会社勤めの方で、マイホーム購入のために財形住宅貯蓄をしているという方も多いのではないでしょうか。
財形住宅貯蓄は、条件を満たせば、ご自宅の外壁塗装に利用することも可能です。
ただし、条件を満たさないと、大きなペナルティが発生し、税金面で不利になる恐れがありますので、どのようなときに、財形住宅貯蓄を外壁塗装に使用できるのか、押さえておきましょう。
目次
■そもそも「財形住宅貯蓄」とは
「勤労者財産形成貯蓄制度(財形制度)」とは、勤労者が、勤め先の力を借りて財産形成を促進する制度です。
給与から一定額が天引きされ、会社が金融機関に送金することによって、積立が行われます。
財形制度には、「財形貯蓄制度」「財形給付金・基金制度」「財形融資制度」という3種類が存在し、今回ご紹介する「財形住宅貯蓄」は、このうち「財形貯蓄制度」に属する制度になります。
1. 「財形貯蓄制度」の種類
財形貯蓄制度は、ご自身が希望する財産形成に合わせて、以下の3種類を選ぶことができます。
- 一般財形貯蓄(一般財形)…使用用途を問わない貯蓄
- 財形住宅貯蓄(住宅財形)…住宅の取得・修繕リフォーム工事にしか使えない貯蓄
- 財形年金貯蓄(年金財形)…満60歳以降に受け取れる貯蓄
例えば、住宅購入の予定がなく、会社から天引きされる形でしっかり貯蓄をしたい方は、この中では一般財形貯蓄が向いています。
あるいは、将来、公的年金を受け取るまでのブランクに備えて貯蓄をしたいという方は、財形年金貯蓄を検討するとよいでしょう。
財形住宅貯蓄は、住宅購入や、所有している住宅のリフォームや増改築工事のみ、積み立てたお金を払い出すことができるため、マイホーム購入に向けて貯蓄したい方に特化した財形制度となっています。
2.財形住宅貯蓄の内容
財形住宅貯蓄の内容は、都市銀行、地方銀行、その他信用金庫や組合など取り扱っている金融機関によってわずかに異なりますが、基本的な内容は以下のようになっています。
- 積立期間は5年以上
- 4,000万円or住宅購入額の90%まで積立てが可能
- 住宅の新築、購入、75万円を超えるリフォームに使用可能
3.財形住宅貯蓄を行うメリット
財形住宅貯蓄は、他の預貯金や一般財形貯蓄と違って、住宅の新築・購入・75万円を超えるリフォームでなければ払い出すことができず、一見使いにくいように感じますが、実は他の預貯金にはない、2つのメリットが隠れています。
●財形住宅貯蓄は税金面で有利
財形住宅貯蓄は、ほかの財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄と同時に利用することができますが、3つの元利の合計額のうち550万円までは、利息が非課税になります。
通常、普通預金などは、積立額の利息は課税対象になっていますので、利息に対し20%課税され、残りの利息のみ手元に残ります。
利率0.01%で、100万円預けていたときの、財形住宅貯蓄と普通預金の受取利息の違いを見てみましょう。
- 財形住宅貯蓄の場合→受け取れる利息は100円
- 普通預金の場合→受け取れる利息は80円(利息100円に対し、うち20%の20円が差し引かれる)
預金額が小さければその差は微々たるものですが、徐々に積立額が増えるほど、利息の差額は顕著になっていくでしょう。
●住宅購入の融資が利用できるようになる
財形住宅貯蓄を1年以上利用しており、かつ残高が50万円以上に達していれば、契約している金融機関の住宅ローンを利用できるようになります。
もし、財形住宅貯蓄の積立額が住宅購入費用に達していなくても、差額をローンで賄えるため、マイホームの購入を急いでいる方には非常に有利な制度です。
3.財形住宅貯蓄の利用条件
財形住宅貯蓄は、利用時と、払い出し時それぞれに条件があります。
まずは、何よりも大前提となる利用条件をクリアしているか調べし、そのあと、払い出し条件について納得したうえで、利用を検討することをおすすめします。
●利用するための条件
- 満55歳未満で会社に努めている人
- 勤務先の会社が財形貯蓄制度を実施していること
- 他の住宅財形契約をしていない
「3.」に関しては、一般財形貯蓄と財形年金貯蓄との併用は可能となっています。
●払い出し対象となる条件
- その建物に契約者本人が住むこと
- 床面積が50㎡以上
- 中古住宅の場合は築20年以内のもの、かつ一定の耐震基準を満たすこと
- リフォームの場合は、工事後に住宅の床面積が50㎡以上になること、かつ工事費用が総額75万円をこえること
「3.」の築年数に関しては、耐火構造の中古住宅であれば25年までとなります。
■外壁塗装に財形住宅貯蓄を利用するときの注意点
