外壁塗装が剥がれる原因と補修方法

家の外壁は、降り注ぐ紫外線や雨、風などに365日毎日さらされており、少しずつ経年劣化しています。

しかし、外壁に生じる劣化のうち、「剥がれ」に関しては、塗装を行った業者の施工不良などの「経年劣化以外の原因」で発生することが多いため、発生したときは様々な原因を考えなくてはなりません。

剥がれが一度始まった箇所を放置してしまうと、そこから雨水などが外壁内に浸水し、外壁の塗装をどんどん剥がし、剥がれている面積をさらに広げてしまいますので、早期に補修を施しましょう。

 

このページでは、外壁の剥がれ現象について、施工不良の例や、業者との対応方法、補修時に知っておくべき注意点などについて解説します。

■外壁の塗装が剥がれると危険な理由

外壁の塗装に生じる、代表的な劣化現象としては、

  • 塗膜の剥がれ
  • 塗膜の膨れ(ふくれ)
  • チョーキング現象(塗料の成分が劣化し、手で触ると粉がつく状態)
  • 表面のクラック(ひび割れ)
  • 藻・カビ・コケが生える
  • 錆がつく
  • 汚れがこびりつく

などがありますが、劣化は経年劣化によって必然的に生じるものもあれば、業者の施工不良が原因で起きてしまうものもあります。

特に、今回ご紹介する「剥がれ」は、「膨れ」と同じくらい施工不良で生じやすい劣化と言われるため、万が一発生したときは、その原因を慎重に見極めなくてはなりません。

1.新築でも美観が悪くなる

塗装が剥がれてしまっている外壁を見たら、大半の人は「外壁が剥がれてぼろぼろで、よっぽど築年数が古い家なんだな」と考えてしまうでしょう。

しかし、剥がれという劣化現象は、塗装が寿命を迎える前に起きてしまうケースも多く、新築からわずか数年経った家で起きる可能性もゼロではないため、せっかくの綺麗な外観が、塗料の劣化で台無しになってしまうのです。

2.塗料が外壁を保護できなくなる

外壁塗装の第一の目的は、塗装の内側にある外壁と、さらにその内部にある建物自体を守ることです。

そのため、塗装が剥がれてしまうと外壁が守られず、外壁材は、屋外の紫外線や雨水、強風や汚れで内部の防水シートまでどんどん劣化し、ひいては、家そのものにまでダメージが及んでしまいます。

このような状態で長い間放置されてしまった家は、しっかりメンテナンスが施された建物よりも早く、耐久性を失ってしまうでしょう。

■外壁・屋根塗装の剥がれの原因

塗装の剥がれという現象は、塗料が家の外壁にしっかりと密着できておらず、取れてしまった状態です。

この「しっかりと密着しなかった」という状態になる理由は、塗装業者が、塗装前の下地処理を怠ったり、誤った下塗り塗料を選んでしまったりといったように、何らかの必要な手順を省いたために起きる可能性が高いのです。

もちろん、業者の施工がしっかりとしていていても、強すぎる紫外線や雨風といった気候や立地条件によって、耐用年数よりも早く剥がれてしまうこともあります。

しかし、塗り替えから1~3年以内など、塗料の耐用年数よりも早く剥がれが起きてしまったときは、最後に塗装した業者の施工不良も、原因のひとつとして疑わなくてはなりません。

1.原因その1:下塗り材の選択ミス

外壁塗装で塗料を外壁に塗布するときは、基本的に、下塗り・中塗り・上塗りの三回の重ね塗りが行わわれます。

 

最初の下塗り作業では、下塗り専用塗料が使われます。

下塗り用の塗料は、美観や保護の役割というよりも、「外壁下地」と、その上に塗る「仕上げ用塗料」の密着力を高めるための、接着剤のような役割です。

次の中塗りと上塗り塗料では同じ塗料が使われることが多いため、中塗りではなく「上塗りを二回」と表現する業者もいます。

上塗り用塗料は、外壁を美しく見せるための「美観」の機能と、紫外線や雨風から外壁の劣化を防ぐための、防水保護の機能を持っています。

 

