ペンキの種類と外壁塗装用塗料の違いについて

外壁塗装で使われている塗料はホームセンターなどで購入できる「ペンキ」とは別物です。建物を長期間塗装で保護するためには、外壁と屋根の保護に特化した塗料を選ぶ必要がありますので、ペンキだけでは塗り替えは行えません。

 

この記事ではペンキが外壁塗装で使われない理由と、外壁塗装用塗料とペンキの違いについて解説します。

■外壁塗装用の塗料は「ペンキ」ではない

塗装と聞くとハケでペンキを塗る職人の姿を想像してしまいがちですが、実際にはローラーやスプレーガンなど様々な道具を使って専用の塗料を塗装する作業になります。

 

そしてよく耳にする「ペンキ」は建物の外壁や屋根塗装では使われません。

中には一般の人でもわかりやすいように外壁用塗料のことをペンキと読んだり、「ペンキ屋さん」と称したりする塗装屋などもあります。

 

しかし正確には外壁塗装で使われる塗料はペンキではありませんので、両者の違いを区別しておきましょう。

1.ペンキは外壁の保護には使えない

まず大前提として、ペンキには外壁を保護するほどの力はありません。

 

ペンキは外壁塗装用の専用塗料と違って、全国のホームセンターなどで一般的に市販されています。

安価で手軽に購入しやすいことからDIY(セルフリフォーム)の定番アイテムとして愛用されていますが、耐用年数が非常に短く塗装してもすぐに剥がれや色あせが起きてしまうというデメリットがあります。

そのため小さな面積に塗る場合や劣化しても問題ない室内小物の塗装には適していますが、屋外のエクステリア設備の塗装には向きません。

 

またペンキは紫外線や雨など外壁にダメージを与える外的要因への耐久性も高くありません。

この紫外線や雨などの外的要因に対抗する力を「耐候性」と呼びますが、この耐候性は外壁や屋根を保護するためには欠かせない機能です。

 

以上のような理由から外壁や屋根の塗装で市販のペンキが使われることはなくなり、耐候性だけでなく外壁の様々な劣化を想定して作られた外壁塗装専用の塗料が使われています。

2.外壁塗装では専用の塗料を使用する

外壁塗装で使われる塗料は建物の保護機能において圧倒的にペンキよりも優れています。

 

グレードによって効果や機能に差がありますが約10年間は外壁や屋根の表面を保護できるものばかりです。

●外壁塗装用塗料の種類

外壁塗装用の塗料には5段階のグレードが存在します。

グレード 特徴
アクリル塗料 耐用年数:5~8年

施工単価:1,200~1,800円/㎡

艶はあるが耐久性は低い

ウレタン塗料 耐用年数:8~10年

施工単価:1,800~2,200円/㎡

耐久性は低いが伸びがよい

ひび割れ(クラック)に強い

シリコン塗料 耐用年数:12~15年

施工単価:2,800~3,100円/㎡

耐久性が高く価格も手頃

耐候性が高い

ラジカル塗料 耐用年数:14~16年

施工単価:3,200~4,000円/㎡

シリコン塗料よりやや割高

劣化因子を制御する

フッ素塗料 耐用年数:15~20年

施工単価:4,200~4,800円/㎡

耐久性・耐候性ともに最も高い

塗料代で施工費用が高くなる

 

グレードは予算や建物の劣化状況に合わせて選べますが、コストパフォーマンスの面からシリコン系塗料とラジカル制御塗料のいずれかが人気を集めています。

 

また外壁塗装用塗料には様々な機能が付与された商品も登場しています。

 

機能の種類 特徴
断熱・遮熱塗料 耐用年数:15~18年

施工単価:4,000~5,000円/㎡

断熱性で熱が逃げにくく暖かい家になる

遮熱性で熱が入りにくく涼しい家になる

弾性塗料 耐用年数:10~15年

施工単価:2,000~4,500円/㎡

ウレタン塗料よりもひび割れしにくい

光触媒塗料 耐用年数:18~20年

施工単価:4,200~5,000円/㎡

光に反応して汚れを分解する

汚れは雨で流れ落ちるため綺麗な状態が続く

無機塗料 耐用年数:18~23年

施工単価:4,500~5,500円/㎡

無機系成分のため紫外線で劣化せず耐久性が高い

 

