
本ページをご覧いただいている方は、外壁塗装のプライマーという言葉が気になって見てくださっている方がほとんどだと思います。
それでは、外壁塗装でいうプライマーとはなんなのでしょうか?
プライマーは、外壁塗装において、外壁の下地とその後に塗る塗料を密着させる、接着剤のような役割を持つ下塗り材(下塗り塗料)のことを指す言葉です。
ただ、外壁塗装の見積もりに「プライマー」と書かれていても、その一語だけでその施工内容を正しく判断することはできません。
実際の現場では、シーラー、フィラー、微弾性フィラー、バインダーなど、似た役割の材料がたくさんあるのです。
ただ、ここでお伝えしたいのは、「大切なのは、それぞれの材料の名前ではなく役割」ということです。
このページでは、外壁塗装におけるプライマーの意味を整理したうえで、外壁材ごとの選び方、見積もりの見方、失敗を防ぐ確認ポイントまで、施主の方が迷わないよう、しっかりと解説しています。
目次
プライマーは「壁と塗料をつなぐ下塗り材」

外壁塗装でいうプライマーは、仕上げ塗料を外壁に密着させるために最初に入れる下塗り材です。
用語としては広く使われますが、住宅の塗替えでは、
- 下塗り材全体をざっくりプライマーと呼ぶ場合
- 下塗り材の中の密着付与を主目的としたものだけを指す場合
の二パターンがあります。
この違いを知らないまま見積書を読むと、必要な工程が入っているのか、材料が合っているのかを判断しにくくなってしまうのです。
最も重要なことは「適正な下塗り塗料が使われているか」

結論から申し上げると、施主が確認すべきなのは、「見積書にプライマーという名前が書いてあるか」ではありません。
確認すべきなのは、「外壁のどのような下地に対して、何の不具合を防ぐために、その下塗り材を選んだのか」なのです。
例えば、下地の材質が吸い込みの強いもの(塗料を吸い込みやすい)の場合、塗料にも吸い込み止めの性能が重要になります。
他の例として、今の外壁に、細かいひび割れや凹凸が多い場合、塗料には平滑化や追従性といわれる機能が必要です。
その他、外壁が金属や塗料の付着しづらい材質(難付着面)である場合、密着性能を最優先で考えて塗料を選出しなければりません。
つまり、プライマー選びは、材料名の暗記ではなく、下地診断の正しさで決まります。
外壁塗装においてプライマーが担う四つの仕事

外壁塗装におけるプライマーの役割は、一つではありません。
主に4つの働きを期待して使い分けています。
ここでは、プライマーが持つ4つの働きについて解説します。
密着性を高める

プライマーのもっとも基本的な役割は、上塗り塗料を壁に密着させることです。
特に、金属、樹脂、表面が緻密な既存塗膜の上では、この働きが不十分だと数年で剥離しやすくなります。
しかし、プライマーを塗ることで、後から塗る上塗り塗料を、長期間、維持することができるのです。
※密着性とは、下地と塗膜がはがれにくく結びつく力のことです。
吸い込みを抑えて、塗りムラを防ぐ

モルタル、コンクリート、窯業系サイディング、ALCのように吸水性がある下地では、塗料の樹脂分が壁に吸われやすくなります。
この状態で、いきなり上塗りに進むと、部分的に塗料が下地に吸われてしまい、色ムラ、艶ムラ、塗膜厚不足が起こってしまうのです。
しかし、プライマーを塗ることで、下地の吸い込みを防ぎ、後から塗装する上塗り塗料を安定させ、長期間、維持できるようになります。
※吸い込みとは、下地が塗料中の成分を過度に吸収してしまう現象です。
劣化した表層を補強する
築年数が経った外壁では、表面だけが弱くなり、手で触ると白い粉がつくことがあります(チョーキング現象といいます)。
この弱った表層を整え、上塗りの土台をつくるのも下塗り材の重要な役目です。
サビや仕上がり不良を起こしにくくする
鉄部への塗装では、防錆性能を持つプライマーが必要になります。
鉄は、水分や酸素に触れると錆びやすく、錆が進むと、塗膜の内側から膨れや剥がれを起こします。
そのため、鉄部では塗料を密着させるだけでなく、錆の発生を抑える下塗りが必要です。
また、下地を均一に整えることで、上塗りの発色、艶、仕上がりの安定にもつながります。
ここを省く、つまりプライマーを塗らなかったり、適正なプライマーを塗っていないと、上塗り塗料を塗った直後はきれいに見えても、数年後に剥がれしまうのです。
三回塗りは基本ですが、下塗りが一回だけとは限りません

