外壁塗装に使う塗料は、建物の耐久性や塗替えサイクルに応じて種類を選ぶことができます。
建築用塗料のうち、最も定番の塗料として知られているのが、今回ご紹介するシリコン塗料です。
なぜシリコン塗料が人気の塗料として定着しているのか、塗料の性能や施工価格などを、他塗料と比較しながらご説明します。
目次
■外壁を守るシリコン塗料
外壁塗装とは、下地に使う塗料を先に塗り、その上から仕上げ用塗料を塗って、外壁や屋根の表面を守る膜を作る作業です。
下地塗料を塗る作業を「下塗り」と呼び、仕上げ塗料を塗る作業は「中塗り」と「上塗り」と呼ばれ、塗装は、この合計3回の重ね塗りが行われます。
シリコン塗料は、このうち仕上げ用塗料に属し、最終的に外壁の表面を守り続ける存在になります。
下塗り、中塗り、上塗りについて詳しくは、「外壁塗装は三度塗りが基本!手抜き工事を防ぐためには?」をご覧ください。
1.外壁塗装では下地処理と仕上げを行う
外壁塗装ではまず、外壁や屋根の表面を整え、次に下地用塗料を下塗ります。
下地用塗料とは、最後に塗る仕上げ用塗料と外壁との密着性を高める、接着剤のような存在です。
つまり、完成後の塗膜の耐久性は、中塗りと上塗りで使う仕上げ用塗料にかかっています。
シリコン塗料が高い人気を誇る理由は、仕上げ用塗料として申し分ない耐久性を備えている点と、コストパフォーマンスにも優れている点にあります。
2.シリコン塗料はグレードが高い塗料
外壁塗装の仕上げ用塗料には、主に4段階のグレードが存在します。
弾性塗料や断熱塗料、光触媒塗料など、機能が追加された機能性塗料も販売されていますが、ベースとなるグレードが存在することに変わりはありません。
●塗料のグレード
仕上げ用塗料をグレード順に並べると、
の4種類になります。
このように、シリコン塗料は、比較的グレードが高い仕上げ用塗料に分類されます。
なお、最高級グレードのフッ素塗料とシリコン塗料の中間には、近年大手塗料メーカー日本ペイントなどから発売され始めたラジカル塗料があり、ラジカル塗料も加えた、5段階のグレードを用意している塗装業者もあります。
■シリコン塗料の主な特徴
シリコン塗料は、現在最も多くの現場で使用されている、人気の定番塗料です。
塗装業者の中には、外壁塗装工事に、基本的な工事とパック料金メニューを作っている所があります。
パック料金のほとんどは、他の塗料よりも汎用性が高く安定感のある、シリコン塗料が基本使用塗料として設定されています。
ただし、パック料金に関しては、注意するべき点もあるので、詳しくは、「外壁塗装のパック料金は本当におすすめなのか」をご覧ください。
1. 耐久性・価格ともに安定した塗料
シリコン塗料が多くの塗装現場で選ばれている理由は、何と言っても、耐久性と価格のバランスが非常に取れているためです。
塗料選びで迷ったときは、シリコン塗料を選んでおけば、次回の塗装までに後悔するリスクを確実に減らすことができるでしょう。
●シリコン塗料の耐用年数
シリコン塗料の耐用年数は、約12~15年前後です。
建物の外壁・屋根は、約10年経った頃に、なんらかの不具合が生じるリスクが高くなるため、10年に1度は点検やメンテナンスを行うことが推奨されています。
つまり、期待耐用年数が10年以下の塗料では、点検のタイミングよりも早く耐久性が低下してしまいますが、シリコン塗料であれば、最低でも点検のタイミングまでは耐久性が期待できます。
ただし、塗料の劣化状況は立地や外壁そのものの耐久性にも左右されるため、必ずしも保証期間中常に耐久性が維持されるとは限りません。
そのため、シリコン塗料を使ったからといって、10年間何も手を加えなくてもよいことにはなりませんのでご注意ください。
