外壁塗装は基本の工程はどの家も同じですので、基本工程の施工単価と塗装面積がわかれば、業者に見積もりを取らなくてもおおよその費用を予測することができます。
特に30坪は戸建て住宅の面積の中でも多く、25坪の家や35坪、40坪の家にお住まいの方でも、30坪の価格相場を知っておくと業者の見積もり金額が高いか安いか判断する基準になります。
業者からの見積もり金額を鵜呑みにして高額な工事にしてしまわないように、30坪の家で外壁塗装をするときの相場を知っておきましょう。
目次
■30坪住宅の外壁塗装費用相場は?
30坪の家で外壁塗装をするときの費用は、外壁のみの塗り替えなら80~90万円、屋根も塗装する場合は95~120万円が相場です。
この相場価格は外壁塗装に必要な、塗装、足場設置、養生といった様々な工程の費用を合算した合計価格になります。
なぜ上記のような相場価格ができあがるのでしょうか。
1.外壁塗装に必要な工事は決まっている
外壁塗装は家の大きさや劣化状態次第で作業量や使用する道具に違いがありますので、定額というものが存在しません。
しかし絶対に欠かせない基本の工程はあります。
外壁塗装に欠かせない基本の工程とは、
- 足場設置
- 高圧洗浄
- 下地処理
- 養生
- 塗装
です。
そして基本の工程にはそれぞれ「単価相場」が存在します。
単価相場とはその作業を1㎡分行ったときの平均的な施工金額のことです。
つまり基本の工程の単価相場がわかっていれば、工事を行う家の大きさが違っていても外壁塗装にかかる費用を予測することができます。
2.塗装面積がわかれば費用を予測できる
外壁の塗装面積(塗り面積)は係数を使って求めることができます。
塗装面積には窓や玄関ドアなど塗装しない部分の面積は含みません。
塗装面積の求め方 |
(坪数×3.3)×係数1.1~1.4 |
30坪の家で塗装面積を計算してみましょう。
まず1坪は3.3㎡ですので、
30×3.3=99.9㎡
となり、その家の延床面積は約100㎡となります。
そして延べ床面積に対し係数を乗じます。
30坪の家であれば1.2を乗じて、
100㎡×1.2=120㎡
となり、塗装面積は約120㎡であることがわかります。
この塗装面積に対し各工程の単価相場を乗じることで、その家にかかる工事費用を計算することが可能です。
ただし外壁の造りは家によって違いがありますので、同じ建坪の家でもバルコニーや玄関ポーチなどが出っ張っていて凹凸が多い家や、窓が小さな家などは施工面積も増えます。
正確な塗装面積は専門の業者にしっかり計算してもらいましょう。
●塗装面積は業者を呼ばなくても計算できる
このようにお住まいの建坪さえわかっていれば、建物の高さや塗装する部分をメジャーで図らなくても計算式でおおよその塗装面積を求めることができます。
塗装業者の中にはこの計算式を使うところもあれば、立面図(家を真横から見た図)や平面図(家を真上から見下ろした図、間取り図とも言う)を使って正確な面積を算出するところもあります。
複数業者の見積もりを比較するときは塗装面積にも目を通して、あまりにも大雑把に面積を計算していないかチェックしておくとよいでしょう。
■外壁塗装に必要な工事の相場
塗装面積の求め方がわかった所で単価相場もチェックしておきましょう。
ここでは相場比較の目安にするために30坪の家で作業をしたときの一棟あたりの金額も併せて記載しています。
一棟あたりの金額の計算には、さきほど算出した30坪住宅の塗装面積120㎡を用いています。
なお、下地調整費用などは家の面積よりも劣化具合に応じて作業量が増えるため塗装面積では算出できませんので、戸建て住宅でかかるおおよその費用を記載しています。
また、記載している金額はあくまでも相場価格ですので、お住まいの地域や依頼した業者によって変動するため、見積もり前の参考程度にお考えください。
1. 基本工程の相場一覧
まずは塗装を除く基本の工程の単価相場を見てみましょう。
各工程が行われる理由と目的も併せて把握しておくと、手抜き業者が見積もりの中で省いていたときに見抜きやすくなります。
●足場設置
30坪住宅の平均価格:13~17万円
