外壁塗装業者選びの免許・資格チェックポイント

外壁塗装に関する免許や資格は非常に多岐に渡り、業者によって資格保有数や有資格者の在籍人数も異なります。

 

免許や資格の中には、持っていなければ作業を行うことも許されないものや、持っていても工事品質に大きく影響しないものまで様々です。

業者が持っている免許や資格に、どのような意味があるのか知っておくことで、信頼できる業者かどうかを見分ける材料になるでしょう。

 

この記事では、外壁塗装業者にまつわる資格と、業者選で必ずチェックしておくべきポイントをご紹介します。

 

 ■外壁塗装に免許はどこまで影響するか

外壁塗装業も、高度な知識と熟練の技術がなければ行えない、れっきとした専門業のひとつです。

 

しかし、外壁塗装工事そのものは、免許や資格を持っていなくても行うことができます。

 

ただし、知識と技術を持つ業者であれば、外壁塗装に関連する免許や資格は何かしら有している確率が高くなります。

 

まずは、免許や資格が外壁塗装業にどのような影響をおよぼすのか把握しておきましょう。

 

1.外壁塗装業に資格は必要ない

結論から述べると、外壁塗装を営むうえで、必ずしも免許や資格を保有している必要はありません。

 

●無資格で塗装をしても違法ではない

世の中には、免許や資格を持った人でなければ行えない作業や仕事が存在します。

 

最もわかりやすいものでは、自動車の運転があります。

運転する車種に対応した運転免許証を持った人でなければ、自動車で公道を走ることはできません。

 

外壁塗装においても、足場の設置や危険物に指定されている塗料の取り扱いなどは、免許を持った人にしか行えません。

 

一方、資格がなくても行える仕事もあります。

例えば、経理の業務は、簿記の資格を持っていなくても担当することができます。

会社によっては簿記の有資格者のみしか会計担当に起用しない所もありますが、簿記を持たずに会計を行ったからと言って、違法にはなりません。

 

外壁塗装業にも同様に、免許や資格がなくても行える業務がありますので、この点が、悪徳業者や質の悪いサービスを行う業者の参入を招いていると言えるでしょう。

 

2.信頼できる免許の見分け方

免許や資格の中には、業者の技術力を証明するものや、持っていなければ作業そのものが行えないものもあれば、持っていても業務やサービスの質に大きく影響しないものがあります。

 

例えば、「雨漏り診断士」は、雨漏り補修に関する専門家であることを示す資格ですが、持っていないからと言って、雨漏り補修が行えないわけではありません。

 

極端に言ってしまえば、数時間の講習を受けるだけで誰にでも取れる資格などもありますので、免許や資格を持っているだけで簡単に信用するのは危険です。

 

優良業者であることを証明する免許や資格には様々なものがありますが、まずは、信頼できる免許の条件を知っておきましょう。

 

●実務経験が受験資格になっている免許

免許や資格の専門性を示すものは、なんといっても現場経験です。

 

その業種で規定の年数以上働いた人でなければ取得できない免許や資格は、専門性を証明するにふさわしいと言えるでしょう。

 

外壁塗装において実務経験が必要な免許に関しては後ほどご紹介します。

●作業が行える人を限定する免許

外壁塗装業自体は、免許や資格がなくても営むことはできます。

しかし、足場の設置や、危険物に指定されている薬品の取り扱いなど、都度発生する作業の中には、「足場の組立て等作業主任者」や「有機溶剤作業主任者」といった、専門の免許や資格がなければ行ってはならないものあります。

 

基本的にそのような作業は、資格を持つ外注の下請け業者に依頼して、事なきを得ることができます。

もし、外注業者を呼べないとなれば、工事期間が長引いたり、リフォームのプランが制限されたりするため注意が必要です。

 

このような理由から、特定の作業に関する免許を持っている業者は、優先して選んだ方がよいと言えるでしょう。

 

 

■外壁塗装業者が持っておくべき免許とは

ここからは、外壁塗装業者の専門性や信頼性を最も証明できる免許や資格を、3つご紹介します。

 