つまり、塗装作業の際に最初の下塗り材の選定を誤ると、次の中塗りと上塗り塗料が、外壁にくっつかなくなってしまうのです。

●下地材と外壁材には様々な種類がある

下塗り用塗料は下塗り材とも呼ばれ、シーラー、プライマー、フィラー、サーフェーサーといった様々な種類があり、下地の劣化具合などに応じて適切なものを選ぶ必要があります。

特に、下地の劣化が激しく、上から塗ったものを吸い込んでしまうような状態のときは、吸収性が高い種類を使用してしまうと、外壁に吸い込まれてしまいますので、後から塗った上塗り塗料まで吸い込まれないように、下地材を複数回重ねるなどして厚塗りしなくてはなりません。

 

そのほかにも、家の外壁材にはモルタル壁、金属系サイディング、樹脂系サイディング、コンクリートなど様々な材質があり、これらの種類に応じた下塗り材を選ばなくてはならず、誤った下塗り材を選ぶと、塗料が施工不良を起こしてしまいます。

例えば、クラックに耐性があるとされるフィラーや微弾性フィラーは、どちらも窯業系サイディングボードに塗ることはできません。

窯業系サイディングは、熱を溜め込みやすい素材ですので、弾性塗料で覆ってしまうと、サイディング面からの熱で塗料が膨れ上がってしまうのです。

●正しい下地材を選んでもらうためには

このように、下地の状態や材質をしっかり調べずに下地材を選択してしまうと、後から塗った塗料がうまく付かずに、塗料の剥がれの原因になってしまいます。

ところが、塗った直後の塗料は一見きれいに塗られているように見えてしまうため、雨風にある程度さらされ、施工完了後から数年経ったころに剥がれが発覚してしまうのです。

 

下塗り材の選定ミスを防ぐためには、施工する業者から渡された見積もりの中で、下塗り材の塗料名を確認し、今の下地に合ったものかどうかをご自身で調べる方法もひとつの手です。

あるいは、複数社に見積もりを依頼するのであれば、それぞれの業者さんに「下地材は何を使うのですか?」と質問してみると、なぜその下地材を選んだのか説明してくれますので、複数業者の回答内容を比較してみることもできます。

2.原因その2:下塗り材が適切な量、正しい方法で塗られていない

下塗り材に限らず、外壁塗装用の塗料は、すべて基準塗布量と適切な塗装方法が決められています。

そのうち基準塗布量に関しては、メーカーから仕入れた缶に対し、混ぜる水の量も非常に細かく決められています。

例えば、以下はエスケー化研の「水性ソフトサーフSG」という、サーフェーサーと呼ばれる下塗り材の配合比率です。

水との比率 所要量 塗回数 間隔時間
100:2~8 0.30~1.5kg/㎡ 1~2回 3時間以上
(23℃の場合)

この表によれば、塗料を100としたとき、2~8の水を入れて攪拌し、1㎡あたり0.3~1.5kgを使用し、塗り回数は下地に応じて1~2回まで、次の塗装までに3時間以上間隔を開けるとされています。

このように水との比率や所要量に幅が設けられているのは、現場の状況に応じて変わる塗り方に配慮されてのことですが、その状況を想定した、さらに詳しい塗装方法も以下のように定められています。

用途 塗装器具 所要量 塗回数 水との比率
薄く塗る場合 ウールローラー 0.30~0.6 1〜2 5〜8
マスチックローラー細目 0.5~0.8 1 5〜8
刷毛 0.30~0.8 1~2 5〜8
エアレススプレーガン 0.30~1.0 1 5〜8
リシンガン 0.5~1.0 1 5〜8
厚く塗る場合 マスチックローラー 0.8〜1.5 1〜2 2〜5

上記のように、どの道具を使って塗るかについても、量や塗回数、希釈率が定められている外壁塗装用の塗料は、ホームセンターで誰でも購入できる、DIY用のペンキとは全く異なる、経験者向けの専門部材ということがおわかりいただけるかと思います。

 

