アパートも戸建住宅と同様に、建物を長く美しく保って資産価値を維持していく上で定期的な外壁塗装メンテナンスが不可欠ですが、アパートと戸建住宅では要領の異なる部分も多くあります。
この記事では特にオーナーが自分のアパートを賢く維持管理・運営していくための
- 外壁塗装リフォームを行う目的やタイミング
- 塗装費用の相場
- 業者選びのポイント
などについて解説します。
目次
■アパートの外壁塗装で入居率アップを期待できる
アパートの外観は入居希望者が必ず確認する部分であり、部屋探しに大きく影響するため、定期的な外壁塗装リフォームを行って美観を保つことには大きなメリットがあります。
住む部屋を探している人にもすでにアパートに入居している人にも良い印象を持ってもらえるよう適切なペースでアパートの外壁や屋根のメンテナンスを計画しましょう。
外壁や屋根の塗装リフォームはアパートの美観を保つだけでなく、維持管理の面でも重要な役割を果たします。
1.外壁塗装で新築時のような美観を取り戻すことができる
外壁や屋根は年月の経過とともにゆっくりと光沢や鮮やかさを失っていき、10年前後で塗り替えが必要なレベルまで色あせてしまいますので、新築後または前回の塗装から10年以上経っているなら外壁塗装リフォームによって新築当初のような美観を取り戻すことができます。
外壁塗装リフォームで新築物件にも引けを取らない外観にできれば、築年数が10年20年と長くなったアパートでも高い入居率を維持できるでしょう。
2.アパートの資産価値を維持する
不動産の資産価値が時間とともに下がっていくことは避けられませんが、賢くメンテナンスすれば資産価値を下げずに長期的に高く保つことが可能です。
そしてアパートの外壁や屋根の塗装リフォームは単に美観を美しく保ったり、色を変えて外観を刷新したりするだけでなく、建物の防水性を保つためにも行います。
●コーキング工事
外壁材のジョイント部分・窓サッシ・配管周りに生じる隙間を埋めて建物の防水性を維持するためにコーキング材(シーリング材)というゴムの性質を持つ建材が使用されており、このコーキング材は約10年で劣化してしまいます。
コーキング材は外壁や屋根と同様に紫外線や風雨にさらされていることにより縮んだりひび割れたりするなどの劣化が起こり、外壁の防水性能を維持できなくなり、そのまま劣化を放置しておけば外壁内部の柱や土台などに雨水が侵入して腐敗やカビといった問題が発生する原因になります。
●屋根・ベランダ・バルコニーなどの防水工事
アパートの屋根・ベランダ・バルコニーなどの防水機能の低下はその下の階にある部屋への雨漏りの原因となります。
雨漏りは居住者にとって不快なだけではなく建物全体の劣化を早め、アパート資産価値が著しく下がってしまうため、外壁や屋根だけでなく全体的な防水機能も定期的なメンテナンスのチェック項目に含めておきましょう。
3.塗装を定期的に行えば維持費用は抑えられる
一回のアパートの外壁塗装リフォーム工事の総工費は150万〜200万円以上と高額であるため、先延ばししたくなるかもしれませんが、リフォーム工事を怠ることによって生じる
- アパートの資産価値の低下
- 入居率の低下
などのデメリットを考えれば、外壁塗装を含めたメンテナンスを定期的に行うのが最も経済的です。
また、リフォーム工事を行わずに外壁や屋根の劣化を放置すればするほど、塗装リフォーム工事を行った時の工事の総工費が大きくなってしまいますので、外壁塗装工事を計画的に行えるよう前もって費用を計算に入れておきましょう。
参考:外壁塗装の必要性は?放っておくとどうなるかと追加工事費用
■アパートの外壁塗装は引越し時期を避けて計画するべき
アパートの塗装リフォーム工事は実施するタイミングを誤ると入居者を増やす機会を逃してしまう可能性があります。
例えば、部屋探しをしている人があなたのアパートを見つけてくれて、気に入ってもらえたとしても、アパートが塗装リフォーム工事の最中だと入居を敬遠されてしまうかもしれないのです。
外壁塗装リフォームの期間中は架設足場と飛散防止ネットによって建物が覆い隠されてしまうため建物のデザインがわからなくなりますし、
- 「塗装前のアパートとデザインが大きく変わってしまうのではないか」
- 「塗装リフォーム工事は居住者にとって不便な点が多いのではないか」
と不安に思われてしまう可能性があります。
部屋探ししている人の意欲をできるだけ削がないようにするためにも、アパートの外壁塗装工事は、
- 進学や就職で新生活の準備が始まる2〜3月
- 転勤に伴う引越しが増える9月