見積もりを検討している業者がこれらの免許や資格を保有しているかどうかは、業者のホームぺージや会社内に掲示されている証明書などで確認することができます。

 

ただし、免許や資格の中には有効期限が設けられているものや、特定のエリアでしか効果を持たないものもありますので、名称だけでなく、内容もしっかり調べておきましょう。

 

1.塗装技能士

塗装技能士は、都道府県職業能力開発協会が実施している、塗装の技能検定に受かった人だけが保有できる国家資格です。

 

塗装に関しては、現在、一級・二級・三級が存在し、等級が上がるほど、求められる実務年数や知識・技能も高くなります。

 

試験は年に1回、1~2時間の筆記試験と、約5時間程度の実技試験が行われ、両方の試験結果が基準に達成しなければ合格することはできません。

 

●塗装技能士の取得条件

  • 一級…7年以上の実務経験
  • 二級…2年以上の実務経験
  • 三級…6カ月以上の実務経験

 

なお、専門高校等の在学生や、在学中に下位の等級に合格している人であれば、上記の実務年数に満たなくても受験が可能です。

 

●塗装技能士の実力とは

塗装技能士の試験では、塗装に関するあらゆる知識・技術に関する問題が出題されます。

 

日々の業務経験から答えを導き出せるような問題もあれば、色のメカニズムや調色といった色彩学に関する専門分野も出題されるため、ただ普段の仕事をこなしているだけでは、合格するのは難しいと考えられます。

 

試験の難易度や、必要な実務年数の長さから見ても、1級塗装技能士を持っている職人は、業務時間外でも塗装に関する研鑽を積んできだ、信頼できると人物と考えて良いでしょう。

 

2.足場の組立て等作業主任者

労働安全衛生法では、高さ5m以上の足場の組み立て・解体・足場上での作業は、「足場の組立て等作業主任者」を必ず現場に置かなければならないとしています。

 

2階建ての戸建て住宅であれば、足場の高さはほぼ5mを越えます。

 

●足場作業主任者になるための条件

「足場の組立て等作業主任者」になるためには、3年以上の、足場の組み立て・解体作業の経験者であることが条件となっています。

 

「足場の組立て等作業主任者」を取得するためには、機械や設備の名称、現場での安全管理、作業手順などに加えて、法令に関する講習を2日間受け、最終試験に合格しなければなりません。

 

●足場作業主任者が在籍しているメリット

外壁塗装を行う上で必要になるのが、足場です。

しかし、「足場の組立て等作業主任者」が在籍していない外壁塗装会社は、自分たちだけで5m以上の足場を設置することも、足場に登って作業をすることもできません。

 

足場作業主任者が在籍していない塗装業者は、資格を持った別の業者に足場設置作業を外注します。

しかし、外注業者への中間マージンが発生するだけでなく、足場の設置・解体と塗装を、別の業者で分担したことが原因で、現場で意思の疎通が取れず、工事の延長や施工ミスに繋がる可能性があります。

 

候補の業者を絞りきれず迷ったときは、「足場の組立て等作業主任者」の有無をチェックしてみることをおすすめします。

 

3.建設業許可証

1件500万円以上の工事を受注することができるのは、「建設業の許可」を受けた業者のみです。

 

建設業の許可は業種別に受けなければならず、塗装業を営む場合は、「塗装工事業」の建設業許可となります。

 

●塗装工事業許可を取る条件

塗装工事業許可を取るためには、代表者、または役員が、10年以上の塗装経験を持っていなければなりません。

あるいは、塗装以外の建設業の経験を7年以上持っている場合でも、条件を満たすことができます。

 

また、会社の経営状況が安定しているか、反社会的勢力と繋がりがないか、不正な営業により過去に処分を受けていないかといった、事業の安定性や真摯さなども調べられます。

 

なお、2つ以上の都道府県で営業する場合は、国土交通大臣の許可を、1つの都道府県のみで営業する場合は、都道府県知事の許可が必要です。

 

