外壁や屋根にびっしりと生えたカビは、見た目にも衛生的にも気持ちのよいものではありません。
さらに、カビが生えやすい外壁をメンテナンスせず放置すると、外壁の耐久性が落ち、アレルギーなどの病気の原因にもなってしまいます。
この記事では、カビが生えてしまう原因や、家ごとのカビの対策方法について解説します。
目次
■カビの基礎知識と外壁に生える原因
外壁に発生するカビの除去・予防を効果的にするためにも、まずは、カビとは一体どういうものなのか、なぜ外壁に生えてしまうのかについて知っておきましょう。
1.カビは湿気を好む菌類
カビは菌類の仲間で、湿気を好み、胞子を作って繁殖する微生物です。
一定の湿度と温度があれば、外壁だけでなく、室内の壁や床、衣類や食べ物などのあらゆる物に発生し、コロニーと呼ばれる集まりを形成しながら、どんどん増えていきます。
身の回りの生活用品や食品にカビが発生してしまうと、不快な気持ちになってしまうのは言うまでもありません。
しかしカビの恐ろしい点は、その存在が、人や建物に悪影響を及ぼすという点です。
●カビはアレルギーの原因物質
カビの胞子が含まれる空気を継続して吸い込み続けると、アレルギーを発症する恐れがあります。
アレルギーの症状は主に、皮膚のかゆみや、せきや鼻炎、肺の疾患などがありますが、人によって症状の種類や程度は異なります。
それまでカビに触れても何ともなかった人が、急に、カビに触れると身体の違和感を覚えるようになるケースもあれば、元々疾患をお持ちだった方が重症化することもあるでしょう。
●大量に繁殖したカビが家の美観を損ねる
カビは建物の築年数に関わらず、湿度や温度、カビの栄養となる成分などが揃えば、カンタンに繁殖します。
外壁や屋根の至る所にカビが生えた建物を見ると、どんなに建てて間もない住宅でも、一気に老朽化した見た目になってしまうでしょう。
また、カビ菌が増殖した場所は、「菌糸」と呼ばれるカビの根っこのようなものが内部まで伸びています。
そのため、表面の胞子だけを除去しても、根本の菌糸を除去しなければ再び繁殖してしまうため、カンタンな水洗いでは完全に除去できない点にも注意が必要です。
2.外壁のカビと他の汚れの違い
外壁の汚れには、カビ以外にも、コケや土埃など様々なものがありますが、これらは、見た目にはあまり違いがないように感じてしまいます。
しかし、どの汚れも、種類ごとに広がり方や繁殖方法が違いますので、除去や予防の際は、異なるアプローチを用意しなくてはなりません。
ご自宅の外壁や屋根に生じている汚れが一体何なのか、見分け方のコツを押さえておきましょう。
●コケとの見分け方
コケは藻類の仲間で、植物の一種です。
カビのような緑色をしており、カビと同様に湿気や水分を好みますが、コケは植物ですので、光合成を行います。
そのため、カビなどの菌類と違って、日当たりが良い場所でも水分さえあれば繁殖します。
もし、緑色に汚れた外壁の日当たりが比較的良好であれば、カビではなくコケの可能性がありますので、防カビ材ではなく、防藻効果を持つ薬剤を選ぶ必要があります。
●土やホコリなどの汚れとの見分け方
外壁に、大気中のチリやホコリ、排気ガス、土などが付着し、蓄積されていくと、表面がくすんで黒ずんだ見た目になります。
これらの汚れは、生物であるカビやコケと違って根を張ることはありませんので、よほど油分や潮風が多い立地でない限り、業務用の高圧洗浄機で除去してしまえば、汚れていた箇所から再び蘇ることはありません。
しかし、汚れがあまりにも蓄積されていると、その箇所に水分が溜まりやすくなり、カビやコケを誘発する恐れがあるため油断はできません。
■カビが発生しやすい家の特徴
お住まいの構造や立地次第では、他の建物よりカビが繁殖しやすくなることがあります。
築浅の家でカビが発生してしまうのは、ほとんどの場合、カビが発生しやすい条件が複数揃ってしまっているためです。
カビの予防や除去を徹底するためにも、どのような箇所にカビが繁殖するか知っておきましょう。
1.カビが生える構造的な条件
カビは湿気を好みますので、当然、常に一定量の湿気が含まれる場所に集まります。
そのため、建物の構造自体が湿気を集めやすくしてしまっている場合は、注意が必要です。
●外壁材に凹凸が多い
表面に凹凸が多い外壁材は、模様や隆起の隙間に雨水が溜まりやすくなります。
すると、その隙間に溜まった水分を求めてカビ菌が集まりますので、今度は、カビの胞子も隙間に溜まることになり、より一層繁殖を手助けしてしまうことになります。
凹凸が多い外壁材の例としては、
- 石材風やストライプなどの模様があしらわれた窯業系サイディング材
- 細かい隆起を持つスタッコ・リシンなどの吹き付け材で仕上げられているモルタル壁
などがあります。
●外壁に結露が発生しやすい状態になっている
室内と屋外の温度差で外壁の表面に結露が生じることがありますが、この結露も、カビやコケなどを寄せ付けてしまいます。
外壁内部の空気の通り道が、手違いで塞がれていたり、そもそも通り道が設けられていなかったりする建物では、外壁の表面に結露が生じやすくなります。
このように、外壁そのものに問題があるケースでは、塗装を何度やり直してもカビが発生してしまいますので、外壁材の張替えリフォームも検討するとよいでしょう。
2.カビが生える立地的な条件
暗く日当たりが悪い位置にある建物は、カビにとって絶好の繁殖地です。
