外壁塗装工事をなぜ行わなければならないのか、実施するにあたってデメリットもあるのではないかと不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
外壁塗装工事には確かにメリットとデメリットが存在しますが、長い目で見ればメリットのほうにはるかに大きな意味があります。
しかし悪質業者に依頼してしまうとメリットが失われデメリットばかり残るという結果にもなりかねません。
この記事では外壁塗装のメリット・デメリットの内容と、満足した塗装リフォームにするための注意点について解説します。
目次
■外壁塗装のメリット
外壁塗装におけるメリットは、利点であるとともに行う目的そのものでもあります。
外壁塗装で得られるメリットを知っておくと、高額な費用をかけるべき意味や丁寧な優良業者を探すことの重要さがわかるでしょう。
1.建物の保護効果
外壁塗装の一番の目的といえば、塗装した建物の保護効果です。
外壁塗装はカラーチェンジや外観の印象アップのために行われるものと思っている方も多いですが意匠性に関する部分はあくまでも付加効果であり、それよりも大切なのは建物を塗装で保護することにあります。
屋外にある外壁や屋根は、紫外線や雨水、風、汚れなど様々な外的要因で日々劣化し続けています。
そのためどんなに高性能な最新の建材でもいずれは耐用年数を迎え劣化し、劣化を放置すれば老朽化してしまいます。
誰も住んでいない空き家が周りの家よりもぼろぼろに朽ちてしまうのは、メンテナンスをする人がおらず経年劣化がどんどん進行しているからです。
●外壁が朽ちると建物自体に劣化が及ぶ
基本的に建物は柱や壁などの構造材を組み立てて作られており、外壁や屋根は構造体を守る鎧のようなものです。
その鎧が劣化しないように紫外線や雨から保護しているのが外壁塗装です。
外壁塗装が劣化して保護効果を失えば次は外壁や屋根そのものが劣化し、いずれその劣化は構造体に及び雨漏りや躯体の老朽化を招くでしょう。
また構造体や躯体のリフォームになると壁の解体や撤去が発生し、塗装の2~3倍の費用がかかってしまいます。
建物の内部劣化や高額な費用を発生させないためにも、塗装を定期的に塗り替えることが非常に重要です。
2.外観デザインをリニューアルできる
多くの方が外壁塗装で楽しみにしているのがカラーチェンジでしょう。
建物が新しい塗料でピカピカにコーティングされれば建物の耐久性も増して気分も明るくなります。
色が人に与える効果は絶大ですので、外壁や屋根の色を変えたり色あせた塗料を新しい塗料で塗り替えたりするだけで、家のイメージは大きくアップします。
●豊富な色のパターンから選ぶことができる
また外壁塗装で使われる塗料の色数は豊富ですので、好みに合う色が見つからないということもなく、様々な色を組み合わせて自由にテーマを作ることができます。
例えば同じ「青」を使って塗装する場合の組み合わせを考えてみましょう。
色の使用パターン | 雰囲気 |
パステルブルーをベースに窓サッシなどの付帯部を白で塗装 | 爽やかかつ穏やかな雰囲気 |
濃いネイビーで外壁を塗装
茶色や白で付帯部を塗装 |
北欧風の外観
スタイリッシュかつ鋭すぎず穏やかな雰囲気 |
濃いブルーの外壁に指し色として茶色や木目調サイディングを使用 | モダンだがシャープすぎず遊び心のある雰囲気 |
ベースカラーを白にして、指し色に青を使用 | ベースカラーの白がナチュラルな雰囲気を作る
ネイビーとのコントラストでメリハリの効いた雰囲気になる |
上記はあくまでも一例ですので、実際に塗装するときは建物の形や周りの家々との調和と比べながら色を決めることが大切です。
3.建物全体の点検が行える
外壁塗装では見積もりを作る際に建物の現場調査が行われます。
例えば、
- 相談された劣化箇所の深刻度はどのくらいか
- 他にどのような劣化がどこで生じているか
- 何が原因で劣化しているのか
- どんな塗料で保護すべきか
などを施工業者が直接家を訪問してじっくり調査します。
この現地調査の結果を反映させて、施工業者は工事工程や見積もりを作ります。
現地調査では壁や屋根の表面だけでなく、雨樋や雨戸、屋根の側面に設置されている鼻隠しや破風板、屋根の棟板といった付帯部の劣化状況も調べてもらうことができます。
その他にも家にはベランダやテラス、窓サッシ、玄関ドア、エアコンの配管といったパーツが付いていますので、これらの状態についても問題があれば報告してもらえます。
つまり外壁塗装の現地調査では家の外装全体で点検が行われますので、現地調査によって意外な設備の故障が発覚したり、思わぬ箇所の雨漏りの兆候を見つけたりすることもできるのです。
特に付帯部の劣化は雨漏りを招きやすく建物全体の老朽化に繋がることもあるため放置するのは危険です。