外壁塗装は、下塗り、中塗り、上塗りの三工程が基本です。
ただし、実際の現場では、下塗りが一種類だけに固定されるわけではありません。
例えば、軽量モルタルやALCパネル、高断熱型窯業サイディングなどの外壁で、旧塗膜の状態によっては、先にプライマーを塗って密着性を確保し、その上からフィラーを塗って細かなひび割れや凹凸を整えることがあります。
この場合は、
- 下塗り1回目プライマー(下地や旧塗膜との密着を高める機能を持つ)
- 下塗り2回目フィラー(凹凸や細かなひび割れを整える機能を持つ)
- 中塗り
- 上塗り
という流れになり、合計四回塗りになることもあります。
今の下地の材質や旧塗膜の劣化具合などにより、適切な下塗り回数や種類が変わる、ということで覚えておきましょう。
塗り分けの考え方を整理したこちらの記事も合わせて読むと、見積書の読み方がさらに分かりやすくなります。
呼び名の違いを整理すると、見積書の意味が読みやすい

外壁塗装で迷いやすいのは、似た名前の材料が多いことです。
ここでは、住宅の塗替えで混同しやすい呼び名を、施主目線で使い分けられるように整理します。
厳密な名称ではなく、現場で期待されている役割で読むことがポイントです。
プライマーとシーラーは、重なる部分が多い

現場では、プライマーとシーラーをほぼ同じ意味で使うことがありますが、珍しいことではありません。
この2つは機能的に重なることが多いため、そのように扱われることもあるのです。
ただし、施主が判断するときは、「プライマーは、密着性を高める下塗り材」と考えると分かりやすくなります。
つまり、外壁や鉄部などの下地と、その上に塗る塗料をしっかりくっつけるための材料です。
一方、シーラーは「塗料を吸い込みやすい材質に使われる下塗り材」です。これは、塗料を吸い込みやすい外壁に先にしみ込ませて、表面を固めたり、上塗り塗料が必要以上に吸い込まれないようにしたりする役割があります。
窯業系サイディングやモルタルでは、シーラーという名称の密着性の高い製品が使われることがありますし、金属用プライマーには、密着性だけではなく、防錆性能を兼ねるものもあります。
つまり、プライマー、シーラーなどの名称だけで分けるのではなく、商品説明の適用下地を見ることが大切なのです。
フィラーは、面を整える下塗り材

フィラーは、凹凸をならし、細かいひび割れを埋める役割が強い下塗り材です。
モルタル外壁やALCのように、面の粗さや細いクラックが出やすい下地で選ばれやすくなります。
微弾性フィラーは、フィラーの中の一つで、少し柔らかい性質を持っています。
そのため、ヘアークラック(髪の毛のように細いひび割れ)などがあるモルタル壁などに使用されます。
ただし、ヘアークラックなどには、微弾性フィラーが使用されることがありますが、深い割れ、動いている割れ、漏水につながる割れなどは塗料ではなく、補修を行う必要があります。
バインダー、サーフェイサーも下塗り材

バインダーは、下地と上塗り塗料の間をつなぐ役割を持つ下塗り材です。
プライマーも密着性を高める材料ですが、プライマーが「下地に塗料をしっかりくっつけるための最初の土台」として使われるのに対し、バインダーは「下地と上塗りの間をなじませるつなぎ役」として使われることがあります。
サーフェイサーは、表面を整える働きが強い下塗り材です。
小さな凹凸や色ムラを整え、発色や艶を安定させるために使われることがあります。
プライマーは「くっつける」、バインダーは「間をつなぐ」、サーフェイサーは「表面を整える」と考えると、役割の違いが分かりやすくなります。
ただし、製品によっては「プライマーサーフェーサー」のように、密着性・シーラー機能・表面調整機能を兼ねるものもあります。
実際に、関西ペイントの資料でも、シーラー機能と中塗り機能を兼ねたプライマーサーフェーサーが示されています(アレスダイナミックプラセフなど)。
外壁塗装の見積書に、プライマーやシーラーなどの下塗り材の名称が出ても、それぞれの下塗り材がどのようなものかを覚えておく必要はありません。
下塗り材では、「どの部位に、どの不具合対策として使うのか」を確認すれば十分です。
適正な下塗り材は信頼できる優良業者に選んでもらう

