外壁塗装は詐欺の手口に使われやすい性質がありますが、特に注意しなければならないものがモニター商法です。
モニター価格の外壁塗装は非常にお得に見えますが、それは契約を取るための見せかけの魅力に過ぎません。
この記事ではモニター商法を行う悪質業者に騙されないために、モニター商法の危険性や回避するためのポイントについて解説します。
目次
■外壁塗装のモニター商法とは
モニター商法とは「モニターになってほしい」「モニターならこの金額になります」などモニターになることを条件に、高額な商品を購入させる商法のことです。
悪質な業者はモニター商法が持つ「格安」や「割引」を利用して、巧妙な手口で詐欺を働くことがあるため警戒しておきましょう。
1.悪質なモニター商法の大半は訪問販売業者によるもの
モニター商法を勧めてくる業者はほとんどが訪問販売業者です。
通常、外壁塗装業者のお店を訪ねるお客様は「塗装工事を行いたい」という意志がありますので、モニター価格などのサービスを用意しなくても契約を勧めることができます。
しかし突然訪問してセールストークをしなければならない飛び込み営業では、何かしらのお得な条件を提示しなければ契約に進むのは難しいものです。
その営業手法として利用されるのがモニター商法です。
2.モニター商法の典型的なセールストーク
モニター商法のセールストークはパターンが決まっています。
言い回しや内容は業者によって異なることがありますが、セールストークの特徴を知っておくと怪しい点に気づけるでしょう。
●工事費用の安さを強調する
- 足場代が無料になります
- 半額で工事ができます
- モニター特別価格で工事します
など
モニター商法の割引の手口には様々なものがあります。
そのうち代表的なものは「足場代を無料にする」というものです。
足場の設置・解体では外壁塗装工事の2~3割を占める高額な費用が発生します。
約30~40坪の戸建て住宅であれば足場代は20~30万円になりますので、この費用が無料になると説明されれば誰しも非常にお得に感じるでしょう。
しかし悪質なモニター商法では、無料になった足場代などの割引された工事金額が他の費用に上乗せされていたり、工事の途中で追加工事を請求されたりしています。
その結果他の業者に依頼したときと変わらないか、または相場以上の工事代金になっているケースもあるためおすすめできません。
●期間を限定して工事を急がせる
- 今しかこの金額で契約できません
- 今なら新規開拓エリア限定の特別価格で工事します
- 今工事をしないと外壁が危険な状態です
など
訪問販売業者が「今」を強調して工事を急がせるのは焦って契約させようとしているだけですので、絶対に信じてはいけません。
まず大前提として、その日に契約して工事をすぐ行わなかったからといって家がすぐに倒壊することはありません。
もし家がそのような危険な状態になっていれば、既に激しい雨漏りや外壁・屋根材の剥がれなどが頻発しており、いくら工事に詳しくない人でもとっくにリフォーム業者選びを始めているでしょう。
また優良業者は常に工事前に現場調査をして、入念に工事計画について打ち合わせをしてくれます。
建物の耐久性を長持ちさせるためにどのような工事が必要か、どの塗料を使うべきかなどを綿密に調べて建物面積を元に塗装費用を計算してくれますので、不必要に工事を急がせることもありません。
〇〇をすればお得に工事できる
- 一週間以内に工事をしてもらえればお得になります
- 火災保険を利用すれば工事費用が無料になります
- 弊社のサイトに写真や工事の感想を掲載すれば割引します
など
モニター商法は条件を満たすための条件が設定されています。
その条件の内容は一見施主にとって負担にならないように思えますが、実は訪問業者にとって有利な内容になっています。
例えば「工事を一週間以内に行う」はクーリングオフを利用させないための手口です。
クーリングオフ制度は契約日から8日以内であれば契約解除できますので、それ以内に工事に着手して工事をキャンセルしにくい状態にさせようとしています。
また「火災保険を利用して工事費用を割引にしましょう」などと提案してくる業者にも注意が必要です。
