3階建ての建物を外壁塗装する時の価格相場や注意点

人口が集中しており各家で使用できる敷地面積に限りがある都心部では、敷地を有効に活用しながらゆとりを持って暮らせる住宅を手に入れる方法として、「3階建て住宅」が注目されており、2世帯住宅や賃貸物件としても利用価値のある3階建て住宅ですが、気になるのは外壁や屋根の塗替えや雨樋などの補修にかかるメンテナンスコストではないでしょうか。

平屋や2階建て住宅に比べると塗装面積が大きい3階建て住宅は、高額な塗装費用になることを不安に感じてリフォームに踏み切れない人も少なくはありません。

 

この記事では外壁塗装の基本的な費用を元に、3階建て住宅での外壁・屋根塗装の価格相場についてご紹介します。

■外壁塗装の工事費用内訳

外壁や屋根塗装工事の作業内容は、10階以上の大きなビルでもない限り、3階建てと2階建てで大きく変わることはないので、工事金額の内訳と項目ごとの工事単価相場や計算方法などを把握して、見積書の見方を身につけておきましょう(なお本記事でご紹介している平米単価相場や料金は、あくまでも平均単価ですのでご了承ください)。

1.塗装前の準備費用

外壁や屋根を塗装するためには、足場の設置や塗装箇所の下処理といった多くの準備が行われ、準備のための作業も外壁塗装の大切な工程です。

例えば、安全に作業を行うために足場を設置する工程や、塗料がしっかり密着するように外壁を洗浄して下地のひび割れなどを補修する作業も、外壁・屋根塗装では欠かせない作業です。

●足場設置費用

・単価相場約9001200/㎡あたり

まずは建物の周囲に仮設足場を組んで、高所でも安全に作業が行えるようにします。

足場設置費用は設置面積によって異なり、平均的な2階建て住宅では、約20万円前後が適正相場ですが、3階建て住宅の場合、高さを出すためにより頑丈に設置しなければなりませんので、相場費用に対し約30,000円割高になります。

参考:外壁塗装に足場は必要?足場の重要性と費用相場について

●養生費用

・単価相場約300500/㎡あたり

足場に養生シートを張り巡らせて建物全体を覆い、高圧洗浄の水や塗装中の塗料が周囲に飛び散らないようにし、植木や倉庫、フェンスや駐車場の柱など、屋外にある動かせない部材もビニールでしっかり養生します。

●高圧洗浄費用

・単価相場約100300/㎡あたり

外壁や屋根に蓄積している土やほこり、排気ガスなどの汚れのほか、カビやコケ、藻、錆び、劣化した古い塗膜といった異物を、強力な高圧水洗浄機で洗い落とす作業で、この高圧洗浄を行うことによって、塗料が異物に邪魔されずムラなく外壁や屋根に密着できます。

参考:高圧洗浄で知らないと損な作業時間、圧力、単価、水道代の話

●下地調整費用

・相場約30,00060,000円/一軒

 

下地調整とは、塗料が密着しやすい下地を作る作業のことで、

  • 塗料のムラや膨れの原因となるひび割れをシール材などで埋めて補修
  • 高圧洗浄でも除去できなかった異物を手作業で取り除く
  • 目地に詰められているシーリング材を新しいものと交換する

などの様々な作業が行われる大切な工程です(※シーリング補修の費用は「3.その他の費用」でも紹介します)。

 

なお、鉄部の下地調整ではヤスリやブラシで錆びを落とすケレン作業が行われますが、錆びの進行状況がひどいほど費用が高くなります。

参考:外壁塗装はケレン作業が命!ケレンの大切さや作業内容

2.塗装費用

外壁・屋根塗装の作業は、塗装を行う外壁や屋根などの外装材の種類や、劣化の進行状況などによって使われる塗料が異なり、塗料代も当然異なります。

●塗料別の費用

現在、日本ペイントや関西ペイント、エスケー化研などの大手塗料メーカーから販売されている基本的な塗料の種類としては、以下の5つのグレードが存在します(※すべて㎡あたりの施工費用です)。

  • アクリル塗料:約1,000~1,500円/㎡あたり
  • ウレタン塗料:約1,500~1,800円/㎡あたり
  • シリコン塗料:約1,800~2,800円/㎡あたり
  • ラジカル塗料:約3,000~4,000円/㎡あたり
  • フッ素塗料:約4,000~5,500円/㎡あたり