などのアパートの出入居の動きが増える時期や物件探しが活発になる時期は避けるようにしましょう。
その上で外壁や屋根を定期的にチェックし、
などの塗装劣化のサインが起こっていないかをチェックし、起こっているのであれば外壁塗装業者に依頼し、現地調査を行ってもらいましょう。
■アパートの外壁塗装工事の費用相場
アパートの外壁塗装工事にかかる費用はアパートの形状、規模、立地などによって大きく異なるため一概に述べることはできませんが、2階建て1棟6室のアパートの外壁塗装工事の総工費は最低でもおよそ150万円、3階建て1棟10室以上の規模になると最低でもおよそ300万はかかると考えられます。
ただし、アパートの外壁塗装工事の総工費は、どのような補修を行い、どのような塗料で施工するかでも大きく左右されますので、くわしい工事費用を知りたい場合は業者に見積もりを依頼しましょう。
1.アパートの外壁塗装におすすめの塗料
現在、外壁塗装で主に使用されている塗料には
などのグレードがあり、グレードが高い塗料ほど耐用年数は長く、価格も高くなります。
アパートの塗装リフォームでオススメの塗料は、一般住宅と同様にシリコン樹脂塗料、ラジカル制御型塗料、フッ素塗料などですが、地域や建物の材質、形状などによって適切な塗料は異なるため、やはり外壁塗装業者に現地調査を依頼し、予算などを相談した上で施工する塗料を決めましょう。
2.アパートを耐久性が高い塗料で塗装すべき理由
外壁塗装はアパートを人が住める状態で維持するためには定期的に行わなければならないメンテナンスです。
一回あたりの外壁塗装工事費用を多くすれば頻繁に工事をしなくてもよい耐久性の塗料を使うことが出来ますし、安く済ませようと思うと耐久性の低い塗料を使うことになり、短期間で何度も外壁塗装工事をする必要があります。
- アパートの資産価値
- 入居率
- どれくらいこれからアパートを維持していきたいか
- 予算
などを考えながら業者さんと相談して外壁や屋根の塗装リフォームに使う塗料を考えましょう。
●長い目で見ると維持費用の節約になる
外壁塗装では外壁や屋根の塗装作業だけでなく、それ以外の「付帯工事」と呼ばれる費用のかかる工程を塗り替えのたびに行わなければなりません。
外壁塗装の付帯工事には
などがあり、外壁塗装工事を行うたびにこれら付帯工事の費用がかかります。
そのため高額でもグレードの高い塗料で塗装し工事を行う回数を減らすようにすることでこれらの付帯工事を行う回数も減り、長期的な観点でみればアパートのメンテナンス費用の節約になるのです。
●外壁塗装工事によって発生する入居者のストレスを軽減できる
外壁や屋根の塗装リフォーム工事は施主にとっては様々なことを考えなければならない大変な工事ですが、アパートに入居している人々にとっても塗装リフォーム工事はストレスになるということも覚えておかなければなりません。
外壁や屋根の塗装リフォームを行う約2〜3週間の工事期間中は
- 足場と飛散防止ネットが日光を遮るので日中でも部屋が暗い
- 塗料や水が入るこまないよう窓を締め切っておかなければならない
- 塗料、水、汚れが付着する可能性があるため洗濯物をベランダに干せない
といった不便によってストレスを感じる入居者は多いでしょう。
外壁塗装によってアパートの所有者と入居者の間にトラブルが発生することはあまりありませんが、入居者にできるだけストレスを与えないよう外壁塗装のリフォーム工事の回数はなるべく少なく抑えるのが賢明でしょう。
■アパート外壁塗装でオーナーが行う準備
アパートの外壁塗装工事を行うためにオーナーが行うべきことは主に
- 業者選び
- 色選び
- 入居者への報告
の3つです。
それぞれの注意点や後悔しない外壁塗装工事のためにできることを下記に説明します。
1.塗装業者選び
アパートの外壁塗装は、
- 建物の規模が戸建住宅と比べて大きい
- 入居者が不便なく生活できるようできるだけ配慮して工事しなければならない
という点で、一般的な戸建住宅の塗装工事とは進め方が異なります。
そのため、塗装業者を選ぶ際には塗装リフォーム工事の実績が豊富かどうかや良心的な価格設定の業者かどうかだけではなく、アパートなどの集合住宅の外壁塗装工事に十分な実績があるかどうかで判断しなければなりません。
集合住宅の外壁塗装に実績を持っている業者は自社のウェブサイトに施工事例を掲載していますので簡単に調べられますし、直接問い合わせて聞いてみることもできるので、気になる業者がいれば工事を依頼する前に確認しておきましょう。
