家の外壁や屋根は、いずれは再塗装が必要になりますが、どのくらいの頻度で行えばいいのか、適切なタイミングがわからないという方も多いのではないでしょうか。
時に、百万円近い工事費用を用意しなければならない外壁塗装は、気軽に何度も行えるものではありません。
悪徳業者の言いなりになって、不必要な工事をしてしまったと後悔しないためにも、外壁塗装の頻度を把握して、ご自身にとって最も良い塗装のタイミングを見つけましょう。
目次
■外壁塗装はなぜ何度も行わなければならないのか
屋外の雨や風から建物を守る外壁や屋根は、常に何らかのダメージが蓄積されています。
そのため、外壁や屋根塗装工事は、建物を使い続ける限り、いつかは必ず発生するものと考えておかなければなりません。
1.どのような建物にも寿命はある
木造住宅でも鉄骨住宅でも、あるいは戸建て住宅やマンションでも、どのような建物にも、いずれは必ず寿命が訪れます。
しかし、適切なタイミングで手入れを行うことによって、寿命を延ばすことは可能です。
外壁塗装は、建物の寿命を延ばすための、メンテナンスのひとつと考えておきましょう。
●建物に使われている建材は経年劣化する
建物の寿命が訪れるということは、すなわち、建物の建築に使われている、構造材が寿命を迎えるということでもあります。
建物の外装を守る外壁や屋根なども、いつかは寿命を迎えることに替わりはなく、さらに、外壁や屋根の表面を保護する塗装も、経年劣化で耐久性が落ちるようになります。
つまり、外壁塗装を行うことによって、外壁や屋根の劣化を緩やかにし、ひいては建物自体の耐久性も長持ちさせられることが可能です。
●「メンテナンスフリー」に惑わされない
外壁塗料や外壁材の宣伝でよく見かけるものが「メンテナンスフリー」「メンテナンス不要」という言葉です。
このような宣伝文句が書かれた道具を使っても、お住まいのメンテナンスが完全になくなることは、絶対にありえません。
何も手入れをせずに放置し続けた建物は、構造材の経年劣化が進み、通常以上の速さでどんどん耐久性が落ちていきます。
また、メンテナンスフリーと同様に、「耐用年数30年」という言葉にも注意が必要です。
これは、道具の耐久性が非常に高いことを表すときに使われるものですが、このように長持ちさせられるのは、建物の立地の気候条件が非常に安定しており、かつ、定期的に設備のメンテナンスがしっかり行われていることが前提です。
塗料や外装材の一般的な耐用年数は、約12~15年、長くても約20年程度が目安ですので、30年や50年など、極端な耐用年数が記載されている商品には注意しておきましょう。
2.定期的な塗替えが外壁や屋根を守る
外壁塗装の目的は、新しい丈夫な塗料で塗り替えて、外壁材や屋根材などの外装材の劣化を予防することです。
塗料の耐久性が完全に落ちる前に、外壁塗装を行うことができれば、外壁や屋根が守られていない期間がなくなり、結果的に、外装材の寿命を延ばすことに繋がります。
つまり、外壁塗装に使った塗料の寿命が、そのまま外壁塗装を行う頻度になると考えることができます。
■外壁塗装の適切な頻度とは
外壁塗装の頻度は、使用した塗料の寿命によって決まりますが、一般的に外壁塗装は、約10~15年周期で実施するべきと言われています。
その理由は、外壁塗装に使われる塗料の耐用年数が、約10~15年と想定されているためです。
1.約10~15年に1度は外壁塗装が発生する
外壁塗装用の塗料には、アクリル塗料、ウレタン塗料、シリコン塗料、ラジカル塗料、フッ素塗料という、5段階のグレードが存在します。
断熱機能を持った断熱塗料や、ひび割れに強い弾性塗料、光に反応して汚れを分解する光触媒塗料といった、機能性塗料も販売されていますが、基本的には、上記5種類いずれかの塗料をベースとして作られています。
●塗料のグレード別・耐用年数
塗料のグレードごとの耐用年数は、以下の通りです。
- アクリル塗料…約5~8年
- ウレタン塗料…約8~10年
- シリコン塗料…約10~12年
- ラジカル塗料…約12~14年
- フッ素塗料…約12~15年
どの塗料メーカーの塗料も、耐用年数が最も低いアクリル塗料を除くと、どの塗料も、約10年以上の耐久性を備えています。
しかし、上記はあくまでも目安の耐用年数であり、最大で約15年の耐用年数を持つとされるフッ素塗料も、気候や立地などに悪条件が揃えば、約10年前後で効果を失う可能性があります。
上記の期間中に一度は、外壁塗装業者に、劣化状態を点検してもらいましょう。
2.外壁や屋根は塗料以外のメンテナンスも必要
外壁や屋根の寿命をつかさどるのは、塗料だけではありません。
窓や外壁材の目地に使われるシーリングや、屋根瓦、屋根材の下に敷かれた防水用のルーフィングなど、様々な部材によって、建物は守られています。
