基本的に外壁塗装業者が施主に準備や手伝いを求めることはありません。
ただし施工する建物の図面だけは施主が用意して業者に渡す必要があります。
この記事では外壁塗装で使用する図面の種類や、図面がなぜ塗装工事に必要かという理由についてご説明します。
目次
■建物の図面から塗装面積が求められる
建物に手を加える場合はその建物のデータを集めておく必要があります。
塗装業者もプロとはいえ、施工する建物の情報を知っていなければ正確な工事は行えません。
もし施工面積の見積もりを誤ったり使用してはいけない部材・工法を選んだりすればトラブルや施工ミスに繋がりかねません。
初めて訪れる建物を正確に塗装するためにも、建物面積に関する情報が詰まっている「図面」が必要になります。
図面は塗装する面積を調べるためだけでなく、工事にかかるお金を正確に予測するためにも有効な資料です。
1.塗装する面積がわかる
極端に言えば、メジャーやレーザー距離計を使って建物全面のタテヨコを計測すれば塗装面積を求めることはできます。
しかし二人がかりでの作業となり高所にある外壁や屋根の全長を計測するためには脚立に登らなければならず、もし計測や計算を誤れば間違った塗装面積になってしまいます。
さらに建物のタテヨコを計測したあとは窓や玄関ドアなどの塗装しない部分を差し引かなければなりません。
通常、施工する建物の劣化状況や基礎状態を調べる「現地調査」の工程は1時間程度で完了しますが、このときに建物の面積を逐一計測して計算していては倍以上の時間がかかってしまうことは言うまでもありません。
しかし建物の図面さえあれば、このような面倒な計測や計算も必要なくなり正確な面積にもとづいた綿密な工事計画が立てられるようになります。
2.塗装にかかる金額がわかる
塗装の金額は(材料費+施工費)×塗装面積で計算されます。
例えば㎡あたりの塗料代単価が2,000円で施工費が1,000円、塗面積が100㎡の家を塗装した場合は、
(2,000円+1,000円)×100㎡=30万円
となります。
外壁塗装では契約する前に業者から見積もりが提示され、工事金額に納得できればその業者と契約に進み工事開始という流れになります。
もし施工しながら作業にかかった費用を都度メモし、最終的にかかった合計費用を提示するという方法で費用が計算されてしまうと、業者はいくらでも作業を増やして費用を水増しできてしまい、施主は工事完了までのあいだ業者から請求される費用に怯えなければなりません。
そのため正しい工事内容で妥当性のある見積もりを作ってくれる業者かどうかを選ぶためには、正確な塗装費用を工事開始前に計算してもらうことが大前提となります。
正確な塗装面積がわかっていれば過不足のない塗装が行えて部材の無駄がなくなるだけでなく、塗装面積の計算が間違っていて余分な費用を支払うというリスクも防げるのです。
■図面の種類と外壁塗装における役割
図面の中には外壁塗装では使わないものもありますので、どの図面が何を表しているのか知っておき、正しい情報を業者に渡せるようにしましょう。
1.建物の設計図は3種類
建物の情報を記した図面は3種類存在します。
図面の種類 | 内容 |
意匠図 |
|
構造図 |
|
設備図 |
|
これらの図面は新築のとき必ず作成されており、施主控えとしてハウスメーカーや設計事務所からもらうことができます。
図面は外壁塗装だけでなく室内の水回り機器交換や内装の間取り変更など、リフォーム全般で使用することがありますので、すぐわかる場所に保管しておきましょう。
2.外壁塗装の見積もりで使う図面は立面図と平面図
外壁塗装では上記すべての図面を渡す必要はありません。
外壁塗装で使用する図面は「意匠図」の中の、「立面図」と「平面図」の2種類です。
外壁塗装の見積もり作成や工事工程作成に必要な情報はこの2つからほとんど調べることができます。
●立面図
建物を正面や真横から見たときの外観を図にしたものです。
東西南北の4面分が作成されていますが高さしか書かれておらず、正面から見た状態なので屋根の場合は勾配(傾きのこと)がわからないため、もうひとつの平面図と組み合わせて使用することで建物のタテヨコがわかるようになります。
●平面図
建物を真上から見下ろし、水平に切断した状態を表した図のことで「間取り図」とも呼ばれます。
よくマンションの物件情報チラシなどに記載されている、部屋数や位置を示した図も平面図の一種です。
平面図だけでは建物の高さはわかりませんが、外壁の長さが記されていますので立面図と組み合わせることで外壁面積を求めることができます。
■図面がないときの対処法
築年数がある程度経っている建物の場合は図面が手元にないこともあります。
もし図面を紛失してしまった時や手元にないときは、以下の方法で対処しましょう。
1.家を建てた施工業者に図面を取り寄せる
外壁塗装工事の開始までスケジュールに余裕があれば、建物を建てたハウスメーカーや工務店などの施工会社に図面の取り寄せを依頼しましょう。
基本的に施工した建物の情報は業者側でも残していますので、複製を取り寄せることができます。
ただし施工から10年以上など時間が経っている場合は業者側も図面を探すのに時間がかかってしまいます。
