下地処理の外壁塗装費用と相場

外壁塗装の費用相場~下地処理編~外壁塗装の質を決める最も重要な工程が、下地処理です。

この下地処理がしっかり行われていなければ、どんなに高耐久性の塗料で塗装しても、外壁塗装は成功しません。

 

下地処理の種類とそれぞれの相場費用を知って、適正価格で確実に工事が行われることを見積もりの時点で判断できるようになっておきましょう。

■下地処理は塗装の品質を左右する重要な工程

下地処理の精度が塗装の品質を決めると言っても過言ではありません。

 

外壁塗装における下地処理には、

  • 塗料を密着させる
  • 建物の劣化を補修する

という大切な2つの目的があります。

1.下地の状態が悪いと塗料が密着できない

塗料が外壁にしっかり塗られていることを「密着している」と表現します。

塗料は、外壁に密着できなければ丈夫な塗膜を作ることができません。

塗料が密着できない原因の多くは「下地処理」の不足によるものです。

 

塗料が密着できない主な原因

  • 外壁・屋根表面に異物が付いている(カビ、コケ、錆び)
  • 外壁・屋根表面がひび割れている
  • 外壁・屋根表面の凹凸が激しい

 

このような状態のまま塗料を塗っても、異物で塗料の乾燥が正しく行われなかったり、ひび割れのせいで塗膜まで破れてしまったり、凹凸で塗料がムラなく塗れなかったりするでしょう。

そのような状態では塗料が外壁や屋根を守ることができません。

これは低グレードのアクリル塗料でも高耐久性のフッ素塗料でも、現在最も多くの現場で使われているシリコン塗料でも同じです。

 

また、外壁や屋根だけでなく、雨樋や玄関ドア、雨戸、軒天といった付帯部分も塗装前に下地処理が必要です。

2.下地処理で外壁や屋根の劣化を防ぐことができる

下地処理は塗料のためだけに行われる作業ではありません。

下地処理をすることによって、外壁や屋根の表面で起きている数々の劣化が補修されます。

 

例えば、外壁や屋根のひび割れを放置していると、隙間から雨水や害虫などが建物内部に侵入してしまいます。

異物の侵入を防ぐ外壁や屋根がひび割れていては、建物の耐久性を大きく脅かすことになるでしょう。

 

あるいは、サイディングボードの目地や窓サッシのまわりに注入されているコーキング(シーリング)の劣化も放置すると危険です。

コーキングは紫外線や雨で劣化すると、部材が痩せて縮んだり裂けたりします。

すると、縮んだり裂けたりした所から雨水が浸水して外壁下地の内部に浸水し、この状態を長期間放置すると内部結露や構造材の腐食などを招いてしまいます。

 

下地処理は、これらの劣化症状を補修するためにも必ず行わなくてはなりません。

3.下地処理を省く悪徳業者に要注意

悪徳業者は下地処理を省く手口を多く使います。

なぜなら、ハケやローラーで塗装していればあたかも塗装工事を一所懸命やっているように見え、下地処理の工程を省いても塗装の知識がない人にはわからないからです。

 

悪徳業者に手抜き工事をされないためにも、下地処理の大切さや目的についてしっかり把握しておきましょう。

■作業工程別・工事内容の費用相場

下地補修には様々なものがあり、それぞれに名前があって施工価格も異なります。

また、行われる下地処理の数や種類によって外壁塗装の合計費用も大きく変動します。

 

以下からは、下地処理の費用相場について作業内容と併せて解説していきます。

1.クラック補修

ダイレクトシール工法(刷り込み工法)

※クラックの幅・深さ0.05~2.5㎜未満

1,500~2,300円/㎡
Vカット(Uカット)シール工法

※クラックの幅・深さ 2.5㎜以上15㎜未満

1,200~2,500円/㎡
低圧注入工法

※クラックの幅・15㎜以上 深さ

3,000~4,500円/㎡

クラックとは外壁の表面に起きたひび割れのことです。

幅・深さが0.05mm以上のクラックは「構造クラック」と呼ばれ、進行度に応じて上記いずれかの作業が行われます。

幅・深さ 0.05㎜未満のヘアークラックは補修の必要がないため、上から塗料を塗るだけで埋めてしまうことができます。

 

モルタルの外壁や基礎に使われているコンクリートは、クラックが起きやすくなっています。

これは素材自体が乾燥により収縮するためです。

 

サイディングボードやスレートの屋根材は比較的ひび割れしにくい素材ですが、継ぎ目のシーリングが劣化して雨水が浸水すると反ってしまうことがあり、まれにひび割れてしまうことがあります。

サイディングやスレートなどのパネル材がひび割れした場合は部分的も、モルタルやコンクリートと同様にクラック補修で済むこともありますが、基本的にはパネルそのものを張替えた方が防水性は向上します。

2.爆裂補修

爆裂補修 1,000~2,500円/一カ所

爆裂は鉄部で起きる劣化現象です。

コンクリート内部の鉄筋や塗装で覆われている鉄部がなんらかの原因で錆びてしまうと、面積が増えてコンクリートや塗膜を圧迫し、破いてしまうことがあります。

 

