外壁に撥水効果を持たせることのメリット・デメリット

外壁・屋根塗装には、建物を雨水から守るという大切な目的もあります。

雨や紫外線、その他屋外の脅威から外壁を守っている塗装は、撥水(はっすい)などの水から守る機能で、雨をさらに寄せ付けない効果が求められます。

 

この記事では、雨水から大切なお住まいを守るために知っておきたい、撥水効果の内容と、メリット・デメリットについて解説します。

■撥水塗料とはどのような塗料か

撥水塗料のメリット・デメリットを知って、ご自身のお住まいの塗装に必要か見極めるためにも、まずは、撥水という効果の特徴と、防水や親水との違いを把握しておきましょう。

1. 撥水・防水・親水の違い

外壁塗装における水対策の方法としては、主に、

  • 撥水
  • 防水
  • 親水(しんすい)

の3つがあります。

 

撥水や親水も含めて「防水対策」または「耐水効果」と一括りにすることもありますが、塗料の防水のしくみは、撥水や親水とは少々異なりますので、それぞれの違いを区別しておきましょう。

●撥水効果とは

撥水とは、水を撥ねつけること、つまり水を弾くことです。

撥水効果を外壁に雨水が当たっても、雨水が外壁に染み渡らず、水滴の粒になって流れ落ちるようになります。

撥水剤は、外壁に膜を張るというよりも、外壁に撥水剤自体が浸透することで効果を発揮します。

●防水効果とは

撥水剤が外壁に浸透して効果を発揮するのと違って、防水効果を持つ塗料は、外壁表面をコーティングすることで防水効果を発揮します。

防水効果を持つ塗料は決して特殊塗料ではなく、樹脂の膜を作る塗料のほとんどは、基本的な防水効果が備わっています。

そのため、塗装すると外壁表面に樹脂膜を作り、雨が外壁に染み渡らないようにします。

●親水効果とは

親水とは、水になじみやすい性質のことで、親水機能を持つ塗料で外壁を塗装すると、表面に親水効果を持つ膜ができます。

この「水になじみやすい」性質とは、「水を吸収する」という意味ではありません。

親水性の塗膜は、雨水が従来よりも外壁に付着しやすい状態になります。

そのため、外壁表面に付着した汚れも雨水が拾って流れ落ちますので、雨が降ることでセルフクリーニング効果を発揮するようになります。

2.撥水剤が使われる外壁

撥水剤は、主に、打ちっぱなしコンクリートなどを保護するために使われる、無色の塗材です。

打ちっぱなしコンクリートは表面が塗料などで保護されておらず、雨がダイレクトにコンクリートに当たってしまいます。

そこで、撥水剤を塗布して内部に浸透させておき、コンクリートの内部や奥にある鉄筋を、表面に当たる雨水などの水分から守る塗装が行われます。

 

そのほか、意匠系サイディングなど、塗りつぶすと意匠性(デザイン性)を失ってしまう外壁材で、無色のコーティングを行うために、撥水剤やクリヤー塗料が使われることもあります。

ただし、撥水剤やクリヤー塗料は無色ですので、塗替えやカラーチェンジ用途には使えず、汚れが多い外壁や、色あせ・ひび割れが発生してしまった外壁に撥水剤を塗布しても、汚れや劣化が透けて見えたまま残ってしまいます。

そのような外壁では、樹脂膜で塗りつぶすウレタン塗料やシリコン塗料による塗替えや、外壁材の張替えリフォーム工事が行われます。

■撥水効果を持つ外壁のメリット

基本的に、撥水剤を選択しなくても外壁塗装は可能で、一般的なシリコン塗料などにも、基本的な防水効果は備わっています。

あえて撥水剤を使用し、外壁に撥水効果を持たせることには、以下のようなメリットがあります。

1.    鉄部を水から守ることができる

窓サッシやフェンス、鼻隠しや雨樋の部材など、外壁には様々な鉄部がありますが、鉄部の最大の弱点はサビです。

サビは金属に水分が当たることで発生し、サビが別の金属に触れることで、どんどん広がって行き、サビが進行すると膨れたり穴が空いたりして、当然耐久性を失ってしまいます。

 

レンガやタイルなど、水で劣化しにくい無機物や、プラスチックやガラスなど水をはじく他の素材と違って、鉄部は、本体に水分が接触すると大きなダメージを受けます。

そのため、鉄部の表面は樹脂膜で防水効果を持たせておかなければならず、鉄骨造の住宅などは、外壁に撥水効果を持たせておくことで、水分からシャットアウトしておかなければなりません。

●鉄筋コンクリートの鉄筋を水から守る

サビが特に深刻なダメージとなるのが、鉄筋コンクリートの住宅です。

鉄筋コンクリートは、鉄筋を支えにしてコンクリートで肉付けしたものですが、内部の鉄筋に水分が浸透し続けると、鉄筋がサビで膨張し、コンクリートが割れてボロボロ剥がれてしまう爆裂現象が起きてしまいます。

