外壁塗装業者がサイトや広告に掲載している定額パック料金は、外壁塗装に詳しくない方でも気軽に利用しやすいという側面がありますが、内容を全く知らずに利用してしまうと、満足のいく外壁塗装にならないこともあるため注意が必要です。
今回は、外壁塗装のパック料金の特徴や、利用する時の注意点などについて解説します。
目次
■外壁塗装にはパック料金がある
外壁塗装のパック料金とは、定額で利用できる、塗装工事のパッケージ商品のことで、「外壁シリコンパック60万円」「外壁塗装リフォーム70万円プラン」などがあり、プランの名前や金額は業者によって異なりますが、おおむねこのように価格つきで表記されています。
工事を行う業者や使う塗料によって価格は異なりますが、外壁塗装のパック料金は外壁塗装のみで約50〜80万円、屋根塗装も込みのパック料金であれば、約90〜150万円あたりが業界相場でしょう。
外壁塗装を行う時は、まず外壁塗装業者やリフォーム会社が現地調査を行い、外壁の素材に合わせた相応しい塗料の種類や、外補修方法の選定、施工面積の計算などに基づいて見積書のの作成を行います。
これらの金額の算出方法や実施する工事内容の判断が業者によって異なるため、外壁塗装の見積もりは、選んだ業者によって全く異なる内容になることがあるのですが、外壁塗装のパック料金の場合は、工事に関する様々な費用がはじめから定額で設定されているため、現地調査に訪れた営業マンや職人によって、見積もりの内容が変動することがありません。
2.外壁塗装パックに含まれる作業内容
外壁塗装では、
- 足場設置
- 周囲の養生
- 高圧洗浄
- 下地調整
- 付帯部分の塗装
- 外壁塗装
という複数の工程があり、もちろん外壁塗装パックで提供される工事にもこれらの基本的な作業は含まれていますが、中には塗装に必要な作業が省かれ、追加費用が発生するようにしている業者もありますので、外壁塗装の基本的な作業工程を以下でおさらいし、必要な工程がパック料金の中に含まれているかどうか業者に確認しましょう。
●足場設置、養生は追加料金が発生するかどうかを確認
家の形によって必要な足場や養生の部材の量は異なるため、家の形状によっては追加工事が発生することになってしまいますので、足場設置費用がパック料金に含まれているのかどうか、含まれているのであれば自分の家が追加料金なしで設置できるのかどうかを業者に確認しましょう。
●高圧洗浄、下地調整は料金内ですべての補修をしてくれるのか確認
高圧洗浄もコーキングなどを含む下地調整も重要な工程ですが、パック料金にはこれらの工程が含まれていなかったり、外壁の傷の種類によってはオプション料金が発生したりするため、パック料金に含まれているどうかはもちろん、下地調整がどこまで行われるかもしっかり確認しておきましょう。
参考:高圧洗浄で知らないと損な作業時間、圧力、単価、水道代の話
目地のコーキング材補修は専門業者が存在するほど難しい作業
●塗装工程は3回塗りがパック料金に含まれているか確認
外壁塗装工事では基本的に3回塗りが一般的であり、通常のパック商品であれば、「塗料の3回塗りを行います」と記載されていますが、悪徳業者の場合、「3回塗りはオプションです」と、契約後に追加料金を提示してくる恐れがあります。
例えば、今契約してくだされば追加料金無しで「3回塗りを行います」という宣伝文句ですぐに契約を迫ろうとする悪徳業者もいますが、外壁や屋根の3回塗り当然行うべき作業であり、優良業者であればもちろんパック料金に含めていますし、わざわざ「無料」とは表現しません。
パック料金を選ぶ時は、塗装回数をしっかり提示しているかどうかを、必ず確認しておきましょう。
■パック料金の注意点
パック料金は、リフォームが初めての方や、工事内容がよくわからない方でも予算が立てやすく、安心してリフォーム工事に踏み切ることができますが、安易に外壁塗装をパック料金で行うと、追加料金が発生するなどの落とし穴が待ち受けている恐れがあるため、注意しなくてはなりません。
もちろん、外壁塗装のパック料金がすべて施主を騙す目的で設定されているわけではなく、良心的な業者であればパック料金で施工してしまうと多くのオプション費用が発生するような場合は、通常の見積もりによる施工を勧めます。
パック料金の注意点を理解しておくことで、より施主主体で、希望や理想に近い外壁塗装リフォームにすることができるでしょう。
1.屋根塗装などがパック料金に含まれていない可能性がある
外壁塗装パックは、屋根や設備の点検・塗装費用がプラン内容に含まれていない場合があり、業者に屋根の塗装工事が含まれているのかどうかを確認する必要があります。
足場費用などを考えると外壁と同じタイミングで塗装したほうが良いといわれており、安いからといって外壁塗装のみで屋根塗装や点検が含まれないパック料金を選んでしまうと、外壁よりもずっと劣化しやすい屋根に起こっている重大な劣化を見逃してしまう恐れがあります。
2. 施工面積に上限がある
いかにすべての料金がセットになったパック商品といえ、すべての家でその料金が適用されるわけではなく、設定料金内で施工できる範囲には限界があります。
外壁面積が小さい家と、外壁面積が大きく複雑な作業を伴う家を同じパック料金で施工していると、業者は利益を出すことができなくなってしまうため、パック料金は、施工できる塗装面積に上限が設けらており、
- 「〇〇平米以上は追加料金」
- 「100㎡まで」
- 「一般的な住宅の場合」