工事業者などが、「業者オリジナル塗料」や「ここでしか使えない特殊塗料」とアピールしていることがありますが、塗料名が異なるだけで基本的には上記のどれかに該当します。

上記のグレードの違いだけでなく、無機質のセラミック成分を配合したセラミック系塗料(ハイブリッド塗料)や、水で薄める水性塗料とシンナーで薄めて使う油性塗料などの違いもあり、どの塗料を使用すべきかについては、塗装業者が現地調査の結果にもとづいて選んでくれます。

 

しかし、約100㎡の外壁全体に塗料を塗った時、㎡あたりの施工費用が1,000円違うだけでも約10~12万円の費用差が出ると考えると、使用する塗料は自分の意志で納得したものを選んでおかなくてはなりません。

価格が高い塗料ほど外壁・屋根全体を塗装した時の費用は高額になってしまいますが、価格の分だけ耐用年数も長くなり、紫外線に対する力(耐候性)や防汚性や防カビ性、光沢の持ちなども安い塗料に比べると遥かに優れています。

最も価格が安いグレードはアクリル塗料ですが、耐用年数が約5~8年と非常に短く、紫外線に対する力も弱いため数年でひび割れや色あせが起きてしまいコストパフォーマンスも悪いことから、外壁・屋根ともに現在使用される機会はほぼなくなっています。

参考:アクリル塗料が使われない理由とシリコン、ウレタンとの比較

現在、住宅の外壁・屋根塗装工事で最も使われているものは、価格に対して十分な耐久性を発揮するシリコン塗料で、3階建て住宅の場合も、シリコン塗料以上のグレードを選んでおくことをおすすめします。

参考:外壁塗装で使うのはシリコン塗料ウレタン塗料どちらが良い?

●機能性塗料の費用

  • 断熱塗料:約4,500~5,000円
  • 光触媒塗料:約5,000~6,000円
  • 弾性塗料:約3,000~4,000円

機能性塗料とは、塗料による外壁や屋根の保護が長持ちするだけではなく、塗装後に何らかの効果を発揮する塗料のことです。

「断熱塗料」とは、室内の暖かい空気を外に逃げにくくする断熱効果を持つ塗料で、塗装すると冬場は少ない暖房代だけで暖かく快適な家にすることができます。

また、断熱塗料には日進産業の『ガイナ』のように、屋外からの日射熱をカットして夏場の室温上昇を防ぐ遮熱機能を併せ持つタイプもあります。

参考:外壁塗装での断熱は誇張表現が多いので騙されないように注意

 

「光触媒塗料」とは、紫外線に反応して外壁の表面に付着した汚れを分解する力と水と馴染みやすい「親水性」という性質を持つ塗料で、分解された汚れは雨に濡れて洗い流され外壁表面に蓄積されないため、簡易なセルフクリーニング機能を持つ塗料です。

参考:光触媒塗料の価格相場、メリット・デメリット

 

弾性塗料とはゴムのような弾力性を持つ塗料のことで、建物で歪みや揺れが起きても弾性の塗膜が伸び縮みして、割れを防ぎ防水性を高める効果があるため、ひび割れが起きやすいモルタル外壁やコンクリートの塗装で特に使われます。

参考:ゴムの性質でクラックを防止する複層、単層、微弾性塗料とは

3.その他の費用

外壁塗装工事では、軒天や破風板、雨樋や雨戸といった外壁や屋根に付属している「付帯部分」の塗装のほか、シーリング補修という外壁に欠かせない部材の補修も行われます。

●付帯部の塗装費用

  • 軒天塗装費用:20,000~50,000円/一軒
  • 破風板塗装費用:40,000円/一軒
  • 雨どい塗装費用:20,000~50,000円/一軒
  • シャッター塗装費用:約2,000円/一枚あたり

この他にも、水切りや玄関ドア、窓枠、バルコニーの笠木など塗装が必要な付帯部は沢山あり、家によって付帯部の数や種類、素材などには違いがありますが、住宅一棟分の付帯部塗装費用としては約12~20万円が相場です。

3階建て住宅でも付帯部の量はまちまちですので、階数が多いからといって2階建ての相場の倍近い付帯部塗装費用が必要になるわけではありませんが、2階建ての相場に対しやや割高になる点は否めません。

