雨樋の塗装は本当に必要?目的に応じて塗装か交換を判断する

雨樋(あまどい)は雨期がある日本において設置されていない家はほとんどないでしょう。家の周りにあえて水の通り道を作ることで、屋根や外壁の排水に非常に役に立っている部分です。

果たして雨樋は外壁や屋根と同様に塗装や補修が必要なものなのでしょうか?必要だとすれば正しい補修方法、正しい塗装方法はどういったものなのかをわかりやすくまとめています。

相場や予算を考えながら、必要な補修工事を行いましょう。

雨樋の基本的な知識

雨樋

雨樋の塗装に関して知る前に、意外と知らない雨樋の基本的な事について確認しましょう。

雨樋は何で出来ている?

雨樋はまず何で出来ているのでしょうか。様々な原料別に雨樋を見ていきたいと思います。

材質 説明
塩化ビニール樹脂 一番普及しており、昔から愛されている塩化ビニール樹脂製です。非常に普及しているので、安価で手に入れやすいというメリットがあります。しかし、経年劣化とともに塩化ビニール樹脂がしならなくなってしまい、ちょっとしたことで割れてしまう、など破損しやすい一面もあります。少し強度を上げた別の合成樹脂製雨樋もありますが、少し強度が高い分、価格も少し高めになります。
ガルバリウム鋼板 非常に錆びにくく、軽い金属の雨樋です。屋根、外壁で非常に広く普及している材料なので、比較的手に入りやすいです。外壁、屋根をガルバリウムにして雨樋もそれにそろえるという事も多いようです。金属製の雨樋の中ではもっとも普及している雨樋と言えますが、価格は塩化ビニール樹脂などに比べれば高額です。
アルミニウム
ステンレス
珍しい雨樋です。金属ではあるものの錆びづらいのが特徴です。それぞれ金属の味があります。
これぞ銅という光沢を持っていますが、経年劣化とともに徐々に色がついてきます。強い酸の酸性雨にさらされ続けてしまうと、雨樋に穴が空いてしまう場合があります。
 今はほとんど見かけなくなった雨樋です。本当に昔の建物などでは竹を割ったものを雨樋として使用していました。

雨樋にはどのような種類の形がある?

軒樋と呼ばれる屋根から落ちてくる雨を受け止めて流す部分には様々な種類があります。以下の表をご覧ください。

タイプ 説明
丸型(半丸型) 丸は昔から愛されているデザインで、価格も比較的安いです。和風の建物に多いです。
箱型(角型) 都市の家に多い家の形態で、雨樋を設置する場所と壁が近い場合につかわれることが多い雨樋です。箱形の名前の通り、底が丸ではなく四角になっています。丸型よりも多くの水を流すことが出来ます。
その他 雨樋の機能を果たしながら、雨樋の存在感をそこまで出さないように軒先を包むように設置される一体型になったようなものや、雪が積もってしまっても雨樋にダメージなどがいかないようになっている雪対策型などが存在します。

一般的に丸いものが知られているのですが、降雨量が多い地域ではさらに多くの水が流れる可能性があります。特に高知県、奈良県、三重県、香川県、沖縄県など雨が1日当たりの降水量が多くなる可能性がある地域は、箱形などの大きめのものを選んだ方が良いでしょう。

雨樋の各部の名称について

名称 説明
縦樋(たてどい) 主に縦になっている樋の部分の事です。金具によって外壁に固定されており、長さが足りない場合などは縦継手でちょうせつ竪樋とも書きます。
横樋(よこどい) 軒樋(のきどい)とも言います。軒下に設置する横長の樋の事です。
集水器 あんこうとも言います。横樋を流れてきた水が、一旦この集水器を通って縦樋を通って地面に流れます。
エルボ 縦樋を外壁に合わせるために湾曲させている部分の事をエルボと言います。
呼び樋 縦樋と横樋が合流した部分の樋の事。
結束線 単に針金という場合があります。雪などの重みで雨樋が外れてしまわないように屋根材と結束する針金のことです。
樋持ち金具 樋を外壁に取り付ける金具の事。でんでん、支持金具と呼ぶときもあります。
落ち葉避けカバー 家の周りに高い木が生えている場合や、平屋などの場合に使用します。水が流れる部分がむき出しになっている雨樋の上にネット型のシートをかぶせ、落ち葉などが一緒に流れてしまわないようにするものです。カバーの上には落ち葉がたまってしまう場合があるので、定期的な確認が必要です。

雨樋が劣化してしまうとどうなるか

劣化した雨樋

雨樋は日や風がずっと当たり続け、さらに雨水が大量に流れる部分なので、基本的に塩化ビニール樹脂やガルバリウム鋼板など、強固な素材で作られています。

しかし、永遠に使用できるものは存在せず、雨樋も必ず劣化します。素材によって劣化していくまでの期間の幅はありますが、雨樋の寿命は20~25年ほどと考えておきましょう。

雨樋が劣化をしてしまうと、変形する(ゆがむ)、穴が空く、割れる、外れる、漏れるなどの症状が出ます。その場合は外壁や屋根のように塗装で解決することは出来ず、交換が必要となるでしょう。

雨樋塗装の必要性について

基本的に雨樋の不具合は塗装で解決することはありません。雨樋塗装の目的は最初から最後まで「美観」と考えておいてください。もともと強固な素材で出来ている雨樋は、それだけで非常に耐久性が高いので、塗装をする必要はないように出来ています。

しかし、いつまでも雨樋はピカピカなわけではなく、経年劣化の古びた感じが出てしまうので、塗装で見えないようにする必要があるのです。

外壁の塗装は下塗り、中塗り、上塗りと三回塗りが基本なのですが、雨樋に関しては、三回が基本とは限らず、業者によって大きく違います。きれいに見えれば良いと言う事で、上塗り一回だけの業者も居れば、下塗り、中塗り、上塗りと外壁塗装のように三回塗る業者も居ます。塗らない方が良いという業者も居るほどです。