このように外壁塗装用には付加機能を持った様々な機能付き塗料があります。

 

その他にも鉄製の棟板やフェンス、ポストや門扉などに使用する鉄部用塗料や、木製のウッドデッキや面格子に使用する木部用塗料など建物の素材に適した種類が各塗料メーカーから販売されています。

■外壁塗装にペンキを使ってはいけない理由

「外壁塗装は好きな色で塗装できればいいので、機能は求めていない」

「好みの色があればペンキを使って塗装してもいいのでは」

とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし外壁塗装工事の目的はカラーチェンジだけではありません。

外壁塗装の一番の目的は建物の耐久性を高めることです。

 

たとえ好みの色だったとしてもペンキに外壁塗装用塗料の代わりが務まらない理由には以下のようなものがあります。

1.外壁塗装の費用は何度も用意できない

外壁や屋根の塗装は雨や紫外線で毎日劣化していますので、約10~15年に一度の定期的な塗り替えが必要です。

 

戸建て住宅で外壁の塗装を行うと、建物の形状や工事内容によってばらつきはありますが約60~90万円の費用が必要になります。

100万円を超えることはまれですが高額なリフォーム工事であることに変わりはありません。

 

そして外壁塗装の工事費用に含まれるのは塗装作業だけではありません。

足場の設置・解体費用や建物まわりの養生費用、外壁と屋根表面を高圧洗浄して下地を整える作業の費用など様々な諸費用が加わって総費用となります。

 

もしペンキのような安価な素材で塗装をすれば10年も塗膜がもたず、数年以内にすぐに再塗装が必要になり高額なリフォーム費用が何度も発生してしまうでしょう。

しかし外壁塗装専用の塗料でしっかり塗装をしておけばほぼ10年は外壁と屋根を保護し続けることができリフォーム費用も一回分で済みます。

 

塗料選びでは色や質感だけでなく耐久性の高さや機能性を重視することが大切です。

近年では複数の機能を持つ高性能な塗料がどんどん登場しており、価格もひと昔前に比べれば求めやすくなっています。

 

大切な屋根や外壁の塗装を安価なペンキで済ませるよりも、シリコン塗料以上の高性能な塗料で塗装しておく方が長い目で見てもお得と言えるでしょう。

2.ペンキは乾くまでに時間がかかる

塗装中の塗料は液状になっておりハケやローラーで塗装面に行き渡らせて乾燥させることで、外壁と屋根の形状にぴったり密着した塗膜となります。

 

外壁塗装用の塗料は一度塗ると最低でも24時間は乾燥時間を設けなくてはなりません。

塗装から数時間以内には指で触れても剥がれない程度には乾燥しますが、表面に触れても問題ない状態になるためには24時間以上必要です。

 

しかしペンキは完全に乾燥するまで2~3日以上かかってしまいます。

乾燥するまで作業がストップするだけでなく、もし乾燥途中で雨が降れば塗膜に雨の跡ができてしまい塗り直さなければなりません。

●外壁塗装は3回塗りが基本

外壁塗装の塗料は下塗り、中塗り、上塗りの合計3回塗りが行われます。

下塗りで下塗り塗料(下地材)を塗布して外壁表面の状態を整えておき、中塗りと上塗りで上塗り用塗料(仕上げ用塗料)を使って塗装します。

 

この3回の重ね塗りはそれぞれの層が乾燥していなければ行えません。

もし24時間以内に内部が乾き切っていない状態で重ね塗りすれば、塗料の乾燥が阻害され気泡が残ったり剥がれたりするなどの施工不良を起こしてしまいます。

 

この3回塗りを確実に行うという意味でも、乾燥時間が短い外壁塗装専用の塗料が選ばれています。

3.ペンキでは外壁の劣化を防げない

先ほどもご紹介したように、外壁塗装用の塗料には特徴の異なる様々な種類が存在します。

これらはどれを選んでもよいわけではなく、外壁や屋根の劣化症状に合わせて最適なものが選ばれています。

 

例えば外壁の劣化症状として最も多いのが、紫外線のダメージによる塗膜の色あせやチョーキングなどです。

チョーキングとは塗料の結合力が紫外線で低下し、成分の顔料が外壁表面にチョークの粉のように付着する現象のことです。

もし既存外壁や屋根の色あせやチョーキングが著しいようであれば、紫外線に強いラジカル塗料やフッ素塗料などが使われます。

 