2.水を弾くことが汚れ防止に繋がる

水を弾くようになれば、雨や雪も当然弾かれますので、それらに含まれる泥やホコリなども、外壁に付着しにくくなります。

外壁表面に付着した汚れは、蓄積するほど外壁表面にこびりついてしまい、ホースの水洗いでは落とせなくなってしまいます。

特に、リシンやスタッコなど目の粗い仕上げ材が使われているモルタル外壁などは、凹凸に雨水が入り込みやすく、汚れもなかなか落ちません。

そのため、カビやコケなど、水分を栄養源とする菌類も寄せ付けにくくなってしまいます。

このような理由で、撥水剤を塗布しておくことで、水だけでなく、汚れやカビも寄せ付けない外壁になるのです。

■撥水効果を持つ外壁のデメリット

汚れにくく、建物を傷める水分を寄せ付けない撥水剤ですが、決して万能の塗料というわけではありません。

また、建物の立地やお住まいのエリアによっては、撥水剤を塗布したことで余計に建物にダメージが加わる恐れがあります。

ご自身のお住まいの外壁塗装に相応しい塗料かどうか、以下のデメリットを把握したうえで、施工業者によく確認しておきましょう。

1.通気性が悪くなる

外壁表面に付着した水分を、内部に通さないようにするということは、内部で発生した湿気も外に逃げられなくなってしまうことでもあります。

外壁内部で結露や湿気が発生すると、それらが外壁の外に逃げられなくなり、内部に留まってしまい、サイディングの反りやガルバリウム鋼板のサビといった外壁材の劣化や、防水シートや構造材など、外壁の下地部分を傷めることに繋がりかねません。

●通気工法の家でも要注意

基本的に、近年の住宅の外壁は通気工法になっています。

通気工法の家は、外壁と構造体のあいだに、水の通り道が設けられており、躯体側には防水シートも施されています。

この構造によって、外壁内部に雨水が入り込んだり、結露が発生したりしても、防水シートで水は躯体に当たらず、排水孔から出て行くようになります。

 

しかし、撥水塗装をしていると、内部結露が外に逃げにくくなります。

そのため、あまりに多すぎる水分で、防水シートや外壁の内側が傷みやすい状態になる危険性がありますので、屋外と室内で寒暖差が生じやすい地域などは、撥水剤の塗装は十分検討して行わなければなりません。

●鉄筋コンクリートには透湿性機能を持つ塗料がおすすめ

また、鉄筋コンクリートの場合も、撥水剤の通気性には注意が必要です。

コンクリートは、セメント、砂、砂利に水を加えて作ったものですが、施工時に使った水は、経年劣化とともに湿気となって蒸発してくるようになります。

しかし、撥水層があると、コンクリートから蒸発した水分が外に逃げられなくなってしまい、内部の鉄筋が徐々に錆びてしまいます。

とはいえ、外壁表面から届く水分はシャットアウトしなければなりません。

そのようなケースに相応しいのが、透湿機能を持つ撥水剤です。

 

透湿機能とは、外の水は内部に通さず、中の水は外に出す機能のことです。

水は、気体よりも液体の方が粒子は大きいため、透湿性塗料のごくわずかな穴からは、内部の気体だけが抜けていき、外部の液体は入りません。

このような理由から、鉄筋コンクリートの防水対策では、透湿機能を持つ撥水剤が使われます。

2.    塗料自体に防汚機能はない

撥水剤の効果は、あくまでも「水を弾く」のみです。

まれに、「撥水剤で塗装すると外壁が汚れなくなりますよ」として勧めているケースもありますが、汚れにくくなるのは、水を弾くことの付加効果によるもので、撥水剤自体に汚れを分解したり殺菌したりする防汚機能はありません。

外壁表面の汚れを処理する性能を塗料に求めるのであれば、光に反応して汚れを分解する、光触媒塗料を選ぶとよいでしょう。

あるいは、耐用年数が最も長く防汚機能も高い、ハイグレードのフッ素塗料などの使用もオススメです。

 

また、水は弾いても、油やサビ、薬品などを弾く力はないため、これらが付着してしまうと、塗料はおろか、外壁にもダメージが及びます。

特に鉄部の場合、もらいサビなどが付着しては意味がありませんので、サビの発生源をしっかり補修し、防錆塗装をするなどのメンテナンスが必要です。

■おわりに

撥水剤は、外壁にとって厄介な水分を撥ねつけてくれる、頼もしい塗料です。

特に、水分が躯体への大きなダメージとなる打ちっぱなしコンクリートの家では、浸透機能付きの撥水剤を使った塗装が非常に重要になります。

 

しかし、家によっては撥水剤だけで塗装しても効果がなかったり、かえって躯体にダメージを与えたりすることもあるため、すべての家で撥水剤が効果を発揮するわけではありません。

外壁塗装工事後に、塗料の効果を実感するためにも、ご自身の家に相応しい塗料を、工事業者との打ち合わせで見つけていきましょう。

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