この記事では、外壁塗装にウレタン塗料を選ぶべきかお悩みの方に向けて、ウレタン塗料の価格相場だけでなく、基本的な特徴や選ぶときの注意点などをご紹介します。
目次
■ウレタン塗料の基本情報
ウレタン塗料は、現在使われている塗料の中では下から二番目のグレードになります。
塗料のグレードには、
- アクリル塗料
- ウレタン塗料
- シリコン塗料
- ラジカル塗料
- フッ素塗料
の5段階があります。
ウレタン塗料は、最もグレードが低いアクリル系塗料に比べれば耐久性は高いです。
しかし、近年最も人気のあるシリコン系塗料よりも耐久性は落ちるため、選ぶ際は注意しなければなりません。
ウレタン塗料の基本情報は以下の通りです。
㎡あたりの施工単価相場 | 約1,800~2,500円 |
耐用年数 | 約8~10年 |
取り扱っているメーカーと主な商品 | エスケー化研『クリーンマイルドウレタン』
関西ペイント『アレスアクアレタン』 日本ペイント『水性ファインウレタンU100』 スズカファイン『エコウレタン』 など |
以下から、ウレタン塗料独自の特徴を見てみましょう。
1.伸びがよく塗りやすい
塗料は、使用中は希釈されて液状になっています。
液状の塗料をローラーやハケ、スプレーガンなどで壁や屋根に塗っていく工程が塗装工事です。
液状の塗料は時間が経つと乾燥して膜となり、外壁や屋根にぴったり密着して建物を紫外線や雨から守ります。
塗装作業では、塗料の伸びがよいほど広範囲を一度に作業でき作業効率が上がります。
また、塗り忘れや塗りムラの防止という点でも伸びのよさは大切です。
ウレタン塗料は柔らかく伸びが良いため、塗り忘れが起きやすい細部や複雑な部品が多い付帯部の塗装に適しています。
●密着性が高い
密着性とは塗料が外壁に付着する力のことです
外壁の素材と塗料の相性が悪いと、密着性が低くなり塗膜が劣化しやすくなります。
ウレタン塗料は密着性が高い塗料として知られています。
素材自体に密着するという点だけでなく、「塗面の素材を問わず密着できる」点で、現在でも使われています。
2.ひび割れに対して強い
ウレタン塗料はやや弾性を持つ塗料です。
「弾性」とは、ゴムのように伸縮する性質のことです。
外壁塗装における弾性は、外壁の動きに連動して伸びて、ひび割れが起きてもゴムのように塗膜が割れ目をカバーする性質を指します。
この弾性機能に特化して作られた「弾性塗料」というものがあり、外壁表面にひび割れが起きやすいモルタル壁のリフォームに使われています。
弾性塗料は、「弾性ウレタン」や「弾性シリコン」といった商品名になっているのが特徴です。
ウレタン塗料は、弾性機能が付与されていなくても若干弾性を発揮しますが、弾性塗料ほど弾性効果を持つわけではないためご注意ください。
3.安価だが使用場面が多い
シリコン樹脂系塗料がメジャー商品になってからは、戸建て住宅の塗装でウレタン塗料が使われる事例は少なくなりました。
しかし、ウレタン塗料は現在でも付帯部塗装などで活躍しています。
付帯部とは、雨樋や軒天、屋根の棟板金や破風板といった、外壁や屋根表面以外のパーツのことです。
一部の塗料は、付帯部によく使用されている金属や木材などに塗装できません。
金属は塗料を弾いてしまうことがあり、木材は素材自体が膨張収縮して塗膜を破いてしまうためです。
相性の悪い塗料で塗装したり、塗装前に接着剤となる下地塗料を塗布しなかったりすると、いかにハイグレードな塗料を塗ってもすぐにひび割れたり剥がれたりしてしまいます。
ウレタン塗料は、先述の「作業性の良さ」と「密着性の高さ」も相まって付帯部など細部の塗装に非常に適しており、一部では万能塗料とまで言われています。
●防水用のウレタン塗料とは別物
バルコニーや屋上の防水リフォームでは、「ウレタン防水」が行われることがあります。
このウレタン防水の塗料と外壁塗装用のウレタン塗料は別物です。
ウレタン防水とは防水工事の一種で、防水が必要な箇所に塗料を塗って防水層を作ります。
ここで使われているのは外壁に使用するウレタン塗料ではなく、防水機能に特化したウレタン樹脂をベースとする防水塗料です。
■坪数別・ウレタン塗料の塗装費用相場
以下は、1~151坪までの建物をウレタン塗料で塗装したときの費用相場です。
なお、費用相場には、足場設置費用、高圧洗浄費用、養生費用、下地処理費用などの諸費用を含みます。
ただし、屋根の塗装費用は含んでいませんので、屋根もウレタン塗料で塗装する場合は10~30万円ほど費用が高くなります。
※紫外線や雨が当たりやすいウレタン塗料は屋根塗装にはあまり使われていません。
坪数 | 費用相場 |
~10坪 | ~24万 |
11~20坪 | 26.4~48万 |
21~30坪 | 50.4~72万 |
31~40坪 | 74.4~96万 |
41~50坪 | 98.4~120万 |
51~60坪 | 122.4~114万 |
61~70坪 | 146.4~168万 |
71~80坪 | 170.4~192万 |
81~90坪 | 194.4~216万 |
91~100坪 | 218.4~240万 |
101~110坪 | 242.4~264万 |
111~120坪 | 266.4~288万 |
121~130坪 | 290.4~312万 |
131~140坪 | 314.4~336万 |
141~150坪 | 338.4~360万 |
151坪~ | 362.4万~ |
■ウレタン塗料で見積もりを取るときのポイント