- 単管足場:700~800円/㎡
- 単管ブラケット足場:800~1,000円/㎡
- 枠組足場:1,000~1,500円/㎡
- くさび式足場(ビケ足場):900~1,200円/㎡
足場は設置する現場によって種類が異なることがあります。
戸建住宅で主流なのはコストパフォーマンスが高く組み立てやすい「くさび式足場」です。
価格が安い単管足場は組み立てに時間と労力がかかることから、主に敷地が狭い家や低層階で使用されています。
●高圧洗浄
30坪住宅の平均価格:2~3万円
- 高圧洗浄費用:150~200円/㎡
- バイオ洗浄費用:500~1,000/㎡
塗料が外壁に密着しやすいように、外壁表面の汚れを落とす作業です。
カビやコケなどがこびりついている外壁や屋根では薬剤を使ったバイオ洗浄が行われます。
●下地調整
30坪住宅の平均価格:10~12万円
- シーリング打ち替え1,000/㎡
- シーリング増し打ち800/㎡
- ケレン作業費用:500~2,000円/㎡
- ヒビ割れシーリング材充填(シール工法):700~1,000円/㎡
- ヒビ割れVカット工法:2,000~5,500円/㎡
下地調整(下地補修)ではサイディングボード目地のシーリング(コーキング)やモルタル外壁表面のヒビ美割れを補修し、鉄部の錆びをけれん作業で落とします。
下地調整は施工不良を起こさないためには欠かせない工事であり、見積もりに上記の工程が含まれていることを必ず確認しておきましょう。
●養生
30坪住宅の平均価格:3万円
㎡あたり300円
窓サッシや窓ガラス、エアコンの室外機や玄関ドア、庭木や車などをビニールシートやマスキングテープで保護する作業です。
30坪の戸建て住宅であれば3万円程度が相場ですので、10万円など高額な価格になっていないかチェックしておくことをおすすめします。
2.塗料の施工価格相場一覧
外壁塗装の基本の工程はどの家でもほぼ共通していますが、使用する塗料はお住まいの外装材や劣化状態によってばらつきがあります。
外壁塗装用の塗料には
- アクリル
- ウレタン
- シリコン
- ラジカル
- フッ素
の順にグレードが存在します。
そのほか、光触媒塗料や無機塗料など機能性が付与された塗料などがあり耐久性が高い塗料ほど価格も高くなりますので、各塗料の効果や単価相場をしっかり理解しておきましょう。
●アクリル塗料
耐用年数:約5~8年
施工費用相場:約1,500~1,800円/㎡
30坪住宅の平均価格:18~21万円
耐久性が低く耐用年数が短いため、戸建て住宅の外壁や屋根に使われることはなくなりました。
●ウレタン塗料
耐用年数:約8~10年
施工費用相場:約1,800~2,200円/㎡
30坪住宅の平均価格:21~26万円
あまり耐久性は高くありませんが、やや柔らかいため軽度のひび割れ(クラック)であれば塗膜が伸びて割れ目を塞ぐことから防水性に優れた塗料です。
●シリコン塗料
耐用年数:約10~15年
施工費用相場:約2,800~3,100円/㎡
30坪住宅の平均価格:33~37万円
耐久性が高く価格も高すぎないことから、現在戸建て住宅で最も使われている塗料です。
30坪住宅であれば足場工事代なども含めて約70~90万円で施工が可能です。
●ラジカル塗料
耐用年数:約14~16年
施工費用相場:約3,200~4,000円/㎡
30坪住宅の平均価格:38~48万円
ラジカルという塗膜の劣化因子を抑制する最新塗料で、フッ素塗料よりも安くシリコン塗料よりも耐久性が高いことから注目されつつあります。
●フッ素塗料
耐用年数:約15~20年
施工費用相場:約4,200~4,500円/㎡
30坪住宅の平均価格:50~54万円
最もハイグレードな樹脂を主成分とする塗料で、紫外線に強いため耐候性が高く10年以上の耐久年数を持つことから使用する家庭が増えています。
●光触媒塗料
耐用年数:約18~20年
施工費用相場:約4,200~5,000円/㎡
30坪住宅の平均価格:50~60万円
紫外線に反応して排気ガスなどの空気中の汚れを分解する力を持っており、雨で汚れが洗い流されるため外壁を常にきれいな状態にできる塗料とされています。