建物を建ててしまった後では、立地上の問題は変えようがありませんので、カビや湿気に対抗するためのリフォームが必要になります。
●日当たりが悪く湿気が多い立地
北側の外壁や、隣の建物に日光を遮られてしまっている外壁は、湿気が留まりやすいためカビが繁殖しやすくなります。
特に、外壁のすぐ目の前に建物などがあって風通しが悪いと、雨や湿気が逃げにくくなり、ますますカビをおびき寄せてしまうでしょう。
●植物が周りに沢山ある家
庭木や、建物の周りに生えている植物にも、カビの菌が付着していることがあります。
植物に付着しているカビの胞子は、風に乗って外壁や屋根まで飛ばされてきますので、植木や雑草が周りに多い建物は、カビが生えやすくなります。
■外壁にカビを繁殖させないためには
カビが生えにくい丈夫な外壁を手に入れるためには、カビの徹底的な除去と、再発を防ぐためのアプローチが必要です。
1.外壁のカビを徹底的に除去する
外壁や屋根に付着しているカビは、塗装業者に頼んで除去してもらうことができます。
業務用の高圧洗浄機で、外壁・屋根表面を水洗いすることで、ある程度のカビは流れ落ちていきます。
この高圧洗浄作業は、通常の塗り替えリフォームでも必ず行われる工程です。
そのため、外壁塗装が色あせていたり、チョーキング(外壁に触れると粉が付く現象)などが起きるほど劣化していたりするときは、カビ除去も含めた塗装リフォームを済ませておくとよいでしょう。
●バイオ洗浄でカビを殺菌する
カビの菌糸が、外壁内部や塗膜まで達している状態で高圧洗浄をしても、目に見える部分の汚れしか落とせず、すぐにカビが再発してしまいます。
このようなしつこいカビの除去は、薬剤を使ったバイオ殺菌洗浄が効果的です。
殺菌効果を持つ薬剤が、カビの菌糸にダメージを与えますので、カビの再発防止に大きな効果を発揮します。
バイオ洗浄は、通常の高圧洗浄よりも㎡あたり約200~300円費用が高くなりますが、何度も発生するカビにお悩みであればこちらを選んだ方がよいでしょう。
なお、バイオ洗浄の薬剤は外壁まわりの植物にもダメージを与えてしまいます。
そのため、使用する際は、ご自宅の敷地内だけでなく、隣近所の植木もビニールシートなどで養生する必要があります。
●ご自身でカビを除去する場合は細心の注意を
発生して間もないカビであれば、やわらかいスポンジを使った水洗いで落とすことができます。
このとき、カビが皮膚に付着したり体内に入ったりしないように、目を保護するためのメガネやマスク、ゴム手袋を装着しておきましょう。
また、金属のタワシやスチールスポンジで力を入れてゴシゴシ磨いたり、相性の悪い市販の洗剤を選んだりすると、外壁材や塗装を傷つけてしまう恐れがありますので絶対に使ってはいけません。
さらに、万が一、高所の清掃中に転落したり、カビ菌を含む水が目に入ったりすれば、怪我や病気など重大な事故にも繋がりかねません。
もし、清掃方法がわからないときは、素人判断で行動を起こす前に、外壁塗装専門業者に相談することをおすすめします。
2.外壁のカビを予防する
定期的な水洗いや外壁の点検がカビ予防には最も効果的です。
しかし、カビが発生しやすい家の場合、カビのために何度もクリーニングを行うと家計の負担にもなってしまいます。
カビが何度も再発するような家では、防カビ効果を持つ塗料で、外壁を保護しておきましょう。
ただし、塗装する前に、外壁表面のカビをしっかり殺菌しておかなければ、塗装の保護効果が薄れてしまいます。
カビの除去と予防目的で塗装を行うときは、塗装前に、高圧洗浄から下地調整まできちんと工事を行ってくれる業者を選びましょう。
●カビ予防には塗料の防カビ効果を重視すること
基本的に、日本ペイントやエスケー化研など、大手メーカーの塗料であれば、一定の防カビ機能は備わっています。
また、機能性塗料の一種・光触媒塗料などは、紫外線に反応して外壁表面のカビなどの汚れを分解しますので、塗装しておくと、雨水で汚れが流れ落ちるセルフクリーニング機能を外壁が持つようになります。
しかし、カビが他の建物よりも生えやすいような場合は、防カビに特化した塗料を選ぶ必要があるでしょう。
例えば、塗料メーカー・アステックペイントでは、添加剤タイプの防カビ材が販売されています。
こちらの防カビ材は、アステックペイントの他の仕上げ塗料に混ぜて使うもので、一般の塗料に防カビ機能を付与することができるものです。
建築物に発生しやすい、57種類のカビや菌類を含め、合計703種類の菌を防ぐ効果を持つため、標準的な防カビ性能の塗料よりもカビの発生を抑えることができます。
また、遮熱機能を持つ塗料や、汚れを付着させにくくする低汚染性塗料など、別の効果を持つ塗料と混ぜて使用できるため、防カビ以外の目的で塗装を考えている方にもおすすめの塗料です。
上記の他にも、様々な防カビ塗料が各メーカーから販売されていますが、外壁の劣化はカビ以外にも沢山の症状があります。
必ず、家の状態を業者に調査してもらい、最も適した効果を持つ塗料を選んでもらいましょう。
■おわりに
外壁のカビはすぐに建物に悪影響を及ぼすものではありませんが、いつまでも除去せず放置していると、外壁の深部まで根を張ってしまい、きれいに除去できなくなってしまいます。
除去方法やカビの深刻度が判断できないときは、塗装業者に連絡して、適切な道具と方法で外壁のクリーニングを行ってもらいましょう。
その際、カビ以外のご自宅の劣化症状もしっかり調べてもらい、ご自宅にとってベストな塗装プランを考えてもらうことも大切です。