このような使用ルールに加えて、さらに施工現場の気温や湿度、天気などの環境条件も考慮しなければなりませんので、塗装の知識がない素人や、経験の少ない職人には、ここまで細かいルールに対応することは、ほとんど不可能です。

このような厳しいルールを守れない未熟な業者や、施工品質を無視する手抜き業者などに依頼してしまったときに、下塗り不足という施工不良が起きてしまうのです。

●手抜き業者の手抜きは作業全体に及ぶ

手抜き業者は往々にして、適当な目分量で塗料と水(またはシンナー)を混ぜる傾向にあります。

そのため、メーカーが定めた比率で塗料が混ざらず、丈夫な塗膜にならなかったり、塗った場所によってムラができたりして、施工後に剥がれてしまいます。

また、手抜き業者の手抜きは、下塗り材の取り扱いに留まらず、2回塗るべき上塗り材を1回しか塗らない、乾いていない塗料の上から重ね塗りをする、といった具合に、他の作業工程でも見受けられます。

そのほか、高圧洗浄後や露が降りて濡れた外壁に、そのまま塗料を塗ると、外壁表面の水分が塗膜内部に残ってしまい、水分が膨張して塗膜を押し上げる「フクレ」という劣化現象を引き起こし、次第に塗膜も剥がれてしまいます。

 

そのほか、塗料代をごまかそうとする悪徳業者や、元請け業者から十分な予算をもらえなかった下請け業者などは、水を必要以上に混ぜて、一つの缶でより多くの面積を塗られるように細工を行うことがあります。

ただし、この方法は後から残った缶を見ることでどれだけの面積を使ったか分かるので、防ぐことできますので、詳しくはこちらの記事もご参照ください。

3.原因その3:下地処理不足

塗料をしっかりと密着させるためには、正しい下塗り材を正しく使うことが重要というのは、これまでの解説でおわかりいただけたかと思います。

しかし、その下塗り材がきちんと外壁にくっつくためには、外壁材そのものも、塗料が馴染みやすい状態に整えておく必要があります。

仮に、グレードも価格も高いハイスペックな塗料を使っても、塗面の状態が悪いまま塗装してしまえば施工不良を起こしてしまい、わずか数年で塗り直しとなり、塗装の手間も塗料代も意味がなくなってしまいます。

 

このように、塗料が密着しやすいように下地を整える一連の作業を、「下地処理」と呼び、外壁塗装には欠かせない、重要な工程です。

 

下地処理には、

  • 高圧洗浄(または高圧水洗浄)
  • 補修作業(クラック、爆裂などの補修)
  • ケレン作業(サビや旧塗膜を削り落とす作業)

といった様々な工程があり、工程ごとに、適切な施工方法が決まっています。

(参考:補修作業について

●高圧洗浄

外壁は、建物の中でも常に汚れが着く部分です。

風に乗って運ばれ、外壁に付着したホコリや土、排気ガスのほか、日当たりが悪い箇所に繁殖しやすいカビや苔なども、外壁を黒ずんで老朽化したような見た目にしてしまう汚れです。

ホコリやカビ、苔が付着している壁の上からそのまま塗料を塗っても、汚れが付着している部分の外壁には塗料が密着できず、せっかく塗っても施工後すぐに剥がれてしまう可能性があります。

そのため、外壁を塗装するときは、施工面の汚れをしっかり除去しておくことが、塗装の耐用年数を伸ばすためにも必要不可欠なのです。

 

外壁塗装における高圧洗浄は、家庭用の小さな高圧洗浄機ではなく、5~15MPa=50~150kgf/㎠などの強力な水圧を持つ、業務用高圧洗浄機で行う必要があります。

塗装に限らず、建築業界では、洗浄不足にならないような強い圧力を発揮できる高圧洗浄機を用いることが重要と言われています。

高圧洗浄作業では、かなりの水圧で水が噴射されますので、水しぶきが周囲に飛び散らないように、建物の周りに建てた足場に養生シートをかけて行います。

まれに、「足場を設置しなくても安くで塗装できますよ」と宣伝する業者もいますが、足場がなければ、この高圧洗浄時の養生が行えません。

どのような方法で水の飛散を防ぐのか確認することももちろん大事ですが、無駄な事故を防ぐためにも、高所作業の安全性を優先して、足場を設置してくれる業者に依頼することをおすすめします。

