住宅の外装にある設備のうち、定期的な塗装が必要な部位は外壁と屋根だけではもちろんなく、建物を守る雨戸もしっかりメンテナンスしておくことで、建物全体の強度をまんべんなく高めることができます。
この記事では、外壁塗装の際に重要度が低いと思われがちな雨戸について、雨戸の役割や種類をご紹介しながら、実際に塗装をするときの流れや注意点などを解説します。
目次
■建物を守る大切な雨戸
窓サッシに取り付けられている雨戸は、窓ガラスの保護や、防犯設備としての役割を担っています。
1.雨戸の役割
住宅に危害を加える外的要因としては、大きく分けると台風や豪雨、大雪や強い紫外線などの「自然災害」と、外部から窓を割って家の中に入ろうとする「侵入者」の2種類で、雨戸を定期的に塗り替えや補修などのメンテナンスしておくことは、これらの脅威から大切な住まいを守ることに繋がります。
●雨戸で窓ガラスを飛来物から守る
台風や悪天候で強い強風が吹くと、風によって飛ばされた空き缶や傘、庭に置いていた自転車などの物が窓にぶつかって、窓ガラスが割れてしまうことがあります。
窓ガラスが割れると雨や風、虫や葉っぱなどが室内に入ってしまうようになって生活に支障が出てしまい、防犯性も一気に下がってしまいますし、ガラスが割れると窓の側にいた人にガラスが当たったり、飛び散ったガラスを踏んだりしてケガをする恐れがある点でも非常に危険です。
ガラスよりも丈夫な雨戸で窓が覆われていれば、多少の物がぶつかっても雨戸が割れることはなく、ダメージを受けたとしても、雨戸表面のへこみ程度で被害を抑えることができます。
●外部からの侵入を防ぐ
雨戸は、建物の防犯性を司る重要なパーツでもあり、警察庁の調べによると、平成28年に起きた戸建て住宅の窃盗被害のうち、雨戸のない窓ガラスを割って侵入されているケースは、被害全体の中で最も多い約36%でした。
ピッキング防止の鍵や割れにくい強度のガラスを取り付けるなど、窓の防犯性を高めるだけでなく、侵入者を窓ガラスに接触させないためにも丈夫な雨戸を窓に取り付けておくことが、住まい全体の防犯性を高めることに繋がります。
参考:警察庁『住まいる防犯110番』
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/top.html
2.雨戸の塗装忘れに注意
外壁や屋根だけでなく、屋外に設置されている雨戸も紫外線や雨風によるダメージで年月と共に劣化しますので、適切なタイミングで塗装や補修、交換といった雨戸のメンテナンスが必要です。
●金属製の雨戸が劣化するとどうなる?
金属製の雨戸は、サビの脅威と常に隣り合わせで、通常は鉄部の表面は錆止め塗装で保護されていますが、塗料自体の耐久力が落ちると、剥がれやチョーキングなどの症状が出るようになり、防水性が低下して、内部の鉄に雨水が当たってサビの原因になってしまいます。
サビが発生した雨戸は、サビが雨だれとなって外壁表面に筋状に残り、耐久性だけでなく見た目も悪くしてしまいます。
●雨戸単体の塗装でも足場が必要になる
雨戸の塗装費用は、平均的なサイズの雨戸で、1枚あたり約3,000円が相場で、ただし、外壁塗装とセットで行わず、雨戸のみの塗装を行うと、高所での作業のための足場代が、塗装費用とは別途発生します。
足場設置費用の相場は、平米あたり約600~1,000円ですので、雨戸塗装に必要な面積に足場を設置した場合、約20万円の費用になると考えられます。
●雨戸の交換費用は高額
サビが全体に広がって、塗装でも補修できないほど劣化した雨戸は、本体ごと交換しなければなりません。
雨戸単体の塗装は、足場代を除くと約3,000円で行うことができますが、交換する場合は1箇所につき10万円、雨戸のサイズによっては20~30万円の交換費用になることもあります。
雨戸が塗装でも補修できなくなり交換することになって、塗装よりも割高な交換費用が発生しないように、できるだけ数年おきに雨戸のサビや傷の有無、塗装の剥がれなどをチェックし、立て付けが悪く開け閉めしづらいと感じれば早めに戸車(雨戸についている車輪部分)などの小さなパーツを交換して、雨戸の耐久性を長持ちさせましょう。
■雨戸の種類
雨戸は、
- 稼働方法の違い
- 形状の違い
- 素材の違い
によって種類を分けることができ、種類の違いによって修繕方法やメンテナンスの頻度も変わってきます。
1.稼働方法の違い
雨戸やシャッターには、手動式と電動式があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
●手動式雨戸
手動で開閉する雨戸は、設置コストが電動式に比べると安く、使用時に電力を必要としないため、非常に経済的ですが、大きなサイズになると年配の方や女性などは開け閉めしづらくなり、高い位置にある雨戸は男性でも開閉が困難です。
開け閉めのしにくさが原因でせっかく雨戸を設置したにも関わらず使わずにいると、定期的に動かさないことによって余計に雨戸のサビが進行してしまい、ほとんど使わないうちに雨戸を撤去または交換することになってしまいます。
●電動式雨戸
電動式雨戸は、電力で稼働しスイッチを押すだけで開閉できる雨戸で、高い位置にある窓に取り付ける雨戸や、リビングの掃き出し窓などにサイズが大きく重い雨戸を取り付ける場合などは、電動式にしておくと力が弱い方でもスムーズに動かすことができ、雨戸を使いたいときに手軽に使用できます。
