シリコン塗料は現在、外壁塗装で最も選ばれている塗料です。人気の塗料なので取り扱っているメーカーや業者も多く、選択肢の多さに迷ってしまいますが、人気というだけで塗料を選んでしまうのは禁物です。
ご自宅の塗装に選ぶべきか、または選ぶときに注意すべきことは何なのか、シリコン塗料の費用相場も踏まえて理解しておきましょう。
目次
■シリコン塗料の特徴
シリコン塗料には、人気と言われるだけの数々の優れた特徴があります。
1.最も選ばれている人気の塗料
現在、外壁塗装で使われる塗料には5段階のグレードが存在します。
耐用年数の順に並べると以下のようになります。
塗料の種類 | 耐用年数 |
アクリル塗料 | 5~8年 |
ウレタン塗料 | 8~10年 |
シリコン塗料 | 10~15年 |
ラジカル塗料 | 12~18年 |
フッ素塗料 | 15~20年 |
こちらは施工価格順に並べたものです。
塗料の種類 | ㎡あたりの施工価格相場 |
アクリル塗料 | 1,500~1,800円/㎡ |
ウレタン塗料 | 1,800~2,200円/㎡ |
シリコン塗料 | 2,500~3,200円/㎡ |
ラジカル塗料 | 2,800~3,800円/㎡ |
フッ素塗料 | 3,500~4,500円/㎡ |
シリコン塗料は5段階のグレードの中間に位置しますので、耐久性・価格ともに最もバランスが取れています。
例えば、シリコン塗料よりも価格が安いウレタン系塗料やアクリル系塗料は、10年以内に劣化してしまい塗替えが必要になってしまうためコストパフォーマンスに優れているとは言えません。
一方、シリコン塗料の上位に位置するラジカル塗料やフッ素塗料は、耐久性はシリコン塗料を上回りますが、施工価格が高くなるため予算オーバーしやすくなります。
40坪以上の塗装面積が多い建物では、一回あたりの施工費用が150万円を超えても不思議ではありません。
いくら建物を保護するためとはいえ、塗装工事の費用で生活が圧迫されるのは避けたい所です。
このような事情を考えると、シリコン塗料は戸建て住宅の外壁塗装で最も選びやすい塗料と言えるでしょう。
2.耐候性が高い
耐候性とは、紫外線や雨、温度変化といった屋外で受けるダメージに対抗する力のことです。
シリコン塗料はウレタン塗料以上の耐候性を持つため、耐久性が10年以上長持ちします。
ウレタン塗料以下の塗料は耐候性が低いため、10年以下で色あせやチョーキングが起きてしまいます。
チョーキングとは、塗料が紫外線のダメージによって結合力を失い、成分の顔料が粉になって外壁表面に付着する現象のことです。
チョーキング現象が起きている塗料は保護効果を失っており、いずれ外壁そのものに紫外線のダメージが及んでしまいますので、できるだけ早めに塗り替えを行わなければなりません。
3.大手メーカー製の商品が選べる
塗料メーカーには大手3大メーカーがあります。
- 関西ペイント
- エスケー化研
- 日本ペイント
の3社です。
この3社は歴史も古く塗装業界をけん引してきた存在ですので、この3社の塗料を選んでいればよほどのことがない限り低品質な商品に当たることはありません。
もちろん、塗料の使用感は職人によって異なり、完成後の見た目にも個人差はありますので、3社を選んだからといって絶対に満足できるとは限りません。
しかし、ほぼ大半の人が納得できる結果をもたらすと考えれば、大手メーカー製の商品を選ぶことは間違いではないと言えるでしょう。
人気のシリコン塗料はどの3大メーカーも販売していますので、特徴や使用場所に最も適したものを選ぶことができます。
●3大メーカーが販売していない塗料もある
機能性塗料・光触媒塗料は、外壁に塗装すると紫外線に反応して汚れを分解し、雨水で汚れを洗い流す力を持っています。
光触媒塗料はその機能性から多くの人に注目されていますが、現在、どの3大メーカーも販売していません。
そのため、いくら機能が優れていても質の悪い塗料を選んでしまうリスクが潜んでいるというデメリットがあります。
