外壁塗装は建物のメンテナンスという側面を持ちます。
お住まいのメンテナンスはふだん生活しているとつい後回しにしてしまいがちですが、定期的に塗装の塗り替えを行わなければ建物の劣化を進行させてしまいかねません。
この記事では建物のメンテナンスの重要な意味や実施すべきタイミング、外壁塗装におけるメンテナンスの内容などについて解説します。
目次
■メンテナンスが不要な建物は存在しない
どんなものでも手入れを怠れば寿命は短くなります。
私たちが住む家も同様で、設備の故障や建材の劣化を放置し続ければ本来の耐用年数よりも早く故障や破損が生じてしまいます。
外壁塗装は建物の最も外側を守る重要なコーティングですので、その下にある外壁や屋根などの外装材とさらにその内部にある建物の構造材を長持ちさせるためには、塗装自体も定期的にメンテナンスをしなければいけません。
1. 外壁のメンテナンスは10年に1度行うのが望ましい
外壁塗装は外壁メンテナンスの一環として行われます。
塗装に使用する塗料は大半が10年で耐久性が衰えはじめますので、外壁や屋根の塗装を塗り替えるタイミングも約10年目が理想とされています。
また外壁や屋根には雨樋や雨戸、外壁同士の目地に注入されているコーキング剤(シーリング剤)、玄関ドアやサッシ、換気口など様々な付帯設備が取り付けられており、これらも10年に1度のメンテナンスが行われます。
例えば錆びが生じた雨戸を放置すると錆びが雨だれとなって外壁や屋根に茶色のシミを作ったり、詰まったままの雨樋をそのままにしておくと雨水が正常に排水されず外壁の傷みや雨漏りの原因となったりするためです。
●まとめてメンテナスを行うとメリットがある
雨戸や雨樋、そのほか屋根に取り付けられている棟板金や破風板、鼻隠しといったパーツは「付帯部」と呼ばれます。
塗装作業を行うときは高所で作業をするために足場を設置しなければなりませんが、付帯部のメンテナンスでも足場が設置されます。
しかし足場を設置・解体するためには戸建て住宅1棟につき約25万円の費用が発生します。
つまり外壁・屋根・付帯部をばらばらのタイミングでメンテナンスすると、その回数分足場代も発生することになってしまいます。
あちこちで何度もメンテナンスを行って余計な費用を発生させないためにも、建物のメンテナンスはできるだけ全体を同じタイミングでまとめて行うとよいでしょう。
2.「メンテナンスフリー」=「何もしなくていい」ではない
外壁塗装業界では「メンテナンスフリー」という言葉をよく目にします。
確かにタイル外壁や日本瓦の屋根などは素材自体を塗装する必要がないため、塗り替えリフォームも発生しないという意味ではメンテナンスフリーに近い存在です。
しかし注意しておかなければならないのは「塗り替えが不要」というだけで、「メンテナンス不要」ではないということです。
タイル外壁であれば欠けたタイルの交換やタイルが浮いてしまった箇所のモルタル補修などが発生しますし、日本瓦の屋根であれば屋根下地の防水シートの点検や欠けた瓦の交換が必要になります。
もしこれらの補修を怠ればどんなに丈夫な無機タイルや日本瓦でも、浮きや欠けが生じた部分が隙間となって雨水が入り込み、雨漏りや躯体の強度低下を引き起こすでしょう。
リフォームにおいては基本的に、「メンテナンスフリーになる塗料や建材は存在しない」と考えておくことをおすすめします。
●「メンテナンスフリー」は悪徳業者の手口に使われやすい
「面倒な家のメンテナンスが今後永遠に必要なくなる」と言われれば誰でも期待してしまうものです。
悪徳業者はこの心理を利用して「メンテナンスフリーになりますよ」などと言って商品や工法を勧めてくることがありますが、決して信用してはいけません。
大抵は他と効果が変わらないか低品質な商品をメンテナンスフリーと称して売っているだけに過ぎず、悪質な業者になるとさらに相場以上の金額を上乗せしてきます。
そして「今回の工事費用は高くなりますが、メンテナンスフリーになれば今後のお手入れがなくなって結果的にお得です」などといってメンテナンスフリーの利点を強調してくるでしょう。