ただし、電動式は導入やメンテナンスのコストが手動式の1.5~2倍以上になることがあり、予備電源で動くタイプにしておかなければ、停電時には使えなくなってしまう点に注意が必要です。
2.形状の違い
雨戸には、パネルが一枚の板でできている単板タイプと、ルーバーで調光や換気が行えるタイプがあります。
●単板タイプ
手頃な価格で購入できる最もオーソドックスな雨戸で、雨戸が一枚の板でできており、調光や換気はできませんが、ルーバー部分のメンテナンスが発生しません。
●ルーバータイプ
表面に可動式のルーバーが付いている雨戸で、このタイプの雨戸であれば、わざわざ雨戸を開けなくてもルーバーの角度のみを変えて、雨戸を閉めた状態で日差しを室内に取り入れたり、ルーバー部分のみを開いて室内の温度調節をしたりすることができます。
ルーバータイプの雨戸には、ルーバーを開けていてもルーバーの外側から室内が見えないように、防犯性にも配慮されている商品も登場しています。
上記のようにメリットが多いルーバータイプですが、単板タイプに比べると設置コストが高く、ルーバー部分のメンテナンスが発生します。
3.素材の違い
最もよく目にするのは、金属製の雨戸ですが、和風の建物にも馴染む木製の雨戸も登場しています。
●金属製雨戸
金属製雨戸では、サビにくいアルミタイプのものが広く普及しており、古くて重い旧式の木製雨戸に比べると、軽くて価格も安い点で人気があります。
●木製雨戸
金属製の雨戸が登場する前に使われていた木製雨戸は、雨や汚れでカビや腐食しやすいという脆さがありましたが、近年登場している木製雨戸は、耐候性と耐久性が強化されています。
■雨戸を構成するパーツ
雨戸を構成するパーツの名称を知っておくと、故障の原因やリフォーム費用などが予測しやすくなります。
1.パネル
雨戸と聞いたときに、多くの人が真っ先に思い浮かべるのがパネルですが、このパネルに、枠や戸車などのパーツが付いて、ひとつの雨戸となります。
2.上下の枠
上枠と下枠に分かれており、この枠に、戸車やレールが付いて、雨戸を強固に一体化します。
3.戸車とレール
「戸車」とは、雨戸を横方向にスライドさせるために雨戸の下部に取り付けられている車輪のことで、戸車やレールが劣化してくると、開閉しづらくなりますので、パネルの点検と併せて忘れずにサビや変形の有無をチェックしておきましょう。
4.戸袋
雨戸を使わないあいだしまっておく収納部分のことで、窓枠の左右、または片側に取り付けられており、雨戸を使っているときも未使用時も常に紫外線や雨風に晒されていますので、雨戸本体よりも点検頻度が高いパーツです。
■雨戸塗装の時期と流れ
雨戸そのものの耐久性は決して短くはありませんが、外壁や屋根の推奨メンテナンス時期は約10~15年に1度と言われますので、雨戸もこのタイミングに合わせてメンテナンスを済ませておくと良いでしょう。
1.雨戸の耐用年数は?
雨戸の耐用年数は、約13~15年前後で、一般住宅の窓に取り付けられているような手動式の雨戸であれば、約10,000回は開け閉めをしても壊れないように設計されています。
また、開け閉めが頻繁な箇所の雨戸ほど、部品の傷みが早くなるため、耐用年数よりも先に部品や戸の交換が必要になります。
2.雨戸塗装の流れ
雨戸塗装の工程も、基本的には外壁・屋根と同様ですが、雨戸の両面を塗装するときは、雨戸をいったん取り外して作業が行われることもあるため、工事期間中は窓が無防備な状態になります。
雨戸塗装は、下地処理に約1日、塗装に最低でも3日の工期になりますので、台風シーズンや梅雨の季節などには、雨戸単体でも、施工はなるべく避けておいた方が良いでしょう。
●下地処理
雨戸の表面に付いている、泥やホコリ、サビなどを、高圧洗浄機で落とし、サビが発生している金属製の雨戸を塗装するときは、「ケレン作業」と呼ばれるサビを落とす工程も行われます。
ケレン作業はサビ落としだけでなく後から塗る塗料の密着性を高めるためにも必要な工程で、わざとヤスリやサンドペーパーで微細な傷をつける「目粗し」効果によって、塗料を弾きやすい金属製の雨戸でも微細な傷にひっかかって密着しやすくなります。
●塗装作業
仕上げ用塗料が密着しやすいように下地材を塗装し、その後、仕上げ用塗料を2回(中塗り・上塗りとも言います)塗り重ねて簡単に剥がれない丈夫な塗膜を雨戸の表面に作ります(外壁や屋根と同様に三回塗りが基本です)。
なお、雨戸の下塗り塗料ではサビ止め機能を持つ種類が使われますが、仕上げ用塗料の種類としては金属にもよく密着するウレタン塗料が使われる傾向にあります。
雨戸用の仕上げ用塗料はウレタン塗料の他にも、最高位グレードのフッ素樹脂塗料やシリコン塗料のほか、室内の熱を屋外に逃がさない断熱機能を持つ「断熱塗料・ガイナ」などの機能性塗料も使用できます。
雨戸の塗装に使いたい塗料があれば施工業者に質問して見積もりを取ってもらい、耐久性の違いや次の塗替え年数などを教えてもらったうえで見極めると良いでしょう。
■おわりに
雨戸は、外壁や屋根とは違って、付帯部のひとつとして捉えられるため、交換が必要なほど深刻なダメージが生じていない限り、雨戸塗装を後回しにしてしまう業者もありますので、業者選びには注意が必要です。
外壁塗装前の無料診断で、外壁と屋根と併せて、雨戸の耐久性もしっかりチェックしてくれる優良業者を選んでおきましょう。