その点を考えると、シリコン塗料は3大メーカーのどこからも販売されているため、初心者でも塗料選びに失敗しにくいと言えます。
■坪数別・塗装費用相場
外壁塗装の費用は塗装する建物の大きさで変動します。
塗装する面積(塗り面積)が増えるほど塗料代・人件費ともに増えますので、総工事費用も自ずと高くなります。
以下は、建物の坪数別にシリコン塗料の施工費用相場をまとめたものです。
お住まいの坪数を調べて、シリコン塗料で塗装したときの費用を調べてみましょう。
※一般的な2階建て戸建住宅の外壁のみを施工したときの概算の費用です。
※足場設置費用、高圧洗浄費用、下地処理費用、養生費用などを含む金額です。
※屋根塗装を行う場合は、プラス10~30万円高くなります。
坪数 | シリコン塗料の施工価格相場 |
~10坪 | ~29万 |
11~20坪 | 31.9万~58万 |
21~30坪 | 60.9~87万 |
31~40坪 | 89.9~116万 |
41~50坪 | 118.9~145万 |
51~60坪 | 147.9~174万 |
61~70坪 | 176.9~203万 |
71~80坪 | 205.9~232万 |
81~90坪 | 234.9~261万 |
91~100坪 | 263.9~290万 |
101~110坪 | 292.9~319万 |
111~120坪 | 321.9~348万 |
121~130坪 | 350.9~377万 |
131~140坪 | 379.9~406万 |
141~150坪 | 408.9~435万 |
151坪~ | 437.9万~ |
■シリコン塗料で見積もりを取るときのポイント
人気で安定感のあるシリコン塗料を選ぶときでも、外壁塗装業者から見積もりを取るときはご自身でよく内容をチェックしておきましょう。
シリコン塗料の人気にあやかって、耐久性が低いシリコン塗料を見積もりにこっそり紛れ込ませたり、人件費や塗料代を節約するために質の悪い施工をしたりする業者もいないとは限らないからです。
見積もりを見るときは、以下の3点に注意しておきましょう。
1. 「シリコン系塗料」の中にも耐久性が低いものがある
シリコン塗料といってもその種類は様々です。
シリコン樹脂の力を大いに発揮するシリコン含有率が高いものもあれば、シリコンが少し入っているだけで「高耐久のシリコン塗料です」と言われているものもあります。
例えば、エスケー化研の『セラミクリーン』はシリコン塗料の一種ですが、こちらは弾性機能に特化した単層弾性タイプの塗料になります。
単層弾性塗料は主にモルタル壁のひび割れ防止のために使われる塗料です。
メーカーが公表している期待耐用年数は8~10年となっており、これは一般的なシリコン塗料の耐用年数より2~5年も短い数値です。
もちろんこの塗料がベストな選択肢になる外壁もありますが、シリコン塗料の10~15年という長い耐用年数を期待して選ぶと後悔してしまうでしょう。
また、弾性塗料はサイディング壁には塗装することができません。
サイディングボードが溜め込んだ熱が弾性の塗膜を膨れさせるため、多様年数を迎える前に塗料が劣化してしまいます。
「シリコン」という名前を見ただけで安心せず、製造しているメーカーや商品の特徴、使用できる外壁の種類までご自身で調べることが大切です。
●カンタンにできる塗料情報の調べ方
業者の見積もりに記載されたシリコン塗料の情報を調べるためには、インターネットを使って、塗料の商品名で検索してみるとよいでしょう。
大手メーカーであれば検索結果のトップに商品紹介ページが表示されますので、耐用年数や使用目的、設計価格をカンタンに調べることができます。
2.下地処理を怠るとシリコン塗料でも効果はない
下地処理は、塗装の前に行われる工程で、塗装する箇所のひび割れやカビ、コケ、錆びなどを、手作業や工具を使って補修していきます。
下地処理の目的は、建物の防水性能を回復することと、塗料が密着しやすい状態にすることです。