下塗り材は、価格や商品名だけで選ぶものではありません。
外壁の素材、古い塗膜の状態、劣化の進み具合、上塗り塗料との相性によって、適した下塗り材は変わります。
そのため、施主が見積書だけを見て「この下塗り材が正しい」と判断するのは難しい部分があります。
大切なのは、優良な外壁塗装業者に現地調査をしてもらい、外壁の状態に合わせて下塗り材を選んでもらうことです。
例えば、外壁が塗料を吸い込みやすい状態ならシーラー、表面の凹凸や細かなひび割れを整えたい場合はフィラー、鉄部や金属部分には、防錆性のあるプライマーが選ばれることがあります。
つまり、下塗り材は「どれが一番高性能か」ではなく、「今の下地に合っているか」で選ぶことが重要です。
見積もりを確認するときは、下塗り材の製品名だけでなく、なぜその材料を使うのかも説明してもらいましょう。
「外壁のどの状態に対応するための下塗りなのか」「上塗り塗料との相性は問題ないのか」「下塗りは一回で十分なのか、二回必要なのか」といった点を説明してくれる業者であれば、材料選びの根拠が見えやすくなります。
反対に、下塗り材の名前が見積書に書かれていない、外壁の状態を見ずに同じ材料をすすめる、下塗りの理由を説明できない業者には注意が必要です。
施主が細かい材料知識をすべて覚える必要はありません。
大切なのは、現地調査を丁寧に行い、下地の状態に合わせた下塗り材を提案してくれる業者を選ぶことです。
塗装用プライマーと、シーリング用プライマーは別物

施主の方がプライマーとよく勘違いしてしまうのが、シーリング用プライマーです。
シーリング用プライマーは、プライマーという名前がついていますが、外壁全体に塗る下塗り材ではなく、目地に充填するシーリング材を密着させるための前処理材です。
同じプライマーという呼び名でも、目的が違います。
目地打ち替えをともなう工事では、外壁塗装用の下塗り材とは別に、シーリング用プライマーが必要になることがあります。
ここを省くと、目地のはがれ、端部の浮き、早期破断が起こりやすくなるのです。
目地補修の考え方は、シーリングの基本を整理したこちらの記事も合わせて確認しておくと、塗装との関係がさらに分かりやすくなります。
外壁材と劣化症状で、選ぶべき下塗り材は変わる

外壁塗装のプライマー選びで、最優先になるのは下地の種類です。
同じ戸建て住宅でも、窯業系サイディング、モルタル、ALC、金属では、必要な性能が大きく変わります。
さらに、既存塗膜の種類、ひび割れの深さ、さびの進み方まで見ないと、適切な判断になりません。
窯業系サイディングは、既存塗膜の状態確認がもっとも重要です

現在の戸建て住宅で主流なのが窯業系サイディングです。
この外壁では、下地そのものよりも、既存塗膜が何なのか、表面がどれだけ難付着化しているのかが選定の分かれ目になります。
一般的な再塗装なら、吸い込みとチョーキングの診断が先

一般的な窯業系サイディングなら、吸い込みの強さ、チョーキング、表面の劣化度合いを見て、シーラー系か高付着型の下塗り材を選びます。
下地の劣化が軽ければ、水性系の下塗り材で対応できることもあります。
下地の表面が傷んでいる場合、浸透補強性の高いタイプや、より密着力の高い仕様が必要になります。
ここで重要なのは、サイディングだからといって、一律に同じ下塗りではないという点です。
高意匠サイディングや難付着面は、専用の考え方が必要

光触媒、無機、フッ素、親水処理などが施された高意匠サイディングは、一般的な下塗り材では付着しにくいことがあります。
このような一般的な塗装仕様では塗膜が付きにくい状態のことを難付着といいます。
この場合、専用の高付着下塗り材や、メーカーが想定した塗替え仕様で考える必要があります。
見た目がきれいだったとしても、試験施工や付着確認をしないまま塗り進めると、あとで膨れやはがれが出てしまう可能性があるため、十分な下地確認が必要です。
モルタル外壁は、ひび割れの深さで判断が変わる

