外壁塗装をしたあと、塗膜の表面に、直径1mm~3mm程の小さな穴がポツポツとできてしまうことがあります。
この小さな穴は「ピンホール」と呼ばれ、施工業者が適切な手順で塗装をしなかったときなど、手抜き工事が行われたときに発生しやすい現象です。
なぜ、ピンホールは発生してしまうのか、また、ピンホールができてしまったとき、どのような対処法が必要なのでしょうか?
さらに、このようなピンホールのトラブルを回避するために、業者選びでは、どのような点に気を付ければよいのでしょうか?
この記事では、ピンホールのトラブルを未然に防ぐための対策についてお伝え致します。
目次
■外壁塗装で発生するピンホールとは
ピンホールとは、文字通り、針穴のような小さな穴が塗膜面にできてしまう現象で、外壁塗装後に発生するトラブルの中でも、比較的、報告件数が多いものになります。
1.ピンホールが引き起こすトラブル
ピンホール自体は小さな穴に過ぎませんが、放置しておくと、塗膜面の裏側に雨水などの水分が入り込むようになります。
そのような状態が続くと、塗膜の剥がれを引き起こしてしまう恐れがあり、外壁が丈夫な塗膜で守られません。
ピンホールに気づかず漏水を放置し続けると、外壁自体を傷めることになってしまいます。
そうして外壁材に寿命が訪れると、今度は、家の内部に腐食が進行しはじめ、最悪の場合、建物の外装全体で部材交換が必要になり、大掛かりな工事に発展する恐れがあります。
「塗装の小さな穴程度で大げさな」と思ってしまうかもしれませんが、放置されて老朽化した空き家が、外壁や屋根のメンテナンスを長い間誰からも行ってもらえなかった結果あのような状態になっていると考えれば、想像しやすいのではないでしょうか。
わずかな塗装面の劣化が原因で、大がかりな工事を行わなければならないような事態には、できれば避けたいものです。
参考:外壁塗装の必要性は?放っておくとどうなるかと追加工事費用
また、ピンホールが生じた塗装面は、プツプツと穴ができて非常に見た目も悪い状態ですので、お住まいの美観的な面からも早急に補修が必要です。
●ピンホールの補修DIYは危険
ピンホールはとても小さな穴なので、「これくらいなら自分で道具を購入すれば対処できるのでは」と思ってしまいがちです。
しかし、トラブルの原因がよく把握できていない状態や、塗装の知識がない状態での安易なDIYは、かえって悪い結果を招いてしまう恐れがあります。
最悪の場合、DIYによって劣化が進行した箇所は、施主の過失とみなされ、保証の対象外となってしまうこともありますので、くれぐれも自己判断によるDIYリフォームは避けておきましょう。
2.もし塗装後にピンホールに気づいたらすぐ業者に連絡を
塗装後すぐにピンホールが出来てしまった場合は、すぐに、塗装を行った施工業者に連絡して、然るべき対応を依頼しましょう。
契約内容にもよりますが、業者の施工ミスが原因で生じたピンホールであれば、無償で補修工事をしてくれます。
ピンホールが小さいときは、ペーパーなどで表面を研磨し、再塗装するのみで処置できます。
もし、穴が大きめのピンホールが壁全面で起きている場合は、塗ってしまった塗装をいったん剥がしたうえでの大規模な塗り直しとなります。
●悪徳業者はアフターケアを断ることがある
もし、ピンホールを発生させてしまった施工業者や元受け業者が悪徳業者だった場合は、「このような劣化は保証の対象外です」などと言われて、手直しを断られてしまう恐れがあります。
そのような業者に頼まないためにも、契約する前に、アフター保証の内容についても十分確認しておきましょう。
- どこまで保証してもらえるのか
- どちらが補修工事費用を負担するのか
- いつまで保証してくれるのか
- 定期点検はどのタイミングで行われるのか
など、疑問に思うことがあれば、業者側にすべて確認しておくこともポイントです。
もちろん、優良業者と契約していれば、保証の内容を業者から丁寧に説明してくれますし、しっかりと保証書も発行してくれますので、施工不良箇所を放置されるようなこともありません。
そもそも、優良業者であれば、入念に工事内容のチェックを重ねながら施工してくれますので、ピンホール現象自体、起きる心配がほとんどないと言えます。
ピンホールも含め、施工後のトラブルを回避するためには、顧客の質問に誠実に対応し、不安を解消してくる、塗装経験が豊富な優良業者を選ばなくてはなりません。
■ピンホールが出来てしまう原因
塗装面に現れるピンホールは、主に下地処理段階や塗装作業時などの際、施工側に不手際や経験不足があったときに起きてしまいます。
1.施工環境の悪さ
