耐久性に優れた鉄筋コンクリートは、様々な建物の構造材や基礎として使われています。
そんな鉄筋コンクリートも、長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが必要である点は、他の構造材と同様です。
大切な住まいのメンテナンスを、信頼できる業者に依頼するためにも、鉄筋コンクリートで生じる劣化や、相性のよい部材、適切な補修方法などについて知っておきましょう。
目次
■鉄筋コンクリート造とは
現在、世界中のあらゆる建築物に採用されている素材が、鉄筋コンクリートです。
鉄筋コンクリートを構造材とする建物は、鉄筋コンクリート造、またはRC造(RC=Reinforced doncrete)と呼ばれます。
鉄筋とコンクリートの組み合わせによってもたらされる、素材自体の耐久性の高さに加えて、シンプルでモダンな見た目がおしゃれな印象も醸し出すことから、デザイナーズハウスの外観・内装デザインにも積極的に取り入れられています。
1.鉄筋コンクリートの特徴
鉄筋コンクリートは、鉄筋とコンクリートという異なる素材が、欠点と利点を補い合っているという点で、非常に合理的な素材です。
●丈夫で合理的な理由
通常、コンクリートをそのまま外壁にするだけでは、高い耐久性を発揮することはできません。
コンクリート単体は引っ張る力に弱いため、引っ張る力への対抗力を持つ鉄筋があることで、支えとして機能します。
また、鉄筋も、単体では圧力によって曲がったりずれたりしてしまいますが、厚くて重いコンクリートで保護することによって、圧縮力に対抗する力を持ちます。
2.鉄筋コンクリートの耐久性
鉄筋コンクリートは、非常に耐久性が高いことから、集合住宅や高層ビル、橋梁などの大型建築物に適した素材です。
また、住宅の基礎部分のうち、床面全体が鉄筋コンクリートで仕上げられたものは、「ベタ基礎」と呼ばれ、耐震性を高めるためにも、木造住宅にはなくてはならない存在となっています。
●構造別の耐用年数の違い
建物の構造には、鉄筋コンクリート造だけでなく、木造や鉄骨造などもあり、それぞれに、耐用年数やメリット・デメリットが存在します。
以下は、構造別の住宅の法定耐用年数です。
- 木造…22年
- 鉄骨造…34年
- 鉄筋コンクリート造…約47年
法定耐用年数とは、資産の減価償却を行うときに、資産価値減少の目安として使われる数値ですので、この年数がそのまま建物の寿命になるわけではありません。
建物の実際の寿命は、いかにメンテナンスを定期的に行い、手入れが続けられてきたかによって決まります。
言い換えると、例え資産価値が長持ちすると言われる鉄筋コンクリート造でも、約10~15年に一度はメンテナンスが必要であり、外壁塗装などのメンテナンスを怠ると、耐久性を縮めてしまうことになりかねないのです。
■鉄筋コンクリートのメリット・デメリット
お住まいの建物の、構造上のメリット・デメリットは、どのようなリフォームが必要か判断するために重要な情報です。
必要な工事を適切なタイミングで行うことができれば、満足のいく外壁塗装となり、結果的に、建物の寿命を適格に延ばすこともできるでしょう。
以下からは、鉄筋コンクリート造のメリットとデメリットについて解説します。
1.鉄筋コンクリートのメリット
住まいを長持ちさせるためには、メリットを活かし、それらの劣化に繋がる要因を防ぐことが大切です。
鉄筋コンクリート造には多くのメリットがありますが、メンテナンスを行わなければ、これらの良さが失われかねないことも把握しておきましょう。
●耐久性が高い
木造や鉄骨造など、ひとつの素材の力で支えられる建物に比べると、鉄筋とコンクリートの組み合わせで作られた鉄筋コンクリート造は、はるかに高い耐久性を発揮します。
しかし、木造や鉄骨造でも、適切な設計に基づいて建てられ、かつ、こまめなメンテナンスを続けていれば、鉄筋コンクリート造なみの耐久性を発揮することは可能です。