建物の寿命を延ばすためには、一回の工事品質を守ること以上に工事後にいかにメンテナンスを継続できるかが重要です。
そのため優良業者はアフターメンテナンスを必ず行って、塗装の異変や経年劣化の兆候が見つかればすぐに知らせて被害が少ないうちに早急に対応してくれます。
もし「メンテナンスフリー」をあからさまに強調するリフォーム会社であれば、アフターメンテナンスを度外視してとにかく契約を取ろうと必死になっている利益優先の業者である可能性が高いでしょう。
■外壁塗装におけるメンテナンスには2つの意味がある
外壁塗装における「メンテナンス」には、
- 外壁塗装工事自体のこと
- 塗装工事後の点検のこと
という2つの意味があります。
1.メンテナンスとして行われる外壁塗装
外壁塗装工事には建物のメンテナンスという大切な目的があります。
外壁塗装工事の基本的な流れは以下のようになっており、いずれも安全に作業を行うためには欠かせない工程です。
特に「下地処理」と「塗装」は外装材の劣化を食い止め再発を防ぐためには欠かせない工程ですので、この部分をいかに丁寧に行えるかがメンテナンスの要といえるでしょう。
●事前調査・見積もり
現地調査で劣化具合をチェックし塗装に必要性を見極める
↓
使用すべき塗料や補修方法を考え見積もりを作る
●足場の設置
足場を設置する
↓
足場の周りに飛散防止シートを張り周囲の建物に塗料や水しぶきが飛ばないようにする
●高圧洗浄●
業務用の高圧洗浄機で外壁の汚れを落とす
カビやコケがこびりついている場合はバイオ洗浄を行う
●下地処理作業
- 汚れやカビやコケを除去し塗装しやすい状態に調整する
- 錆びが生じている鉄部は「ケレン作業」を行い、防錆剤を塗布する
- モルタルやコンクリートなどにひび割れが生じている場合は補修する
- 打ち替えによるコーキング補修を行う
●養生
- 塗装箇所以外に塗料がはみ出さないようにビニールシートで覆う
- エアコンの室外機、窓、玄関ドア、ベランダなども覆われる
●塗装
下塗りで下地用塗料を塗装し、仕上げ用塗料が外壁に密着しやすい状態を作る
↓
中塗りで仕上げ用塗料の一層目を塗装する
↓
上塗りで仕上げ用塗料の二層目を塗装する
※なおそれぞれの塗りのたびに約24時間の乾燥時間を設ける
●完了確認・片付け
現場管理者が作業の抜けや不備をチェックし補修する
↓
施主立ち合いのもと完成した状態を確認する
↓
問題がなければ足場を撤去し周辺を清掃する
2.「塗装後」のアフターメンテナンス
外壁塗装で大切なことは、塗装した塗膜を長持ちさせることです。
「どんな壁で誰が使っても絶対に施工不良が起きない塗料」というものは存在しません。
また外壁には窯業系サイディングボードや金属系サイディングボード、モルタル壁、タイル壁、コンクリート壁など沢山の種類があります。
屋根も同様に瓦やスレート、金属系など種類は様々で、これらの外装材は種類ごとに劣化の傾向や特徴が異なります。
さらに立地や日当たり、湿気など塗装に影響を与える外的要因は建物ごとに様々です。
このように
- 塗料の種類
- 外装材
- 外的要因の傾向
の組み合わせは無限に存在しますので、いかに高性能な塗料使って腕のよい職人が塗装したとしても、絶対に施工不良が起きないとは言い切れないのです。
以上の理由から、念には念を入れて塗装後も塗膜の状態をしっかりチェックする必要があります。
●アフターメンテナンスの間隔
大半の業者は施工から1カ月、半年、1年、5年、10年ほどたった頃に無料でアフターメンテナンスを行ってくれます。
最初の1カ月と半年、1年後に行われるメンテナンスは、主に施工後の塗膜異常や施工不良をチェックすることが目的になります。
施工から時間が経った5年後、10年後に行うメンテナンスは、施工不良よりも経年劣化のチェックが目的になり、次の塗装時期を見極めるために行われます。
ただしアフターメンテナンスの間隔や頻度は施工した業者によって異なりますので上記はあくまでも平均的なタイミングと回数です。