●建設業の許可には有効期間がある

建設業の許可は、5年ごとの更新が必要です。

 

有効期限が切れてしまうと、新たに許可を申請しなければならず、期限切れの許可証は一切の効果を失います。

 

悪徳業者や管理がずさんな業者は、有効期間が切れた許可票を掲示し続けていることがありますので、もし、建設業の許可をチェックするときは必ず、許可取得日の日付も見ておきましょう。

 

■免許を持っているだけでは意味がない

どんなに素晴らしい免許や資格も、有効に活用できていなければ、サービスのクオリティに繋げることはできません。

あるいは、悪質業者に悪用されて人を騙す武器に転じてしまうこともあります。

 

免許を本来の目的で正しく使いこなすことも、優良業者が備えておくべき資質と言えるでしょう。

 

1.こんな有資格業者に注意

免許の有無が客に与える安心感を利用して、虚偽の情報や、まぎらわしい記載で客の信用を得ようとする業者には注意が必要です。

 

●虚偽の情報を記載している

例えば、塗装技能士は、等級ごとに、試験の難易度と必要な実務年数が全く異なるため、一級と三級で専門性に大きな開きがあることは言うまでもありません。

 

そのため、塗装技能士を有していることを外部に表示するときは、原則として、等級も記載しなければならず、異なる等級を記載したり、等級を省略して「塗装技能士」とだけ記載したりする行為は禁じられています。

 

仮に二級までしか保有していなくても、等級をごまかさず、「二級」と記載する誠実な業者を見つけていきましょう。

 

●有資格者が少ない

資格取得者が一人しかいないと、いくら会社に有資格者が在籍していても、複数の現場で同時に効果を発揮することができません。

 

例えば、チラシに「一級塗装技能士が塗装します!」と大きく書かれているのに、蓋を開けてみると、一級塗装技能士は一人だけで、他の職人は資格取得に向けて勉強中だった、というのも、ありがちなケースです。

 

会社情報の資格欄に、有資格者とその人数が書かれているかどうかも、できるだけチェックしておきたいポイントです。

 

2.免許以外のポイントもチェックしよう

業者の誠実さは、免許以外からも知ることができます。

 

外壁塗装業者の良し悪しを左右する「アフターフォロー」と「保険」についても、内容を理解しておきましょう。

 

●アフターフォローが充実している

いかに難関資格を持つ熟練の職人でも、人である以上、絶対に施工ミスを起こさないわけではありません。

 

通常、外壁塗装業者は、工事のあと、会社独自の保証を発行し、施工後も5~10年間のアフターフォローサービスを実施してくれます。

 

この工事保証書の発行とアフターフォローは、用意していなくても業者が罪に問われることはありません。

しかし、お客様目線の優良業者ほど、万が一に備えてアフターフォローや工事保証書の発行は徹底しているものです。

 

ぜひ、アフターフォローの期間や範囲なども、契約前に質問しておきましょう。

参考:外壁塗装の保証は業者や団体で内容が全く異なるので注意!

●各種保険に加入していること

塗装を依頼した業者が保険に加入しているかどうかで、万が一トラブルや手抜き工事が発生したときの安心感は大きく変わります。

 

工事契約を結ぶ前に、以下の保険に加入していることを、打ち合わせの担当者に質問しておくと良いでしょう。

 

  • 工事保険…工事中に現場で事故や盗難が起きたときの保険
  • 労災保険…工事中に作業員に事故が起きたときの保険
  • かし保険…工事後に施工不良が起きたときの保険

■おわりに

外壁塗装業は、無免許でも開業できることから、悪徳業者に付け込まれやすい性質があります。

 

そのため、気になっている業者が信用に値するかわからないときは、業者が保有している免許や資格の、難易度や業務への必要性を、判断材料にしてみるとよいでしょう。

 

その際、ただ「資格を持っている」という点だけで安心せず、資格の有効期間や、記載内容の正確さなどもしっかりチェックしておくことがポイントです。

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