火災保険の保険金は自然災害で生じた破損の補修費用にしか降りませんので、台風や大雨の被害でもないリフォーム目的の外壁塗装工事は保険の対象外です。
「火災保険で割引になる分、少し高い高性能な塗料が使えますよ」などという業者の言葉を信じて契約してしまうと、火災保険が適用されず高額な工事費用を負担することになってしまいます。
そのほかホームページに写真を掲載するパターンも、悪質な業者のホームページに写真が掲載される恐れがあるため避けておいた方がよいでしょう。
そもそも訪問販売専門業者は連絡先や会社名を調べられないようにホームページを持たない傾向にあります。
そのため写真を掲載するつもりなど毛頭なく、元々高い工事費用を若干安く感じさせるための口車に過ぎません。
■モニター価格に潜む危険な落とし穴
「モニターになる代わりに安い金額で工事をしてもらえるなら、何かしらメリットもあるのでは」と思ってしまいますが、モニター価格の安さには落とし穴が潜んでいます。
安さにつられて契約してしまうと家をさらに危険な状態にしてしまったり、払わなくてもよいお金を悪徳業者に支払ったりすることになりますので、絶対に契約しないようにしましょう。
モニター商法の格安金額で工事をしてはいけない理由は主に2つです。
1.工事費用が安くなっても実はお得ではない
モニター価格として安い工事費用を提示されても鵜呑みにしてはなりません。
なぜなら外壁塗装含工事には必ず発生する費用というものが存在し、人件費や材料費を削減すれば安全に工事を行うことはできないからです。
外壁塗装に必要な工事とその目的をまとめると以下のようになります。
工事の種類 | 行う目的 |
足場の設置・解体工事 |
|
高圧洗浄作業 |
|
下地調整作業 |
|
養生作業 |
|
塗装作業 |
|
もしこれらの工程をひとつでも省いたり規定を無視して行ったりすれば、質の悪い塗装になることは言うまでもありません。
悪質な業者は平気でこれらいずれかの費用を省いて安い見積書を作ります。
そして外壁塗装の知識がない施主に、
「他の業者さんは丁寧にやり過ぎるので費用がかさんでしまいます」
「我々の技術力ならこの材料を使わずに済みます」
などと言って安心させてずさんなリフォーム工事を行います。
●格安工事によるずさんな手抜き施工
相場以下の格安な費用で行われる工事は、必要な作業が十分行われていない手抜き工事に他なりません。
例えば足場の設置を省けば、震える手と足で塗装されてムラや塗り残しだらけの仕上がりになってしまうでしょう。
あるいは塗装の3回塗りが省かれれば塗装しても塗料が外壁・屋根に密着せず、本来の耐久年数を迎える前に剥がれや縮みなどの劣化症状が起きてしまいます。
また訪問販売業者は自社職人を雇っていませんので、工事は下請け職人に外注して行います。
しかし自分たちの利益を守るために下請け業者に十分な報酬を支払わないケースが多く、下請け職人たちは塗料を必要以上に薄めたり質の悪い安い塗料を使ったりするような手抜き工事を行わざるを得なくなります。
2.工事後に不具合があっても保証されない
モニター商法の危険性は工事の後にも及びます。
外壁塗装は一度工事して終わりではありません。
塗料はいずれ必ず耐用年数を迎えますので、優良業者は工事後もアフターフォローを続けて適切な時期に次の塗替えを勧めてくれます。
しかし悪徳業者は契約金さえ取れてしまえばその家がどうなろうと一切責任を負いません。
優良業者のように工事後も付き合いを継続するといずれボロが出てしまうため、詐欺を指摘される前に一回の工事限りで会社ごと消えてしまうのです。
●やり直しがあっても費用は施主負担になってしまう
優良業者は工事後に必ず「工事保証書」を発行してくれます。
工事保証とは施工を担当した業者が独自に発行するもので、万が一施工箇所に不具合や施工ミスが発覚しても工事保証で定めた年数と範囲内で、無償で補修してくれます。
保証の期間と範囲は業者によって異なりますが、大半は塗装の耐用年数を想定した内容で作成されています。
しかし悪徳業者は「我が社のリフォーム工事は完璧なので今後一切メンテナンスの必要がありません」などと言って工事保証も発行してくれません。
