外壁の仕上げ材には様々な種類がありますが、そのうち、近年リフォームの件数が徐々に増えているのが、今回ご紹介する「ジョリパット」の外壁です。
外壁塗装では、外壁材ごとの特徴に合わせて施工方法や塗料を選ばなければ、外壁の耐久性が落ちてしまいますが、当然、ジョリパットにも独自の施工方法が存在します。
これからジョリパットのリフォームを控えている方も、新しい外壁材としてジョリパットの使用を検討している人も、ジョリパット外壁のメリットや施工時の注意点について知っておきましょう。
目次
■外壁仕上げに使われるジョリパットとは
画像引用:アイカ工業HP http://www.aica.co.jp/construction/#image-1
ジョリパットとは塗り壁仕上げに用いる材料の名前です。
ヨーロッパ発祥の部材ですが、国内ではアイカ工業が販売している商品が有名です。
外壁の仕上げ材としてだけでなく、内装にも使えることから様々な建物で使われています。
1.ジョリパットは塗り壁材の一種
粘性のジョリパットは、モルタル下地の上に直接塗って使用します。
そのため、完成後の仕上がりは、現場ごとに自由な模様にすることができます。
サイディングボードやガルバリウム鋼板など、商品出荷時にデザインが既に決まっている既製品の外壁材と違って、現場ごとに自由に仕上げ方を選べる点が、ジョリパットなどの塗り壁材のメリットです。
●塗り壁材とパネル材の違い
外壁の仕上げ材には、塗り壁とパネルの2種類が存在します。
ジョリパットなどの塗材を、モルタルなどの下地に塗って仕上げる外壁を、一般的に「塗り壁仕上げ」と呼び、このような仕上げ方を「湿式工法」と呼びます。
湿式工法には、ジョリパットの他にも、リシン仕上げやスタッコ仕上げ、吹き付けタイル仕上げ、漆喰仕上げなどの種類があります。
一方、サイディングボードなどの既製品のパネルを、外壁に貼りつける仕上げ方は「乾式工法」と呼ばれています。
外壁塗装では、既存の外壁の施工方法が費用や工程に深く影響しますので、自宅の外壁材がどちらになっているかだけでも最初に確認しておくとよいでしょう。
2.最近、ジョリパット外壁の塗替えが行われ始めています
ジョリパット自体が発売されたのは1970年代のことですが、新築住宅で普及しはじめたのは、約15年前です。
つまり、ジョリパットで施工された家は、そろそろメンテナンスの時期を迎えようとしていますので、新築から約10~15年目を迎える方は、自宅がジョリパットで施工されていないか一度確認しておく必要があります。
もし、外壁材の種類がわからないという場合は、定期点検も兼ねて、塗装業者などに無料の現場調査を依頼するとよいでしょう。
●ジョリパット外壁の色あせに注意
「耐候性」とは、紫外線や雨水、温度変化といった、屋外で生じるダメージに耐える力のことです。
ジョリパットは、この耐候性が高い塗材として知られていますが、当然、永遠にダメージに耐え続けるわけではなく、施工から年月が経つとともに、徐々に効果は薄れてしまいます。
ジョリパットの耐候性が低下すると、紫外線のダメージに耐えられなくなり、色あせするようになります。
これは、ジョリパットに含まれている顔料が紫外線で劣化するため起きる現象です。
「最近、外壁の色が新築よりも色あせてきた」と感じるようであれば、ジョリパットの耐久性が落ち始めていると考えておいたほうがよいかもしれません。
■ジョリパット外壁の4つのメリット
画像引用:アイカ工業HP:http://www.aica.co.jp/construction/#image-2
ジョリパット外壁にはいくつかのメリットがあります。
パネル材や他の塗り壁材と比較しても優れている部分もありますので、新しくジョリパットへの塗り替えを検討している人はもちろん、既存の外壁材にジョリパットが使われている人も、再びジョリパットで塗り替えるメリットは大いにあります。
ただし、どのような外壁材にもメリットだけでなくデメリットも存在しますので、できる限り、他の外壁材の特徴と照らし合わせて判断することをおすすめします。