 

また、手抜き業者の手抜きは、高圧洗浄作業にも及ぶことがあります。

例えば、非常に短時間で高圧洗浄作業を終えてしまい、汚れがしっかり落としていないときなどがあります。

建物の状況にもよりますが、一戸建ての家の場合、屋根も併せると、高圧洗浄作業だけで7~8時間かかりますので、1時間などあっという間に終わってしまった場合は、警戒しなくてはなりません。

さらに、洗浄作業後の乾燥不足も、塗料の剥がれの原因になります。

夏で気温が高い日や、晴天の日などは、洗浄後すぐに乾燥したように感じてしまいますが、高圧洗浄後に完全に乾燥するまでは、最低でも、丸1日は必要です。

もし、高圧洗浄から1日も経たずに、いきなり下塗り塗装を開始された場合は、手抜きの可能性も否定できませんので、施工業者の責任者に、乾燥を1日設けない理由をしっかり尋ねましょう。

参考:高圧洗浄で知らないと損な作業時間、圧力、単価、水道代の話

●クラックの補修

クラックと言われる外壁のひび割れも、塗装前には補修しておかなければなりません。

一般的な住宅の場合、建築方法により壁の種類には

  • モルタル壁(塗り壁)
  • サイディング壁
  • コンクリート壁
  • タイル壁

などがありますが、この中でも特に、モルタルやコンクリートの壁はクラックが発生しやすい種類になります。

 

新築から数10年ほど経過した外壁には、多かれ少なかれ、ひび割れの症状が見られる傾向にあります。

この外壁のクラックというものは、建物の構造設計者の設計ミスで起きているわけではなく、地盤の強度や地震の揺れなどで発生してしまうものが多いため、ある意味、経年劣化の症状と呼べなくもありません。

 

ひび割れを見てしまうと、「我が家が危険な状態になっているのでは!?」と、建物の所有者であれば誰しも心配になってしまいますが、大半は経年劣化による表面上の浅いひび割れですので、早急にリフォームをしなければなどと深刻に捉える必要はありません。

近隣の家のクラックや、トンネルやビルなどの丈夫なコンクリート造の公共建造物のひび割れがを見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。

このように、建物の耐久性に害を与えないような小さなクラックであれば、緊急性は高くありません。

 

しかし、放置してしまうと、ひび割れているところからだんだんと雨や汚れが入り込むようになり、それが原因で、外壁材まで劣化してしまいます。

特に、ひび割れから水が入り込むと、建物内部で結露が起きて湿気を帯びるようになり、室内のカビの原因にもなり、壁が本来持つ断熱・防水機能も衰えてしまうなど、様々な影響が出てくるため、家の耐久年数は劣るばかりです。

そのため、塗り替えをするときは、必ずひび割れの補修工事を済ませたうえで行うことが大事になってくるのです。

●ケレン作業

項目の冒頭で少し触れた通り、外壁の塗替えでは、下地調整の段階で、いかに塗面の状態を整えておくかが、重要なカギとなります。

その下地調整の中でも「ケレン作業」という工程は、とても重要な意味を持っています。

 

前述の、高圧洗浄では、壁に残っている古い既存塗膜や汚れ、錆びなどを水圧で取り除きますが、ケレン作業では、高圧洗浄でも取り除けなかった古い塗膜などを、専用のブラシやスポンジ、工具などでさらに丁寧に除去していきます。

ケレン作業は建物の劣化状態によってレベルが上下し、新築からあまり年数が経っていないような、状態のいい物件などではサビや古い塗膜の剥がれが見られないため、そこまで入念なケレン作業は要しません。