参考:玄関ドア塗装は外壁と全く違う技術なので出来ない業者に注意
バルコニー・ベランダ・屋上防水工事の工法の違いや価格相場

●補修費用

  • シーリング工事:約800~1,800円/㎡あたり
  • ひび割れ補修:約1,200~3,000円/一箇所あたり

サイディングボードの目地や窓サッシの周りなど、外壁のあちこちにある隙間を埋めているシーリング材(コーキング材)は、紫外線や雨などで劣化するとシーリング自体が裂けたりひび割れたりしてしまい、外壁よりも早く劣化することがあるため、日頃の点検が必要で、場合によっては部分的に外壁とは違うタイミングで補修する必要があります。

参考:目地のコーキング材補修は専門業者が存在するほど難しい作業

また、モルタル外壁に生じたひび割れのうち、割れが外壁下地材まで浸透している場合は割れ部分を削って補修材を詰める工事が行われます。

参考:モルタル外壁の特徴と、外壁塗装を行うときのポイント

●諸経費

  • 工事費用の約2~7%

諸経費とは、現場管理費や交通費、事務費用など、工事で発生した細かい経費をまとめたもので、それぞれの金額が小さいため細かく具体的に算出せず、工事費用の数割程度として計算されます。

見積書の諸経費を見ても、何に使うかわからないという場合は業者に聞き、納得した上で支払うようにしましょう。

■3階建て住宅の塗装費用相場

ここまでご説明した通り、外壁塗装費用は㎡あたりの施工費用で計算するため、工事を行う建物の面積が大きいほど、塗装費用の合計も高額になります。

1.平均的な3階建て住宅の大きさ

3階建て住宅の平均的な外壁の面積は、約150~200㎡で、2階建て住宅の場合は約100~120㎡と言われますので、3階建て住宅の塗装費用は割高になる可能性が高いといえます。

 

なお外壁塗装の見積もりは、まれに「建坪」で表記されることがありますが、この建坪とは敷地に対する建築面積のことで、建物を真上から見下ろした時に見える部分の面積を表したものですので、1階部分の延べ床面積とほぼ同じ数値です。

しかし、同じ延べ床面積でも建物の形が違えば外壁の面積は全く異なり、特に悪徳業者は費用の算出方法をごまかすためにあえて建坪表記をすることがあります。

一括見積もりなどで複数の工事業業者に相見積もりを依頼するときは、3階建てだからといって単純に平屋の3倍の金額を提示するような手抜きの見積もりは絶対に信用せず、お住まいの外壁や屋根の正確な面積から正しい施工面積を計算し、計算に使用した面積や単価などの根拠まで見積もりに記載してくれる良心的な業者を見つけましょう。

2.各工事費用の相場

ここでは、現在お住まいの3階建て住宅の具体的な費用相場を予測するために、以下の条件をもとに3階建て住宅の塗装費用を計算していきます(外壁の状態や付帯部の劣化具合によって費用は変動しますので、ご紹介した金額はあくまで参考としてお考えください。)。

【条件】

  • 3階建て住宅
  • 外壁面積約150~200㎡
  • シリコン塗料を使用

【工事内容と費用】

  • 足場設置費用:約135,000~240,000円
  • 3階建て足場設置の追加費用:約30,000円
  • 養生費用:約45,000~100,000円
  • 高圧洗浄費用:約15,000~60,000円
  • 下地補修費用:約30,000~60,000円
  • 塗装費用:約270,000~560,000円
  • 付帯部塗装費用:約120,000~200,000円
  • 補修費用:約60,000円
  • 諸経費:約14,000~91,700円

合計:約720,0001,401,700

■3階建て住宅を塗装する時の注意点

施工面積が大きい3階建て住宅は、少しの油断が塗装費用を膨らませる原因になりますので、必要な部分にのみ工事費用を投じ、余分な工事費用の発生はできるだけ防げるように、3階建て住宅でリフォーム費用を余計に増やさない注意点を知っておきましょう。

1.3階建て住宅は雨樋補修を入念に行う

3階建て住宅は、建物を横に長く置けない土地で空間の高さを活かすために高く建てられており、全体的に縦長の長方形の形をしているため、屋根や軒、庇などの凸部の設置が省かれていることが多く、雨がそのまま外壁に流れ落ちて雨漏りが生じやすくなっています。

雨どいの流れが悪くなると、樋から水が溢れていつも雨が落ちてこない箇所が濡れて外壁の腐食が進行することがあります。

あるいは、これまで水たまりができなかった地面やベランダに水溜りができて、ベランダ床面の防水層の劣化や、建物基礎の軟弱化を誘発する恐れがあります。

 