自分たちだけでは気づけなかった建物の深刻な症状をプロの業者に発見してもらえるという点も、外壁塗装の大きなメリットと言えるでしょう。
■外壁塗装のデメリット
外壁塗装工事にはふだんの生活がしにくくなったり、高額な工事費用が必要になったりするなどのデメリットがあります。
また、家の屋外で行われる作業ですので周りの家にも配慮して工事を進めなければなりません。
ただしいずれも工事を行うためにはやむを得ないことであり、外壁塗装を行ったからといって家に負担がかかるというわけではないため厳密にはデメリットではないとも言えます。
しかしこれらへの配慮を怠れば重大なトラブルを招く可能性があるため、できるだけ工事を行う前に内容を知っておきましょう。
1.約2週間の長い工事になる
外壁塗装は足場の設置や高圧洗浄といった複数の工程が行われ、また塗装も3回の重ね塗りを行いそのたびに乾燥時間を24時間置かなければなりませんので、約2週間の工事期間となります。
その間建物は足場に囲まれ室内が暗くなり、洗濯物を屋外に干しづらい、作業員の出入りを気にしなければならない、工事車両を停めるスペースを確保しなければならないなど普段の生活の中で様々な制約が生じます。
●窓が開閉できなくなる点に注意
外壁塗装工事期間中、特に注意しなければならないのが窓の開閉です。
窓を開けると高圧洗浄の水や塗料が室内に入ってしまい、さらに塗装作業中はビニールシートで養生されて窓そのものが開けられなくなります。
当然ベランダにも出られないため洗濯物も干せません。
特に夏場は工事期間中に窓を開けて換気が行えなくなり、エアコンや給湯器もシートで養生されて設備の一部が使用できなくなってしまうため事前に暑さ対策を考えておきましょう。
2.ご近所に配慮する必要がある
外壁塗装で使用する塗料は臭いを持っていますので、作業中は塗装している建物の周りにも臭いが拡がります。
また塗料そのものも周りに飛び散ることがあるため建物の周りは飛散防止ネットで覆われますが、100%絶対に飛散しないとは限りません。
さらに足場の設置・解体時や車両の移動時には大きな音も発生し、車両の駐車位置が近隣の方に迷惑をかける可能性もあります。
これらは作業を行ううえでどうしても発生するため、工事を行うことを近隣の住民や施設に事前に必ず連絡しておかなければクレームや近隣トラブルの原因になりません。
事前のあいさつ回りは施工業者が行ってくれますので施主があいさつの内容を考えたり粗品を用意したりする必要はありませんが、工事期間中は近隣へ常に配慮して過ごす必要があるでしょう。
3.高額な費用を伴う
戸建て住宅における外壁塗装費用の相場は約70~90万円です。
キッチンやシステムバスといった水回り機器の交換リフォームが1箇所につき約70~100万円ですので、外壁塗装だけが突出して高い住宅リフォーム工事というわけではありません。
しかし選んだ塗料や建物の大きさ、建物の劣化状況などによって費用が高くなることもあり、フッ素系塗料などグレードの高い塗料を選んだときなどは100万円を超える工事金額が必要になることもあるため決して安い金額ではありません。
外壁塗装を行う場合は、できるだけ費用を積み立てておくといったある程度の計画性も求められると言えるでしょう。
ちなみに外壁塗装は使用する塗料のグレードによって費用が変動します。
どの塗料を使ってもやはり最低でも60万円は用意しなければならず、一定以上の耐久性を求めるのであれば100万円近い費用は覚悟しなければなりません。
塗料のグレードと費用相場は以下の通りです。
※施工価格は約30~40坪の戸建て住宅における、足場代などの諸費用を含めた相場の工事価格を想定しています。
●アクリル塗料
施工価格: 50~70万円
耐用年数:5~8年
特徴
- 発色がよく安価
- 耐用年数が短いため現在はあまり使用されていない
- 塗装工事の間隔が短くなり足場代がそのたびにかかるため費用対効果が低い
●ウレタン塗料
施工価格:60~80万円
耐用年数:8~10年
特徴
- 伸びがよく伸縮性があるため割れを少し防ぐ「弾性」の性質を持つ
- 耐用年数はアクリル塗料よりやや長いが短い部類に入る
●シリコン塗料
施工価格:70~90万円
耐用年数:10~15年
特徴
- 最も選ばれているコストパフォーマンスに優れた塗料
- 紫外線に対抗する「耐候性」も高く耐久年数もほどよい
●ラジカル塗料
施工価格:75~98万円
耐用年数:14~16年
特徴
- 塗料が内側から劣化因子(ラジカル)を抑えて塗膜を守る最新塗料
- シリコン塗料よりやや高いがコストパフォーマンスは申し分がない
●フッ素塗料
施工価格:78~120万円
耐用年数:15~20年
特徴
- 紫外線に強く耐久性も高い最もハイグレードな塗料
- 価格が高いため費用が100万円を超えることがある
●断熱・遮熱塗料
施工価格:75~110万円
