外壁塗装の見積もりで失敗しないための知識と考え方

自身の家をできるだけ長持ちさせるためにも、定期的に外壁塗装工事を行うことは非常に重要ですが、外壁塗装業者の数は全国的に非常に多いため、どの業者に工事を依頼するべきなのか、見積もりを見ただけでは判断できないという方が多いでしょう。

 

この記事では、外壁塗装リフォームの見積もりの見方や、外壁塗装工事をお願いする前に必ずチェックするべき見積もりのポイントなどについて解説します。

■外壁塗装工事の見積もりを見るときに注意するべき点

外壁塗装業者に現地調査を行ってもらい、その後の見積もりを見て「工事費用が安いからこの外壁塗装業者にしよう」と、工事費用の安さだけで外壁塗装業者を選択してしまうのはよくありません。

外壁塗装業者が作成した見積もりを見るときは、以下のポイントをチェックして、外壁塗装工事に使用する塗料の種類や、施工内容がきちんと記載されているか確認しましょう。

1.見積もりに外壁や屋根に使用する塗料の詳細が記載されているか

外壁塗装用の塗料には、

  • シリコン樹脂塗料
  • ラジカル制御型塗料
  • フッ素樹脂塗料
  • ウレタン樹脂塗料
  • アクリル樹脂塗料

などのグレードが存在し、塗料はこのグレードが違うだけで、施工単価や耐用年数も異なります。

工事費用は塗料のグレードが違うだけで約10万円以上変わることもあり、工事後、塗装がどれくらいの期間外壁を守ってくれるのかにも影響しますので、ご自宅の外壁塗装に使われる塗料の情報を工事前に知っておかなければなりません。

また、同じグレードの塗料であったとしても、メーカーによって樹脂の配合率、品質、価格が大幅に異なりますので、見積書には、塗料の商品名とメーカー名を必ず記載してもらいましょう。

2.足場設置を行うか、足場設置費用が無料になっていないか

外壁塗装工事を職人さんが安全に行う上で必要な足場の設置や解体に関する仮設足場費用は、外壁塗装工事費用の20%ほどとかなりの部分を占めるため、できるだけ総工事費用を安く見せようと、「仮設足場をしないので工事費用が安い」と足場を使用しないことを売りにして、格安料金を提示してくる業者もいます。

しかし、外壁塗装工事において架設足場は、職人による塗装作業の質を高めてくれるだけでなく、職人や住民を事故から守ってくれる必要不可欠な機材であるため安くするために省くべき工程ではありません。

架設足場を使わずに外壁塗装工事を行おうとする業者は、工事品質を重要視していない業者である可能性がありますし、足場代が無料の業者は、その値引きした足場費用分を他の項目に上乗せしている業者である可能性もあります(すべての業者が手抜き、悪徳業者であるとは限りません)。

参考:外壁塗装における足場の重要さを理解しよう

3.下地処理の項目があるか

外壁塗装工事において、塗料を外壁に塗る前に、現在の外壁のさびや古い塗膜、カビなどの異物を外壁や屋根から除去する下地処理という工程が非常に重要です。

 

もし、外壁や屋根に付着した汚れや異物を残したままその上から新しく塗料を塗っても、塗料が汚れや異物に邪魔されて外壁や屋根にうまく密着できず、塗装工事後すぐに剥がれやひび割れ、気泡などの施工不良が起こってしまいます。

通常、外壁塗装工事の見積もりには、下地処理の項目として

  • 高圧洗浄
  • 下地補修(鉄部の場合はケレン作業)
  • コーキング補修(シーリング補修ともいう)

などが記載されていますので、各下地処理の作業内容と目的を知って施工業者には確実に実施してもらいましょう。

●高圧洗浄

業務用の高圧洗浄機を使って、外壁や屋根に付着した汚れやカビ、錆びの塊、耐用年数が切れた古い塗膜などを削ぎ落とします。

また、高圧洗浄後、使用した水が外壁や屋根に残った状態で塗装をしても、うまく塗料が密着せず、塗装の品質が低下して剥がれや縮みなどが起きてしまいますので、高圧洗浄後は1日ほど乾燥期間を設ける必要があります。