もしウレタン塗料で外壁塗装を行うのであれば、業者から見積もりを取るときに以下の3つに注意しましょう。
1.相場よりも高額な見積もりは内訳を調べる
ウレタン塗料の相場は30坪の戸建て住宅でも70万円前後、40坪でも100万円以内に収まることが多いです。
戸建て住宅の平均的な大きさは30~40坪程度ですので、ウレタン塗料が使われている見積もりで、200万円を超えるような金額を提示されたときは注意しなければなりません。
ウレタン塗料で200万円や300万円を超すような費用になるのは、90坪以上の集合住宅などです。
壁のヒビ割れやシーリングの劣化が顕著な建物であれば、40坪のウレタン塗装でも補修費用がかさんで100万円を超すかもしれませんが、やはり200万円を超えることはほぼあり得ないと言ってよいでしょう。
相場よりも高額な見積もりを渡されたときは、必ず別の業者からも同じ条件で見積もりを作ってもらい、適正価格を調べることが大切です。
●見積もりの内訳の見方
業者からもらった見積もりが相場以内か・高額かは、合計金額だけでは判断できません。
金額が安い業者がいたとしても、安さの理由が「手抜き」によるものの可能性もあるからです。
見積書の金額が適正かどうかは、見積もりの内訳から項目ごとの施工単価を比較することでわかります。
外壁塗装の見積もりは、基本的に以下の項目で構成されています。
- 足場設置費用
- 高圧洗浄費用
- 下地処理費用
- 養生費用
- 塗装費用(3回塗り)
- 諸費用など
※項目ごとの詳しい相場価格はこちらの記事をご参考ください。
業者によってそれぞれの設定価格にばらつきはありますが、平均的な相場価格は大きく変わりません。
●手抜き工事のチェックに繋がる
項目ごとの相場価格を比較することで、相場よりも不自然に金額が高く設定されていないかだけでなく、工事に手抜きがないかまで調べることができます。
例えば、A社とB社で同条件の見積もりを取ったと仮定します。
- A社…見積もりの合計額:80万円
- B社…見積もりの合計額:60万円
一見すると、B社の方が20万円お得に見えます。
しかし項目をよく比較してみると、
- A社…塗装を下塗り・中塗り・上塗りとしっかり3回塗りで計算している
- B社…塗装回数の記載がなく、塗装費用単体の価格も相場より安い
このような場合、安いと思ってB社に頼んでしまうと手抜き工事を行われるかもしれません。
基本ルールを無視して行われた手抜き工事は、3~5年以内に施工不良が起きてしまいます。
たった20万円の安さを優先したばかりに、結局80万円かけて塗り直しが必要になっては本末転倒です。
見積もりの内訳までしっかり比較し、手抜き工事や工程の省略が行われていないこともチェックしましょう。
2.ウレタンよりグレードが高い塗料も検討しよう
塗料ごとの耐用年数を比較すると以下のようになります。
塗料の種類 | 耐用年数(目安) |
アクリル塗料 | 5~8年 |
ウレタン塗料 | 8~10年 |
シリコン塗料 | 12~15年 |
ラジカル塗料 | 14~18年 |
フッ素塗料 | 15~20年 |
断熱塗料 | 16~20年 |
光触媒塗料 | 18~24年 |
ウレタン塗料は40坪の住宅でも70~80万円の工事費用で施工が可能ですが、表を見ると、耐用年数が塗料の中でも特に短いことがわかります。
もしフッ素塗料を選んでおけば、一回の塗装だけで塗膜が約20年間長持ちします。
しかしウレタン塗料はその半分の10年目にもう一回塗装しなければなりません。
塗装回数が増えることのデメリットは、足場代がその都度発生することです。
つまり一回の施工費用が高いフッ素塗料でも、足場代が一度で済む分、トータルの塗装費用が低グレードの塗料より安くなることもあります。
ウレタン塗料以下のグレードがあまり選ばれなくなった理由は、この点も大いに関係しています。
ただしハイグレードなフッ素塗料や断熱塗料ガイナなどは、30~40坪でも100万円を超えることがあるため、予算が足りない方も多いかもしれません。
コストパフォーマンスを優先するのであれば、ウレタン塗料とあまり金額が変わらず、15年近く長持ちするシリコン塗料を選ぶとよいでしょう。
3.10年後の塗替え計画を立てておくこと
もしウレタン塗料を選択した場合は、10年後には塗り替えが必要になることを想定して費用を準備しておきましょう。
●建て替え予定があればウレタン塗料もおすすめ
塗料は、一度塗って乾燥すると使い回しができません。
壁を解体して処分する場合は、その壁に塗装されている塗料も処分することになります。
そのため、近々建て替え予定の家を15~20年長持ちするフッ素塗料で塗装してしまうと、解体とともに塗料も処分されて勿体ない結果になってしまいます。
建て替えで外壁をすべて撤去したり、建物ごと解体したりする予定があれば、10年前後で耐用年数を迎えるウレタン塗料が最も適していると言えます。
ただし、ウレタン塗料は耐久年数が短いため、建て替えより先に塗料が劣化するケースもあるので注意が必要です。
■おわりに
外壁塗装の費用は使用する塗料の種類で変動します。
そのため、コスト面を考慮して費用が安い塗料を選ぶべきか、耐久性を優先して価格が高い塗料を選ぶべきか非常に悩む所です。
ウレタン塗料は価格も安く作業性が高い塗料ですが、シリコン塗料やラジカル塗料などのグレードが近く耐久性が高い塗料とメリット・デメリットを比較したうえで選びましょう。