外壁塗装工事後に塗り残しを発見した時の対策と予防

外壁塗装の完成後、きれいになったと思って見た時に、1箇所でも塗り残しがあれば、長い工事を終えた解放感や達成感も一気に失われてしまいます。

 

素敵な気分をぶち壊しにする塗り残しを発生させないためにも、塗り残しが起きる原因や、防ぐための対処法を知って、外壁塗装のトラブルを回避しましょう。

塗り残しがあるとどうなるか

塗り残しとは、本来塗装すべき箇所が、何らかの理由で塗装されずに放置されている状態を指しますが、塗り残しが起きる原因の大半は施工ミスによるものです。

1.外壁・屋根が保護されない

塗り残しある場合の最も恐ろしい点は、外壁塗装前よりも外壁や屋根の耐久性にダメージを与えてしまう点です。

なぜそのようなことになるのかというと、通常、外壁や屋根の塗替えを行う時は、塗料の密着性を高めるために、外壁や屋根表面の汚れやコケなどの異物はすべて取り除かれます。

汚れヤコケだけでなく外壁に残っている古い塗膜も、上から塗る塗料の密着性を損ねる恐れがあるため、高圧洗浄機の水圧や手作業などですべて他の異物と同様に除去されますので、塗装後には古い塗膜はすべて無くなってしまいます。

 

そのため、塗り残しがある箇所、つまり塗料が塗られていない箇所は、当然、何にも保護されていない状態になってしまいます。

この状態では、紫外線や雨、汚れやコケなどが外壁・屋根材に直に当たるようになり、本来の耐用年数よりも早く劣化してしまいかねません。

2. 塗り残しによって建物の美観が損なわれる

窓サッシの周りだけ塗られていなかったり、入隅や出隅(家のへこんでいるところや突き出ているところ)に塗り残しがあったりすると、非常に目立ってしまいます。

悪質な塗り残しになると、下地の色が透けて見えてしまうほど色ムラのある状態で放置されてしまうため、早急に別の業者に再塗装を依頼する必要があります。

■なぜ塗り残しは起こるのか

外壁塗装は、職人が手作業で行う以上、人的ミスが起こる可能性も0%ではありませんので、塗り残しというのは起こりえますが、塗装後に何度も業者さんがチェックを行いますので、塗り残した状態で引き渡しということは通常ありえません。

1.塗り残しが起こる原因

塗り残しは、単純なケアレスミスで起きることもあれば、施工環境が原因で起きてしまうこともあります。

●塗装した職人の不注意

最も多い塗り残しの原因は、職人が施工箇所を失念していたというものです。

「外壁の一面だけ塗り忘れていた」といった極端なケースはほとんどありませんが、ローラーからハケに持ち替えて作業を行う箇所や、溝や目地などの細かい箇所は、塗り残しが起きやすくなります。

 

そのため、塗装を行う職人は、ミスが起きやすい箇所に、

  • 塗り忘れないようにテープなどの目印を付けておく
  • 養生テープを貼って塗装が終わるまで剥がさない
  • 進捗を忘れないように作業を止めず続けて行う
  • 塗り忘れそうな箇所を先に塗装しておく

などのような工夫を取り入れて、仕上げの際に塗り残しが起きないようにしており、塗り残しを防ぐためのこのような工夫は、塗装用語で「ダメ込み」と呼ばれます。

●中断が長引いて作業内容がわからなくなった

雨や湿気、夜間の結露など、屋外で行う塗装工事は、工事スケジュールが気象条件に非常に左右されます。

特に、梅雨は雨で工事が中断しやすいため、中途半端な状態で、長期間工事が行えないケースも少なくはありません。

 

そのため、工事を再開した時に、どこまで施工していたかわからなくなってしまい、塗り残しが起きてしまうことがあります。

●塗った箇所がわかりづらいクリヤー塗料を使用した

クリヤー塗料とは、成分に塗料の色を作る「顔料」が配合されていない、透明の塗料で、デザイン性の高い意匠性サイディングやタイルなど、色付きの塗料で塗り潰せない外壁の表面保護と、艶出し目的で使われることがあります。

