外壁塗装工事の前に外壁部材の名称を知っておこう

外壁塗装の見積書や施工内容を見るときは、建物のパーツや外装素材の名称がわかっていると便利です。

 

塗装される箇所とされない箇所を調べられるだけでなく、付帯部の塗装忘れや手抜き工事を防ぐことにも役立ちます。

 

この記事では建物のパーツの名称や外壁と屋根に使われる外装材の種類について、写真付きでそれぞれまとめています。

■建物のパーツの名称について

以下からは建物パーツの名称について、外壁と屋根に分けてそれぞれ解説します。

 

建物の構造によってはすべてのパーツが付いていないこともありますが、まれに付けるべき箇所にパーツが設置されていないケースもあります。

見積もりを見るとき塗装箇所をイメージするためだけではなく、ご自宅にどのパーツが付いているか確認するためにもそれぞれの名称と位置を覚えておきましょう。

1.外壁パーツの名称

外壁には以下のような沢山のパーツが付いています。

●目地

外壁材や窓サッシ同士の継ぎ目部分のことです。

サイディングボードには防水のためシーリング(コーキング)が詰めてありますが、シーリングは紫外線や雨水で劣化するため外壁塗装の際に補修が行われます。

 

目地シーリングの補修工事は「打ち替え」と「増し打ち」があります。

打ち替えは古いシーリング材を手作業ですべて剥がし、新しいシーリング材を詰める補修工事です。

増し打ちは既存シーリング材を残したまま新しいシーリング材を詰める作業ですが、耐久性は打ち替えにやや劣ります。

 

●幕板(まくいた)

1階の外壁と2階の外壁を区切る仕切りの板のことです。

胴差(どうざし)または化粧胴差とも呼ばれます。

 

外壁をツートンカラーで配色している家などでメリハリを付けるために設置されることがあります。

雨水を溜め込みやすくそれが原因で劣化することもあるため、外壁塗装の際に劣化を点検して塗り替えを行うべきパーツです。

●水切り

屋根と壁、または壁と基礎のコンクリートとの間に入れられた金属製の板のことです。

 

隙間から建物内部に雨水が入り込まないよう防水目的で設置されていますので、外壁リフォームの際はサビ止めや塗装の塗り替えを済ませておくとよいでしょう。

 

●雨戸

窓サッシの外に取り付けられた戸です。

 

飛来物や強風から窓ガラスを守る目的で取り付けられているため耐久性は高いパーツですが、面積が大きいため色あせや汚れを放置すると他の外壁を塗り替えても雨戸だけ目立ってしまいます。

外壁塗装の際に戸袋と併せて塗替えを済ませておきましょう。

●戸袋(とぶくろ)

雨戸を収納するスペースのことです。

 

普段は雨戸ではなく戸袋のみ見えた状態になりますので、建物の美観のためにも雨戸とセットでの塗り替えが推奨されます。

 

雨戸や戸袋の塗装はDIYでもできそうに見えますが、パーツが多く隙間の塗り忘れや錆び落としが不十分だと塗り替えの意味がなくなってしまいます。

雨戸や戸袋の劣化や錆びを放置すると外壁表面の雨だれによる汚れや隣接する鉄製部材の劣化に繋がる可能性がありますので、塗装のプロに任せることをおすすめします。

●面格子

窓の外側に防犯や窓ガラスの保護のために取り付けられた柵のことです。

 

面格子は木製や鉄製など様々な素材があり、素材に適した塗料を使用しなければすぐに塗装が剥げてしまいますのでこちらも専門家に補修を依頼しましょう。

●入隅・出隅

外壁の角のうち凹んでいる部分を入隅(いりずみ)と呼び、凸になっている部分を出隅(ですみ)と呼びます。

 

入隅と出隅は外壁の衝撃が集まりやすく、地震や建物の揺れによりひび割れが起きることも多い箇所です。

 

また塗装の際はローラーだけでなくハケなどを使って丁寧に仕上げる必要があり、このように細かい箇所をハケで仕上げる作業のことを「ダメ込み」と呼びます。

●笠木(かさぎ)

ベランダなどの手すりや塀の上に取り付けられた木や鉄でできた板のことです。

 

雨漏りや躯体の劣化防止という重要な役割を担っていますので、外壁塗装では必ず笠木の劣化状況を点検し塗り替えや継ぎ目の防水処理を行わなければなりません。

●矢切り

外壁と屋根のあいだにある三角形のスペースを指します。

 

切妻屋根の住宅ではこの部分だけ色や素材を変えて作られていることがあります。

2.屋根パーツの名称

屋根パーツの多くは雨漏り防止のために取り付けられています。

 

