台風シーズンを前に外壁塗装を済ませておくべきメリット

毎年、お盆を過ぎたあたりから9月ごろになると、日本列島に台風が接近しやすくなり、近年では、九州南部や奄美地方、四国地方といった台風の被害を毎年受けることが多い地域だけでなく、例年であれば台風の害をあまり受けない関東や東北などのエリアでも大型台風による被害がニュースなどで報じられるようになりました。

台風接近時に外壁や屋根が劣化していると、台風が通過した時に損傷が大きくなってしまう可能性があるので、台風が来る前に可能であれば外壁、屋根の補修も兼ねた外壁塗装工事を行っておきましょう。

■台風で発生する外壁・屋根の被害とは

台風とは、最大風速が17m/s(1秒あたり17メートル)以上の威力を持つ熱帯低気圧のことで、強い風と雨をもたらす台風は、大切なお住まいの外壁や屋根に、深刻な爪痕を残すことがあります。

 

また、外壁塗装工事の最中に台風が接近してしまうと、すべての作業を中断しなくてはなりませんので、工事が予定どおり行えず、工事期間が延びてしまいます。

そのため、秋など台風が発生しやすい季節の外壁塗装では、台風の接近を想定して、普段よりも慎重に工事予定を考えなくてはなりません。

 

なお、台風などの自然災害が原因で工期が延長しても、追加料金や割増料金を取られることは基本的にはありませんが、もし台風が接近していて延長料金が発生するか不安なときは、塗装業者と契約する前に見積もりの時点で、台風などの自然災害で工事が延長した時の取り決めを交わしておきましょう。

1.強風による被害

台風の最低基準である17m/s(メートル毎秒)という風速は、走行中の車の窓から顔を出したときと同じくらいの強さですので、軽い石や屋外の小物などは、カンタンに吹き飛ばされてしまいます。

 

台風は強さが増すにつれ、最大風速は33~44m/s、44~54m/sと上昇して行き、最大風速が54m/sまで上昇した台風は「猛烈な台風」と呼ばれるようになり、さらに大型の台風に成長すると、最大風速が15m/sを上回る範囲が500~800kmまで拡がり、接近したエリアは非常に危険な暴風雨に見舞われます。

通常、風速20m/sでは大人がまっすぐ歩けなくなり、25~30m/sになると、しっかり固定されていない屋外の物や建物の外装は、風で飛ばされるようになるといわれます。

さらにもし、風速60m/sを超えれば、丈夫な鉄骨の建物でも何らかのダメージを受けると考えられるでしょう。

●剥がれた外装材が落下・飛散する

家には、屋根瓦やタイルといった、外装材のほか、雨樋、雨戸、外装の飾り、エントランスのポストや塀のレンガなど、様々なパーツが付いており、しっかりメンテナンスされていれば、小型の台風が接近してもカンタンに剥がれてしまうことはありませんが、長年点検を怠り、接着が甘くなっていれば、台風の風で吹き飛ばされる確率が高くなります。

台風の強風下で、これらのものが落下・飛散すると、大切なお住まいの外壁や窓、家族や通行人、近隣の住宅などを傷つけてしまう恐れがあるのです。

●足場の強風対策が必要になる

先述したとおり、もし工事の途中で台風が接近したとき、雨が降っていなくても、強風で職人が足場から転落する恐れがありますので、工事自体を中断しなければなりません。

 

建物の周りに組まれている足場についても、工事が中断していても、別途強風対策を行わなければなりません。

外壁塗装の足場の周りには、飛散した塗料や高圧洗浄中の水しぶきなどが敷地外に拡がらないように、飛散防止用の大きなメッシュシート(ネット)が張られており、このメッシュシートは台風の風に煽られやすく、飛散防止シートを留めている足場もろとも強風で倒壊させてしまう恐れがあるのです。

 

また、建物との間隔が十分に取られずに組まれた足場が、風で揺れて建物を傷つける恐れがあるため、台風シーズンは、施工管理を厳重に行える業者に頼む必要性が特に高まるといえるでしょう。