参考:外壁塗装の高圧洗浄で知っておきたい作業時間、圧力、費用、水道代

●下地補修(下地処理)

下地補修という工程内で、高圧洗浄で取りきれなかった汚れや古い塗膜を、皮スキという鉄製のヘラなどでそぎ落とし、外壁に起きている深いひび割れ(構造クラック)や鉄部の錆びなども下地処理の工程で補修します。

 

なお、下地補修の工程で行われる鉄部の錆び落とし作業は「ケレン作業」として見積もりに記載されている場合があります。

参考:下地処理の外壁塗装費用と相場

●コーキング補修(シーリング補修)

外壁材として最もよく使われているサイディングボードは、ボードのつなぎ目の部分をコーキング材(シーリング材)で埋め込むことで雨水等から家を守るという外壁の役割を保っています。

コーキング材は紫外線や雨で経年劣化すると縮みや割れを起こし、この縮みや割れの部分から外壁内部に雨水が浸水するようになってしまいます。

 

外壁をグレードの高い塗料で塗装しても、コーティング材の部分が劣化するとそこから水が入り、建物全体の防水性が低下してしまいますので、コーキング材の補修作業は外壁塗装工事の工程の中でも特に重要な作業と考えられており、優良業者であれば見積もりに必ずコーキング補修を記載しています。

参考:外壁塗装の目地のコーキング材補修を徹底解説

4.塗装の工程が「3回塗り」になっているか

外壁塗装は三回以上の塗り工程が必要で、

外壁や屋根の塗装リフォーム工事では、塗装の作業を下塗り、中塗り、上塗りの3回行い、簡単には剥がれない丈夫な塗装の膜を作ります。

1回目の下塗りの工程では中塗り、上塗り用の塗料(仕上げ塗料)が外壁にしっかり密着するように、接着剤のような役割を持つ下地材という下塗り用塗料を塗装し、その後の中塗りと上塗りで仕上げ用塗料を使って塗装するのです。

外壁や屋根に塗る塗料が、製造メーカーが定める本来の耐用年数を発揮するためには、ほとんどの塗料の場合、上記の3回の重ね塗りが欠かせませんので、外壁塗装業者から渡された見積もりの塗装の項目が、「下塗り・中塗り・上塗り」に分かれているか必ず確認しておきましょう。

 

なお、外壁塗装業者の見積もりによっては、下塗りを「下塗り」、中塗りと上塗りをひとまとめにして「仕上げ塗装」と記載する業者もおり、確実に3回塗りが行われる予定なのかが判断できない見積もりである場合は、契約する前に外壁塗装業者に質問して塗装回数を明らかにして見積書を作り直しもらいましょう。

参考:外壁塗装は三度塗りが基本!手抜き工事を防ぐためには?

5.見積もりの中に「一式」などの曖昧な表現はないか

悪質な外壁塗装業者の見積書では、面積や数量の部分を「一式」などの表現を使って曖昧に記載している場合があります。

外壁塗装工事では、塗装作業や下地処理などを行う面積(作業面積)を現地調査で計算し、この作業面積に施工単価(対して各作業を1㎡行ったときの費用)を乗じることで正確な塗装費用を求めることができます。

しかし、「一式」「その他」などの表現が使われているおおざっぱな見積書では、何を根拠に料金を算出しているのか内訳を調べることができないため、その料金が相場より高いのか、安いのか、適正なのかなどの判断もできません。

●延床面積をもとに算出している見積もりに注意

家の延床面積が同じだとしても、それぞれの家の形や窓の数などの様々な要因によって塗料を塗る面積は異なるため、外壁塗装工事中に使用する塗料の量も異なります。

 

例えば、正方形の家とL字型の家では、延床面積が同じでも、外壁の面積はL字型の家の方が多いため、L字型の家の方がより多くの塗料を使用します。

つまり、外壁塗装工事の作業面積を実測値ではなく建物図面に記載された「延べ床面積」のみで計算してしまうと、実際の作業面積よりも多く見積もられてしまう可能性があるのです。