しかしペンキには耐候性が備わっていませんので紫外線のダメージを受けやすい外壁では塗装後あっという間に劣化してしまうでしょう。

●モルタル壁の塗装にペンキは使用できない

モルタル壁とはセメントモルタルをコテで塗って作りリシン吹き付けやスタッコ吹付けなどの吹き付け工法で表面を仕上げる壁のことです。

一方サイディングボード外壁は躯体に既製品のボードを貼り付けて作ります。

 

モルタル壁はサイディングボード外壁に比べると建物の負荷が外壁材に直接かかりやすいという性質があります。

そのため外壁表面にひび割れ(クラック)が生じやすく、深い割れを放置すると雨水が浸水して外壁の内部から建物を傷めてしまいます。

 

モルタル壁の塗装ではひび割れを防ぐ効果を持つ特殊塗料「弾性塗料」や、やや伸縮するウレタン塗料などで塗装しておくと、壁に衝撃や負荷が加わっても塗料が連動して割れを防ごうとしてくれます。

 

しかしペンキには弾性がありませんので、衝撃が加わりやすい構造のモルタル壁であればたちまちひび割れだらけになってしまいます。

 

耐久性とひび割れへの耐性の両面から見ても、ペンキはモルタル壁には不向きな素材です。

■外壁塗装でも使われるペンキの種類

ここまでペンキのデメリット面ばかりお伝えしてきましたが、ペンキにも近年改良された商品が登場しています。

 

そのため外壁塗装でも条件が合えば部分的に使われることがありますので、ペンキの種類について少し押さえておきましょう。

1.オイルペイント

オイルペイントは昔から行われてきたペンキ塗りの元祖と言えるペンキで、見積書ではOPと略されます。

 

油性調合ペイントとも呼ばれ、植物性のボイル油を主成分としており柔らかく塗りやすい点で初心者でも比較的塗りやすい素材です。

 

しかし乾燥に時間がかかるため作業後は塗装箇所に2日以上触れることができません。

また耐久性も低いため耐久年数は長く持っても5年程度です。

●木部はOP塗装が行われることがある

天然の木を原料とする木部は、木の膨張と収縮を繰り返す性質のせいで塗装しても塗膜が剥がれやすくなっています。

そのため外壁塗装用の塗料で保護しても塗料のグレードに関わらず塗膜が劣化しやすく、5年を目安に塗り替えが必要になります。

 

このような理由から木部塗装には耐用年数が短いオイルペイントで済まされることがあります。

しかしオイルペイントを使っても塗膜が短期間で劣化することに変わりはありませんので、近年はより耐久性が高いウレタン系の木材保護塗料が使われています。

2.合成樹脂調合ペイント

SOPと略される塗料で、建物の木部や鉄部塗装に使われることがあります。

 

アルキド酸樹に油を混ぜて樹脂性ワニスを作っていることから「合成樹脂調合」と呼ばれています。

あくまでも調合ですので、外壁塗装用塗料であるウレタン樹脂塗料やシリコン樹脂塗料などの合成樹脂を主成分とする塗料とは別物です。

 

オイルペイントに比べると乾燥時間はやや早く、耐久性や色ツヤも改良されていますが、やはり外壁塗装用塗料に比べると乾燥は早くありません。

通常、外壁塗装用塗料は気温の高い夏であれば1時間もすれば硬化が始まりますが、合成樹脂調合ペイントは2時間ほどかかってしまいます。

 

また耐久性が改良されているといってもペンキの一種に過ぎませんので、塗装しても約3~5年以内には塗り替えまたは点検が必要です。

■おわりに

何気なく塗料を塗っているように見える外壁塗装ですが、実際は建物の症状や素材に合わせて選び抜かれた専用の塗料を使って塗装されています。

 

ホームセンターで購入できるペンキは耐用年数が短く外壁塗装の作業性も落ちることから、現在は鉄部や木部を除くとほとんど使われていません。

もしご自宅の塗装リフォームの見積もりに「OP」や「SOP」といったペンキが使用塗料の欄に記載されていた場合は、何のためになぜペンキを選んだのか塗装業者に質問し、耐久性に問題がないか確認しておきましょう。

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