いずれも個別に塗装やメンテナンスを行う際は別途足場を組まなければなりませんので、できるだけ外壁や屋根塗装の際にセットで済ませておきたい箇所です。

 

名称をしっかり覚えて見積もりに屋根パーツの作業が含まれているか確認できるようになっておきましょう。

●棟(むね)

屋根材と屋根材の継ぎ目のことです。

棟をカバーする部材のことを「棟板金(むねばんきん)」または「棟押え板」「棟包み板」と呼び、雨水が入り込まないように隙間を覆う役目を担っています。

 

屋根からの雨漏りは棟板金の劣化から始まることが多く、棟板金だけでなく板金を屋根に固定する釘なども錆びが起きていないか塗装の際に点検する必要があります。

●破風(はふ)

破風とは屋根の妻側(ケラバ)の先端に貼られている板のことで、横殴りの雨が建物に入り込むのを防いでいる箇所です。

 

「破風板」とも呼ばれ、素材には鉄製と木製があります。

●鼻隠し(はなかくし)

屋根の妻側に貼られている板のことですが、ここも破風と呼ぶ業者もいます。

 

鼻隠しには建物構造部が剥き出しにならないようカバーする役割がありますが、それだけでなく屋根の先端に雨樋を取り付ける下地としての側面も持っています。

そのため鼻隠しが劣化すると雨樋まで外れてしまいますので、外壁塗装の際に鼻隠しのメンテナンスも行われます。

●雨押さえ(あまおさえ)

外壁と屋根、または屋根と屋根など部材同士が接続している立ち上がり部分に雨が入り込まないように取り付けられた部材のことです。

雨仕舞いとも呼ばれます。

●庇(ひさし)

窓や玄関の上に設けられた小さな屋根のような部分です。

霧除けとも呼ばれ、窓の上の庇のみ霧除けと呼ぶこともあります。

●軒天井(のきてんじょう)

屋根や庇などが外壁より出っ張っている部分の裏側を軒天井、または軒裏と呼びます。

 

ふたんは雨が当たらないため劣化に気づきにくい軒天ですが、構造上湿気が溜まりやすく劣化すると躯体の腐食に繋がることもあるため軒天のメンテナンスも外壁塗装では重要な工程です。

 

近年の軒天は石膏や珪藻土を混ぜたボードや金属が使われていますが、和風建築では木製の軒天が使われていることもあります。

●雨樋

屋根に溜まった雨水を一箇所にまとめて流すための排水設備です。

屋根の鼻隠しに取り付けられています。

雨樋が壊れると大量の雨が地面に直接流れ落ちて庭に水溜りができるようになったり、壁に雨水が当たるようになって外壁の老朽化が進んだりするため、非常に重要なパーツです。

 

縦に延びたパーツは「竪樋」、横に伸びたパーツは「軒樋」、たてどいと軒どいを繋ぐ斜めのパーツは呼びどいとそれぞれ呼びます。

■エクステリアパーツの名称について

外壁塗装では建物の周りのエクステリアパーツを塗装してもらうこともできます。

 

見積もりに見慣れない名称が記載されていて戸惑わないように、エクステリアパーツの名称も知っておきましょう。

1.階段パーツの名称

高所への移動に使う階段は、安全のためにも早めに塗り替えて錆びや老朽化を防いでおくべき設備です。

 

普段は気にしない階段パーツの名称も、名前を知っておくと補修を頼む際にどこに問題があるか業者に伝えやすくなります。

●段板(だんいた)

足を置く部分を踏み面(ふみづら)と呼び、そこに設置された板のことを段板、または踏み板(ふみいた)と呼びます。

 

なお暖板の先端は「段鼻(だんばな)」と呼ばれます。

●蹴込板(けこみいた)

階段一段あたりの垂直部分の高さを「蹴上げ(けあげ)」と呼び、蹴上げに設置された板のことを蹴込板と呼びます。

 

なお屋外鉄骨階段には蹴上げ部分が空洞になっているものもあり、そのようなタイプは「踏込み透かし階段」と呼ばれます。

2.門回りのパーツの名称

門や塀で囲まれた外構は「クローズ外構」と呼ばれ、様々なエクステリアパーツが集まっています。

 

なお門などで囲まれていない外構は「オープン外構」と呼ばれます。

●門扉

門に設置された扉のことで、片開きタイプや両開きタイプがあります。

 

駐車場用の伸縮門扉などもあります。

●門柱

門の両脇または片側に設置された柱のことで、ブロックを積み上げて作るタイプやコンクリートを成形して作るタイプなどがあります。

 

