費用が高額になりやすい60坪の住宅では、「相場価格付近」で施工してもらうことが何よりも重要になります。
この記事では、60坪と65坪の建物をそれぞれ施工したときの価格相場に加えて、業者選びの参考になる注意点やポイントもご紹介します。
目次
■60坪の施工価格相場
60坪の建物は、平均的な大きさの戸建て住宅よりも約1.5~2倍の大きさです。
この大きさになると、二世帯住宅やアパートなどの集合住宅であることも多いでしょう。
面積が多い分、作業量も増えて費用も高額になりますので、少しの価格差が大きな差になってしまいます。
相場価格を知っておき、あまりにも高額な工事を依頼しないよう注意しなければなりません。
以下は60坪住宅で塗装をしたときの、塗料別の施工価格相場です。
外壁塗装に使われる塗料はグレードが決まっており、ハイグレードなものを選ぶほど施工価格は高くなりますが耐久性も長持ちします。
なお、現在の外壁塗装ではシリコン塗料が人気です。
※金額は足場設置、養生、高圧洗浄、下地補修費用を含む、外壁単体の施工価格です。
塗料の種類 | 価格相場 |
アクリル塗料 | 110万円 |
ウレタン塗料 | 128万円 |
シリコン塗料 | 132万円 |
フッ素塗料 | 150万円 |
断熱塗料 | 156万円 |
光触媒塗料 | 172万円 |
60坪の建物で屋根塗装も行った場合は、上記価格に対し約20~30万円追加されます。
■65坪の施工価格相場
続いては65坪の住宅の施工価格相場をご紹介します。
なお、60坪の住宅でも、劣化箇所が多かったり窓が少なかったりすると以下の価格になることもあります。
※金額は足場設置、養生、高圧洗浄、下地補修費用を含む、外壁単体の施工価格です。
塗料の種類 | 価格相場 |
アクリル塗料 | 119万円 |
ウレタン塗料 | 132万円 |
シリコン塗料 | 140万円 |
フッ素塗料 | 158万円 |
断熱塗料 | 162万円 |
光触媒塗料 | 178万円 |
60坪の建物で屋根塗装も行った場合は、上記価格に対し約20~30万円追加されます。
■60坪・65坪の塗装費用の求め方
「なぜ上記のような相場価格になるの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
塗装費用は、「作業ごとの1㎡分の施工単価」に対し、塗装面積を乗じることで計算できます。
業者が作成した見積書を理解しやすくなりますので、計算の流れを覚えておきましょう。
1.家の塗装面積を計算する
外壁や屋根には窓や装飾など塗装しない箇所がありますので、塗り面積はこれらの塗装しない部分を省いた数値にしなければなりません。
概算の塗装面積は以下の計算式で求めることができます。
●坪数を延べ床面積に変換
まずは坪数を㎡に直して、建物の「延べ床面積」を求めます。
1坪は3.3㎡ですので、
- 60坪×3=198㎡
- 65坪×3=214㎡
となります。
●延べ床面積に係数を乗じる
先ほど求めた延べ床面積に「係数」を乗じることで、概算の塗装面積が出てきます。
係数は、建物の面積に応じて1.2~1.4を使い分けます。
60坪や65坪の大きな建物では、1.2を使うとほぼ実測値に近くなります。
- 60坪の塗装面積:198㎡×2=237㎡
- 65坪の塗装面積:214㎡×2=256㎡
これが60坪と65坪の塗装面積ですので、このあとご紹介する施工単価を乗じれば、およその費用を求めることができます。
計算式で求めた塗装面積はあくまでも概算ですので、正確な数値は塗装業者に頼んで図面などから計測してもらうことになります。
2.塗装工事の内訳を知る
外壁塗装で必ず実施されるのは、
- 足場設置
- 飛散防止ネット設置
- 高圧洗浄
- 下地処理
- 塗装作業(3回塗り)
です。
なお、家の劣化症状や外壁の素材次第で作業内容が変わることもあります。
例えば、通常の高圧洗浄は水道水を機械で勢いよく吹きかけるものですが、カビや藻の繁殖がひどい家では、薬剤を混ぜたバイオ洗浄に切り替える、などです。
以下は、外壁塗装で行われる作業の、㎡あたりの施工単価相場です。
※カッコ内は作業の種類です。
工事項目 | ㎡あたりの施工単価 |
足場設置費用
(単管足場) |
700~800円 |
足場設置費用
(枠組み足場) |
1,000~1,500円 |
足場設置費用
(くさび式足場) |
900~1,200円 |
飛散防止ネット設置費用 | 150~200円 |
高圧洗浄費用
(水道水) |
200 |
高圧洗浄費用
(バイオ洗浄) |
300~500円 |
下地調整費用
(シーリング補修) |
800~1,000円 |
下地調整費用
(ひび割れ補修) |
700~5,000円 |
下地調整費用
(ケレン作業) |
500~2,000円 |
養生費用 | 300円 |