 

無色透明のクリヤー塗料は、塗装している時、どこまで塗ったかを光の反射具合などで判断しなければならないため、塗りムラや塗り残しが比較的起きやすい塗料です。

そのため、エスケー化研が販売しているクリヤー塗料『SKセラミファイントップ』は、塗り残しが起きないよう薄紅色に着色されており、塗装から数日経つと色が消えて無色になるという工夫が施されていますが、すべてのクリヤー塗料にそのような工夫が凝らされているわけではないため、クリヤー塗料で塗装するときは特に塗り残しに注意が必要です。

もしクリヤー塗料を使った塗装を希望する時は、工事前に、使用する塗料の種類や施工手順について、業者とよく打ち合わせておきましょう。

2.塗り残しを防ぐ方法

塗り残しは、業者の施工方法をただ見守るだけでは防ぐことはできません。

塗装作業中は業者から工事報告書をこまめに提出してもらって進捗を確認し、もし不安であれば施工業者とは関係ない第三者の機関に完了検査を実施してもらうなどして、塗り残しなく塗装されたことを確実にチェックするとよいでしょう。

●工事完了検査を実施する業者を選ぶ

塗装工事終了後は、多くの業者が、施主立ち合いの完了検査を行いますが、その中で、塗り残しなどの施工ミスや、打ち合わせと違う施工などが行われていた時は、その場でやり直し(ダメ直し)を行ってもらえるため、必ず立ち会いに協力しましょう。

 

しかし、塗り残しや施工ミスは、塗装の知識がない施主では、一目でわかりにくいものですし、施工を行った業者自身も、同じ場所で長時間施工し続けたことによって判断力が鈍ってしまい、意外な見落としをしてしまうケースもあります。

施主でも施工業者でも見落としてしまうような塗り残しを防ぐためには、中立的な第三者機関に完了検査を実施してもらうという方法があります。

 

第三者機関の完了検査は、「住宅かし担保責任保険(リフォーム瑕疵保険)」に加入することで受けられますが、この保険に入るためには「住宅かし保険事業」に登録している塗装業者に施工してもらう必要があります。

住宅かし保険とは、外壁塗装などのリフォーム工事の後で施工不良に気づいたとき、補修費用として保険金が降りる制度のことで、国土交通省指定の保険法人で事業者登録を行った塗装業者のみ取り扱うことができる保険です。

塗装工事の際に住宅かし保険の加入を希望すると、塗装工事の完了時に保険法人の検査員が現場まで検査に訪れます。

第三者の検査員が、塗装の施工品質や工事内容を専門家の目線でチェックしてくれますので、塗装業者が忘れてしまった塗り残しもこのときに気づいてもらえる可能性が高くなります。

 

「住宅かし保険」の登録業者に入っていない業者で工事を終えても瑕疵保険も完了検査も受けられませんので、契約する前にかし保険事業者かどうかを必ずチェックしておきましょう。

●工事内容を密に報告してくれる業者を選ぶ

工事中の施主との関わり方は、塗装業者によってばらつきがありますが、できるだけ、工事の内容をこまめに報告し、施主と情報を共有してくれる業者が望ましいでしょう。

塗装業者の中には、毎日の工事開始前と作業終了後に作業項目のチェックシートや施主への報告内容をまとめた連絡ノートを作成して、進捗状況や作業内容をこまめに報告してくれる所などもあります。

 

外壁塗装は、基本的に、施主が留守のあいだも行われますので、これらの報告ツールを駆使してくれる業者を選んでおくと、手抜き工事や作業の遅れなども未然に防ぐことができます。

■塗り残しを発見した時の対処方法

施工中も業者と密に連絡を取り合い、塗装後、隅々まで検査を行ったつもりでも、工事完了からしばらく経った頃に、塗り残しに気づくケースも考えられます。

 