以下からは、ジョリパットの主なメリットを4つご紹介します。
1.耐久性が高い
ジョリパットの耐用年数は15~20年と言われ、仕上げ用の外壁材の中では長い部類になります。
また、リシン仕上げなどの塗り壁は、ひび割れが起きやすい外壁材ですが、ジョリパットは塗り壁材の中でもひび割れしにくい種類です。
ジョリパットが硬化すると、厚い塗膜を形成します。
この塗膜はやや粘性を持っているため、外壁に負荷がかかったとき、負荷の方向に追従してひび割れの発生を防ごうとします。
さらに、ジョリパットの中には、太陽光に反応して汚れを分解し、雨水で洗い落とす「光触媒タイプ」や、従来品よりも耐候性に特化したタイプなどがありますので、お家の日当たりや方角によって選び分けるとよいでしょう。
2.意匠性が高く独自の温かみを持つ
ジョリパット外壁が持つ最大のメリットと言っても過言ではないのが、意匠性の高さでしょう。
塗り壁材の一種であるジョリパットは、表面を仕上げる際に、櫛で引いたりコテで扇型に撫でたりして、伝統的な和風模様を作ることができます。
あるいは、大理石調タイプなどを選べば洋風の雰囲気も生み出すことができますので、仕上げのパターンに加えて、塗料の色味や、屋根や付帯部の素材と組み合わせることで、無限の組み合わせを楽しむことができるでしょう。
和風仕上げの例 | 洋風仕上げの例 |
画像引用:アイカ工業公式HP http://www.aica.co.jp/products/fill-w/jolypate/pattern.html
●ひび割れしにくさが模様仕上げを長持ちさせる
模様仕上げは、リシン仕上げや吹き付けタイルといった他の塗り壁仕上げ工法でも行うことはできますが、塗り壁仕上げには、ひび割れ(クラック)が起きやすいという大きなデメリットがあります。
せっかく模様仕上げをしても、ひび割れが起きてしまうと、ヒビに沿って割れを修復する際、模様の一部が失われてしまうことがあります。
しかし、ジョリパットはひび割れしにくい塗り壁材ですので、模様仕上げがより長持ちし、ひび割れ箇所の補修に悩まされるリスクも低くなるでしょう。
2.質感を残したまま塗替えリフォームが可能
画像引用:エスケー化研HP http://www.sk-kaken.co.jp/products/data/artfresh.html
ジョリパットは、専用の塗り替え用塗材を使えば、元のジョリパットの風合いを残したままリフォームすることができます。
通常、ジョリパットやデザインサイディングボードといった、表面に模様を持つ意匠系の外壁材は、塗り替えの際に、塗料で塗りつぶされて凹凸が消えてしまうことがあります。
このような外壁材の塗り替えでは、無色のクリヤー塗料を使って、デザインを潰さずに塗装で保護するリフォームが行われることがありますが、外壁材に色あせが生じていたり、汚れていたりする場合は、クリヤー塗料の下から劣化が透けて見えてしまいます。
しかし、ジョリパットは、専用の塗り替え材を使うことによって、表面の質感を残したまま別の色でカラーチェンジすることも可能です。
●寒冷地での冬のリフォームも可能
ジョリパットには、寒冷地用の冬季施工タイプ『ジョリパットネオノンフリーズ』も販売されています。
基本的に、外壁塗装用の塗料は、低温の環境化では硬化不良を起こし、塗膜の膨れや剥がれを引き起こすため、気温5℃以下のときは使用が禁じられています。
しかし、ジョリパットのノンフリーズタイプは、マイナス6℃以上の気温であれば施工が可能ですので、冬場に気温が氷点下付近まで下がり、工事が行えなくなる地域でも使用できることがあります。
4.人体に優しい素材
ジョリパットはフォースター(F☆☆☆☆)を取得している安全性の高い商品です。
フォースターとは、ホルムアルデヒドの放散量が少ない商品のうち、最高等級を表すマークで、JIS工業規格により定められています。