アフターメンテナンスに力を入れている業者であれば1年おきにカンタンな点検を行い、5年や10年など一定のタイミングで入念な検査を実施することがあります。
アフターメンテナンスのタイミングは必ず契約前に業者に質問して確認しておきましょう。
■外壁のメンテナンスは早めが肝心
「そうは言っても10年間隔で何度も塗装を行えない」「10年以上何もしていないけど問題ない」とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし建物のメンテナンスは何かが起きる前に先回りして行うことが肝心です。
10年はあくまでも目安であり何も異常を感じていなくてもメンテナンスを済ませておかなければ、重大な劣化を進行させてしまったり思わぬ費用が発生したりして後悔する恐れがあります。
1.専門家目線による点検の大切さ
専門家を呼ばずに外壁の劣化状態を見つける方法はいくつかあります。
専門家でなくても見つけられる劣化の症状としては、外壁表面に塗料の顔料が粉になって付着する「チョーキング現象」があります。
これは紫外線によって塗料の劣化が進んでいる状態で、手で外壁に触れると粉が付着するため誰でもカンタンに気づくことができます。
あるいはおびただしい量のコケやカビ、雨漏りによって発生した室内側の壁のシミなども専門家でなくても異変が起きていることはわかるでしょう。
しかし建物の劣化の中には塗装の専門業者でなければ見抜けないものがあります。
例えば外壁の一か所だけ異様に結露が生じており、特に気に留めていなかったけれど外壁材を剥がしてみると外壁内部で湿気が滞留して下地材や断熱材が真っ黒に腐食していたというケースなどがあります。
このようにほんのささいな兆候でも専門家であれば違和感を覚えて調べてくれます。
見えない所で進行している劣化もしっかり見つけてもらえるように、早めに工事業者に点検を依頼し次の塗装時期を計画しましょう。
●高所の点検もプロなら安心して任せられる
塗装業者は外壁だけでなく屋根や雨樋など高い位置にある設備も目視でチェックしてくれます。
高い場所にある設備は普通に過ごしているとなかなか目にすることができない部分です。
しかし業者を呼ばずに自力でチェックしようとすると、不慣れな姿勢で脚立や屋根の上に登って転倒や落下などの危険な事故を引き起こしかねません。
点検は高所での作業に慣れているプロの職人に依頼してくまなく調べてもらいましょう。
2.高額なリフォーム費用が発生してしまう
早めのメンテナンスを怠ったときに生じる最も恐ろしいことは、劣化を見落としたばかりに症状が進行し簡易な補修工事では追い付かなくなってしまうことです。
先ほどの結露によって下地材と断熱材が腐食してしまったケースですが、結露に違和感を覚えた時点で業者を呼んでいれば下地材までは腐食が達していなかったかもしれません。
あるいは定期メンテナンスを実施していれば専門家が真っ先に結露に気づいてくれて断熱材の腐食もわずかで済んだでしょう。
外壁塗装の費用相場は戸建て住宅一棟につき約70~90万円です。
しかし既存外壁材を剥がして下地材から補修することになると、一棟につき200万円前後の工事費用が発生してしまいます。
外壁塗装に限らずリフォーム工事は初期の段階で済ませるほど工事価格も安く大がかりになりません。
早めのメンテナンスはお家の寿命を延ばすだけでなく、メンテナンスコストも抑えるためにも非常に重要です。
■おわりに
建物のメンテナンスを定期的に続けていれば、劣化を早めに見つけることができ末永く安心して住める家になるでしょう。
塗装や建材の劣化は専門家でなければ見抜けないことも多いため、素人判断でメンテナンスを先送りにせず、塗装業者に依頼して確実に行わなければ意味がありません。
平均的な外壁塗装の耐用年数は10年前後ですので、劣化に対して先回りできるように10年間隔でメンテナスを行えるような長い付き合いができる優良業者と出会いましょう。