●シリコン塗料の施工価格
シリコン塗料の施工価格相場は、平米あたり約3,000円程度です。
外壁塗装は、約100平米前後の面積を塗装しますが、シリコン塗料のみで塗装すると、単純計算で約300,000円という塗料代になります。
仮に、平米あたりの単価が1,000円高くなれば、塗装費用は100,000円アップすることになりますので、わずかな価格差でも油断はできません。
さらに、外壁塗装では足場の設置費用に約20万円、その他の経費でも約10万円近く必要になりますので、仕上げ用塗料の施工単価は、塗装の総費用を左右する重要なポイントと考えておきましょう。
2.シリコン塗料の性質
仕上げ用塗料の違いは、主に耐久年数と施工価格で比較されますが、この2点以外にも、塗料別に特徴の違いがあります。
シリコン塗料にも、他のグレードの塗料とは違う特徴が存在します。
●水性塗料と溶剤塗料の違い
水性塗料とは、水で薄めて使用する塗料のことです。
一方、溶剤塗料とはシンナーなどの薄め液を使って使用する塗料で、油性塗料とも呼ばれます。
溶剤系塗料は、施工中は臭いが発生しますが、様々な種類の素材にしっかり密着し、水性に比べると長持ちする傾向があります。
どのグレードの塗料にもそれぞれのタイプが存在し、シリコン塗料も、いずれかのタイプを選ぶことになります。
どちらを使ってもシリコン塗料の性質が大きく変わることはありませんが、環境や近隣住人に配慮して、水性塗料を使用する業者が増えつつあります。
水性塗料に関して詳しくは、「外壁塗装では油性塗料(溶剤)と水性塗料どちらが良いの?」をご覧ください。
●シリコン塗料の耐熱性
塗装時の塗料は液体状になっていますが、壁面に塗って乾燥させると、雨に濡れても溶けない丈夫な塗膜になります。
シリコン塗料は、この乾燥後に形成する塗膜が、熱に非常に強いことで知られており、成分によっては250℃から600℃近くの高熱にも耐えることができます。
●シリコン塗料の耐候性
塗膜の丈夫さは主に「耐候性」で判断されます。
耐候性とは、温度変化や雨、紫外線など、屋外で発生するダメージに対して強い性質のことです。
シリコン塗料は、下のグレードのウレタン塗料、アクリル塗料に比べると耐候性が高く、紫外線や雨に晒されても色あせしにくいため、長期間光沢を保ち続けることができます。
■シリコン塗料を他の塗料と比較
ここまで、シリコン塗料の特徴について説明しましたが、外壁塗装の見積もりを取っていると、どの塗料も魅力的に見えてしまい、なかなか決断できないかもしれません。
ここから先は、
- 「少しランクを落としてウレタン塗料にしても、品質には問題ないだろうか?」
- 「塗装業者は価格が高いフッ素塗料を勧めてくるが、シリコン塗料とどのくらい違いがあるかを知りたい」
など、塗装業者には聞きづらい質問について、シリコン塗料と他の塗料を比較しながら解説します。
1.アクリル塗料と比較
シリコン塗料は、正確には「アクリルシリコン」と呼ばれますが、この項目で比較するアクリル塗料とシリコン塗料は、耐久性・機能ともに全く異なる別の塗料です。
●アクリル塗料のスペック
アクリル樹脂塗料は、塗料の開発が進む前は、外壁・屋根用アクリル塗料などが広く普及していましたが、近年の外壁・屋根塗装では、メインで使われることはほとんどありません。
その理由は、約5年前後という圧倒的に短い耐用年数と、耐久性の低さです。
せっかく足場設置や下地処理などの費用をかけて塗装を行っても、肝心の塗料の耐用年数が低すぎるため、10年以内に必ず再塗装が発生してしまうことになります。
特に、建物の中でも最も太陽光を浴びる屋根用塗料としては、アクリル塗料は選択肢から除外しなければなりません。