施工業者から図面が届くまでのあいだ外壁塗装工事も中断せざるを得ませんので、なるべく早めに取り寄せておきましょう。
2. 図面がない旨を施工業者に伝える
どうしても塗装工事までに図面が用意できないときは、塗装業者に現地調査を依頼するときに図面が手元にない旨を伝えておきましょう。
現地調査の当日になって図面がないと伝えられても、施工業者はその場で別の方法を考えなければならず時間を浪費してしまいます。
図面は外壁塗装の最初に使用します。
図面がないということを塗装工事の最初の時点で伝えておけば、業者側も計測にかかる時間や別の計測方法などをあらかじめ考えたうえで現地に赴くことができ、図面がない状態でも手際よく塗装面積を求めることができるでしょう。
■図面抜きで正確な外壁塗装の面積は求められない
事情があってどうしても用意できない場合を除き、外壁塗装業者にはできる限り図面を渡した方がよいでしょう。
確かに図面なしで塗装面積を求める方法はありますがあくまでも図面がないときの手段であって、図面が用意できるも関わらず使用せずに見積もりを作る業者は避けることをおすすめします。
1.係数を使って概算面積を求める業者もいる
塗装面積は単純に建物のタテヨコの大きさがわかっているだけでは求められません。
窓や玄関ドアなど塗装しない箇所がありますので、それらの面積を差し引いた残りが純粋な塗装面積となります。
純粋な塗装面積だけを計算する方法には、延べ床面積に係数を乗じるものがあります。
月間の施工件数が多い業者などは現場ごとに図面を一枚一枚調べていると時間がなくなるため、上記の計算式を用いることで図面を使わずに効率化している所もあります。
計算式:
延べ床面積(㎡)×1.1~1.4
※係数は建物の規模に合わせて1.1~1.4を使い分けます。
例えば坪数が30坪の家の場合、1坪は3.3㎡ですので延べ床面積は
30坪×3.3㎡=約100㎡
となります。
30坪の家であれば係数1.3を乗じるとおおよその塗装面積がわかります。
100㎡×1.3=130㎡
この計算により、30坪の家の塗装面積は約130㎡と予測できます。
ただしこの計算はあくまでも概算ですので、建物の正しい高さ・長さを知らなくてもよい理由にはなりません。
2.パック料金は塗装しない面積まで含まれていることがある
パック料金とは「約30坪、足場代込みのシリコンプラン・定額70万円」などのように、わかりやすく定額料金が設定された塗装プランのことです。
定額なので予算が立てやすく便利に見えるパック料金ですが、落とし穴も潜んでいます。
例えば「200㎡まで定額80万円」というパック料金を選択して、純粋な塗装面積が180㎡だった場合、塗装しなくてもよい20㎡分の面積までパック価格に含まれてしまい余分な費用を払うことになります。
あるいは塗装面積が200㎡で「150㎡まで定額70万円」というパック料金を選んだ場合はどうでしょうか。
こちらは一見安い費用で沢山の面積が塗装できてお得なように見えますが、悪質な業者になると塗布量を減らすために塗料を薄めて使ったり、必要な工程を省いたりといった手抜き工事を行う可能性があります。
このような理由からパック料金はできるだけ避け、はじめから図面を使って正確な塗装面積にもとづいて施工してくれる業者に見積り依頼した方が安全と言えます。
3.図面をないがしろにする業者に要注意
図面があるにも関わらず使わない業者には特に注意が必要です。
悪徳業者が図面を使おうとしない理由には以下のようなものがあります。
- 安い見積もりで契約させるために塗装面積を少なく提示しようとしている
- 塗装面積を計算する手間を省いてさっさと工事に着手し、契約をキャンセルしづらい状況に持ち込みたい
- そもそも業者自身に建築の知識がないので図面の見方がわからない
- 図面の見方がわからないことを施主に悟られたくない
塗装面積を少なくしてまで安い見積書を作るような業者は工事にも責任を取ってくれませんので、施工不良が起こる確率が非常に高くなります。
また建物の図面を深く読み込むときは建築の知識が必要です。
もし施主から「このマークは何ですか」と聞かれて答えられなければ怪しまれてしまいますので、リフォームの知識がない営業担当者は図面を目の前に出されることを嫌がります。
外壁塗装は複数業者から見積りを取って最も納得できる所と契約することが大切ですが、「お客様の家なら図面は必要ありませんよ」と図面を見もしない業者と、図面の提供を求めてしっかり塗装面積を計算してくれる業者がいた場合は、後者に頼みたいと考えてしまうのは言うまでもないでしょう。
■おわりに
建物の図面はすべての人が持っているとは限らないため、外壁塗装業者も図面なしで塗装面積を求める方法は用意しています。
しかし図面があるにも関わらず提示を断るような業者や、塗装面積を計算するための現地診断さえ省こうとする業者には警戒しなければなりません。
塗装面積をごまかして費用を多く取ろうとしている悪徳業者か、そもそもリフォームの知識さえない詐欺業者の恐れがあります。
正当な費用で安全に施工してもらうためにも、図面の大切さを理解している優良業者と出会いましょう。