重厚感のある日本瓦や竹垣のフェンスなど、独自の趣を醸し出す和風住宅は、塗り替えの際は、雰囲気を損ねない配色が大切です。
和風住宅を塗装するときは、和のテイストを表現する色をしっかり選ぶことはもちろん、外壁塗装における色選びの基本を守ることも忘れてはなりません。
この記事では、和風住宅の塗り替えを成功させるための基礎知識や、知っておきたいポイントについて解説します。
目次
■和風住宅を塗装するときのポイント
和風の雰囲気を表現するアイテムを知っておくことができれば、絶妙な荘厳さや華やかさを表現することも不可能ではありません。
日本の伝統色や木目の使い方を押さえて、和風の雰囲気を表現するテクニックを身につけておきましょう。
1.伝統色を使いこなす
和風を表現するためにぜひ使いこなしたいのが、和の伝統色です。
外壁塗装におすすめの伝統色としては、主に以下のような種類があります。
※お使いのブラウザによって色味が多少異なることがあります。
上記のほかにも、外壁にぴったりの伝統色は数百色近くありますので、赤系や青系など、仕上げたいイメージに近い色の中から好みの伝統色を探していきましょう。
なお、塗料の色は、必ずしも伝統色の通りに表記されているとは限らず、近い色がない場合は調色して作ることもできますので、使いたい伝統色があれば、似た色の取り扱いがないか業者に相談してみましょう。
●伝統色は彩度が低いものが多く使いやすい
和風の伝統色は、ややくすんだ落ち着いた色味のものが多い傾向にあります。
このようなくすんだ色は「彩度が低い色」と呼ばれ、反対に、真っ赤や真っ青などはっきりとしたポップな色は彩度が高い色になります。
外壁は、彩度が高すぎると周囲から悪目立ちしてしまうことが多いため、彩度が低い色を選ぶと失敗しにくくなりますので、色選びの失敗を防ぐという点でも、伝統色を積極的に使用することをおすすめします。
2.木目を活かす
木材も、和風のテイストを演出する重要なアイテムです。
和風住宅には、軒天、破風板、鼻隠し、面格子、ベランダの笠木、玄関ドアや玄関周りのポーチ柱といった、様々な箇所に木材が使用されています。
この木材が持つ天然の色や木目と、外壁に塗る塗料の色を組み合わせることによって、自然な和の雰囲気を表現することができます。
木材はそのままの状態で屋外に設置すると、雨や汚れですぐに腐食して耐久性が落ちてしまいますので、外壁とは別に、木材専用の保護塗料や防腐処理の方法を選んでもらいましょう。
■和風仕上げにおいて色選び以外に注意すべきこと
まとまりのある、調和の取れた和風の外観を作る方法は、伝統色を選んで木部と組み合わせるだけではありません。
外壁塗装における色選びの基本的なテクニックも駆使して、後悔しない外壁塗装にしましょう。
1.エクステリアの色も建物と合わせる
さきほど、外壁や屋根には様々な木部があり、それらも塗料の色と組み合わせるというテクニックをご紹介しましたが、住宅には、ポストや植木、フェンスや塀、窓サッシや庭、花壇、カーポートなど、様々なエクステリアパーツが存在します。
これらの色を無視して外壁の色を選んでしまうと、塗装後に、全体にまとまりのないちぐはぐな家になってしまう恐れがあります。
このような失敗を避けるためには、実際の家の外観写真を使ったCGのカラーシミュレーションなどを使って、外壁の色だけを変えたときに、既存のエクステリアパーツが浮いてしまわないか確認しておくとよいでしょう。
なお、既存写真を使ったカラーシミュレーションは、業者によっては用意できないこともありますので、見積もりを依頼する前に、カラーシミュレーションの有無を確認しておきましょう。
2.汚れやすさも考慮する
白系やベージュ系の薄い色は、汚れが目立ちやすいというデメリットがあります。
また、換気口の下や、雨が当たりやすい窓サッシの下といった雨だれが発生しやすい箇所は、汚れが外壁表面で筋状になり、古ぼけた印象になってしまいます。
汚れが発生しにくい外壁を手に入れるためには、お住まいの家で汚れがどのように発生するかも、塗装の前に知っておく必要があります。
外壁塗装用の塗料には、付着した汚れを光に反応して分解し、雨水で洗い落とす自浄作用を持った、光触媒機能付きの塗料もあります。