ただし、一ヵ所でも劣化箇所があれば、建物全体を確認しながら、ケレン作業で補修しておくことが望ましいでしょう。

参考:外壁塗装はケレン作業が命!ケレンの大切さや作業内容

●その他の下地補修

サイディングボード外壁などの目地に使われている、シーリング(コーキング)という充填剤は、外壁よりも劣化速度が速いため、下地補修と併せて補修が行われることがあります。

シーリング材は、年数が経つにつれ、弾性がなくなって痩せやひび割れなどの劣化が現れますので、打ち替えや打ち増しなどの方法で補修を行っておきます。

参考:目地のコーキング材補修は専門業者が存在するほど難しい作業

●下地補修は手抜きが行われやすい

下地調整は、塗装の中でも特に大事な工程であるにもかかわらず、建築業界では、手抜きが行われやすい点がいまだに問題点として指摘され続けています。

下地補修の手抜きを避けるためには、リフォーム工事を契約する前に、塗装業者や建築業者、リフォーム会社などを、業種に関係なく複数社比較検討することが望ましいでしょう。

通常の業者であれば、見積もりは無料で行ってもらえますので、作られた見積書の内容を、十分に比べてみましょう。

 

リフォーム方法や見積もりの書式は、各業者で若干異なりますので、最低でも、

  • 使用する塗料のメーカー名が記載されているか
  • 高圧洗浄や下地補修はきちんと見積もりの中に記載されているか
  • 保証内容について言及されているか

などだけでも確認しておきましょう。

 

また、業者のHPを見て、施工例から工程写真を確認する方法もおすすめです。

高圧洗浄やクラック補修などの下地調整だけでなく、

  • 下塗り・中塗り・上塗りの三度塗り
  • 付帯部塗装
  • 屋根塗装
  • 防水工事

など、さまざまな工程のようすが掲載されていれば、安心して頼める業者とわかりますので、検討時の重要なポイントとなります。

 

このように、複数社の見積もりは業者を比較する有効な方法となりますが、訪問販売系の業者には、別の注意が必要です。

突然訪ねてきて危険を煽って契約させようとする訪問販売系の会社は、事務所を構えていなかったり、虚偽の電話番号を教えたり、お金だけもらって工事をせずに消えてしまったりするような、詐欺行為をはたらく危険性もあります。

もちろん、実際に外壁塗装を行ってくれる訪問販売業者もありますが、その会社のスタッフが実際に施工するわけではなく、下請け業者や孫請け業者に、安い賃金で無理やり工事をさせているケースも多く、手抜きが横行する確率が非常に高くなってしまうのです。

4.原因その4:そもそも塗料が付きにくい箇所への塗装

外壁塗装用の塗料は、外壁に塗るために作られており、屋根用塗料は屋根用に作られています。

しかし、適切に施工しなければうまく外壁や屋根に密着できず、塗膜に浮きが生じ、塗膜剥離を起こしてしまいます。

 

ところが、塗料の性質に関わらず、正しく塗装してもはすぐに剥がれてしまうような、そもそも塗料が密着しにくい材質も存在します。

例えば、雨樋などに使われている「塩化ビニール」という素材は、つるつるな表面をしていて、そのまま塗装をしても剥がれやすくなってしまいます。

こういったつるつるな素材に塗装をするときは、上の写真のように、紙やすりなどで表面をあえて傷つける、目荒しという作業が行われます。

目荒らしすることによって素材の表面にわずかな凹凸ができ、素材と塗料が密着する面積が増え、よりしっかりと塗料が密着することができるようになります。

 

また、

  • 鉄部(ガルバリウム鋼板、金属系サイディングボード、カラートタン、亜鉛メッキ鋼板、手すりなど)
  • 木部(破風板、軒天、ウッドデッキなど)

などの材質も、基本的に塗料が付きにくい性質です。

仮に、家の外壁も屋根も金属系素材が使われていた場合は、建物全体に目荒しを行わなくてはなりませんので、複数の職人で何日もかけて行う必要がありますが、施工不良による剥がれを防ぐためには必要な作業と考えておきましょう。