●遮音性が高い
厚みがあり重い物体ほど、音の伝わりを抑止する効果があります。
このように、音の振動をシャットアウトすることを「遮音」と呼びますが、厚くて重い鉄筋コンクリート造の建物は、遮音性に優れ、隣の部屋や外からの音が伝わりにくくなります。
●耐震性が高い
引っ張る力に強い鉄筋と、圧縮する力に強いコンクリートが相互に作用する鉄筋コンクリート造の建物は、抜群の耐震性を発揮することができます。
ただし、昭和46年の耐震基準法改正前に建てられた鉄筋コンクリート造建物は、柱の間隔が現在よりも広く取られているため、現行基準で建てられた鉄筋コンクリート造の建物よりも耐震性が落ちる恐れがあります。
●耐火性が高い
耐火性には、熱に耐えるという意味と、燃えにくいという2つの意味があります。
木材は火で燃えやすく、鉄骨は熱で変形してしまいますが、鉄筋コンクリートは、1000℃の熱に長時間さらされ続けても燃えにくく、変形することもないため、耐火性に非常に優れています。
2.鉄筋コンクリートのデメリット
丈夫な鉄筋コンクリートにも、いくつかのデメリットがあります。
また、鉄筋コンクリートは、補修工事の量によって塗装費用が変動し、劣化が広範囲になるほど高額な費用が発生してしまいます。
劣化が重症化してしまう前のメンテナンスはもちろん、劣化を見逃さずに、補修をしっかり行うことが大切です。
●ヒビが入りやすい
コンクリートは、セメント、砂、砂利に水を加えて、混ぜて作ります。
このとき、混ぜる水の量を誤ると、コンクリートが硬化不良を起こし、ひび割れ(クラック)の原因となってしまいます。
また、地震などで建物に強い負荷がかかったときにも、ひび割れが生じることがあり、そこから表面のコンクリートが剥がれたり、雨水が浸水したりする可能性があるため、鉄筋コンクリート造の建物を守るためには、ひび割れの早期発見が欠かせません。
●表面にシミが拡がる
コンクリートは、水を吸収しやすい素材です。
少量の水であれば蒸発してしまいますが、日当たりが悪いと、カビやコケが繁殖しやすくなったり、油や水アカなどの汚れが内部に留まったりして、表面にシミのように広がってしまうことがあります。
シミが発生したからと言って、すぐにコンクリートが劣化するわけではありませんが、コンクリート内部に浸透してしまった汚れは、水洗いではカンタンに落とすことはできず、外壁表面が古ぼけたような見た目になり、建物の美観を大きく落としてしまいます。
●補修費用がかかる
鉄の棒(鉄筋)を芯にして、板の型枠にコンクリートを流し固めて作る鉄筋コンクリートは、構造材として使うことによって、素材自体が外壁材となります。
そのため、サイディングやガルバリウム鋼板など、後から外壁材を張って仕上げるタイプの家と違って、鉄筋コンクリート造建物における劣化の補修は、建物の補修と同じくらい重要な意味を持ちます。
外壁塗装では、塗装前の下地補修のときに、ひび割れやカビ・コケの除去などを行いますが、コンクリートはひび割れしやすく、他の外壁材よりも下地補修を入念に行わなければなりません。
コンクリートの劣化があまりにも広範囲で発生していると、当然、作業工程が増え、塗装費用の総額も増えてしまうでしょう。
参考:外壁塗装の必要性は?放っておくとどうなるかと追加工事費用
■鉄筋コンクリートを塗装するときのポイント
鉄筋コンクリートの塗装では、劣化箇所をしっかり見つけ、塗装する前に補修しておくことが肝心です。
どのタイミングでどのようなメンテナンスを行えばよいか判断するためにも、鉄筋コンクリートで発生する劣化と、使用できる塗料の種類を知っておきましょう。
1. 鉄筋コンクリートの劣化の種類を知っておく
先ほども、鉄筋コンクリート造のデメリットとして少し触れましたが、鉄筋コンクリートでは、様々な劣化が生じます。
緊急に工事を必要とするものもあれば、工事をするまでもないものもありますので、劣化の種類だけでなく、深刻度も理解しておきましょう。
