光触媒塗料は最も価格相場が高い塗料です。なぜこんなに高いのか理由を知らず、「高い塗料なら大丈夫だろう」と安易に選んでしまうと効果がない外壁塗装になってしまうかもしれません。
光触媒塗料の塗装費用相場だけでなく、光触媒のはたらきや、塗装業界における光触媒塗料の立ち位置などについて知っておきましょう。
目次
■光触媒塗料の特徴
光触媒塗料の費用相場を見る前に、まず光触媒塗料がどういうものなのか知っておきましょう。
光触媒塗料の特徴を調べると、「光触媒塗料で塗装すると外壁が汚れにくくなりますよ」「セルフクリーニング機能を持つ外壁になりますよ」という説明を見かけることがあります。
しかしそれだけ言われても塗装に詳しくない方は、なぜ汚れにくくなるのか、またはセルフクリーニング機能の意味をすぐに理解できません。
あるいは、光触媒塗料という名前に馴染みがない方もいるでしょう。
なぜ光触媒塗料で塗装すると汚れにくくなるのか、そもそも光触媒塗料とは一体何なのか、まずは理解しておく必要があります。
1.光触媒塗料と他の塗料の違い
外壁塗装で使われる塗料には、光触媒塗料以外にも様々な種類があります。
塗料はまずグレードによって5段階に分けることができます。
グレードが高いものほど耐用年数は長くなります。
グレード | 耐用年数 |
アクリル塗料 | 5~8年 |
ウレタン塗料 | 8~10年 |
シリコン塗料 | 10~15年 |
ラジカル塗料 | 12~16年 |
フッ素塗料 | 15~20年 |
さらに、施工方法の違いによって以下のような種類に分かれています。
- 水性塗料・溶剤型塗料(油性塗料)・弱溶剤塗料
- 1液型・2液型
そして塗料には「機能性塗料」と呼ばれる、特定の機能を備えた種類があります。
今回ご紹介する光触媒塗料は、機能性塗料の一種です。
機能性塗料の主な種類と特徴は以下のようになります。
機能性塗料の種類 | 耐用年数と特徴 |
光触媒塗料 | 耐用年数:18~22年
光に反応して外壁表面の汚れを分解する |
断熱塗料 | 耐用年数:15~18年
熱の移動を抑制(断熱)し、冬暖かく夏涼しい家を作る |
遮熱塗料 | 耐用年数:15~18年
屋外からの日射熱をカット(遮熱)し、夏の室温上昇を抑制する |
弾性塗料 | 耐用年数:8~20年
伸縮性を持つ塗料で、外壁にひび割れが起きそうになると塗料が伸びて割れを塞ぎ、割れた場合は伸びた塗料が割れ目をカバーする。 ※サイディングボードには使用できない |
機能性塗料の中にもアクリルやシリコン、フッ素などのグレードが存在します。
例えば弾性塗料なら、ウレタンの弾性塗料よりもグレードが高いシリコンの弾性塗料の方が耐用年数は長くなります。
グレードの違いや機能性の違い、どちらを見ても光触媒塗料は最も耐用年数が長い塗料です。
2.光触媒機能のしくみ
株式会社ニュートラルホームページより引用
紫外線に反応して排気ガスなどの空気中の汚れを分解するのが光触媒です。
光触媒機能がはたらくと、汚れが外壁にこびりつかず半分浮いたような状態になります。
そして光触媒塗料は「親水性(しんすいせい)」も兼ね備えています。
親水性とは雨水とくっ付きやすい性質のことです。
親水性が高い塗料ほど雨が降ると濡れやすくなるため、光触媒で分解されて浮いていた汚れは雨で洗い流されるようになります。
つまり光触媒塗料によって外壁が汚れにくくなるのは、
- 光触媒の力…汚れを分解し外壁に付着させない
- 親水性の力…浮いた汚れを雨で流れ落ちやすくする
という二つのはたらきによるものなのです。
まれに光触媒塗料の特徴を「汚れを取り除く力がある」と紹介している業者もいますが、厳密にはそうではありませんので、しくみを理解しておきましょう。
※光触媒塗料で塗装するときの注意点については「4.立地によっては光触媒機能が働かない」の項目で詳しく解説します
■坪数別・塗装費用相場
以下は光触媒塗料で塗装したときの、坪数別の施工価格相場です。
※足場代、高圧洗浄代、下地調整代、養生代を含む塗装のみの価格です。
※屋根塗装の価格は含みません。
坪数 | 光触媒塗料の施工価格相場 |
~10坪 | ~43万 |
11~20坪 | 47.3万~86万 |
21~30坪 | 90.3~129万 |
31~40坪 | 133.3~172万 |
41~50坪 | 176.3~215万 |
51~60坪 | 219.3~258万 |
61~70坪 | 262.3~301万 |
71~80坪 | 305.3~344万 |
81~90坪 | 348.3~387万 |
91~100坪 | 391.3~430万 |
101~110坪 | 434.3~473万 |
111~120坪 | 477.3~516万 |
121~130坪 | 520.3~559万 |
131~140坪 | 563.3~602万 |
141~150坪 | 606.3~645万 |
151坪~ | 649.3万~ |
■光触媒塗料で見積もりを取るときのポイント
最も耐用年数が長い光触媒塗料は、「光触媒塗料なら絶対に安心です」などと言って近づいてくる業者も多いです。
しかし、光触媒塗料を選んだからといって、外壁塗装が成功する保証はありません。
光触媒塗料にも注意点はあります。
光触媒塗料を選ぶときは、以下のポイントに注意しておきましょう。
1.屋根に使用できるタイプが登場していない
屋根は太陽光や雨水を外壁よりもダイレクトに受けていますので、一般的に屋根の方が外壁よりも劣化速度は速いです。
しかし、屋根だけ先に塗装してしまうと、後で絵外壁を塗装する時に再び足場代が発生してしまいます。