■施工不良で剥がれが起きたとき知っておくこと

剥がれは様々な施工不良が原因で生じますが、剥がれを防ぐ方法だけでなく、剥がれが起きたときの対応方法や、トラブル解決法も知っておかなければなりません。

1.放っておくとどんどん進行する

剥がれというのは、見た目に非常に良くない印象を与える劣化ですが「ちょっと見た目が悪くなるだけならいいか」と放っておくのはもっと危険です。

剥がれは通常、一か所に留まらず、その範囲もとどんどん広がり、やがて下層の塗装までも剥がれるようになり、外壁・屋根の広範囲で発生するようになります。

剥がれた範囲が広くなれば、雨水が入り込みやすくなり、家を支える構造体や木部にまで水分が浸透し、天井や壁からの雨漏り、建物の内部結露、耐久性の低下や部材の腐食にも繋がるなど、どんどん悪い症状が連鎖して発生するようになってしまいます。

 

また、一か所で施工不良による剥がれが起きたときは、塗装をした業者が、別の箇所でも良くない施工を行った可能性も疑わなくてはなりません。

剥がれを一カ所見つけてしまった場合は、他の箇所も剥がれが無いかを確認しておきましょう。

参考:外壁塗装の必要性は?放っておくとどうなるかと追加工事費用

2.保証が効かない可能性がある

外壁の美観的にも保護能力的にも非常に良くない「剥がれ」は、一刻もなんとかしてほしいと誰しも思うものです。

ところがこの剥がれが、場合によっては外壁塗装業者から「保証の対象外」と言われてしまうケースもあるため注意が必要です。

●業者独自で行う自社保証について知ろう

外壁塗装における保証というのは、基本的に、その業者が独自に発行する「自社保証」のことを指します。

自社保証は、最低限のモラルや配慮はあれど、法律で「このレベルまで保証しなければならない」と決められているわけではなく、保証期間や内容をどのように設定するかは、業者に委ねられています。

さらに、それぞれの業者が独自に発行していますので、保証内容にはこだわらず、ただ単に契約を多く取りたいがために契約前の安心材料として利用している業者などもいます(参考:外壁塗装の保証について)。

そのため、「施工後○年間保証します」と標準保証期間がはっきり明記された保証書もあれば、「施工不備があったときに善処します」ぐらいの曖昧な内容になっていることもあるのです。

つまり、施工後すぐに塗装の剥がれが起きても、「うちの保証範囲外です」と、保証の対象外とみなされてしまうことも十分も起こりうるのです。

ひどいケースでは、明らかに業者の手抜き工事によるものでも対応してもらえないこともありますので、契約した後だけでなく、契約する前にも、保証内容についてしっかり確認しておくことが大事です。

 

自社保証の多くは、使った塗料に応じて保証期間を定める内容になっていますが、保証年数の設定は業者ごとに違います。

例えば、耐用年数とコストのバランスがよく、現在多くの塗装現場で使われているシリコン樹脂塗料ですが、一般的に耐用年数を迎えるとされる7~8年を保証の限界にする業者もあれば、10年間保証してくれる業者もあるなど、基準には違いがあります。

参考:外壁塗装で使うのはシリコン塗料ウレタン塗料どちらが良い?

●メーカー保証と自社保証の違い

塗料によっては、塗料メーカーが保証を行ってくれる、「メーカー保証」が利用できるものもあり、こちらは自社保証とは扱いが別になります。

業者によっては、メーカー保証と自社保証の両方をアフターサービスとして付けてくることもあります。

 

ただし、メーカー保証は通常、値段が高い一部の塗料のみでしか利用できませんので、ほとんどの外壁塗装では、業者が発行する自社保証がメインになると考えておきましょう。

3.施工不良による剥がれは2~3年程度で起きる

施工不良による外壁塗装の剥がれは、通常、塗装後すぐに起きるケースよりも、2~3年経った頃に突然剥がれてくるケースが多いです。

なぜかというと、塗装直後であれば、施工が不十分な塗膜でも、塗料の力で外壁になんとかくっついて、剥がれずにいられるためです。

これだけ聞くと、「2~3年猶予があるのなら塗装後すぐに慌てることはない」、と考えてしまいますが、塗装というものは、きちんと施工すれば10~15年程度は美観を保ちますので、それに比べれば非常に早く不具合が出ると言わざると得ません。