外壁塗装は、現場の施工環境が仕上がりに大きく影響する工事です。
ピンホールなど、塗装後に塗膜で生じる施工不良のほとんどは、悪い施工環境で塗装されたときに発生します。
●気温を考慮せずに塗装をしてしまった
塗装用の塗料は、水やシンナー(希釈溶剤)などの希釈液で薄めて、ドロドロの液体にして使います。
そして、外壁や屋根の上に塗られたあとは、水やシンナーなどが蒸発するため、ぴったりと外壁の表面で膜を作ります。
しかし、施工環境の気温が高すぎると、塗料に含まれるシンナーなどの蒸発速度が早くなってしまい、急速に乾燥してピンホールが生じてしまうことがあります。
あるいは、適切な希釈材を選ばなかったことが原因で、乾燥途中に希釈液だけが先になくなってしまって、ピンホールが発生することがあります。
●塗装面にゴミ等が付着してしまった
塗料や被塗面に、油や水分、ごみなどの異物が混入していると、後にピンホールができるスペースと化してしまうことがあります。
2.塗装前の下地処理不足
外壁塗装では、塗装する前に、塗装箇所に塗料が密着しやすい状態にしておきます。
この工程は「下地処理(下地補修)」と呼ばれ、外壁塗装の中でも特に重要な作業工程です。
●下地処理作業が不十分だった
作業前に、塗装面の凹凸や割れ(クラック)、傷、異物除去といった下地処理を十分に行わないと、「巣穴」と呼ばれる空気がたまりやすい穴ができてしまいます。
巣穴の上からそのまま塗料を塗ってしまうと、塗料が乾燥したあと、巣穴に溜まっていた空気が抜け、ピンホールになってしまいます。
●高圧洗浄が不十分だった
塗装前の外壁や屋根は、汚れやゴミ、古くなった既存塗膜などの異物が沢山付着していますので、業務用の高圧洗浄機で、表面を清掃しておかなければなりません。
この高圧洗浄作業も、塗装前の大切な下準備のひとつですが、隅々まで洗浄できていなかったり、洗浄機の水圧が不足していたりすると、異物が残り、空気が溜まりやすくなってピンホールの発生原因になってしまいます。
3.塗料の使用方法誤り
すべての塗料には、メーカーが定めた使用条件が存在します。
この使用ルールを守らなければ、どんなに高性能で高耐久性の塗料でも、ピンホールなどの施工不良が、施工後すぐに生じてしまいます。
●使用方法や道具選定を誤った
塗料は、希釈液で薄めて使用しますが、希釈率を誤ると粘度が高くなることがあります。
このような状態の塗料をローラーやハケに付けると、塗料の粘性で道具の毛や糸くずが引っ張られてしまい、塗膜に空気が混入し、気泡が潰れてその部分がピンホールとなってしまいます。
●重ね塗り時の乾燥が不十分だった
塗料は、下塗り・中塗り・上塗りの、通称・三度塗りを行うことで、丈夫な塗膜となります。
最初の下塗りでは、下塗り用塗料を使用し、中塗りと上塗りでは、仕上げ用の上塗り塗料を使用します。
しかし、前に塗った塗膜層が乾燥しきらない段階で、次の層を塗り重ねてしまうと、内部の層がきちんと乾燥できず、表面だけが乾いてしまいます。
すると、内側の溶剤などが遅れて抜けて、ピンホールと化してしまいます。
●塗料を厚塗りしすぎた
一度に大量の塗料を塗布したために、厚く塗りすぎた箇所の内部がしっかり乾燥できず、重ね塗り時のように乾燥不良を引き起こしてしまうことがあります。
●エアスプレーの圧力が適切ではなかった
塗料は、ハケやローラー以外に、スプレーガンを使った吹付け作業が行われることがありますが、スプレーの圧力不足により、空気の量が少なくなって塗料の粒子が荒くなり、塗膜面にピンホールが生じることがあります。
2.吹付け仕上げのモルタル壁は特に注意
現在では、サイディングボードが外壁材の主流となりつつありますが、ひと昔前の住宅では、外壁の仕上げ材と言えばモルタルが最も普及していました。
モルタルはセメントと砂、水を混ぜ合わせて作る建築資材で、コンクリートと混同されがちですが、コンクリートはセメントと砂利、砂、水を材料としますので、異なる建築資材です。
モルタル仕上げの外壁は「塗り壁」と呼ばれ、職人が手作業で表面を仕上げますので、既製品のサイディングボードに比べるとデザインに富み、意匠性にも優れています。
この、表面の仕上げ方法には、ローラーや刷毛、櫛などを使って作る「模様仕上げ」のほか、リシン、スタッコ、タイル仕上げといった、「吹付け工法」もあります。
吹付け仕上げのモルタル壁は、ざらざらとした表面が特徴ですが、このざらざらの凹凸内部に汚れが溜まりやすいため、塗装前に高圧洗浄などできちんと汚れを落とし、その後、クラックの補修や防水工事といった下地処理も行ったうえで塗装に挑まなければなりません。