財形住宅貯蓄は、利用条件をよく調べていないと、非常に使いづらくなることがあります。
ペナルティや払い出し額の上限などを、あらかじめ知っておきましょう。
1.払い出しには条件がある
財形住宅貯蓄を引き出すときは、「適格払い出し」と認められなければなりません。
適格払い出しになるためには、住宅購入やリフォームなど、財形住宅貯蓄の目的に沿う必要があります。
もし、目的外の払い出しとみなされると「要件外払い出し」として扱われ、解約利子が発生するだけでなく、過去5年間に払い出しをしていた際に、非課税となった利子までさかのぼって追徴されてしまいます。
2.共同所有名義の建物に注意
購入しようとしている中古住宅や、リフォームを行おうとしている家が、共同所有名義になっている場合は、工事費用の3分の1までしか払い出しの対象とならないことに注意しましょう。
例えば、90万円で自宅の外壁塗装を行うために、財形住宅貯蓄から払い出そうとしても、建物が、自分と妻の共同所有名義であれば、30万円しか払い出しができず、残りの60万円は別に費用を工面しなくてはなりません。
3.払い出しのための費用が発生することがある
財形住宅貯蓄を払い出すときは、払い出しの申請や、提出書類の準備で費用が発生することがあります。
自社で申請が行えるリフォーム業者であれば、少ない費用で済むと考えられますが、自身で申請が行えない工務店などになると、建築士への申請代行費用などが多めに掛かることがありますので、見積もりの際は、申請費用の金額も確認しておきましょう。
■外壁塗装で財形住宅貯蓄を使う方法
場合によっては、リフォーム費用が100万円を越すこともある外壁塗装工事は、住宅購入ほどではありませんが、決して安い工事ではありません。
財形住宅貯蓄を賢く利用するためにも、財形貯蓄制度を外壁塗装で使うために、どのようなときに払い出しの対象となるかを知っておきましょう。
1. 75万円以上の外壁塗装を行う
外壁塗装はリフォームに分類されますので、財形住宅貯蓄の払い出しでは、リフォーム時の条件をクリアしておく必要があります。
外壁塗装費用の相場は、足場代や諸費用も含めると、約30坪の平均的な戸建て住宅であれば、約65~90万円程度です。
しかし、塗装工事の費用は、使用する塗料や作業を行う面積によって変動しますので、スタンダードなプランの塗装では、75万円に満たない恐れがあります。
さらに、約30坪以下の戸建住宅になると、75万円を下回ってしまう確率が非常に高くなります。
確実に75万円を超えるためには、以下のような工事内容になるよう意識して、外壁塗装をプランニングするとよいでしょう。
●外壁と屋根をセットで塗装
さきほどご紹介した約65~90万円という費用は、外壁のみ施工したときの費用相場です。
屋根もセットで塗装すると、ここにプラス20~50万円が追加されますので、財形住宅貯蓄のリフォーム時の払い出し条件である、75万円を確実に超えられると考えてよいでしょう。
●耐久性が高いハイグレードな塗料で塗装
外壁塗装の塗料には、ラジカル塗料やフッ素塗料など、グレードの高い塗料があり、これらは㎡あたりの塗装単価が、スタンダードなグレードの約2倍になりますので、およそ100万円近い塗装費用となります。
ただし、財形住宅貯蓄を利用するためだけに、ハイグレードな塗料を選ぶ必要が本当にあるのか、将来的な外壁のメンテナンス予定も踏まえて、業者からよくアドバイスをもらっておくことをおすすめします。
2.外壁と屋根の断熱塗装を行う
省エネ性能向上リフォームも、「使用エネルギーの合理化」とみなされ、財形住宅貯蓄の払い出しの対象となることがあります。
外壁塗装でも、断熱・遮熱性を持つ塗料で表面を塗装することで、省エネ性を向上させることができます。
また、断熱塗装は比較的グレードが高い塗料に分類され、施工費用も、一般塗料の2~3割ほど高くなりますので、外壁塗装だけでも、総費用が払い出し条件の約75万円を超えやすいリフォームです。
■おわりに
財形住宅貯蓄を外壁塗装に利用するためには、リフォームとしての条件を満たさなくてはなりません。
しかし、財形住宅貯蓄の払い出し条件を満たすために、劣化していない箇所まで手を加えてしまったり、必要性のない豪華な塗料を選んだりしてしまうと、建物にとって、本当によい外壁塗装とならない恐れがあります。
そのような不本意なリフォームにしないためには、財形住宅貯蓄を使った施工実績を持ち、施主にとって最も適したプランを提案してくれる優良業者と工事契約を結ぶことが大切です。
外壁塗装駆け込み寺では、一括見積もりサービスや工事業者選定に関するアドバイスも行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。