●コンクリートの中性化
コンクリートは何もしなければアルカリ性のままですが、空気に触れると、徐々に酸性に近づいていきます。
この現象をコンクリートの中性化と呼び、コンクリート自体の耐久性は落ちませんが、コンクリート内部の鉄筋まで酸性が行きわたると、鉄筋の錆びの原因となり、剥落(はがれ)や爆裂などの劣化を引き起こしてしまいます。
●カビやコケ
アルカリ性のコンクリートは、水分を吸収しても、すぐにカビやコケが繁殖することはありません。
しかし、日当たりの悪い面は、中性化してカビやコケが繁殖しやすくなることがあり、重症になると、水洗いでも落ちなくなるほど黒ずんだり、広範囲が緑色になったりしてしまいます。
カビやコケは、美観を損ねるだけでなく、アレルギーの原因となるなど衛生的にもよいものではないため、根本から除去しなくてはなりません。
●染み・黒ずみ
一般的に、コンクリートの表面はクリヤー塗装されていることが多く、直に水分が当たらないようになっています。
つまり、シミが出るということは保護層であるクリヤー塗料が耐久力を失っており、水分に含まれる水垢などの汚れが、染みや黒ずみとして生じていると考えることができます。
●ひび割れ(クラック)
コンクリート内部の水分が、凍結したり溶けたりするたびに膨張して、徐々にコンクリートの耐久性を落とす現象を、凍害と言います。
この凍害や、地震の揺れ、コンクリート施工時の硬化不良によって生じるのが、コンクリート表面のひび割れです。
ひび割れが0.3mm未満のものはヘア―クラックと呼ばれ、すぐに耐久性に直結するものではありません。
しかし、ひび割れが0.3mm以上の構造クラックだと、割れ目から雨水が浸水しやすくなり、鉄筋の錆びやコンクリートの中性化に繋がってしまいます。
●鉄筋の錆び
ひび割れから雨水や湿気が浸水したり、コンクリートが中性化したりすると、内部の鉄筋が錆びてしまうことがあります。
錆びた鉄筋が内部で膨張して、表層を押し上げると、モルタル層の浮きや爆裂が起き、ひどいときには、鉄筋が表面に露出してしまい、建物の強度を大きく落としかねません。
●白華
白華(はっか)とは、コンクリートに含まれる成分が表面に白く溶け出してくる現象です。
白華が起きたコンクリートは、白っぽい見た目にはなってしまいますが、コンクリート自体の耐久性が落ちるわけではないのでご安心ください。
2. コンクリートと相性の良い塗料を選ぶ
コンクリートは、何かひとつの劣化が他の劣化を誘発し、耐久性の低下に繋がることがあります。
コンクリートの劣化を防ぐためには、塗装の際に、コンクリートの性質に適した相性のよい塗料選びが大切です。
塗料によっては、ひとつの機能しか持たないものもあれば、コンクリートへの使用を想定して、複数の効果を持つように作られたものもありますので、劣化の進行度に応じて選ぶとよいでしょう。
●撥水剤
打ちっぱなしコンクリート仕上げの外壁は、撥水性が高く、塗装後が残らない無色の撥水剤で仕上げられることがあります。
表面の保護効果があり、コンクリートの質感は残りますが、撥水剤だけでは耐久性を長持ちできないため、約5~7年後の再塗装が必要です。
コンクリートの表面にひび割れや爆裂などの劣化が少なく、コンクリート打ちっぱなしのデザイン性を残したいときの使用がおすすめです。
●クリヤー塗料
撥水剤の上から、保護効果の高い、無色のクリヤー塗料や、やや色が付いたカラークリヤー塗料を塗装することで、より耐久性を高めることができます。
現在は、撥水剤とクリヤー塗料の硬化を併せ持つハイブリッド塗料も登場していますので、長期的なコンクリートの保護が目的であれば、撥水剤単独ではなく、こちらの使用を検討した方がよいでしょう。
●透湿性塗料
透湿性とは、内部の湿気を外に逃がし、外から入ろうとする水分はカットする働きのことです。