塗装費用 | (使用した塗料によって異なる) |
こちらは使用塗料別に、㎡あたりの施工単価をまとめたものです。
塗料の種類 | ㎡あたりの施工単価 |
アクリル塗料 | 1,500~1,800円 |
ウレタン塗料 | 1,800~2,200円 |
シリコン塗料 | 2,500~3,200円 |
フッ素塗料 | 3,200~4,500円 |
断熱塗料 | 3,500~4,800円 |
光触媒塗料 | 4,500~5,200円 |
■60坪・65坪の家で外壁塗装をするときのポイント
戸建て住宅でも大きな部類に入る60坪や65坪の住宅を塗装するときは、くれぐれも業者選びを慎重に行わなければなりません。
建物の規模に関わらず業者選びが大切であることに変わりはありません。
しかし、大きな建物は普段よりも注意して見積もりを取らなければならない理由があります。
1.適正価格の業者を見つけること
60坪の住宅は、いまや外壁塗装では定番となっているシリコン系塗料を選んだ場合でも、150万円近い費用が発生します。
30坪の住宅であれば、シリコン塗料の相場は約70~90万円です。
相場価格自体が高い60坪の住宅は、相場より少し高い業者を選ぶと大きな痛手となってしまいます。
1㎡あたりの塗装費用が100円高い業者を選んだと仮定して、30坪と60坪で比較してみましょう。
30坪の住宅 | 塗装面積は約120㎡
価格差:12,000円 |
60坪の住宅 | 塗装面積は約237㎡
価格差:23,700円 |
このように、60坪の住宅では100円違う業者を選んだだけで2万円以上の差額になってしまうのです。
さらに、外壁塗装には複数の作業項目がありますので、もし100円高い作業が5項目あれば差額は10万円になります。
最低でも3社から見積もりを取り、合計価格だけでなく、作業項目レベルの価格差までしっかり目を通しておきましょう。
●半額以下の格安工事は絶対にNG
高額な工事費用を少しでも安くしたいと思ってしまうのは当然のことです。
しかし、外壁塗装で大切なことは、「かかる費用を安くすること」ではありません。
外壁塗装の最終的な目的は、建物を長持ちさせることです。
そのためには「劣化箇所を確実に補修すること」が欠かせません。
相場価格は、確実に工事を行うために必要な金額と言い換えることができます。
つまり相場よりも少ない金額ですべての工事を満足に行えるはずがなく、相場の半分以上値引きされている格安工事は、どこかで手抜きが行われると考えてよいでしょう。
手抜き工事の例としては、
人件費を削減するために3回塗りを2回で終わらせてしまう
部材代を節約するために塗料を多く薄めて使用する
足場工事を行わず、脚立で手が届く所までしか塗装しない
などがあります。
手抜き工事が行われれば、塗料が長持ちせず3年以内に劣化してしまい、建物自体にダメージが蓄積されてしまいます。
もし、60坪や65坪の住宅で、「50万円」や「40万円」などの格安工事をもちかけられても応じないようにしましょう。
2.面積が大きいため作業に時間がかかる
面積が大きな建物ほど作業時間は増えます。
外壁塗装の工期は通常は約2週間ですが、60坪以上の建物ではそれ以上かかってしまうかもしれません。
一般的な外壁塗装では、モルタル壁のひび割れ補修といった下地調整作業は1日で完了しますが、60坪の家では2日かけて行われることもあります。
また、目地にシーリングが詰められているサイディング壁はシーリングの打ち替えに丸一日かかりきりになってしまいます。
搬入する資材も多いため、トラック一台では塗料缶や工具を一度に運べず、数回に分けて往復する業者もいるでしょう。
●短すぎる工期にも要注意
外壁塗装はどんなにスムーズに進んでも約9~14日かかるものです。
足場設置 | 1日 |
高圧洗浄 | 1日 |
高圧洗浄後の乾燥時間 | 1~2日 |
下地補修 | 1~2日 |
養生 | 1日 |
塗装 | 3~6日 |
片付け | 1日 |
合計 | 9~14日 |
1週間以内で終わるような短期間の工事スケジュールを提示されたときは、高圧洗浄の乾燥時間や塗装の2回塗りなどが省かれている恐れがあります。
あるいは、足場を組まずに脚立で雑に塗装される可能性も否めません。
一件でも多く契約を取りたい利益優先の悪徳会社などは、短期間で工事を済ませようとする傾向にあります。
60坪の住宅であれば2週間はかかると考え、スケジュールに余裕を持って丁寧に施工してもらいましょう。
■おわりに
外壁や屋根は、小さなほころびが大きな劣化を招きます。
それは60坪の大きな建物でも例外ではありません。
作業面積が多く費用が高くなりやすい60坪の建物では、相場価格の範囲内に収めることが非常に重要です。
複数社から見積もりを取って、現地調査で正しい見積もりを作り、60坪分の面積を確実に施工してくれる優良業者を見つけましょう。