また、下塗りのときに使う下地材選びも、モルタル壁では注意が必要です。
老朽化しているモルタル壁では、上から塗る塗料が吸い込まれ過ぎないように、微弾性フィラーが使われることがありますが、不要な厚塗りや使用量の誤りなどがあると、後々ピンホールの要因となるので、使用方法にも注意が必要です。
このようにモルタル壁は、適切な下地処理が行われなければ、ピンホールだけでなく、剥がれや膨れなど他のトラブルが発生し、外壁の耐用年数さえ落とす可能性があります。
大切なお住まいの塗り替えは、様々な外壁の施工経験を持つ、外装工事の技術に優れた専門業者に依頼することをおすすめします。
■ピンホールを発生させないためには
わずかな穴が重大な劣化を呼び、補修の手間もかかるピンホールは、可能な限り発生するリスクを減らしておきたいものです。
ピンホールを防ぐためには、下記のような点に注意してくれる業者を選ぶようにしましょう。
1.塗料の乾燥時間を守る
塗膜の表面だけが乾いてしまい、内部がきちんと乾燥していない状態を「乾燥不良」と呼びます。
しかし、塗装時の温度を考慮にいれて適正な希釈材を選び、塗装時も、しっかり一層ずつ乾燥させるなどして、正しく施工してさえいれば、乾燥不良に陥ることはありません。
もし、
- 「長い外壁塗装の工事期間を短縮できますよ」
- 「うちの塗料は半日で乾燥しますよ」
- 「うちはスピードが自慢なので、他の業者よりも早く塗装が終わります」
などと言って、適切な乾燥時間を設けようとしない業者には、警戒が必要です。
通常、次の層を重ね塗りするときは、前に塗った塗料をしっかり乾燥させるために、最低でも1日は間隔を開けなければなりません。
これはどんな種類の塗料でもほぼ共通のルールですので、基礎知識として覚えておくとよいでしょう。
そのため、1日で下塗り・中塗り・上塗りまで済ませようなどとすれば、当然、塗料は乾燥不良を引き起こすでしょう。
上記のように早く施工を終わらせようとする業者は、施工件数だけをやみくもに増やして、後から起きる施工不良などは気にもしない、手抜き業者の恐れがあります。
こういった業者は往々にして、施工後のアフター保証も発行してくれませんので、塗装後にピンホールに気づいたときには、施工店ごと地域内からいなくなっているかもしれません。
一方、外壁塗装における優良業者は、乾燥不良が、ピンホールだけでなく剥がれや膨れといった様々な劣化を引き起こす、恐ろしいミスであることを理解してします。
たとえ、完成を急ぐ施主に催促されても、施工不良を起こす行為に走ろうとはせず、「ここでしっかり乾燥させなければ、施工不良を起こしますよ」と正しいアドバイスをしてくれるでしょう。
2.塗料をよく攪拌する
外壁塗装用の塗料は、攪拌機で数分間混ぜて使用できるようになりますが、この攪拌が不十分だと、缶の底に塗料が沈殿してしまい、質の悪い塗料になってしまいます。
塗料は、いくつかの成分が混ざって成り立っていますが、成分の重さが全く異なる塗料もあり、手で混ぜていてはいつまで経っても均一な状態にすることはできません。
●不安なときは1液型塗料を選ぶ
塗料には、使い方に2つのタイプがあります。
主材を硬化剤と混ぜながら使うタイプの塗料は、「2液型」に分類されます。
2液型の塗料は、主材と硬化剤をしっかり攪拌させなければ使うことができません。
一方、缶が主材と硬化剤に分かれておらず、開封後はすぐ使える状態で生産された塗料は、「1液型」と呼ばれます。
1液型であれば、攪拌作業が発生しませんので、攪拌不足のミスや手抜きによるピンホールの発生を防ぐことができるでしょう。
ただし、1液型は2液型に比べると耐久性が低いものが多く、家によっては2液型でしか塗装できない部位もありますので、必ず1液型が使えるとは限りません。
そういった意味でも、どのような塗料も等しく丁寧に取り扱ってくれる、優良業者に施工を依頼することが、最も安全なトラブル防止法と言えます。
■おわりに
ピンホールは、小さな穴だからと放置していると、雨水などが徐々に外壁内部に入り込んでしまい、躯体自体の劣化も招きかねません。
ピンホールを見つけたときは、早めの補修が大切ですが、ピンホールの数が多いときなどは、すべて補修するのは大変ですし、業者によっては保証の対象外と言われてしまう恐れもあります。
ピンホールのトラブルに巻き込まれないためには、ピンホールが出来ないように、適切な施工をしてくれる優良業者にお願いすることが何よりも大切です。
高圧洗浄、下地処理、そして塗装の三度塗りといった、外壁塗装の全ての工程をきちんと行える、経験と信頼のある業者に塗装を依頼しましょう。