住宅の塗装工事においてメインで施工されるのは外壁と屋根ですが、バルコニーの点検も忘れてはいけません。
本ページではバルコニーが劣化するとどうなってしまうのかや、どのような防水工事があるのかなどを詳しく解説しています。
目次
■外壁塗装のときにバルコニーも点検すべき理由
外壁塗装と聞くと外壁と屋根を塗り替える作業ばかりをイメージしてしまいますが、屋外の設備は外壁や屋根だけではありません。
2階から突き出したバルコニーも定期的にメンテナンスを行わなければ、外壁・屋根と同様にいずれ劣化して建物に重大な症状を引き起こしてしまいます。
バルコニーの劣化に早急に気づくためにも、バルコニーの劣化症状や外壁塗装とセットで済ませておくべき理由を知っておきましょう。
劣化しているかどうかを早急に確認したい、という場合は、こちらからご相談いただければ、地域の優良業者が無料診断させていただきます。
1.バルコニーの劣化が雨漏りを引き起こす
外壁や屋根と同じく屋外にあるバルコニーは、常に雨と紫外線のダメージが蓄積されている箇所です。
そしてベランダと違ってバルコニーには屋根がありませんので、より傷みが進行しやすい箇所になります。
バルコニーの劣化を放置すると降り注ぐ雨水のダメージによってさらに傷みが進行し、外壁内部や室内への雨漏りを引き起こすようになってしまいます。
●水はけはバルコニーの耐久性の要
屋根と違って人が出入りすることが多いバルコニーの床は傾斜があまりつけられないため、もともとあまり水捌けはよくありません。
ただし耐久性に支障を及ぼさないためのわずかな傾斜は設けられており、通常の状態であればすぐに雨水で一杯になることはないでしょう。
しかしベランダ床面が劣化したり排水口周りに異物が溜まったりして水はけが悪くなると、次第に雨水が長時間床に溜まるようになります。
すると水分が逃げにくくなるため床面にカビやコケなども発生するようになり、床面の耐久性はどんどん落ちてしまいます。
●ベランダとバルコニーの違い
バルコニー・ベランダ・テラスは同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なる設備を指す言葉です。
カンタンに違いを説明すると
- バルコニー:建物から突き出した、屋根がなく手すりが付いた部分
- ベランダ:2階以上にあって建物から突き出しており、屋根と手すりが付いた部分
- テラス:1階から突き出した手すりのないスペース
となります。
2.工事を行わなくても点検だけは済ませておこう
外壁塗装は10年に1度間隔でしか行われず、さらにバルコニー単体のメンテナンスとなればなかなか踏み切る方はあまり多くありません。
ですがバルコニーの劣化を10年に1度の外壁塗装でも見逃すと、ますます補修のタイミングは減ってしまうでしょう。
室内への雨漏りや手すりの老朽化が発覚してしまうと部分的な補修工事よりも高額な防水リフォーム費用が発生してしまいます。
大規模なリフォーム工事になる前に外壁塗装のタイミングでバルコニーの点検だけでも済ませておきましょう。
●バルコニーで防水工事を行うべきタイミング
バルコニーの床面にひびが入っているときは床面の防水層自体が劣化している恐れがあります。
ひびが入った防水層は割れ目から雨水がバルコニー本体の下地まで到達してしまい、ますます建物の耐久性を損ねてしまうでしょう。
あるいはカビが発生していたり色あせしていたりする床面は防水層を上から保護しているトップコートが劣化している可能性があります。
トップコートの防水効果が失われると防水層、ひいてはバルコニー本体の劣化にも繋がりますのでできるだけこのタイミングで補修しておくことが望ましいでしょう。
■バルコニーの防水のしくみ
ふだんバルコニーの床面を注視する機会はないため、防水構造と言われてもイメージしづらいのではないでしょうか。
バルコニーの劣化に気づきやすくなるように、バルコニーの防水構造について押さえておきましょう。
1.防水層がトップコートで保護されている
バルコニーの防水処理は以下のような構造で保たれています。
トップコート(表面)
↓
防水層
↓
下塗り材
↓
ベランダ床面本体
バルコニーの床面は樹脂を主成分とする防水層で覆われており、さらにその上から樹脂製のトップコート材で保護されています。
2.劣化箇所によってリフォーム方法が変わる
バルコニー補修は劣化がどこから来ているか見極めることが大切です。
劣化が表面のトップコートで留まっているときはトップコートを塗り替えるのみでバルコニーリフォームは完了します。
しかし劣化が防水層まで達している場合は防水層から塗り替えなければ、表面のトップコートだけ塗り替えても防水効果はありません。
●トップコートも防水層も耐用年数がある
トップコートは約5~10年で耐用年数が訪れ、その下の防水層も10~15年以内には耐久性が低下します。
外壁塗装用の塗料も耐用年数はおおむね10年前後ですので、外壁メンテナンスとバルコニーメンテナンスのタイミングを合わせるという意味でもバルコニーと外壁は同時に補修を済ませておくとよいでしょう。
今のバルコニーは工事が必要かどうか判断に悩む場合は、こちらからご相談いただければ地域の優良業者が無料診断にうかがうことが可能です。
■バルコニーの防水工事は主に2通り
戸建て住宅のバルコニー防水工事は劣化症状に応じて2通りの施工方法があります。
