配しすぎです」という人も居るかと思いますが、私はそうは思いません。赤ちゃんや妊婦さんの為にも、出来るだけ避けておくのが無難です。かといって、傷ついていく家をそのまま放置すれば、家の寿命も短くなってしまいます。どちらも良い方向に行くように以下の事を実践しておきましょう。
健康被害や悪影響を受けないようにするための方法
水性塗料を使用してもらう
水性塗料は油性塗料に比べにおいが少ないのでおすすめです。
昔は油性塗料が主流でしたが、最近は水性塗料のクオリティも上がり、種類が増えたので多くの塗料の中から選択する事ができます。
しかし、先述の通り、水性塗料も全くにおいがしないというわけではないですし、塗料の中には普通に有害の有機溶剤が使用されているので、それに対する対策はしっかり取り入れておきましょう。
マスクを購入する
東急ハンズといった何でも売っているお店や、薬局、インターネットの通販などで専用のマスクを購入しておきましょう。
マスクは、防毒マスク、キーメイトマスク、有機ガス高濃度用防毒マスクをはじめとする「有機溶剤系の防毒マスク」などの業務用のマスクを利用するとよいでしょう。相場は1000円~4000円ほどです。
ただ、これらのマスクは非常に大きく、四六時中つけるのは非常に苦痛ですので、活性炭入りの不織布マスク当たりでもよいかと思います。1枚100円未満で購入できます。
簡単なマスクだったとしても、夏は苦痛だと思うので、もしにおいが気になる場合は、夏を避けておくのも方法かと思います。
空気清浄機はあまり意味がない?
工事費用が高額なので、少し足すだけで空気清浄機が買えるのではないか、と思って空気清浄機を買おうとするのはお待ちください!
今は、空気清浄機が非常に安価で手に入る時代になりましたが(価格コムで8000円~16000円ぐらいで買えます)、外壁塗装のにおい取りに空気清浄機はあまり効果がないかもしれません。
ペットの臭いとか、たばこの臭いなどには大活躍する空気清浄機ですが、外壁塗装用の塗料やペンキの中のシンナーの臭いにはあまり効果がありません。
なぜなら塗料に含まれるシンナーは低濃度だったとしても十分に健康被害があるからです。例えば、キシレンというシンナーは、許容濃度として100ppm(ppmは1,000,000分の1)とされており、これを超えるだけで上記の表のような症状が出始めてしまいます。つまり、どんな低濃度でも、慢性的に吸うと害が及びます。
空気清浄機は気持ち程度というように考えておいた方が良いでしょう。
外壁塗装のシンナー対策に一番良いのは他の所に住むこと
先に挙げた妊婦さんや赤ちゃんがいるご家庭の場合は、まずは短期的に他の所に住むことを考えてください。「それが出来たら苦労はしない」と思うかもしれませんが、身体の事を考えたらそれが一番確実です。
ご実家や、ご親戚の家等選択肢は様々なあるかと思いますが、頼れる方が近くに居ない場合は、マンスリーマンションや、ウィークリーマンションに避難することも絶対に考えておいた方が良いです。
どの都道府県であっても、県庁所在地がある都市にならこれらの短期契約マンションは存在します。運営元に相談して、敷金等を安くしてもらう交渉などをしてみるのも良いかと思います。