ホルムアルデヒドはシックハウスの原因となることから、建材への使用が規制されており、フォースター製品を使用することによって、住宅内での発散量を抑えられるようになります。
また、ジョリパットの中には、調湿効果・消臭効果・除菌効果を持つタイプなどがありますので、万が一発生したホルムアルデヒドを吸収し、分解する機能もお住まいに付与することができるでしょう。
■ジョリパット外壁を塗装するときの注意点
様々なメリットを持つジョリパットですが、施工にはいくつかの特殊なルールが存在します。
中には、ジョリパットを施工した経験を持つ職人でなければ見抜けないものもありますので、リフォームを依頼する前に、以下の注意点を発注者側でも認識しておきましょう。
1.専用の塗替え材が必要
先ほども少しご説明したように、ジョリパットは、通常の塗料で塗りつぶしてしまうと、表面の質感が失われてしまいます。
そのため、塗替えを成功させるためには、塗料や工法選びが非常に重要になります。
ジョリパットの老舗メーカー・アイカ工業では、ジョリパット専用の純正塗り替え材として、「ジョリパットフレッシュシリーズ」が販売されています。
ジョリパットフレッシュは、既存のジョリパット外壁の上からローラーで塗ることで使用でき、カラーバリエーションも84~149色が用意されていますので、表面の質感を残したまま、好きな色で塗替えが可能です。
アイカ工業以外のジョリパットでは、塗料メーカー・エスケー化研から『ベルアートシリーズ』などが販売されていますが、こちらも専用の塗り替え材として、『アートフレッシュ』が用意されています。
●ジョリパットの塗り替えは高い専門性が必要
ジョリパット純正の塗り替え材は、専用の塗替え材というだけあって、やや特殊な塗料に分類されます。
塗装用の塗料には、希釈率や乾燥の仕方といった使用上のルールがありますが、ジョリパット専用の塗り替え材の中には、一般の塗料と施工方法が異なるものがあり、時として現場の職人を悩ませてしまうことがあります。
そのため、豊富な種類の塗料を扱った経験を持つ職人でなければ、専用塗料の特殊さを理解できない恐れがありますので、万が一施工不良が起きたときに備えて、施工後のアフターケアを確約してくれる業者に頼むことが大切です。
2.従来よりも丁寧な高圧洗浄作業が必要
外壁塗装では高圧洗浄作業という工程がありますが、これは、外壁表面のホコリや土、コケやカビ、古い塗膜といった異物を取り除き、下地用塗料が密着しやすい状態にするために欠かせない作業です。
この高圧洗浄機を使った洗浄作業では、バケツの水を勢いよく撒いたときとは比べ物にならないほどの水圧がかかりますが、その水圧のために、ジョリパットの凸部が削れてしまうことがあります。
しかし、ジョリパットは凹凸に汚れや水が溜まりやすい形状をしているため、塗装の前にこれらの汚れを除去できないと、せっかく塗装をしても、施工後に塗膜の剥がれや劣化などの施工不良を起こしてしまいます。
また、ジョリパットは高圧洗浄の際に水を大量に吸水してしまうことがあり、高圧洗浄が弱すぎても強すぎても、既存外壁に何らかのダメージを与える恐れがあるのです。
このような理由から、ジョリパットの洗浄では、薬剤を使ったバイオ洗浄で、表面を傷つけないようにしっかり汚れを落とす方法が取られることがありますが、その方法を選んでもらえるかどうかは、業者のジョリパット施工経験の有無に頼らざるを得ません。
塗料選びの難しさも考慮すると、ジョリパット外壁のリフォームは、できるだけ、ジョリパット塗替えの経験が豊富な業者に相談することをおすすめします。
■おわりに
優れた意匠性を持ち、塗り壁材の中でも高い耐久性を持つジョリパットは、選ぶべき価値が大いにある外壁仕上げ材のひとつと言えるでしょう。
ただし、ジョリパット施工上の注意点や、素材の特徴を熟知している職人でなければ、その意匠性と耐久性を長持ちさせられない恐れがあります。
塗装業者とリフォームの契約をしてしまう前に、見積もりの段階でジョリパットの施工経験を確認して、いつまでも美しく丈夫な外壁を手に入れましょう。