2.大雨による台風の被害

熱帯低気圧が台風と呼ばれるようになるのは、風速が17m/sになったときで、風速が17m/s下回った台風は元の熱帯低気圧と呼ばれるようになり、定義としては台風ではなくなりますが、台風が熱帯低気圧になっても風速が弱まるだけで、接近したエリアに雨を降らせないわけではありませんので、外壁塗装の工事は遅れがちになります。

また、進み続けて北上した台風が冷たい空気にぶつかると、台風が持つ暖かい空気と冷たい空気の運動エネルギーが発生し、温帯低気圧に変わることがあります。

台風は渦の中の暴風域が限られていますが、温帯低気圧は暴風域が広範囲のため、場合によっては台風以上の被害を出すことも考えられます。

 

熱帯低気圧と温帯低気圧は、名前は似ていますが構造が異なる別の存在であり、両者の違いをまとめると、

  • 台風が熱帯低気圧に戻る→風速は収まる、雨は降り続けることがある
  • 台風が温帯低気圧に変化する→風速も雨も収まらないことがある

となり、たとえ台風接近中に強風が収まって低気圧に変わっても、雨のリスクがなくなるわけではないことに注意が必要です。

●雨漏りを誘発する

台風通過後に被害の報告が多発するものといえば、何と言っても雨漏りですが、この台風が原因で発生する雨漏りの事例としては、

  • 台風の強い風で屋根材が剥がれ、屋根材の下にある防水層(ルーフィング)が剥がれたり破れたりして、室内の天井から雨漏りが起きてしまう
  • 雨樋が正常に排水しきれないほどの大雨が降り、雨樋から雨水が溢れて外壁に当たってしまい、外壁のひび割れや軒天などの継ぎ目から室内壁に雨漏りが起きる
  • 窓サッシと外壁材隙間のシーリング(コーキング)が劣化して裂けていた所に雨水が当たり、裂け目から水が入って室内に雨漏りを引き起こす

などがあります。

 

いずれのケースも、もともと劣化した箇所や防水性が低下していた箇所が、強い風と雨が決定打となって雨漏りに繋がっており、このようなケースに陥らないためにも、台風が来る前にしっかり雨漏り予備軍となる劣化を補修しておかなければなりません。

●普段は雨が当たらない箇所も濡れてしまう

軒天など、通常時は雨が当たらない箇所は、外壁や屋根ほど防水対策が取られていないことがあるため、通常時であればよほどのことがない限り雨は当たらない箇所でも、台風の強い風で雨水が当たり、腐食したり、雨漏りを発生させたりすることがあります。

ただ、これらの箇所を予め台風対策のために防水対策してしまうとコストが掛かりすぎてしまうので、台風後などに確認し、なにか以上があれば業者に相談するという流れで考えておきましょう。

■台風の害が招くトラブル

台風の害は、建物の一時的な破損や故障だけではなく、台風が原因で起きる、近隣住人とのトラブルや、知らぬ間に進行する劣化などにも注意が必要です。

また、台風通過後は、一時的に業者への依頼が殺到し、作業員の手が追い付かず、修理が遅れてしまったり、修理を頼むこと自体できない恐れがあります。

1.近隣住人との台風によるトラブル

台風の風で自宅の敷地内に置いていた物が飛んでしまい、近隣住宅の外壁や窓ガラス、車などの私物を破損させたり、近隣住人にケガをさせたりする恐れがあります。

もし自宅の敷地内に設置していたブロックや塀などの設備が強風で飛んでしまい、周りの家や人に被害を与えても、原因が台風などの自然災害であれば防ぎようがありませんので、設備の持ち主が責任を負う必要はないと考えられます。

しかし、屋根瓦が剥がれかけているにも関わらず放置し続けていた場合や、フェンスやブロック塀などを住人がDIYで設置して強度が不十分だった場合など、明らかに持ち主の安全対策不足が認められる物が台風で飛ばされて周りの家や人に被害を与えてしまった場合は、台風に関係なく設備の持ち主が過失の責任を問われるでしょう。