などの条件をパック料金につけている可能性があるので、必ずその料金が適用される条件を確認しましょう。
なお、塗装面積の条件を「一般的な住宅の場合」といった曖昧な表現にしている業者よりも、「〇〇平米以上」など、具体的な面積を開示している業者を選んだ方が、工事後のトラブルを避けるためにも安全です。
3. 定額パックはお得とは限らない
できるだけ安く塗装工事を行いたい方が価格重視でパック料金を選ぶ時は、条件の施工面積よりも自分の家の方が小さい場合も注意が必要で、例えば、施工面積の上限が100㎡となっており、実際には80㎡しか外壁塗装の施工をしなかったとしても、上限との差である20㎡分の料金は返金されません。
あるいは外壁の状態が費用によく、下地調整がほとんど必要ないような場合は、パック料金に含まれている下地調整費用よりも少ない料金で施工できるかもしれません。
「人気のパック料金」とチラシやサイトに記載されていても、必ずしもすべての家で、コストパフォーマンスのよいリフォームにならないことを把握しておきましょう。
■パック料金を上手く利用するためのポイント
パック料金は一見、塗装の知識がない人にとって、非常に魅力的な商品に映りますが、実際は塗装の知識がある人でなければ賢く利用するのが難しい商品なのです。
ただし、本当にお得なキャンペーンとして用意されているパック料金もありますので、利用時のポイントや注意点を知っておき、もしチラシやホームページの記載内容に疑問点があれば、現地調査を依頼する前に、電話などで業者に質問してみましょう。
1.パック料金に記載されている補足説明をしっかり読む
パック商品を選ぶ時は、つい工事金額の安さやメインのサービス内容に目が行きがちですが、何よりも重点的にチェックすべきポイントは、小さい文字で書かれている補足説明です。
この補足説明には、
- 足場を設置する条件「平屋の場合は設置しない」「屋根足場は追加料金」など
- 塗装回数3回塗りまで行うかどうか
- 塗料の種類塗料のグレード、水性・油性など主成分以外の分類
- 塗装面積の上限上限を超えた場合の㎡あたりの単価
などが記載されており、特に注意しなければならないのが、「その他」や「状況に応じて」などの曖昧な表記になっている箇所であり、具体的な数字や条件を必ず塗装業者に相談し、契約する前に、すべての工事内容に合意しておくことが大切です。
2.良いパック料金と悪いパック料金の違いを知っておく
外壁塗装を一度も経験したことがない方や、業者からの見積書の見方がわからない方にとって、パック料金の内容の正当性を判断するのは至難の業ですので、良いパック料金と悪いパック料金それぞれの特徴を知って、契約してもよいか判断する時の材料にしましょう。
外壁塗装駆け込み寺でもお手元のパック料金がよいのか悪いのかをアドバイスさせていただきますので、ご利用下さい。
●良いパック料金の特徴
- 注意書きが、わかりやすい、または目立つように大きく記載されている
- 塗料の種類が、詳細な成分まで表示されている
- 塗装の基本的な工程が、サービスに含まれているコーキング打ち替え、3回塗りなど
- 塗装面積の上限が、具体的な数値で記載されている
- 塗装面積の上限が、一般的な戸建て住宅が十分カバーできる広さに設定されている
- 保証の期間だけでなく、保証が受けられない時の条件が記載されている
- 「施工できない外壁」など、パック料金の利用を避けた方がよい場合も記載されている
●悪いパック料金の特徴
- 注意書きが、小さく気付きにくい、または枠外に記載されている
- 使用塗料の説明が、少ない、または塗料について説明していない
- 通常の塗装に必要な工事が、基本料金に含まれていない
- 塗装の作業内容が、詳しく記載されていない
- 保証期間が大きく記載されているが、条件などが具体的に記載されていない
- 施工面積の上限が、狭すぎる、または戸建て住宅の平均的な大きさに合っていない
- 施工面積が延床面積で表記されている外壁面積に比べると正確な大きさにならない
- 施工費用が、相場よりも異常に安い
3.相見積もりを取る
たとえ定額のパック料金を利用する場合でも、複数の業者で相見積もりを取るべきであることに変わりはなく、パック料金の相見積もりを取るだけでなく、パック料金ではない通常の見積もりも取っておくと良いでしょう。
通常の見積もりでは、家の図面を元に、外壁の面積や付帯部分の施工費用などをひととおり算出してもらうことができるので、もし通常の見積もりとパック料金で行う作業内容に違いがなく、見積り価格よりもパック料金の方が安くなるようであれば、本当にお得なパック料金になるかもしれません。
しかし、パック料金ではカバーできない工事費用が発生したり、そのためにオプション料金がいくつも発生したりするようであれば、パック商品は避け、通常の見積もりできちんと総費用を算出してもらった方がよいと言えるでしょう。
■まとめ
費用や作業内容がわかりやすいパック料金は、外壁塗装がはじめての方でも、「この料金なら頼めるかもしれない」と思える便利さがありますが、施工内容がリフォームを行う家に合っていなかったり、注意書きの記載に気づかなかったりすると、提示されている金額で施工できなかったり、追加工事が発生したりといった、思わぬトラブルや失敗を招く恐れがあります。
もし、パック料金を検討している場合は、必ずパック以外の見積もりも取って、行うべき工事に漏れがないか、費用は妥当か判断し、一定の施工実績を持つ、信頼性のある業者を選ぶようにしましょう。