もちろんアクリル系塗料にも、色ツヤや発色性の良さや、平米あたり約1,000円前後という塗料価格の安さなどのメリットもあります。
耐久性を長期間必要としない、雨や紫外線が当たりにくい箇所や、どんな丈夫な塗料でもすぐに再塗装が必要になる木部など、部分使いの塗料としてアクリル塗料を選ぶとよいでしょう。
2.ウレタン塗料と比較
ウレタン樹脂塗料は、シリコン塗料よりも1つグレードが下の塗料です。
しかし、耐用年数は約8~10年程度と決して短くはなく、施工単価も平米あたり約2,000円とお手頃なため、塗装箇所によってはシリコン塗料よりも優れたコストパフォーマンスを発揮することがあります。
●ウレタン塗料のスペック
ウレタン系塗料は、弾性を持つ塗料として知られています。
弾性があるということは、引っ張る力に対して柔軟に動くため、塗膜の表面にひびができにくくなります。
一方、シリコン塗料やフッ素塗料は、硬化すると非常に硬い膜を作るため、比較的ひび割れに弱い塗膜になります。
特にモルタルの外壁は表面に細かいひび割れ(ヘア―クラック)が生じやすいため、もし、シリコン塗料を使いたいときは、弾性機能が付いたシリコン塗料を使って「複層弾性工法」や「微弾性工法」などで仕上げるとよいでしょう。
弾性機能について詳しくは、「ゴムの性質でクラックを防止する複層、単層、微弾性塗料とは」をご覧ください。
3.フッ素塗料と比較
フッ素樹脂塗料は、現在市販されている仕上げ用塗料の中では、最も高い耐久性・機能性を誇る塗料です。
フッ素塗料の耐用年数は、約15~18年ですが、状態がよければ約20年近く長持ちすることもあります。
しかし、そのグレードの高さゆえに、施工価格が非常に高額になる点が、フッ素塗料最大のデメリットと言えるでしょう。
フッ素塗料の平米あたりの施工単価は、約4,000円が相場になっており、約100平米に塗装したときのシリコン塗料との費用差は10万円と考えられます。
ただし、耐用年数が長い分、塗装工事やメンテナンスを頻繁に行わなくても長持ちするため、建物一棟にかけるトータルのランニングコストを減らすことは可能です。
一回あたりの施工費用を優先してシリコン塗料にするか、トータルのランニングコストと外壁・屋根の耐久性を優先してフッ素塗料にするか、塗装業者の現地調査の結果や予算から、慎重に判断していきましょう。
●フッ素塗料のスペック
フッ素塗料は、現在登場している仕上げ用塗料の中でも、特に高い耐候性を持つ塗料で、外壁や屋根への密着性も高く、光沢保持率も高いため、雨や紫外線から末永く建物を守り続けることができます。
また、フッ素系塗料には「親水性」という特徴があります。
親水性とは、水に馴染みやすい性質のことです。
この性質が高いほど、雨が外壁表面の汚れに入りこみやすくなり、水洗いを頻繁に行わなくても、外壁表面が常に雨水で洗われる状態になります。
この親水性を持つ点や、防カビ性や防藻性にも優れている点などから、フッ素塗料は「低汚染性塗料」と紹介されることもあります。
■おわりに
外壁や屋根は、塗装に使った塗料で耐久性や機能が決まります。
約12~15年の耐用年数を持つシリコン塗料は、外壁・屋根の推奨点検タイミングである約10年間をカバーすることができ、耐熱性や耐候性も兼ね備えている、コストパフォーマンスに非常に優れた塗料です。
もちろん、建物や立地環境によってはシリコン塗料以外の塗料がよいこともありますので、どのような外壁や屋根でも、シリコン塗料さえ塗っておけば何が起きても万全ということにはなりません。
塗装業者からの建物診断結果や、塗装工事の予算など、総合的に判断したうえで塗料のグレードを選んでいきましょう。