ポストや表札、証明など様々な部材が付いた機能門柱も登場しています。

●塀・フェンス

塀は敷地との境界に設置された区切りのことです。

 

コンクリートやレンガなどのブロック塀やコンクリートを現場で固めて作られた塀、竹を編んで作られた竹垣(たけがき)などのタイプがあります。

 

フェンスは鉄または木製の棒材を等間隔に置いて作る仕切りです。

 

単独で設置されるタイプのほか塀の上に設置するタイプもあります。

■外装材の名称について

外装材とは屋根や外壁を構成する素材のことです。

 

使用する外装材の種類によって特徴が異なり、メンテナンス方法も素材に適したものを選ぶ必要がありますので、屋根や外壁に使われる外装材の名称も覚えておきましょう。

1.外壁材の名称

現在住宅で主に使用されている外壁材の種類と特徴は以下のとおりです。

●サイディングボード

  • 窯業系
  • 金属系
  • 木質系
  • 樹脂系

サイディングボードは目地部分にシーリング材を充填して防水処理を施す必要がありますので、外壁塗装の際にシーリング補修工事が発生します。

ただし樹脂系サイディングや一部メーカーのシーリングレス工法商品などシーリングを使わなくても施工できるものもあります。

 

近年の主流はデザイン性に優れ価格も安定している窯業系サイディングボードですが、金属系のガルバリウム鋼板なども人気があります。

なお金属系のサイディングボードは塗装工事の際に錆び止めのケレン処理が発生します。

●モルタル壁

職人がコテでモルタルを塗りあげて作る壁です。

  • リシン吹き付け
  • スタッコ吹き付け
  • 吹付けタイル

など様々な仕上げ方法で模様を付けられるなどのメリットもありますが、ひび割れ(クラック)が起きやすいため弾性塗料など割れに強い塗料で保護するリフォームが行われます。

 

また凹凸に汚れが入りやすいため高圧洗浄の際は外壁を傷つけないように丁寧に処理する必要があります。

●タイル壁

モルタル下地の上にタイル材やレンガ材を張り付けて仕上げる壁です。

 

意匠性に優れるだけでなく紫外線で劣化しにくく、塗装で保護する必要がないため塗り替えが発生しません。

ただし目地のシーリングやモルタルの補修、下地モルタルの補修、割れ・欠けが起きたタイルの交換や浮いたタイルのモルタル押さえといったメンテナンスは発生します。

●コンクリート壁

コンクリート壁は軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)を現場で組み立てて作ります。

 

コンクリート壁は表面のひび割れやしみ、コンクリートの中性化による内部の鉄筋の錆びといった劣化が起きるため、特に打ちっぱなし仕上げタイプなどはコンクリート面に撥水剤を塗布するなどのメンテナンスが必要です。

2.屋根材の名称

屋根材にも様々な種類がありますが、外壁材とはラインナップが異なります。

一部外壁と屋根のどちらにも使える素材もありますが、外壁材と区別して覚えておきましょう。

●スレート

現在最も主流の屋根材です。

表面が塗料で保護されていますので定期的に屋根塗料の塗り替えが必要です。

 

なお外装材メーカー・ケイミュー社のスレート材「コロニアル」の商品名をそのままスレート材という意味で使うこともあります。

●ガルバリウム鋼板

屋根工事でリフォームに使われることの多い金属系の屋根材です。

こちらも表面の塗装の塗り替えが必要です。

 

従来のトタン屋根などの金属系屋根材に比べると耐久性も高く錆びにくいガルバリウム鋼板ですが、塗装の際は鉄部処理の一環でケレン作業が発生します。

●日本瓦

主に和風建築に使われ、陶器のように粘土を高温で焼いて作るため耐久年数も長く防水性・耐熱性も高い屋根材です。

 

釉薬が塗られたものや煙でいぶして仕上げたものなどがあり、どちらも塗装の必要がないため塗り替えリフォームが発生しません。

ただし割れた瓦の交換や屋根下地の点検などは発生します。

●セメント瓦

日本瓦と違いセメントを成形して作る瓦で、洋風住宅の屋根などに使われます。

 

日本瓦と違って表面を塗膜で保護しなければなりませんので、定期的な塗り替えリフォームが必要です。

■おわりに

建物のパーツや外装材の名称は外壁塗装リフォームを経験していなければ馴染みが薄い用語ばかりです。

 

しかしどのパーツが何のためにどこに設置されているか把握できていれば、施工業者との打ち合わせや相談がスムーズになり悪徳業者の嘘の説明にも騙されにくくなるでしょう。

 

すべてを一度に覚えようとする必要はありませんので、業者との打ち合わせ前に一通りの名称に目を通しておくことをおすすめします。

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