このような時は、すぐに業者側の過失と決めつけず、契約書と保証書を手元に用意し、業者からの回答を確認しましょう。

1.契約書に塗り直しの記載があるか確認する

本来塗るべき箇所に塗り残しがあった時は、基本的には業者の施工ミスになりますが、一見塗り残しに見えても、打ち合わせの時に、該当箇所の塗装が約束されていないケースもありますので、まずは落ち着いて、業者から契約時に渡された、見積もりや工事工程表などに目を通しましょう。

●塗り残しかどうかを契約書から判断する

塗装が途中で止まってハケの跡が残っているような塗り残しもあれば、全く手がつけられておらず、一か所だけ何もされていない塗り残しもあります。

前者の場合は、明らかに作業が途中で中断され、見た目にも良い状態ではないため、業者のケアレスミスによる塗り残しと考えられますが、後者のように、作業が行われた形跡が全くないケースでは、いったん、契約書や工事工程表を確認して、施工箇所に含まれていたかを確認しておく必要があります。

 

もちろん、契約書や見積書を見ただけでは塗装箇所だったかどうかわからない場合もありますので、塗り残しを早めに解決するためには、施工業者にすぐ連絡し、どこまで塗装するよう取り決めていたか教えてもらいましょう。

ただし、もし業者が契約書の取り決め通りに塗装していた場合は無償での塗り直しを頼むことはできませんので、塗り残しの箇所は別途費用を払って塗装する必要があります。

2.施工業者に塗り残しを連絡する

打ち合わせ時に塗装を指示していたにも関わらず、塗り残しがあった時は、業者の施工ミスですので、ほぼ無料で再塗装を行ってもらえます。

ただし、足場が必要な高い位置の塗り残しは、安全のために再度足場を仮設する必要があるため、場合によっては足場仮設費用だけ別途請求されるケースもあります。

 

施工業者に連絡する時は、クレームと思われてしまわないように、保証書や契約書、作業工程表などを手元に用意して、塗り残しの状態や箇所などをできるだけ詳しく説明しましょう。

施工ミスの連絡を受けた時、優良業者であれば、スケジュールを割いて駆けつけてくれますが、もし、「すぐに現場に向かえない」と言われてしまった時は、できるだけ早めに来てもらうよう催促しましょう。

3.塗り残しトラブルに巻き込まれたら

塗り残しをしてしまった塗装業者のほとんどは、連絡後すぐに駆けつけ、早急に謝罪と補修を無償で行いますし、場合によっては、粗品を持ってお詫びに訪れる丁寧な業者もいるかもしれません。

 

しかし、悪徳業者の場合、巧妙な手口でさらに代金を巻き上げようとする恐れもありますので、再塗装の連絡後も、解決するまで油断は禁物です

もし、業者の施工ミスにも関わらず、塗り残しを断られたり、追加工事の費用を請求されたりしても、早急に諦めてはいけません。

施工ミスや契約書に違反する塗り残しは、業者の過失ですので、施主が費用を負担したり、別の業者に塗装を再発注したりする必要はありませんので、業者の手口に惑わされないよう注意が必要です。

 

塗り直しを対応してもらえなかったり、現場を見に来てくれなかったりして塗り残しがいつまでも補修されないという状況を招かないためにも、業者と契約する前に、施工範囲についてよく打ち合わせを行い、アフター保証の範囲や適用期間も確認しておき、できれば住宅かし保険が利用できる登録事業者かどうかまで調べておくとよいでしょう。

■おわりに

塗り残しが一部でもあると、建物の美観を損ねるだけでなく、外壁や屋根の耐久性まで落としてしまいかねません。

 

塗り残しが発覚し、過失かどうかで業者とトラブルにならないためにも、契約する前に、工事内容の確認や、施工時の作業手順などを、業者任せにせず、施主自身もしっかり理解しておくことが大切です。

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