耐用年数:13~15年
特徴
- 断熱のはたらきで冬場に暖かい空気を屋内から逃げにくくする
- 遮熱のはたらきで夏場に暑い日差しが屋内に入りにくくする
- エアコンの使用量が減って省エネ効果をもたらす
●光触媒塗料
施工価格:80~130万円
耐用年数:16~22年
特徴
- 光に反応して外壁表面の汚れを分解するため耐汚染性が高くセルフクリーニング効果がある
- 水に馴染みやすい「親水性」を持つため分解された汚れは雨水で流れ落ちる
- 施工価格がフッ素塗料よりも高くなる
●無機塗料
施工価格:90~140万円
耐用年数:18~25年
特徴
- 紫外線で劣化しない無機質が有機塗料に配合されているため耐候性・防水性が共に高い
- 施工価格が最も高いため腕の悪い業者に当たったときのリスクが大きい
●弾性塗料
施工価格:60~110万円
耐用年数:10~15年
特徴
- ゴムのような弾性を持ちひび割れ(クラック)の発生を防ぐ
- 耐用年数はウレタン系やシリコン系など樹脂の強さによって変動する
- モルタル壁には適しているが窯業系サイディングボードには使用できない
■デメリット以上に大きい外壁塗装のメリットを確実に得よう
上記のように外壁塗装には実施するうえで避けられないデメリットもありますが、それ以上に実施したときのメリットの方が遥かに大きな意味を持ちます。
しかし悪質な業者に依頼してしまうと、デメリットは通常通り発生して肝心のメリットが全く得られないという結果にもなりかねません。
建物の保護、イメージチェンジ、家のメンテナンスという、外壁塗装の3つのメリットを最大限得るためのポイントを知っておきましょう。
1.優良業者はデメリットを緩和してくれる
先ほど挙げたデメリットはいずれも外壁塗装を行ううえでは避けられないものばかりです。
そのため外壁塗装業者側も、必ず発生するデメリットをいかに和らげて工事期間中も施主が安心して過ごせるかについて日々研究しています。
例えばエアコンの室外機を養生するときは事前に施主に知らせて使用できない期間を伝えてくれたり、窓が開けられるように窓を直接覆わず窓の上にシートをテントのように張る養生方法を施してくれたりする所もあります。
また臭いに関してもできる限り周囲に臭いが発生しないよう努めてくれます。
塗料の強いシンナー臭は溶剤型塗料(油性塗料)を希釈する際に発生しますが、真水で薄める水性塗料を使用すれば刺激臭は大幅に減らすことができます。
その他にも「体調が悪い家族がいる」「小さな子供がいる」「庭でペットを飼っている」などお家の事情を伝えておけば、配慮して工法や道具を選んでくれるでしょう。
●悪い業者に出会うとデメリットが増える
残念なことに外壁塗装業者の中には悪質な詐欺業者や手抜き業者もいます。
もしずさんな手抜き工事が行われた場合、施工不良が起きて外壁塗装のメリットである建物の保護が失われてしまうでしょう。
またいい加減な現地調査によって点検が適当に済まされてしまい、建物全体のメンテナンスというメリットもなくなってしまいます。
このような業者に依頼して仮にカラーチェンジしても、施工不良だらけで気分が明るくなるばかりか、塗装された壁を見て不快な思いだけが残ってしまうでしょう。
悪質業者は工事後の保証書も発行せず、工事を済ませたあとは会社ごと行方をくらましてしまうことも多いため、やり直しを命じようにも逃げられてしまう恐れもあります。
そうなると別の業者に再び高額な費用を支払わなければなりません。
このように悪質な業者を選んでしまうと、外壁塗装の一切のメリットが無くなりデメリットだけが増えてしまうことになるのです。
2.外壁塗装はいつか必ず行うことになる
塗料の耐用年数が過ぎればいずれ塗り替えが必要になります。
塗り替えが不要なタイル外壁や日本瓦の屋根など一部例外もありますが、そのような建材を使っていてもシーリング材や釘、下地材といった周辺の部材や、雨樋や雨戸といった付帯部のメンテナンスは必ず発生します。
このように外壁塗装はたとえデメリットがあるからといってやらずに済ませることはできないリフォーム工事です。
デメリットを恐れて点検のタイミングを逃さないように、デメリットが発生することも視野に入れて、デメリットを緩和するためにどのような対処ができるか準備しておかなければなりません。
そのためにも数々の現場をこなしてきた地域内の優良業者など、信頼できる施工業者に建物の点検を任せることが大切です。
■おわりに
外壁塗装工事は実施するメリットが大きいだけでなく、いずれ必ず行わなければならないものです。
発生するデメリットも工事を行ううえで必ず生じるため、事前に対策を練って被害や負担を和らげることもできます。
メリットの効果を最大限にしてデメリットを最小限にするためにも、施主目線で見積もりや工事計画を考えてくれる優良業者を見つけておきましょう。