モルタルは、細かなクラックと面の不陸(ふりく。平らではないこと)が出やすい外壁です。
そのため、密着だけでなく、補修と平滑化まで含めた下塗り計画が必要になります。
幅0.2ミリ未満の細いひび割れなら、微弾性フィラーが候補

漏水や構造的な問題のない、ごく細いひび割れなら、微弾性フィラーやフィラー系材料で面を整えながら仕上げられることがあります。
モルタル外壁でプライマーだけでは不十分と言われるのは、プライマーには、クラックを埋める力がなく、フィラーなどが持つ「平滑化機能」が必要なためです。
幅0.2ミリを超える割れや欠損は、補修を先に行います
深い割れ、動いている割れ、欠損がある部分は、フィラーやプライマーを塗る前に補修しなければなりません。
下塗り材は、補修材の代わりにはならないためです。
もし、外壁に、0.2mm以上の大きなクラックがあるのにもかかわらず、見積書でフィラーだけが書かれていて、クラック補修の工程が見当たらない場合は、必要な補修をしていないということなので、その業者に補修工程について確認しましょう。
適切な補修をせずに、塗料で見た目だけ整えても、数年後に同じ場所から不具合が発生してしまいます。
ALC外壁は、吸水性と放湿性の両方を意識

ALCとは、軽量気泡コンクリートのことです。
吸水しやすく、表面強度も高いとは言えないため、外壁塗装では下地調整の考え方がとても重要になります。
ALC外壁は、下地調整と吸い込み対策が必要

ALCでは、下地調整材で面を整えたうえで、吸い込みや表層の弱さに対応した下塗り材を選ぶのが基本です。
細かな凹凸や目地の動きもあるため、単に「プライマーを一度塗っただけで次の工程に進む」と、仕上がりも耐久性も不安定になりやすくなります。
ALC外壁に防水は必要だが、目地部分も考える必要がある

ALC外壁は、水を吸いやすいので、防水性のある塗装や仕上げが必要です。
ただし、ALC外壁には「目地」と呼ばれるパネル同士のつなぎ目があります。
この目地には、建物の揺れや温度変化に合わせて少し動く「シーリング材」が入っています。
ここに、硬いセメント系の材料を広くかぶせてしまうと、下のシーリングは動くのに、上の硬い材料は動けません。
その結果、ひび割れたり、浮いたり、剥がれたりする原因になります。
つまり、ALC外壁では、壁全体を防水するだけでなく、目地まわりが動くことまで考えて、下塗りや補修方法を選ぶことが大切なのです。
金属外壁と付帯部は、素材の違いで下塗りが変わる

金属部の下塗り材は、どこでも防錆プライマーでよいと思われがちです。
しかし、鉄、ガルバリウム鋼板、アルミ、ステンレスでは、下塗りの考え方が異なるのです。
鉄部は、ケレンと防錆プライマー

鉄部の下塗り段階では、防錆性能を持つプライマーを塗るのが基本です。
ただし、それ以上に重要なのが、ケレンという作業です。
ケレンとは、サビ、汚れ、弱った旧塗膜を落として下地を整える作業のことを指します。
サビが残ったまま、高性能なプライマーを塗っても、短期間で不具合が再発してしまうことがあります。
鉄部の見積もりでは、「サビ止め」だけでなく、どの程度のケレンを行うのかまで確認してください。
ケレンについて、詳しくは、こちらの記事もご覧ください。
下塗り材は塗る場所に合うものを選ぶ必要がある