外壁塗装を行う・行わないにかかわらず、先述の「走行中の車の窓から顔を出したときと同じくらいの強さ」で飛んでしまうようなものがないか、家の周りを点検しておくのがよいでしょう。

2.見えない箇所にダメージが蓄積される

台風が通り過ぎて、雨漏りや屋根材の剥がれなどが起きなくても、台風の強い雨と風は、見えない箇所の劣化を進行させている恐れがありますので安心することはできません。

台風通過後は、雨樋や屋根、窓まわりなどを、目に見える範囲だけでもなるべくセルフチェックしておくことが大切ですが、屋根の上や高い位置にある窓サッシ、雨どいなどは、脚立を使わなければ目視できず、プロにしかわからない劣化のサインなどは、素人では見逃してしまう恐れがあります。

 

もし、住まいのメンテナンスを10年近く実施していないようであれば、プロの目線で、ふだんは見えない箇所も、隅々まで点検してもらうことをおすすめします。

外壁塗装前の点検について詳しくは、「外壁や屋根の点検で気をつけるべき事」の記事をご覧ください。

3.修理を頼める業者が見つからないことがある

少し先に触れましたが、大型の台風が通過したあとは、近隣の塗装業者やリフォーム業者は、各家の修理やメンテナンスの対応に追われることになるため、もし台風通過後に住まいに劣化が生じても、修理を頼める業者がなかなか見つからず、数日後や1週間後の対応となってしまうこともあるでしょう。

そうなってしまうと、業者の修理を待つあいだ、雨漏りや屋根材の剥がれなどを我慢し続けなければならず、劣化もさらに深刻化してしまいかねません。

業者に対応を早めてもらうことは難しいため、深刻化しそうな劣化症状があれば、他の業者にも連絡して来てもらえるかどうかを確認しましょう。

■台風接近前に家を点検すべき2つのメリット

台風による住まいの被害を食い止めるためには、台風接近前の、早めの点検が肝心で、台風接近前に点検を済ませておくことには、2つの大きなメリットが隠れています。

1.劣化を最小限に食い止められる

台風が原因で損傷した箇所は、台風が接近する以前から、ある程度劣化が進行していた可能性があり、外れかけの雨樋や割れた屋根瓦などを、台風シーズンを迎える前に見つけて補修しておくことで、台風の被害を最小限に抑えることができるでしょう。

●最小限のメンテナンスで補修費用も抑えられる

屋根瓦や外壁のタイル、外壁材や雨樋などは、外れかけの状態であれば、再度接着することで再利用が可能ですが、屋根瓦やタイル、レンガなどが台風で飛ばされ地面に落ちて割れてしまった場合は再利用できず、部材を交換しなければなりません。

再度接着する工事よりも、新しい部材を購入して貼り付ける工事の方が、工事費用は割高になってしまうため、やはり先に確認して補修しておくのが重要といえます。

2.直近で施工した現場は優先的に対応してもらえる

もし台風前にリフォーム工事を行った場合、業者は数日間は施工後のようすを気にかけてくれるため、もし施工後すぐに台風などの自然災害が接近したとなれば、直近で施工した物件で不具合が起きていないか、営業担当者は連絡を入れてくれることもあり、その際に外壁や屋根に起きている不安なことを伝えれば、もちろん見に来てくれるでしょう。

 

つまり、台風シーズンの直前にリフォームを済ませておくと、リフォーム業者から優先的に処理してもらえる確率が高くなるのです。

■おわりに

強い雨と風を伴う台風は、ふだんであれば生じないような深刻なダメージを住まいにもたらす恐れがあり、そのため、元から劣化が進行していた箇所は通常よりも劣化の確率が高くなり、家中のあちこちで、雨漏りや外装材の剥がれと言った不具合が一斉に起きないとも限りません。

 

台風の被害を拡げないために何よりも大切なのは、台風が接近する前に家の劣化診断を済ませ、劣化している箇所をあらかじめ補修しておく計画性であるため、普段から家のメンテナンスには注意を払っておきましょう。

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