これらの箇所を適切なタイミングで点検し、防水工事や雨漏り補修などを済ませておくことも、外壁塗装の大切な目的です。
●シーリングの点検は10年に1度
サイディング材の目地部分などは、樹脂性のシーリング(またはコーキング)で塞がれることで、雨水が浸水しないようになっています。
このシーリングは、紫外線や雨水が原因で裂けや縮みなどの劣化が生じ、防水性を失ってしまうため、新しいシーリング材を詰め直すなどのメンテナンスが必要です。
シーリングは外壁や屋根表面の塗装に比べると劣化速度が速く、最低でも10年に1度、または、5年に1度の頻度で、点検や修理を行わなくてはなりません。
シーリング(コーキング)について詳しくは「目地のコーキング材補修は専門業者が存在するほど難しい作業」をご覧ください。
■定期的に外壁塗装を行うメリット
外壁塗装の頻度を知っておくことは、建物の寿命を延ばすためだけではなく、高額な工事費用になる前に、適切な費用で工事を済ませるためにも大切です。
耐用年数がとっくに過ぎた塗料を、劣化し続けたまま放置していると、外壁材や屋根材そのものを交換しなければならず、工事費用も工事の手間も増えてしまいます。
1.高額な補修費用の発生を防ぐ
住宅リフォーム工事は、建物の劣化が進行しているほど、補修費用が高額になる性質があります。
塗料が劣化しきってしまい、外壁材や屋根材にまで劣化が及ぶと、塗料だけでは外装を保護することは、もはや不可能になってしまいます。
そのため、外壁材や屋根材が劣化してしまうと、外壁塗装ではなく、壁材補修工事や屋根修理工事などが必要です。
しかし、穴が空いたりカビが生えたりした外装材や屋根材は、部分的に補修を行ってもすぐに全体にダメージが広がってしまうため、遅かれ早かれ、本体ごと新品と交換しなければなりません。
参考:外壁塗装の必要性は?放っておくとどうなるかと追加工事費用
●塗装と交換の費用差
外壁と屋根で、塗装リフォームと交換リフォームの費用差を比べてみましょう。
■外壁の場合
- 塗装:約60~90万円
- 外壁材の交換または作り直し:約120~200万円
■屋根の場合
- 塗装:約50~80万円
- 屋根材の葺き替え:約100~280万円
このように、張替えや葺き替えは、材料費や廃材処分費が発生する分、塗装リフォームよりも割高になってしまいます。
外壁材や屋根材も、建物を使い続ける限り、いつかは交換しなければなりませんが、何度も張替えや葺き替え工事を発生させてトータルコストを増やさないためにも、適切な頻度で塗装を済ませておくことが非常に大切と言えるでしょう。
2.塗装のタイミングを予測できる
定期的な塗装の必要性がわかっていれば、次の塗装までのタイミングも自ずと意識するようになります。
また、塗替えのタイミングが予測できれば、費用の準備に必要な期間も逆算できるようになり、急に外壁塗装が必要になって慌てることもなくなります。
●頻度がわかれば費用とスケジュールを逆算できる
外壁塗装は、一回あたり約60~90万円、屋根もセットで行えば、約110~170万円という高額な費用が必要です。
塗装だけでなく、足場の設置から下地の補修、養生や付帯部の点検など、工事内容も多岐に渡るため、外壁塗装は最低でも2週間はかかる工事です。
しかし、前回の外壁塗装から考えて、そろそろ再塗装が必要になると予測できれば、工事を行うためにあとどのくらい費用が必要か、工事を行える余裕がある時期はいつかなどの見通しが立てやすくなります。
計画通りのタイミングで外壁塗装を実施することによって、家計だけでなく、家族にも負担の少ない工事となるでしょう。
3.悪徳業者に騙されにくくなる
悪徳業者の手口として多いものが「今すぐに塗装をしないと危険ですよ!」と、不安を煽るケースです。
あるいは、「今塗装しておけば、安く工事が行えますよ」など、期間限定の金額を提示してくるという手口などもあります。
これらの手口に共通しているのが、施主を急がせて契約を結ばせようとしている点です。
しかし、塗装の頻度がわかっていれば、慌てて塗装を依頼する前に、いったん冷静になることができます。
もし、上記のような手口で訪問販売してくる業者がいて、不安になってしまっても、必ず、別の業者に相談し、正しい方法で丁寧に現地調査を行ってもらい、本当に塗装が必要かを確認するとよいでしょう。
参考:外壁塗装で失敗しない為の対策と悪徳業者の手口、見抜き方
■おわりに
外壁塗装の頻度は、約10~15年に1度と言われますが、建物の立地や前回使用した塗料によって変動するため、必ずしもこの頻度に収まるとは限りません。
しかし、建物に使われている建材や、外壁塗装用の塗料は、約10~15年前後で何らかの不具合が生じる傾向にあります。
この期間中に、外壁や屋根の点検だけでも1度済ませておくことで、外壁塗装の必要性を見極めることができ、正しい頻度で塗装リフォームを済ませられるでしょう。