ガルバリウム鋼板のような「めっき鋼板」や、アルミ、ステンレスなどの金属面では、鉄部用の一般的なさび止めをそのまま流用できないことがあります。
その際は、塗装する素材に適合した密着プライマーや、対象素材に使える変性エポキシ系プライマーなどを選ぶ必要があるのです。
これらの素材は、表面が滑らかで塗料が密着しにくい場合があり、下塗り材の選定や下地処理が不適切だと、はがれの原因になりやすくなります。
施工業者が、金属サイディングや板金部の塗装について、「全部サビ止めで下塗りします」としか説明しない場合は、その下塗り材の製品名を調べ、
- どのような下地に合う下塗り材なのか
- ガルバリウム鋼板、アルミ、ステンレスなど、施工箇所の下地に対応しているか
- その後に塗る上塗り材との組み合わせ
などを確認しましょう。
大事なのは、「サビ止め」という言葉だけで判断しないということです。
なぜなら、塗料メーカーの製品には、「さび止め塗料」という名目でも、アルミ、ステンレス、亜鉛めっき、ガルバリウム鋼板まで、様々な下地に併せた塗料があるからです。
分かりやすい例だと、スズカファインのさび止め塗料「速乾ラスノン5621」は、鉄骨・鋼板用のさび止め塗料であり、亜鉛鉄板、ガルバリウム鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板などには適用できない旨が書かれています。
つまり、同じ「さび止め」と呼ばれても対象が異なるのです。
外装材と下塗りで迷った時の考え方一覧表

判断を早くするために、戸建て住宅でよく出る下地を一覧でまとめます。
実際の製品指定はメーカー仕様で確認する必要がありますが、方向性は次の表でつかめます。
| 外壁材・部位 | 典型的な症状 | 基本となる下塗りの考え方 | 避けたい判断 |
|---|---|---|---|
| 窯業系サイディング | チョーキング、軽い吸い込み。 | シーラー系、高付着型下塗り材を選ぶ。 | 表面処理を見ずに一律で決める。 |
| 高意匠サイディング | 難付着、二回目塗替え。 | 専用高付着下塗り、試験施工を前提にする。 | 一般用シーラーで済ませる。 |
| モルタル | ヘアークラック、不陸。 | 浸透型シーラーとフィラー系を使い分ける。 | 補修なしで上から厚塗りする。 |
| ALC | 吸水、面の粗さ、目地の動き。 | 下地調整を前提に、吸い込みと追従性を両立させる。 | 硬い仕様を一律に重ねる。 |
| 鉄部 | 赤さび、旧塗膜劣化。 | ケレン後に防錆プライマーを入れる。 | サビの上から塗って終える。 |
| ガルバリウム、アルミ、ステンレス | はがれやすい、表面が緻密。 | 素材対応の密着プライマーを指定する。 | 鉄用錆止めを流用する。 |
見積もりと工程写真で、下塗りの良し悪しを見抜ける

プライマーの施工が適切だったかどうかは、工事後しばらく経ってからしか分からないと思われがちです。
しかし、見積書の記載内容と、塗装業者に実際に施工した箇所の撮影を依頼しておけば、施工がしっかりできているかどうかをかなりの程度、確認できます。
曖昧な状態のまま、見積もりや工事を過ごしてしまうと、工事後に「下塗りはしっかりと行いました」と言われても、施主側で検証することができません。
ここでは、見積書と工程写真で、施工がしっかり行われているかどうかを検証するための方法をお伝えします。
見積書で最低限書いてもらうべき項目

見積書では、次の内容が書かれていれば、下塗りの透明度が上がります。
逆に、見積書の下塗りの箇所に「一式」とだけでしかかれていない場合は、情報不足ですので、業者に以下の内容を記載してもらうようにしましょう。
下塗り工程のチェック項目
- 製品名が記載されている
- メーカー名が記載されている
- 施工部位が分かれている
- 下塗り回数が書かれている
- 塗布量が示されている
- 旧塗膜への対応理由が書かれている
特に、塗布量の記載は、とても重要です。
下塗り材は、「塗ったかどうか」より、「規定量をきちんと塗っているかどうか」が品質を左右するためです。
公共工事の仕様でも、㎡あたりの使用量で材料管理する考え方が徹底されています。
つまり、戸建て住宅であっても、少なくともメーカー規定量に沿って施工する前提で説明できる業者を選ぶほうが安心です。
下塗り材の種類全体を整理したい場合は、下塗りの基本をまとめたこちらの記事も役立ちます。
製品名だけで安心できない理由