車両の通行量が多い道路沿いや、山や海から風が届きやすいエリアに建った家などは、このような機能付き塗料の使用も検討するとよいでしょう。
3.実物に近い色見本を用意する
塗料の色は、印刷で表現されたものと実物では、色の印象が大きく異なることがあります。
また、色を表示しているパソコンのモニターやタブレットによっても色味が変わることがあるため、できるだけ、実際に使用する塗料の色をご自身の目で見たうえで、色を決定しましょう。
塗装業者によっては、塗装前に、実際に施工する外壁に、30×30cm程度の面積で試し塗りをしてくれたり、同じ塗料を使って塗装した現場を見せてくれたりしますので、そのようなサービスの有無も、打ち合わせの際に尋ねておくことをおすすめします。
●色の面積効果に注意
色は、小さな面積と大きな面積では、大きな面積に塗られたときのほうが明るくはっきりと見える性質があります。
このような現象を「面積効果」と呼び、「淡い黄色を選んだはずが、塗装してみると、明るすぎてまぶしい外壁になってしまった」といったトラブルの元になっています。
約130~150㎡の広範囲に塗装するにも関わらず、小さな面積のサンプルで色味を確認することが多い外壁塗装では、この面積効果による錯覚には特に注意しなくてはなりません。
サンプルを見て色番号を指定するといったような色選びは避け、できるだけ大きな面積に塗られたサンプルを用意してもらい、塗装時に近い状態が確認できた状態で色を決定しましょう。
■和風と和モダンの違いを区別しておこう
和風とは異なりますが、和モダンデザインの住宅も、根強い人気があります。
しかし、和風と和モダンでは、デザインするときの注意点が異なるため、どちらでもない中途半端なデザインの外観にならないように、それぞれの特徴と違いを知っておかなければなりません。
1.和風の建物とは
和風の住宅は、伝統色や木材を取り入れた、昔ながらの佇まいをしています。
荘厳な和瓦や、木材をふんだんにあしらった玄関ポーチ、木製の丸小窓などは、和風の建物に多く見られるデザインです。
塀や植木なども、庭園に置かれるような竹垣や石などが使われることが多く、建物全体が直線で構成されている点も、和風建築の特徴です。
2.和モダンな建物とは
和風建築の、直線美や木材の多用といった特徴を残しつつ、ライトやガラス、洋風の植物やコンクリートといったモダンな素材を取り入れた、現代的な雰囲気を持つ住宅のことを、和モダンと呼ぶことがあります。
和モダンという確実な定義は存在しませんが、和のレトロな雰囲気と、現代的な遊び心が共存する空間は、多くの人を惹きつけています。
●和モダンデザインは伝統とモダンのバランスが大事
和モダンデザインを作るときは、瓦や伝統色といった、和風を演出する素材の雰囲気を、いかに損ねずにデザインするかが大切です。
和モダンデザインの失敗例
- モダンを目指し過ぎたあまり、屋根瓦・外壁・フェンス・窓サッシも黒系で塗装した結果、特徴のない家になってしまった
- 伝統色を使ったはずが、思っていた色味にならず、和風とも洋風とも呼べない家になってしまった
- 瓦に対してエクステリアのライトやガラスの相性が悪く、ちぐはぐなデザインになってしまった
上記のような失敗を起こさないためには、塗装前に、実際に塗装された状態に近い色見本で色を確認することが何よりも大切ですが、その他にも、和モダンで塗装された施工例をいくつか参考に見ておくことも忘れてはなりません。
「どこに和のテイストが残って、何の素材でモダン要素を演出しているか」といった具合に、和モダンの演出方法を分析して、自宅のリフォームで参考にできる箇所を見つけていくとよいでしょう。
■おわりに
和風住宅の塗装では、伝統色をいかにバランスよく配色し、屋根やエクステリアパーツと調和したカラーコーディネートを行えるかが非常に重要です。
また、外壁塗装における、基本的な色選びのコツも押さえておくことができれば、家全体で調和が取れた、趣のある和風デザインを作ることも不可能ではありません。
和風住宅の塗装例をいくつか比較しながら、ご自身の家にぴったりの和風デザインを見つけていきましょう。