延べ床面積ではなく、正確な外壁面積や屋根面積を使って作業面積を算出してくれる外壁塗装業者からも見積もりを取ることで、無駄な作業面積を計算されていないかを調べることができます。

参考:外壁塗装費用を平米単価を計算して求める簡単な方法

6.外壁や屋根以外の「付帯部」も見積もりに含まれているか

外壁塗装工事では外壁や屋根だけでなく、軒天(外壁からはみ出ている屋根の裏側)や雨樋、雨戸、ポストや門まわり、ベランダの笠木、手すりといった付帯部分も塗装しなければ、建物全体の防水性を高められません。

●軒天などの付帯部ももれなく塗装する必要がある

軒天部分は外壁や屋根に比べると雨水や紫外線が当たらないため劣化しにくい箇所ですが、年数が経過した家では軒天の劣化が進んでいるため、外壁塗装工事でこの軒天をを塗装せずにそのままにしてしまうと、劣化した軒天と外壁との継ぎ目から雨漏りを引き起こす場合があります。

参考:軒天塗装の単価相場や材料の種類に関して

●雨樋や雨戸の塗装を怠ると外壁を塗り替えても家が古びて見えてしまう

雨戸

屋根に落ちた雨水をまとめて地上に排水する雨樋や、強風などから窓を守る雨戸などは破損しない限り頻繁に交換する必要はありません。

しかし、経年劣化によりいつの間にか色あせが生じている雨樋や雨戸なども多く、このような付帯部の塗装を怠ると、せっかく外壁と屋根を塗り直しても劣化した付帯部が余計に目立って家全体としてみたときに仕上がりが悪く感じられてしまうので、外壁塗装の見積もりを見るときは雨樋、雨戸などの付帯部分の塗装が含まれているかどうかを確認しましょう。

参考:外壁塗装では雨戸の塗装も欠かさず済ませよう!
雨樋の塗装は本当に必要?目的に応じて塗装か交換を判断する

●ベランダや階段の手すり部分の金属部(鉄部)も見積もりに含まれているか確認する

また、ベランダや階段の手すりといった金属でできた部分も放置すると、錆びが進行して見栄えが悪くなるというだけではなく、外壁材や屋根材が金属系であれば建物全体に錆びが広がる可能性もあります。

このようなことを防ぐために、下地補修の際にケレン作業を済ませ、防錆効果を持つ鉄部用の塗料で塗替えておく必要があるため、この作業も見積もりふくまれているか確認しましょう。

参考:外壁塗装では鉄部が劣化しやすいので必ずケレン処理や錆止めを

7.外壁塗装工事の期間が極端に短くないか

戸建て住宅の外壁塗装工事は問題なく作業が進んだとしても、約2週間は工事期間が必要であるため、工事期間が5日間や1週間など、極端に短いときには、3回塗りや付帯部塗装、下地処理といった必要な作業工程が省略されている可能性が高いです。

必要な作業工程を省略するなど、作業内容に問題があると、外壁や屋根の塗装の仕上がりは悪くなり、短期間でひび割れ、剥がれが起こる可能性があります。

作業期間が適切かどうかは見積書や工程表を見て確認し、適切か不安であれば、相見積もりをしたり、外壁塗装駆け込み寺などの相談できる機関にできるだけ早めに相談しましょう。

■まとめ

外壁塗装の見積もりを見るときは、見積額の安さだけでなく、

  • 塗料のメーカー名や塗料の名前
  • 塗装工程で3回塗りを行っているか
  • 下地処理を行っているか

など、様々な項目に目を通す必要がありますが、最も大事なことは、依頼主でも内容をすぐに把握できる、わかりやすい見積もりを作ってくれる業者と出会うことです。

 

見積もりの見方やよい業者の探し方について、少しでも不安をお感じの場合は、外壁塗装駆け込み寺にご相談ください。

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