見積書に下塗り材の製品名が書かれていたとしても、それだけで安心できるわけではありません。
下塗り材は、同じシリーズ名でも、
- 「透明」、「ホワイト」
- 「水性」、「弱溶剤」
- 「一液」、「二液」
など、仕様が分かれていることがあります。
たとえば、透明タイプは、浸透性を重視した用途に使われやすく、ホワイトタイプは仕上がりの均一化や塗り残し確認に向くことがあります。
また、水性か、弱溶剤かで適した下地や、臭気の出方も変わります。
同じシリーズ名の別の仕様のものを使用した場合でも、ただしに施工不良につながるわけではありません。
しかし、
- 下地の状態
- 旧塗膜の種類
- 上塗り材との相性
を確認しないまま別仕様の材料を使うと、密着不足、乾燥不良、色ムラ、早期のはがれなどにつながる可能性があります。
見積書で確認すべきものは、製品名そのものではなく、仕様や、「その商品をこの下地に使う理由」なのです。
例えば、見積書に「〇〇シーラー」とだけ書かれていても、その製品に透明タイプとホワイトタイプがある場合があります。
外壁の吸い込みを抑えるために透明タイプを使うのか、仕上がりの色ムラを抑えるためにホワイトタイプを使うのかで、選ぶ理由は変わります。
さらに、外壁には、シーラーを使い、金属部には別のさび止めや密着プライマーを使う必要があることもあります。
だからこそ、「〇〇シーラーを使います」という説明だけで終わらせず、「どの仕様を、どの部位に、なぜ使うのか」まで確認しておくことが大切なのです。
工程写真を業者に撮影してもらう

工事中の写真は、施主がもっとも確認しやすい「業者がきちんと施工をしてくれている証拠」です。
施工する業者にお願いして、以下の工程で写真を撮影してもらい、それを定期的に共有してもらうようにしましょう。
下塗り前の工程写真で見ること

下塗り前の工程写真では、
- 高圧洗浄後にしっかり乾いているか
- クラック補修やケレンを行ってくれているか
を見ましょう。
濡れたまま、補修前のままでは、どんな下塗り材でも性能を出し切れません。
下塗り前の工程に関するこちらの記事も参考にお読みください。
下塗り中の工程写真で見ること

下塗り中の工程写真では、部位ごとに材料を分けているかを見ます。
外壁、鉄部、目地周辺が、全て同じ下塗り材で同じように処理されているなら、その理由を説明してもらいましょう。
ただし、下塗り材が同じものなのか、異なるものなのかが写真だけではわからないこともあるので、見積もり通りに使用されているかも業者に確認します。
下塗り後の工程写真で見ること

下塗り後は、乾燥時間を取ってから中塗りに進んでいるかを確認しましょう。
乾燥不足のまま上から塗装する重ねると、ふくれ、割れ、密着不良の原因になるためです。
目地打ち替えが入る工事では、シーリング材が硬化してから次工程に入っているかも重要です。
プライマーや下塗り工程でよくある失敗

外壁塗装の不具合は、上塗り塗料のグレードだけで決まるわけではありません。
実際には、下塗りの選定ミスか、下地処理不足に原因があることも多いのです。
ここでは、よくある失敗を症状別に整理します。
数年で塗膜が剥がれる
塗装直後は問題なく見えても、二年から五年ほどで塗装面に剥がれが出るケースがあります。
この症状は、下塗りの相性不良を疑うべき代表例です。
主な原因
数年で塗膜が剥がれてしまう主な原因は、既存塗膜に対して下塗り材が合っていないことです。
特に、高意匠サイディングや、光触媒系、無機系、フッ素系の旧塗膜では起こりやすい傾向にあります。
また、
- 下塗りの塗布量不足
- 乾燥不足
- 下地の清掃不足
が重なると、さらに剥離しやすくなります。
防ぎ方と代替案
早期の剥がれを防ぐには、旧塗膜の種類を確認し、必要に応じて試験施工や付着確認を行うことが良いでしょう。
また、見積書に製品名、塗り回数はもちろん、それらの理由まで書いてもらうことができれば、早期剥がれのような事態は起きにくくなります。
既存塗膜の劣化が大きい場合は、十分な除去をした上で塗る必要がありますが、劣化がひどい場合など、塗装ではなく外壁カバー工法など、他の施工方法を検討するほうが安全なこともあります。
外壁にふくれが出る場合