爆裂の補修では、コンクリートや塗膜が割れている箇所をきれいに処理するだけでなく、内部の鉄筋や鉄部も補修されます。

鉄筋コンクリートの場合はコンクリート部分をハンマー等で壊し(ハツリ落とし)、鉄筋を清掃して防錆処理を行い、再びセメントなどで埋め直すという作業になります。

3.ケレン作業

ケレン 1種、2種 2,000円~3,000/㎡
3種 600~1,000円/㎡
4種 200~400円/㎡

ケレンとは鉄部のサビ落とし作業のことです。

錆びを放置すると部材の強度低下に繋がりますので、塗装の前にしっかりケレン作業で錆びを落とし、防錆塗装を塗っておかなければなりません。

 

ケレン作業はサビの具合によって1種から4種までを使い分けます。

戸建て住宅で行われるケレン作業は3種か4種のどちらかになります。

刷毛やヤスリで錆び部分を清掃し、その後、防錆塗装を行って鉄部の下地調整は完了です。

 

最も大掛かりで高額なのは1種ケレンですが、1~2種ケレンが戸建て住宅で行われることはほとんどなく、工業用の金属パーツや公共施設などで行われます。

1~2種ケレンが必要なほど劣化している外壁は、部材の交換が必要と考えた方がよいでしょう。

4.コーキング補修

コーキングの打ち直し(打ち替え) 850~1,800円/㎡
コーキングの打ち増し(増し打ち) 600~1,050円/㎡

コーキング(シーリング)とは、サイディングの目地やサッシと壁の隙間に充填されている樹脂部材のことです。

コーキング補修費用は、サイディング壁かモルタル壁か、あるいは目地の太さに応じて費用に多少のばらつきが出ます。

サイディング壁のようにパネルを張り合わせて作る外壁は目地も多く、コーキング補修費用がモルタル壁やコンクリート壁よりも増えます。

 

また、コーキングは劣化具合によって「打ち直し」か「打ち増し」のどちらかを選ぶことになりますが、費用が高くなるのは「打ち直し」です。

打ち直しとは、既存の古いコーキング材をすべて撤去し、新しい部材を詰める作業のことです。

打ち直しではコーキング材を剥がした箇所を清掃したり下地材を塗布したりする必要があり、古いコーキング材の処分費用も発生しますので費用は高くなります。

 

費用が安いのは打ち増しで、こちらは古いコーキング材を残したまま新しい部材を注入するのみで済みますが、打ち直しに比べると施工後の耐久年数はあまり長くありません。

費用の安い・高いだけでなく、外壁の劣化具合に応じてどちらにするか選ぶことが大切です。

■下地処理前の工程の相場費用

下地処理の前に行われる重要な工程が高圧洗浄と養生です。

塗装業者の中にはこの2つも下地処理作業の一貫として見積もりに記載する所もあります。

高圧洗浄と養生の目的や費用相場も知っておきましょう。

1.高圧洗浄

高圧洗浄 100~300円/㎡
バイオ洗浄 200~700円/㎡

外壁の汚れやカビ、コケ、藻、錆びなどの異物を、強力な高圧洗浄機で洗い流す作業です。

カビやコケが目立つ外壁では、除菌力が高い薬剤を混ぜてバイオ洗浄が行われることもあります。

 

高圧洗浄は、外壁と屋根どちらを洗浄したときでも、およそ上記の価格相場に収まります。

また、高圧洗浄時にかかる水道代は施主負担です。

水道代の目安は戸建て住宅一棟あたり2~3千円程度ですが、自分で高圧洗浄機をレンタルして高所で作業をする労力を考えれば決して高い費用ではありませんので、施工業者に任せた方がお得と言えるでしょう。

2.養生

養生 250~500円
塗装シート(飛散防止シート) 80~200円/㎡

塗料が付着してはいけない箇所や塗料が垂れる床面などを、ビニールシートで保護する作業です。

ビニールシートやマスキングテープ、あるいはビニールシートとマスキングテープが一体になった「マスカー」など様々な部材を使いますが、戸建て住宅一棟あたりの相場は約3~6万円と、外壁塗装の工事の中では意外にもそこまで高くありません。

 

養生は見積書の中で足場の設置費用とまとめられていることもあります。

なぜなら、足場の周りにも塗料や汚れの飛散を防ぐために養生用のネットを張るからです。

養生と足場設置費用がまとめられている場合は、足場・飛散防止シートを合わせて680~1,050円/㎡の相場になります。

■おわりに

下地処理は、優良業者であれば見積もり作成時に必ず含めて計算してくれます。

外壁塗装を成功させるためには、下地処理を隅々まで徹底して行わなければならないからです。

普段生活しているだけでは見かけない用語も多いですが、見積もりを見るときに、基本の下地処理が必ず含まれていることを確認できるようになっておきましょう。

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