戸建て住宅一棟あたりの足場設置費用の相場は約10~20万円ですので、何度も発生させるのは避けたい所です。
よって、戸建て住宅の塗装では、外壁と屋根の耐用年数が揃うように、劣化しやすい屋根は外壁よりも耐用年数が長い塗料が選ばれることがあります。
しかし光触媒塗料は屋根に塗装できるタイプが現時点で販売されていません。
つまり、外壁に光触媒塗料を塗ってしまうと、その耐用年数を超える屋根用塗料の選択肢がなくなってしまいます。
外壁を光触媒塗料で塗装するときは、耐候性が高いフッ素塗料や太陽熱に強い断熱・遮熱塗料など、比較的耐久性が高い種類で屋根を塗装しておかなければなりません。
2.光触媒塗料は現在大手メーカーから販売されていない
塗料の大手メーカーとして知られているのは、日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研です。
現段階で、この大手三社は光触媒塗料を販売していません。
光触媒塗料は、以前は大手建材メーカーのTOTOが開発して業界内の地位を確立していましたが、2010年代に生産終了となってしまいました。
光触媒塗料を販売しているのは、
- 日本特殊塗料
- オプティマス
- ピアレックス
- ニュートラル
- SICコーティングス
などです。
決して、これらのメーカーの光触媒塗料を使ってはいけないわけではありませんが、大手メーカーの塗料には大きなメリットがあるのです。
●大手メーカーの塗料はなぜ安全なのか
大手メーカーの塗料を使うメリットは「情報が公表されている」という点に他なりません。
情報が一般に公表されていれば、塗装業者からもらった見積もりの内容を独自に調査することが可能です。
例えば、塗装業者からもらった見積もりに大手メーカー日本ペイントのラジカル塗料『パーフェクトトップ』と記載されていたとします。
インターネットの検索ブラウザで「日本ペイント パーフェクトトップ」と検索すれば、日本ペイントの商品紹介ページがすぐに見つかるでしょう。
そこには、塗料の特徴や使い方、使用できる外壁の種類だけでなく、設計価格も記載されています。
『パーフェクトトップ』を窯業系サイディングボードに使うのであれば、1㎡あたり2,930円という数字が書かれていますので、業者からもらった見積もりの妥当性をチェックすることができます。
※ただし、設計価格はメーカーが提示している目安の金額ですので、施工エリアや建物の状態によってはその通りにならないこともあります。
もし大手メーカーの塗料なら、メーカー名、または塗料名のどちらかだけで検索しても、ほぼ間違いなくメーカーホームページが検索結果に表示されます。
しかしホームページを持たない業者や、光触媒塗料を販売して日が浅い業者などは塗料情報があまり出回っておらず、見積もりの価格や効果を見つけにくいでしょう。
●見積もりには「商品名」と「メーカー名」を記載してもらう
もし光触媒塗料で塗装する場合は、業者に塗料の「商品名」と「製造しているメーカー名」を必ず教えてもらいましょう。
ずさんな見積もりには塗料の詳細まで書かれていないことがあります。
例えば、「光触媒塗料一式〇〇円」のような一式見積もりと言われるものなどがそうです。
大手メーカーの商品ではなかったとしても、商品名を検索すれば何かしらの情報は出てきますし、何も知らないまま業者任せで工事を始めるよりも圧倒的に安全です。
光触媒塗料に限らず、塗料名を調べるという癖は絶対に身につけておくことをおすすめします。
3.施工価格が非常に高い
光触媒塗料は最も耐用年数が長いですが、価格も塗料の中で最も高いものになります。
現在、戸建て住宅の外壁塗装でよく使われているのはシリコン系塗料です。
40坪の戸建て住宅なら、シリコン塗料の施工価格は80~100万円程度におさまります。
状態の良い建物であれば100万円を超えずに施工することも可能です。
一方、光触媒塗料で40坪の戸建て住宅を塗装したときの相場は130~170万円になります。
もし質の悪い塗料や施工品質に問題のある業者を選んでしまうと、高額な費用をかけて行った塗料が無駄になってしまうかもしれません。
業者の施工品質が塗料の効果を左右するのは光触媒塗料に限ったことではありませんが、価格が高い光触媒塗料は失敗したときのダメージがより大きくなります。
「光触媒塗料なら家が汚れにくくなりますよ」
「失敗したくなければ光触媒塗料がおすすめですよ」
という施工店の言葉を鵜呑みにせず、塗料の効果に対して価格が見合うかどうか納得したうえで選びましょう。
4.立地によっては光触媒機能が働かない
光触媒塗料は、紫外線に反応することで汚れを分解します。
言い換えれば、光が当たらない場所では効果が発揮されません。
例えば、
- 隣の建物との距離が近い壁
- 日照時間が短い北側の壁
などです。
せっかく高額な費用をかけて光触媒塗料で塗装しても、肝心の光触媒機能が発揮されなければ意味がありません。
また、隣の建物との距離が近い壁は雨も当たりにくい恐れがあります。
雨が当たらないと汚れも洗い流されませんので、これでは光触媒塗料の効果が薄れてしまいます。
ご自宅の日当たり具合を観察し、日中の日当たり状況を写真に記録して、業者との打ち合わせ時に提出するとよいでしょう。
■おわりに
光触媒塗料は汚れにくい外壁を作るという非常に優れた性能を持っていますが、価格もその分高額なので失敗は許されません。
ただ性能がいいという理由だけで選ぶと、高い費用をかけても思った効果が得られず後悔する恐れがあります。
光触媒塗料のしくみを理解したうえで、納得できる商品と施工業者を選ぶようにしましょう。