外壁がぷくっとふくれている場合、塗装工事の施工不良が原因の可能性があります。
正確にいうと、外壁自体が膨れているのではなく、塗膜が膨れているのです。
塗膜のふくれは、塗膜の下に残った水分・湿気・空気・溶剤などが、逃げ場を失って塗膜を内側から押す力があるときに起こります。
外壁の膨れは、見た目が良くないだけではなく、長期的には、はがれへ進行しやすい症状です。
主な原因

ふくれの主な原因は、塗装前や塗装途中の乾燥不足です。
高圧洗浄のあと、外壁の表面は乾いて見えても、ひび割れや目地まわりに水分が残ることがあります。
そのまま塗装すると、水分は塗膜の下に閉じ込められます。
その後、日差しで外壁が温まると、残った水分が水蒸気になって外へ出ようとします。
しかし、表面は塗膜でふさがれているため、逃げ場がありません。
その結果、塗膜が内側から押され、ぷくっと浮くことがあるのです。
下塗りや中塗りでも同じです。
表面だけ乾いた状態で次の塗料を重ねると、下の層に水分や溶剤が残り、あとからふくれの原因になります。
窯業系サイディング、ALC、モルタル、硬化前のシーリング上の塗装は特に注意が必要です。
直張り工法の古いサイディングや通気条件が悪い面では、内側の湿気が抜けにくいため、診断不足がそのままリスクになります。
防ぎ方と代替案

ふくれが発生するのを防ぐには、洗浄後や下地処理後の乾燥を確認し、下塗り・中塗りの乾燥時間も守ることです。
雨の翌日、湿度が高い日、日当たりの悪い面では、無理に次工程へ進めない判断が大切です。
シーリング工事がある場合は、シーリング材が硬化してから塗装へ進みます。
通気が悪い外壁や、広い範囲にふくれがある外壁では、再塗装で解決できるかを事前に確認します。
塗装の適性が低い場合は、カバー工法や部分交換を検討したほうが長持ちすることがあります。
ひび割れが再発する場合

ひび割れをせっかく補修しても、また同じような場所に、早期にひび割れが起こることがあります。
この、ひび割れの早期再発は、下塗り材の選び方と補修の順番が合っていないと起こりやすい症状です。
外壁のひび割れは、上から新しい塗料を塗れば必ず止まるというものではありません。
表面だけを整えても、原因が残っていれば、同じ場所に再度ひび割れが起こることがあります。
主な原因

原因は、塗装の前に「割れの幅・深さ・動き」に合わない補修を行ったためです。
細いヘアークラックであれば、微弾性フィラーなどで表面を整える対応が候補です。
しかし、深い割れや幅の大きい割れにフィラーやプライマーだけをかぶせると、内部の割れは残ったままです。
また、目地や窓まわりなど動きやすい場所に硬い材料をかぶせると、外壁の動きに追従できず、再び割れることがあります。
補修材が乾ききる前に塗装した場合も、収縮や密着不足で再発しやすくなります。
防ぎ方と代替案

防ぐには、「割れ幅、深さ、場所、動きの有無」を十分に分析し、それをもとに適切な処置を行うことです。
浅く細い割れは、微弾性フィラーを候補にできますが、幅が大きい割れや漏水リスクのある割れの場合は、先述の通り、補修を先に行う必要があります。
割れが多発している面では、一本ずつ埋めるだけでなく、面全体の下地改修や仕上げ仕様の見直しも検討します。
サビが再発する場合

塗装したのにも関わらず、サビがすぐ戻る場合は、上塗りではなく下地処理と下塗りの問題であることが多いです。
金属部は、仕上げ塗装よりも、その前の工程(つまり下塗り、下地処理など)が仕上がりを左右します。
サビを残したまま塗ると、表面はきれいでも、塗膜の下で腐食が進み、早期にサビが表面上に出てきてしまうのです。
主な原因

サビが再発する主な原因は、ケレン不足です。
ケレンとは、サビ、浮いた古い塗膜、汚れを落とし、塗料が密着しやすい状態にする作業です。
サビの上に塗ると、塗料は下地の金属部分ではなくサビの層に塗布されるため、密着が不安定になります。
また、金属の種類に合わない下塗り材を使うことも原因になります。
鉄、亜鉛めっき、ガルバリウム鋼板では、必要な下塗り材が変わることがあります。
素材を分けずに塗ると、さびの再発やはがれにつながりやすくなります。
防ぎ方と代替案