さらにそのうち防水層のリフォームでは2種類の防水工法が選択できます。
劣化症状ごとのメンテナンスの種類と、工事方法ごとのメリット・デメリットを知っておきましょう。
1.トップコートの塗り替えのみ
トップコート部分の塗料だけが劣化していて防水層まで傷みが進行していないときは、トップコートの塗り替えが行われます。
バルコニーのトップコート塗り替えでは主にウレタン系のものが使用されます。
外壁塗装用の塗料でもウレタン樹脂系塗料が使用されることがありますが、ウレタン塗料はゴムのような弾性を持つためひび割れが起きそうになっても防ごうとする効果があります。
この機能をベランダ防水に応用すればひび割れを防ぎながら防水層を保護することが可能です。
ただしトップコートは約5~10年に1度、あるいはひび割れが起きたタイミングで塗り替える必要がありますのでご注意ください。
費用は㎡あたり約1,800~3,000円と防水層に手を加えるリフォームよりも安価ですので、戸建住宅のバルコニーであれば約2万円以内で済ませられるでしょう。
費用的にもバルコニーの耐久性的にも劣化がトップコートのみの時点でメンテナンスを済ませておきたい所です。
●ポリエステル系トップコートは新築向け
防水層のトップコートにはウレタン系だけでなくポリエステル系も存在します。
ただしこちらはバルコニーリフォームで使われることはほとんどありません。
なぜならウレタン系に比べると樹脂が固いため割れやすく、正しい工法で塗装してもすぐにひび割れを起こしてしまいすぐに塗り直しが必要になってしまうためです。
2.防水層も補修してトップコートを再塗装
防水層まで傷みが進行しているときは防水層の傷みを補修したあとトップコートも再び作り替えることになります。
工法にもよりますが補修費用は㎡あたり4,000~6,000円ですのでトップコートの塗り替え以上の予算が必要になります。
バルコニーやベランダ防水工事には2種類の方法があり、それを以下で解説していきます。
なお防水工事には防水シートを床面に張り合わせて接着剤や熱で定着させる「シート防水工法」や「アスファルト防水工法」などもありますが、こちらは主にマンションやビルの屋上防水工事で行われる工法ですのでベランダ防水では使用されません。
こちらのページで詳しく解説しています。
●FRP防水工法
液体状のポリエステル樹脂にガラス繊維などの補強材を混ぜて塗料のように塗布する工法です。
樹脂が乾燥すると継ぎ目のない防水膜ができます。
耐候性が高く紫外線のダメージに強いため、塗膜防水工事の中では現在主流の工法になっています。
また何層も塗り重ねても重くなりすぎず、乾燥期間も約2日程度ですので戸建て住宅のバルコニー防水に非常に適しています。
ただし樹脂があまり柔らかくないためひび割れにはあまり強くありません。
さらに耐候性に優れているとはいえ樹脂ですので紫外線のダメージは蓄積されていきます。
そのため一度防水層を作り替えれば永久に防水機能が続くわけではなく、定期的なメンテナンスは続ける必要がありますのでご注意ください。
●ウレタン防水工法
液体を伸ばして防水膜を作る工法でFRP工法に似ていますが、FRP工法よりもやや安価に施工できます。
プライマーなどの下地材をバルコニー床面に塗布したあと補強用のガラスシートを張り、ウレタン防水材を1層ずつ乾燥させながら重ね塗りします。
ムラなく2層目が完成したことが確認できたら最後にトップコートを塗布してウレタン防水の完成です。
ウレタン工法は安価ですが、何層も重ねて乾燥させなければならないため手間と工期がかかります。
そのためウレタン防水工法では平均して1週間の工期が必要になります。
3.床面以外の点検も忘れずに
床面の防水層やトップコートに異常がなくてもバルコニー全体の点検は済ませておいた方がよいでしょう。
床面に異常がなくても排水溝まわりに葉っぱや汚れが溜まっていると、バルコニーの水はけが悪くなり防水層の劣化を早めてしまいます。
排水溝の詰まりを放置し続けると排水管から水があふれ、雨のたびにベランダが水浸しになりひどいときは室内まで溢れかねません。
●手すりの状態もチェックしよう
バルコニーには手すりが付いていますが、手すりの内側は日があまり当たらないためカビやコケが発生しやすい箇所です。
カビやコケは手すりから外壁や屋根に広がる恐れがありますので、広範囲に繁殖して手洗いでも落ちないようであれば外壁塗装業者に高圧洗浄で落としてもらいましょう。
また手すりの笠木やフェンスに鉄部が使われている場合は、錆びが発生していないかどうかもチェックしなくてはなりません。
特に手すりがすべて鉄製のフェンスで作られているバルコニーは、錆びが全体に広がると老朽化して落下する恐れがあります。
必ず錆びを落として防錆材を塗布し、塗装で保護しておきましょう。
■おわりに
つい見落としがちなバルコニーですが、外壁や屋根と同様に10年前後での防水性能の点検・補修が必要な箇所です。
できるだけ外壁・屋根塗装のタイミングと同時にメンテナンス工事を行い、劣化を進行させないようにしましょう。
防水工法にはFRP工法やウレタン工法、あるいはトップコートの塗り替えのみなど様々な選択肢がありますので、お住まいのバルコニーに合わせたメンテナンス方法を選んでくれる施工業者を見つけることがポイントです。