もしこの工程を怠れば、塗りムラと空洞だらけの劣悪な塗膜になってしまい、塗装がすぐに剥がれてしまうでしょう。
丁寧な業者ほど、この下地処理を特に重視します。
業者の中には、塗装前の下地処理の段階で、施主に中間立ち合い確認を求める所もあるほどです。
下地処理が工程に含まれているかどうかは、見積書や工事工程表の中に以下の用語が記載されていることを確認しましょう。
下地処理の種類
※カッコ内は表記のパターン |
内容 |
シール工法 | 浅いひび割れにシール材やエポキシ樹脂を詰める |
Vカット工法
(Uカット工法) |
やや深いひび割れをV字の刃で削り、シール材やエポキシ樹脂を詰める |
ケレン作業
(けれん、鉄部処理、鉄部防錆、錆び止め) |
鉄部の錆びを紙やすりやサンダーで除去する作業 |
シーリング補修
(増し打ち、打ち替え) |
窓サッシやサイディングの目地に注入されているシーリングを補修する作業
増し打ち…古いシーリングを残したまま注入する方法 打ち替え…古いシーリングをすべて剥がして新しい部材を注入する方法 |
●3回塗りも重要な工程
外壁塗装では塗料を必ず3回重ね塗りしますが、3回塗ることには非常に重要な理由があります。
一回目:下塗り | 外壁の表面に下地材を塗布する作業。
下地材が仕上げ用塗料と外壁を繋ぐ接着剤のような役割を持っている。 「シーラー」という下地材には、外壁が塗料を吸収するのを防ぐ役割がある。 「微弾性フィラー」という下地材を使って、外壁表面の凹凸やごくわずかなひび割れを埋めることもある。 |
二回目:中塗り | 仕上げ用塗料の一層目を塗る作業。 |
三回目:上塗り | 仕上げ用塗料の二層目を塗る作業。 |
シリコン塗料は仕上げ用塗料ですので、中塗りと上塗りで使われます。
下塗りの段階で誤った下地材が選ばれていたり、下塗り自体が省かれたりしていると、丈夫なシリコン塗料を重ね塗りしても外壁に密着できず剥がれてしまいます。
見積もりの中に、下塗り、中塗り、上塗りが含まれていること、それぞれの塗りで使用する塗料の名前まで記載されていることを必ず確認しておきましょう。
なお、業者によっては下塗りを下地補修に含めたり、中塗りと上塗りをセットにして「上塗り」と表記したりする所もありますが、施工方法自体は間違いではないので問題ありません。
3.シリコン塗料を取り扱う業者の候補が多すぎる
シリコン塗料は、ほとんどの塗装業者が取り扱っています。
エスケー化研、関西ペイント、日本ペイント、その他のメーカーなど、業者によって取引しているメーカーは異なりますが、「シリコン系塗料」はほぼ間違いなく大半の塗装業者が取り扱っていると考えてよいでしょう。
そのため、「シリコン塗料を取り扱っていること」を条件にして業者を探そうとすると、膨大な候補の中から選ぶ作業が発生してしまいます。
先述の通り、シリコン塗料の中にも耐久性が低いものもあり、耐久性が高いものを使ったとしても業者の施工に不備があれば効果は発揮できません。
塗装業者を選ぶときは、「シリコン塗料を取り扱っているか」ではなく、
- シリコン塗料の施工実績が多いか
- 施主に塗料の情報を知らせてくれるか
の2点を重視しましょう。
実際にシリコン塗料を使った施工実績が多い業者ほど、シリコン塗料の特徴を把握していますので、どの家にどんな方法でどのシリコン系塗料を使うべきか正確に予測できます。
また、納得して工事に進んでほしいという思いから、使用する塗料の特徴や性質までオープンにしてくれる点も優良業者の特徴です。
■おわりに
シリコン塗料は人気の高い塗料ですが、シリコン塗料を選べば外壁塗装が絶対に成功するわけではありません。
耐久性が高い塗料でも、施工する業者の腕が悪ければ本来の性能を発揮せぬまま剥がれ落ちてしまいます。
「シリコンだから大丈夫」と言う業者に惑わされず、ご自宅の塗装に適した塗料かどうか、納得いくまで業者に相談したうえで選びましょう。