 

また、万が一悪徳業者に施工を依頼していて、2~3年後に剥がれが起きても、既にその会社は施工エリア内から撤退している可能性が高く、姿をくらませて連絡が取れない状態になっている可能性もあります。

さらに厄介なのが、2~3年後に剥がれた箇所を見ても、それが施工不良なのかどうかは、素人には見分けることができないのです。

塗装から数年後に塗膜が剥がれてしまったときは、施工した業者に相談することはもちろん、別の外壁塗装業者や、設計事務所の建築士などといった、第三の専門家にも相談し、意見を得ることをおすすめします。

4.業者が補修に対応してくれない場合は消費者センター

もし、業者と連絡が取れなくなってしまったり、悪徳業者や手抜き業者などから補修を断られたりしたときは、消費者センターや、紛争処理支援センターなどの、無料相談を利用してみましょう。(参考:外壁塗装の相談はどこにするべき?)。

 

外壁塗装において、工事のやり直しにまつわるトラブル事例で主に争点となるのは、業者負担で無償で工事を行うべきか、施主が追加料金を支払うべきか、という点です。

塗りムラなどは、施工不良かどうかが判断しにくいため、業者側の不備を指摘するのが難しく、無償のやり直しが断られてしまうケースもありますが、剥がれは、業者の不備を証明しやすい劣化です。

剥がれが起きたときは、該当箇所を必ず写真に撮っておき、いつ施工してもらい、いつ頃から剥がれ始めたのかといった具体的な情報を詳細に記録しておき、その時の業者の対応もすべて記録した状態で、相談窓口やセンターに対応を依頼しましょう。

 

ただし、このとき注意しておかなければならないのが、一度、施工不良をしてしまった業者に再度やり直しを命じたとしても、良い塗装をしてくれるとは限らないということです。

気まずい空気の中、再び2週間の工事期間を味わってまで、不安な施工を頼むくらいであれば、いっそのこと、返金等を依頼し、別の信頼できる業者にやり直しを頼むのも良いでしょう。

悪徳業者などは、契約額の一部でも返金に応じない可能性もありますが、返金の手続きについても、上記のセンターなどで詳しく相談してみてください。

■補修は下地処理を徹底的に行う業者に頼むこと

外壁がきれいなうちに塗装を行えば、下地処理や補修などの手間も減り、人件費、作業費、部材費なども抑えられ、総工事費用は安くなります。

一方、劣化を放置してぼろぼろになった古い外壁に塗装を行えば、割れの補修や防水工事などの追加工事が発生する分、工事費用は高くなるでしょう(参考:外壁塗装を放っておくとどうなる)。

つまり、剥がれが起きている外壁を塗装するときは、施工不良が起きた箇所すべてに手を加えなくてはなりませんので、そのために、多くの手間と作業を必要とするのです。

しかし、手抜き業者によって生じてしまった施工不良の補修を、また手抜き業者に頼んでしまうと、劣化の解決にならず、再びやり直しをしなくてはなりません。

そのため、剥がれの補修といえど、塗り替えと同じくらい、業者選びは慎重に行わなくてはならないのです。

施工不良によって剥がれが起きてしまったときこそ、きちんとしたした業者を、より慎重に選ぶようにしましょう(外壁塗装駆け込み寺でも優良業者さがしのお手伝いを行っています)。

1.信頼できる塗装専門業者を見つけよう

一般的に、外壁塗装を専門で行っている業者は、実際に工事を行うスタッフが会社に在籍していることが多く、外注の下請け職人を使わない傾向にあります。

そのため、信頼できない外注業者を現場に派遣したり、工事内容を元請け業者が理解していなかったりするトラブルも少なく、最初の現地調査からアフターケアまで、同じ担当者が一貫してサポートしてくれます。

 

また、見積前の外壁診断なども無料で行ってくれますので、検査費用をかけることなく家の劣化状態を調べることができ、塗装すべきかどうかの判断材料にすることができるでしょう。