●500万円以上の外壁塗装工事には「建設業許可」が必要
塗装するアパートの規模や使用する塗料によっては外壁塗装リフォーム工事の総工費が500万円を超える可能性もあり、このような総額500万円を超えるリフォーム工事は都道府県知事や国土交通大臣から「建築業許可証」を取得している業者でなければ受注できません。
参考:http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html
もしリフォーム工事を考えているアパートの工事費用が500万円を超える可能性があり、工事を依頼することを考えている業者が建築業許可証を持っていないなら
- 業者が建築業許可証を取得するのを待つ
- 総工費が500万円未満になるように工事内容を調整する
- 建築業許可証を持つ別の業者を探して依頼を見積もりからやり直す
といういずれかの方法を選択しなければなりません。
ただし、業者が許可証を取得するのには時間がかかる可能性がありますし、予算を無理に調整するのではなく適切な工事内容のリフォームを行うことが重要であるため、アパートの外壁塗装工事では最初から建築業許可証を取得している業者を選ぶのが最善でしょう。
●工事後の保証内容を契約前に確認する
作業範囲が広く工事項目も多いアパートの外壁塗装では一般的な住宅の塗装工事に比べて施工不良が生じる可能性は高くなるため、リフォーム工事の保証内容を注意深く確認し、満足できる保証をしてくれる業者とだけ契約を交わすようにしましょう。
保証を付けない業者による外壁塗装工事に施工不良が生じると、最悪の場合全額アパートのオーナー負担で工事をやり直さなければならなくなる恐れもあります。
参考:外壁塗装の保証は業者や団体で内容が全く異なるので注意!
2.アパートの外壁や屋根の色選び
リフォーム工事で塗装する外壁や屋根の色もアパートのオーナーが自由に選ぶことができますが、リフォーム工事前の外壁の色から大きく変更しないのが色選びに失敗しないためのひとつのポイントです。
新しい色でイメージを刷新したいという場合にもオーナー個人の好みではなく入居者にとって受け入れやすい色・デザインを心がける必要があります。
例えば、一人暮らしの学生をターゲットにしているアパートであれば、ブルー、グリーン、イエローなどポップな系統のパステルカラーにすると好感度が上がり、入居者も集まりやすくなるでしょう。
塗装を行った当初は入居者のほとんどが学生だったアパートに単身サラリーマンの入居者が増えたという場合には、落ち着いた雰囲気のシックな色や流行色を取り入れるのも、高い入居率を保つ秘訣です。
アパートがターゲットとしている入居者層にどんな色が受け入れられやすいか、外壁塗装でどんな色が流行しているかなどについては、アパートの外壁塗装に慣れた業者であれば相談に乗ってくれるでしょう(外壁や屋根の色の選び方についてはこちらの記事(一般家庭向け記事)をご覧ください)。
3.入居者へ外壁塗装工事について知らせる
アパートの塗装業者・工事内容が決定したなら、アパートの全戸に下記のような内容を書面にまとめて通達するようにしましょう。
- 工事の日程:工事の開始日と完了予定日、土・日・祝日に作業が行われるかどうか
- 工事車両について:工事車両の出入りがあることや駐車位置
- 作業員について:作業員の出入りがあること
- 工事中の注意点:窓が開けられないこと、洗濯物を干せないことなど。
- 工事中ののトラブルのための連絡先
また、地域によっては上記の他にも通達する必要がある項目もあるので、外壁塗装業者と相談して通達内容を決めておきましょう。
■アパート外壁塗装の工事期間は?
塗装工事の工程は一般的な戸建住宅の工程と同じですが、建物の規模が大きくなればそれだけ工事の日程も長くなり、工期は戸建住宅の塗装工事に比べて長期になることもあります。
一般的な戸建住宅と同程度の規模のアパート(2階建て6室程度)の外壁塗装工事の工期は約2週間ですが、3階建て以上で戸数も多いアパートであれば3週間かそれ以上かかることもあるということを覚えておきましょう。
(外壁塗装工事の基本の工程と、それぞれの目安の所有日数についてはこちらの記事で詳しく解説しています)
■おわりに
建物の規模が大きく、複数の入居者が生活しているという点で戸建てとアパートの外壁塗装は異なる部分が多くあります。
入居者に配慮しつつ、アパートのメンテナンスを行って資産価値と高い入居率を保つというのは簡単ではありませんが、集合住宅の外壁塗装に実績のある業者を選べば問題を上手に回避し外壁塗装を成功させることができるでしょう。