サビの再発を防ぐには、素材を確認し、十分にケレンしてから、目的に合う下塗り材を選ぶことです。
また、
- 鉄部では防錆
- 亜鉛めっきやガルバリウム鋼板では密着
を、それぞれより重視することがあります。
腐食が進んで薄くなってしまった部材は、塗装だけでは強度を戻すことはできません。
その場合は、塗るより交換したほうが安全といえます。
その他、水がたまりやすい端部や金具まわりは、サビを落とすだけでなく、水の流れも確認する必要があります。
外壁塗装のプライマーでよくある疑問

本ページの最後に、施主の方からよく出る疑問を整理します。
なぜそうなるのかまでセットで理解しておくと、業者との打ち合わせがかなり楽になります。
プライマーだけで防水できますか?

プライマーだけで塗装面に防水性を持たせることはできません。
プライマーはあくまで土台で、防水性や耐候性を十分に担うのは、その上に塗装される中塗りと上塗り(または防水仕様全体)なのです。
つまり、「下塗りをしっかり入れたから防水性は問題ない」は誤りといえます。
下塗りは一回なら十分ですか?

一回で足りる現場もありますが、すべての住宅で一回とは限りません。
- 吸い込みが強い下地
- 細かなクラックが多いモルタル
- ALCのように下地調整が必要な面
では、下塗りが二段階になることがあります。
もし業者に同様に聞く場合、質問は、「下塗りは一回ですか」ではなく、「この外壁の材質、劣化具合で下塗りは何回必要ですか」です。
透明と白はどちらを選ぶべきですか?

どちらが上という話ではありません。
ここでいう透明タイプ・白タイプとは、下塗り材の色や見え方の違いです。
透明タイプの下塗り材は、下地に浸透させて、吸い込みを抑えたい場面で使われることがあります。
一方、白タイプの下塗り材は、下地の色を一度そろえたい場合や、塗り残しを確認しやすくしたい場合に使われることがあります。
ただし、透明だからよい、白だからよい、という単純な話ではありません。
大切なのは、色ではなく、その下塗り材が、外壁材、旧塗膜、上塗り材に合っているかどうかです。
見積もりの説明では、「透明だから安い」「白だから高級」と考えるのではなく、「なぜその下塗り材をこの外壁に使うのか」を確認することが大切です。
水性のプライマーなら何にでも使えて安心ですか?

水性は臭気が少ない点で暮らしやすいですが、万能ではありません。
下地の状態、既存塗膜、金属部の有無、求める密着性によっては、弱溶剤や二液型の下塗り材が適することもあります。
反対に、最近は水性でも高性能な下塗り材があります。
つまり、水性かどうかだけで決めるのではなく、素材と症状で決めるのが正解です。
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外壁塗装におけるプライマーは、単なる「塗装で塗られる最初の塗料」ではありません。
仕上げ塗料を長持ちさせるための土台であり、下地との相性を調整し、不具合を防ぐための要となる工程です。
そして、重要なのは、プライマーという名前ばかり気にすることではなく、その現場で何を解決するために下塗り材が選ばれているかを理解することです。
本記事の要点を以下にまとめました。
- プライマーは下塗り材の総称として使われることがある。
- 名称より、密着、吸い込み、補強、防錆の役割で判断する。
- 窯業系サイディング、モルタル、ALC、金属で選び方は変わる。
- 深いひび割れや重いさびは、下塗り前の補修が先になる。
- 見積書では製品名、部位、回数、塗布量まで確認する。
- 目地には塗装用とは別のシーリング用プライマーが必要なことがある。
施主の方が最後に確認すべき順番は、下地の種類、既存塗膜の種類、劣化症状、下塗り材の理由、塗布量の五つです。
この順番で質問できれば、見積書の中の「プライマー」が、ただの言葉ではなく、品質管理の要点として読めるようになるでしょう。
その他に外壁塗装のプライマーに関して、ご不明な点などがあれば、外壁塗装駆け込み寺にお問い合わせください。
参考リンク
- https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001879403.pdf
- https://www.alc-a.or.jp/pdf/alc_pa9.pdf
- https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/data/145/3.pdf
- https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/data/145/4.pdf
- https://www.siding.or.jp/repaint
- https://www.sealant.gr.jp/sealant-guide