2.リフォーム瑕疵保険もしっかり検討しよう

外壁塗装を含むリフォーム工事は、電化製品などと違って、保証内容があいまいとよく言われます。

また、先ほども少しご紹介したように、リフォーム会社が発行する自社保証は、業者ごとに保証期間や保証範囲にばらつきがあるという問題もあります。

特に外壁工事は、悪徳業者が手抜きを行いやすい箇所がいくつも隠れているため、そのような業者かどうかは契約前に調べておきたいものです。

そこで、契約前の判断材料として注目しておきたいのが、「リフォーム瑕疵保険」です。

 

「瑕疵(かし)」とは、工事後に備わっているべき性能が得られていない状態を表す言葉で、「欠陥」と言い換えることもできます。

例えば、

  • 雨樋の補修を頼んだのに室内壁側の雨漏りが治っていない
  • 塗装して数か月後に剥がれが起きた
  • 修理を頼んだ箇所にやり残しがあることに気づいた

などの不具合が、リフォームではよく発生します。

しかし先ほども述べたように、業者によって保証の期間や範囲はあいまいなため、「保証書に書いていない」と突っぱねられてしまえば、対応されない恐れがあります。

あるいは、業者が倒産してしまい、補修する術すらなくなってしまうケースもあるでしょう。

このようなときに役立つのが、リフォーム瑕疵保険です。

●リフォーム瑕疵保険は優良業者の証

リフォーム瑕疵保険に加入するためには、工事を契約する建築業者が、リフォーム瑕疵保険の事業者登録を済ませていなくてはなりません。

言い換えると、どんなに施主が希望しても、施工業者が事業者登録をしていなければ、瑕疵保険に加入することはできませんので、契約前に確認しておきましょう。

 

この、瑕疵保険の事業者登録をする際は、取り扱い業者としての基準を満たしているかどうかが審査され、審査後は年会費も払わなくてはならず、常に登録内容を更新し続けなくてはならなりません。

つまり、リフォーム瑕疵保険が利用できる業者は、厳しい審査をクリアした信頼できる優良業者と考えることができるのです。

●リフォーム瑕疵保険を利用するための流れ

まずは、リフォーム瑕疵保険の事業者登録をしている業者が、現場で施工を行います。

すると、工事中と施工完了後に、瑕疵保険の検査担当者として、建築士などが現場まで完了チェックに訪れます。

プロの建築士が、第三者の立場から工事品質を厳しくチェックしてくれますので、施工業者の手抜き工事や施工ミスなどがあれば、この時点ですぐに見抜いてもらうことができます。

また、万が一チェック段階で不具合が見つかっても、検査をクリアするために、本来持つ性能まで補修しなければなりませんので、瑕疵が残ったまま工事が終わってしまう心配もありません。

このように、瑕疵保険に加入する際、塗装業者は、第三者による検査を意識して施工に努めなくてはなりませんので、手抜き工事の防止効果も期待できます。

 

もし、そのような厳しい審査を通過したにも関わらず、施工後に瑕疵が見つかってしまったときは、瑕疵保険業者から施工業者に補修費用が支払われ、施主は費用を負担することなく、無償で補修してもらうことができます。

さらに、塗装をした業者が万が一倒産してしまっていたときは、施主に補修費用が支払われる仕組みになっていますので、業者の自社保証に関係なく、万全の補修体制を備えることができるでしょう。

参考:外壁塗装の保証は業者や団体で内容が全く異なるので注意!

■おわりに

塗膜の剥がれは一見、経年劣化で生じているように思えますが、実は施工不良で起きやすい劣化としても知られており、ご自宅の外壁で施工不良での剥がれが発生する確率はゼロではありません。

高い専門スキルを必要とする外壁塗装では、下地材の選定ミスや手抜きによって、いともカンタンに施工不良が起きてしまいます。

未熟な業者はもちろんのこと、わざと手抜きを働くような悪質な業者に依頼してしまわないように、リフォーム瑕疵保険などの保証体制が万全な、優良な塗装業者にリフォームを依頼しましょう。

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