ただし屋根には使用できません。
●無機塗料
耐用年数:約18~23年
施工費用相場:約4,500~5,500円/㎡
30坪住宅の平均価格:54~66万円
紫外線で劣化しない無機質が配合された塗料で、耐久性は非常に高いですが施工価格も非常に高く30坪の住宅でも110万円近い費用になることがあります。
●断熱・遮熱塗料
耐用年数:約13~18年
施工費用相場:約3,800~4,200円/㎡
30坪住宅の平均価格:45~50万円
断熱性能で暖かい空気を室内に留め、遮熱性能で熱い日差しを室内に入れないため一年通して過ごしやすく省エネ効果を持つ塗料です。
●弾性塗料
耐用年数:約10~15年
施工費用相場:約2,000~4,500円/㎡
30坪住宅の平均価格:24~54万円
伸び縮みする「弾性」の力を持つことから、ひび割れしやすいモルタル壁の塗り替えで使われることの多い塗料です。
■30坪の住宅を相場価格で塗装するために
外壁塗装には確かに相場価格が存在しますが、依頼した業者が相場価格で見積書を作ってくれなければ意味がありません。
30坪住宅のリフォーム工事を適正価格で行うためにも、業者選びのポイントや業者から提示された価格を見るときの注意点を知っておきましょう。
1.一社の見積もりで即決しない
当然のことですが、塗装業者に見積もりをしても上記の相場価格通りになるとは限りません。
業者によって塗料の価格や作業にかかる人件費の設定方法は異なります。
そのため全く同じ見積もり額になることはありえませんので、相場に最も近い適正価格で工事を行うためには一社で即決せず複数社から見積もりを取ることが大切です。
2.30坪は参考価格に使われやすいので注意
30坪は戸建て住宅の中でも平均的な大きさに近く、延べ床面積も約100㎡とキリが良いことから外壁塗装の価格例として使われやすい大きさです。
例えば塗装業者のホームページで「30坪外壁塗装70万円!」と記載されているものなどがあり、このような記載を30坪の家にお住まいの人が見れば「70万円で塗装できるんだ!」と思ってしまいますがすぐに手を出すのは危険です。
このような参考価格はよく見ると「※現場によって変動します」と小さく書かれていたり、悪徳業者の場合はあとから高額な追加工事を持ち出したり質の悪い塗料を使っていたりすることがあります。
もちろんわかりやすいように参考価格を記載しているだけの良心的な業者もいますが、記載されている参考価格が自宅と同じ坪数でもすぐに鵜呑みにせず、現地調査を踏まえた見積もりを作ってもらい工事項目ごとの単価相場もしっかりチェックしておきましょう。
3.格安工事に手を出さないこと
冒頭でもお伝えした通り、30坪の外壁塗装費用は、外壁塗装のみであれば80~90万円、屋根もセットで行う場合は95~120万円が相場です。
この価格よりも高い業者に手を出すことはあまりないと思いますが、相場の半額などの格安価格を提示している業者にはくれぐれも注意しましょう。
相場価格は言い換えれば「工事に最低限かかる費用」のことです。
つまり相場よりも大幅に安くなっているということは、何かが不足している手抜きの可能性が非常に高いということになります。
よくある例では「足場代無料キャンペーン」や「モニター価格で半額です」などと言って相場よりも非常に安い金額で契約させようとする手口があります。
しかしこの類のキャンペーンは蓋を開けてみると、無料や半額になった分の費用が別の工事に上乗せされていたりあとから追加工事を要求してきたりして、結局相場と同じかそれ以上の費用になってしまうものです。
あるいは本当に足場などの基本の工程を省いて、質の悪い手抜き工事を行われる可能性もありますので、相場の半額や「30坪で40万円」といった格安工事には絶対に手を出さないようにしましょう。
■おわりに
30坪住宅の外壁塗装を行うときは、しっかり相場価格を把握したうえで業者選びに着手することが肝心です。
特に価格のモデルになりやすい30坪住宅は様々な業者が参考価格を提示しています。
たとえ格安な金額を提示されても、必ずご自宅の見積もりを取って正確な塗装面積と金額を調べましょう。