悪徳業者による手抜き工事で雨漏りや塗料の剥がれといった施工不良が生じた場合、工事保証も発行されず業者の行方もわからなければ、別の業者に塗り替えを依頼しなくてはなりません。
しかし塗り替えを行う業者には費用を負担する義務は一切ありませんので、費用は施主が負担しなければならないのです。
■モニター商法に騙されないための3つのポイント
危険だらけのモニター商法から身を守るためにも、騙されないための3つのポイントを事前に身につけておきましょう。
1.訪問販売業者とはその場で契約しない
訪問販売業者が接触してきたとき必ず守らなければならないのが、「絶対にその場で契約しない」ということです。
強引に契約を迫られたり見積り書を渡されたりして興味が湧いても、決してその場で契約書にサインしてはいけません。
●とにかく営業マンとの接触を絶つこと
いかに悪徳業者の嘘を見抜くテクニックや知識を持っていてもいざ訪問営業マンを目の前にすると実行するのは難しく、巧みな営業トークで契約に誘導する手練手管のセールスマンには敵いません。
とりあえず話だけでも聞いてみようなどと油断せず、インターホン越しの時点で玄関に入れずに立ち去ってもらうことが最も安全なモニター商法を回避するテクニックです。
2.クーリングオフ制度について知っておく
クーリングオフとは8日以内であれば契約を解除できる制度のことで、外壁塗装の訪問販売でも利用できます。
ただし利用するためには一定の条件を満たす必要があります。
そのため悪質業者は巧みにその隙を突いて来ようとしますので、消費者側もクーリングオフの知識を身につけておかなければなりません。
●クーリングオフの利用条件
- 契約から8日以内であること
- 個人と法人間での契約であること
- 消費者側から会社を訪ねていないこと
- 消費者側から業者を家に呼んでいないこと
- 過去に契約したことのある業者ではないこと
なお「外壁塗装にクーリングオフは使えません」や「従来品より高性能なシリコン塗料です(実際は安価な一般塗料)」など、業者が事実と異なる内容を消費者に伝えて契約させていた場合は『不実告知』となり8日を超えて契約解除が可能です。
クーリングオフを実際に利用するための手続きについてはこちらで詳しく解説しています。
3.外壁塗装費用の相場を知っておく
訪問販売業者から「こんな価格で工事ができるのは弊社だけですよ」と言われると、二度とその価格で工事が行えないような気がして不安になってしまうものです。
このとき外壁塗装工事がお得かどうかを判別する判断基準があれば、慌てて契約することもなくなるでしょう。
外壁塗装業界には相場費用が存在します。
平均的な30~40坪前後の戸建て住宅の相場費用を知っておけば、ご自宅の工事費用もイメージしやすくなるでしょう。
●戸建て住宅の外壁塗装費用
以下は30坪と40坪の住宅で外壁のみ塗装したときと屋根もセットで塗装したときの、費用相場です。
なお使用する塗料は現在外壁塗装で定番となっているシリコン塗料を想定しています。
坪数\施工範囲 | 外壁のみ | 外壁と屋根をセット |
30坪 | 70~80万円 | 90~110万円 |
40坪 | 80~90万円 | 100~130万円 |
上記はあくまでも相場費用ですが、一般的に塗装リフォームの費用がこの半額または倍になることはほぼありません。
もしモニター価格で格安料金を示されたとき、半額以上の不必要な割引がされていたら手抜き工事が行われる恐れがありますので避けておきましょう。
一方「こんなにお得な金額で工事ができますよ」と言われて見積もりを見ても、相場と同額か相場よりも高い金額になっているというケースもあります。
訪問販売業者との契約をその場で即決してはならない理由は、業者から提示された見積もりを相場費用と比較するためでもあるのです。
■おわりに
外壁塗装ではモニター商法による詐欺や手抜き工事の被害が多発しています。
モニター商法にだまされないためには何よりも消費者自身が手口と対策を知って悪徳業者との接触を避けることが重要です。
外壁塗装の相場費用や必ず発生する工事の内容を知って、悪徳業者のモニター商法を見抜けるようにしましょう。