このように、外壁や屋根の中で経年劣化してしまう箇所は、表面に塗られた塗装だけではないので、雨樋の詰まりをチェックして早期に詰まりを解消しておくことも、3階建て住宅のリフォーム費用を膨らませないための大切なポイントです。

2.ひび割れ対策を行う

建築物は高く建てるほど、地震の揺れによる負荷を受けやすくなるという特徴があるため、マンションや3階建ての建物は2階建てや平屋に比べて、構造材の歪みやずれ、外壁表面のひびが揺れによって生じやすくなっています。

また、ひびや歪みが原因で雨漏りに繋がるケースも多いため、クラックや外壁材の浮きなども定期的に点検しておくとよいでしょう。

特に、モルタル壁やコンクリート壁は表面にひび割れが起きやすい素材であり、外壁下地に影響を及ぼさない深さ4mm未満の「ヘア―クラック」で済むこともあれば、モルタル下地まで割れが到達しかけている深さ5mm以上幅3mm以上の「構造クラック」が発生することもあります。

構造クラックのひび割れから雨水が浸水すると、外壁の内側にある構造材が腐食してしまい、最悪の場合、建物自体の耐久性低下に繋がる恐れがあり、高層の3階建て住宅において構造材が建物を支える力を失うことは、非常に危険な状態と言えるでしょう。

もし3階建て住宅で外壁にモルタルやコンクリートが使われている場合は、ひび割れしにくく、割れても塗膜自体が割れ目をカバーする「弾性塗料」で塗装しておくことをおすすめします。

 

そのほか、タイルの外壁であれば、3階からタイルが落下すると怪我や事故に繋がり非常に危険ですので、タイル材の剥がれや浮きを10年に1度は確認しておき、タイルの下地にあるセメントにひび割れや接着不良が起きていないか調べておきましょう。

 

サイディングボードの外壁であれば、目地のシーリングが揺れや建物の歪みによって裂けることがありますので、約5年に一度は点検し、ひび割れから浸水する前に打ち替え工事を実施しておきましょう。

3.リフォーム回数を減らす

3階建ては建物面積が大きいため、塗装費用も割高になりますが、この時忘れてはならないのが、一回分の塗装費用だけでなく次のリフォーム費用も頭に入れ、建物のトータルのメンテナンスコストを考えることです。

●足場工事の回数を減らすことが重要

安い塗料で何度も塗替えを行うのと高い塗料で1回の塗装を長持ちさせるのとでは、一見総費用は変わらないようにみえますが、3階建て住宅は足場面積や養生箇所も他の建物より高くなりますので、何度も塗替えを行うほど、足場代などの費用が階数の少ない建物よりも増えていきます。

外壁塗装業者の中には「足場無料」を謳う所もありますが、無料の部分を強調する業者の多くは、足場以外の下地調整工事や塗料の施工単価などに無料になった足場分の費用が結局上乗せされており、足場をしっかり設置して施工してくれる業者と変わらないかそれ以上の価格設定になっていることがありますので信用しない方が賢明です。

 

このように、耐久年数が長く長持ちする塗料を選んでトータルで行う外壁塗装工事の回数を減らし、結果的に足場工事などの諸費用を何度も発生させない工夫はどの建物の塗装でも基本の考え方ですし、面積が大きく一回の工事費用も割高になる3階建て住宅では、その工夫がさらに重要性を増すといえるでしょう。

参考:外壁塗装に足場は必要?足場の重要性と費用相場について

●劣化を進めないこと

塗装費用を高額にする要因は、建物の面積だけではなく、建物のひび割れや付帯部の故障、鉄部の錆びといった劣化が広範囲で進行しているほど修繕にかかる費用も高額になってしまいますので、塗装以外の費用が増える分、相場よりも割高な塗装工事になってしまいます。

 

雨漏りや錆びなど劣化が起きやすい箇所を知って、定期的に点検を行うことが、足場費用や下地補修費用を減らすことに繋がります。

参考:外壁の劣化状態と種類を知って、外壁塗装の効果を高めよう

■まとめ

外壁塗装の費用は、建物の面積が大きく影響し、当然、階数の少ない平屋や2階建ての住宅に比べると、3階建て住宅の塗装費用は面積も大きい分、割高になってしまいますが、建物の形や劣化の進行具合も塗装費用に影響するため、3階建てだからといって必ずしも高額になるとは限りません。

 

優良業者の質の良い塗装リフォームで劣化しにくく長持ちする外壁・屋根を手に入れ、費用が高額になる前に塗り替える理想的なサイクルを作っていきましょう。

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