このような機能を持つ塗料を、透湿性塗料を呼びますが、吸水性が高く、内部に溜まった湿気が劣化の原因となりやすいコンクリートにとって、非常に相性のよい表面仕上げ材として使われています。
●光触媒塗料
光触媒塗料とは、紫外線に当たると活性酸素を作り出す、酸化チタンを主線分とする塗料です。
塗装しておくと、紫外線が当たるたびに表面の汚れが分解され、雨が当たると同時に、分解された汚れが流れるようになり、手作業で水洗いをせずとも外壁表面に汚れが溜まりにくくなります。
ただし、光触媒塗料を、既に繁殖しているカビや汚れに塗っても効果はありませんので、まずは外壁表面のカビや汚れを落とすことが先決です。
●弾性塗料
弾性塗料とは、ゴムのような伸縮性を持つ塗料のことで、弾性に特化して作られた種類もありますが、一般的なウレタン塗料にも、若干の弾性が備わっています。
弾性塗料でコンクリートの表面を塗装すると、塗料がひび割れに入り込んで補修効果が得られるだけでなく、ひび割れが起きそうになっても、塗膜が追従してひび割れを防いでくれます。
しかし、弾性塗料で塗装すると、外壁表面が塗りつぶされて、コンクリート独特の無機質な質感が失われてしまいますので、雨漏りや重度のひび割れがあって、美観を優先している場合ではないようなケースでの使用がおすすめです。
参考:ゴムの性質でクラックを防止する複層、単層、微弾性塗料とは
■鉄筋コンクリート造の外壁塗装の方法
鉄筋コンクリート造建物の外壁塗装は、適切な下地処理を行えるかどうかが、後の塗装の仕上がりや建物の耐久性にも影響します。
塗装業者を探すときは、コンクリート補修の施工実績があるかどうかを意識して選ぶとよいでしょう。
1. 下地処理
下地処理は、鉄筋コンクリート造以外の建物を外壁塗装するときでも、必ず発生する基本の工程です。
しかし、鉄筋コンクリートの表面は、サイディングやタイルとは異なる劣化が生じていることがありますので、通常の外壁塗装よりも工程が増えることがあります。
●コケ、藻などの異物の除去
コケや藻、水垢、白華現象で生じた汚れ、剥がれた古い塗膜などは、強力な水圧を持つ高圧洗浄機で落とし、残った細かい汚れも手作業でしっかり除去します。
こうしておくことで、後から塗る塗料がコンクリートに密着しやすくなりますが、もし除去が不完全だったり、洗浄後の乾燥が不十分だったりすると、塗料が硬化不良を起こし、本来の耐久性を発揮できず、塗膜剥離や膨れの原因となってしまいます。
参考:高圧洗浄で知らないと損な作業時間、圧力、単価、水道代の話
2. 欠損部分の補修
爆裂で鉄筋が露出したり、塗膜が剥がれたりしている箇所は、表面を塗装する前に補修が行われます。
●ひび割れ補修
0.3mm未満の軽微なヘア―クラックは、微弾性を持つフィラーやセメントなどで埋めて補修が可能です。
割れが0.3mm以上の構造クラックになると、Vカット(Uカット)シーリング充填工法が行われます。
ひび割れに沿って、工具でV字(またはU字)にカットし、カット部分にシーリング材を充填して、ひび割れと浸水を防ぎます。
●爆裂補修
爆裂によって露出した鉄筋の錆びを、ケレン作業などで落とし、防錆塗料を塗布したあと、コンクリートが剥がれた箇所をエポキシ樹脂やポリマーセメントモルタルなどで埋めます。
露出した鉄筋だけでなく、錆びが広がっている範囲までコンクリートを剥がし、錆びを残さないように丁寧に補修しなければ、再び爆裂が起きてしまいますので、施工業者には慎重さが求められます。
■おわりに
鉄筋コンクリートは、コンクリートと鉄筋という2つの素材が組み合わさった、非常に優れた素材ですが、どちらか一方でも劣化が進行すると、一気に耐久性が落ちてしまう危険性も持っています。
耐久性の低下を防ぐためには、劣化がコンクリートの表面で留まっているうちに、外壁塗装などでメンテナンスを行うことが大切です。
鉄筋コンクリートの劣化を見抜き、適切な下地補修をしっかり施すためにも、鉄筋コンクリートの補修実績を持つ優良業者にメンテナンスを依頼しましょう。