以下のようなパターンに分かれます。中塗り、上塗りの課程を上塗り二回としています。

  • 塗らない
  • 下塗り一回、上塗り二回
  • 上塗り二回
  • 上塗り一回
  • 下塗り一回、上塗り一回

三回塗ればその分工数がかかるので料金も上がってしまうのですが、一回だけだとプライマーの下塗りなどを含めて三回塗ったときよりも塗装の寿命が短いので次に塗装するまでの期間が短くなります。長い期間きれいな雨樋を保ちたいという観点から、やはり三回塗りが適切でしょう。

むしろ重要なのは何回塗るかよりも、ケレンなどの下地処理をしっかりと行って、塗料をきちんと密着させる作業の方が大事です。

また、繰り返しになってしまいますが、保護など美観以外の目的しかない場合は雨樋の塗装は不要です。あくまで美観にこだわりたい場合にのみ塗装を行うようにしましょう。

雨樋の補修方法の種類について

塗装

塗装で大事なのは、「ケレンなどの塗料密着の為の下地処理をきちんと行う」と「屋根、外壁と同じランクの塗料で塗装する」の2点です。

下地処理はどのような塗装であっても必要で、それが雨樋だからといって変わると言うことはありません。いきなり雨樋に塗料を塗り始めたら、きちんとやらない手抜き業者と考えて良いでしょう。もう一点、他の部位と塗料のランクをそろえると言う事も大事で、外壁や屋根がフッ素で塗装されているのに、雨樋だけウレタン塗料だった場合、雨樋の塗装が早く剥がれてしまいます。すると、雨樋だけ再塗装なんて事になってしまうのです。家全体を均一に劣化させる努力もランニングコストを節約するために必要になってきます。

ちなみに、雨樋の勾配が足りない、補修する必要がある、という場合などは別途補修料金がかかるので、こちらについても確認しておきましょう。

交換

雨樋は塗装をするよりも交換する方が安い、という見方を持つ業者さんもたくさん居ます。経年劣化により古くなってしまった雨樋は塗装ではどうにもならないので交換してしまいます。

しかし、使っているものによっては塗装の方が安くつく場合もあるので、交換した場合と塗装した場合の価格の比較が必要になってきます(塗装と交換の費用相場の違いについてはこちら)。

部分交換

全部交換しなくとも、部分的に補修や交換する事も可能です。経年劣化による不具合でない限りは部分的な交換で十分です。

例えば、縦樋の途中が折れてしまったとしても、折れた部分を取ってきれいにした上で、同じ太さ、同じ材質のものをはめて繋ぐだけで使う事が出来ます。

DIY

もっとも危険な雨樋な方法で、DIYで塗装、交換、どれをとっても命に関わる危険があります。安全を確保しようと思うと、足場代など必要以上のお金がかかってしまいます。

よほど日曜大工などの作業が好きでない限りはDIYはおすすめできません(DIYに関する記事はこちらから

雨樋を塗装したときの相場を交換したときの相場

雨樋の色がはげてくるなどの劣化をしてしまった場合は、再塗装を行うべきか、いっそのこと交換してしまう方が良いのかまとめました。どちらの場合も足場は必要ではあるのですが、足場を組んでまで塗装を行うほど雨樋は塗装やまるごと交換する必要はないので、ここでは足場代は除外し、外壁塗装工事をしているときに雨樋を塗装するべきなのか、交換するべきなのか、という前提で比較しています。

雨樋塗装の単価相場 500~700円/m
雨樋交換の単価相場 3,000~4,500円/m

もちろん塗装の方が安いですし、交換は少し高めです。ただ、塗装は剥がれやすいと言う事があるので、いっそのこと交換してしまおう、という考えの方もいます。交換であれば塗りムラなどのリスクもありません。

外壁塗装工事などで足場を建てた際についでに雨樋を交換するという場合であれば、費用は安く済みます。

しかし、どちらの方が良いか、という事になると非常に難しい問題でケースバイケースとしか言いようがありません。例えば、その時に外壁の色が変わった場合、それにマッチする雨樋の色は何色にするべきなのか、屋根を葺き替える場合、葺き替えた後の屋根に適切に作用する雨樋の形はどういったものか、など、家の機能のサポートをする雨樋だからこそ、家の状況でいくらでも変わってくるのです。

ここはお願いしているリフォーム業者さんにしっかりと相談を行いましょう。ちなみに雨樋の交換は塗装業者ではなく、建築板金屋さんにお願いします。

雨樋の色はどのようなものが良いか

雨樋の色をどうするかを考えた場合、「目立たないようにする」か「アクセントにする」に分かれます。どちらにしろ白は汚れが目立ちやすいと言う事を覚えておきましょう。外壁や屋根との調和も大切です(色選びに関する詳しい記事はこちらをごらんください)。

目立たないようにする場合

雨樋を塗装する場合は、同じ塗料が塗られるのであれば、塗るのが良いですが、そうでない場合は、塗られる塗料で同じような色を選びます。

アクセントにする場合

外壁が白だった場合でも、雨樋をあえて黒にしてアクセントにする場合もあります。アクセントにする場合は、選び方は非常に難しいので、よく考える必要があるでしょう。ちなみにカラーシミュレーションなどで選ぶ方もいらっしゃいますが、カラーシミュレーションは塗料の正確な色が確認出来ない為、おすすめできません(カラーシミュレーションに関する記事はこちら)。雨樋の現物サンプルなどを太陽のしたで見て確認しましょう。

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