
近年、注目を集める「ナノテク塗料」とは、ナノテクノロジー(極微細技術)を活用した最新の建築用塗料です。
ナノ(nano)とは長さの単位で、1ナノメートルは1メートルの10億分の1(髪の毛の太さの約10万分の1)という極めて小さい尺度を意味します。
ナノテク塗料では、このナノサイズの粒子技術を塗料に応用し、塗膜(塗った塗料の膜)を分子・原子レベルで高機能化しています。
具体的には、塗料の主成分である樹脂(塗膜を形成する接着剤の役割)をナノサイズまで微細化し、無機微粒子(例:シリカ=二酸化ケイ素の超微粉)と複合させた「ナノコンポジット樹脂」を用いることで、従来にない性能を引き出しています。
実際、代表的なナノテク塗料である水谷ペイント社の「ナノコンポジットW」では、約20〜30nmのシリカ微粒子を高耐候型のアクリルシリコン樹脂で覆い込み、樹脂粒子全体を50〜60nm程度の大きさに制御しています。
その結果、塗料中の樹脂使用量を大幅に削減しつつ、高い耐久性・防汚性を実現しました。
ナノコンポジットWは、大学や公的機関との産学官連携で開発され、平成19年に井上春成賞や工業技術賞を受賞するなど、技術的革新性が評価されています。
ナノテク塗料は、このナノコンポジットWの登場以降、業界で次世代のエコ塗料として注目されるようになりました。
現在は他メーカーからも、「超低汚染塗料」や「セルフクリーンコート」といった名称で類似の技術を用いた塗料が発売され始めています。
ただし、製品ラインナップは限定的で、歴史も浅いため、普及はこれからの塗料といえるでしょう。
参考リンク:ナノコンポジット(水谷ペイント)
ナノテク塗料のメリット・特徴

ナノテク塗料が高機能塗料と呼ばれるのは、一般的な塗料にはない多彩なメリットを備えているためです。
塗膜をナノレベルで設計した結果、耐久性だけでなく美観維持や環境面にも優れる点が特徴です。
ここでは、ナノテク塗料の主なメリットを項目別に解説します。
雨で汚れが落ちるセルフクリーニング機能

ナノテク塗料最大の特徴は、汚れにくさです。
塗膜表面が非常に滑らかで親水性(水となじむ性質)が高く、雨が降ると水滴が塗膜上に薄く広がります(セルフクリーニング効果)。
この水の膜が、塗膜に付着しかけたホコリや排気ガス汚れを浮かせて、重力とともに洗い流してくれるのです。
また、ナノサイズの無数のシリカ粒子が塗膜中に均一分散していることで、塗膜自体が石やガラスのような無機質に近い性質を持ちます。
従来の塗料では、大気中の埃に付着した油分などの汚れが、塗膜の微細な隙間に入り込み、洗っても落ちなくなることがありました。
しかし、ナノテク塗料の塗膜では、極微細な凹凸しか存在しないため、汚れが奥まで浸透せず、表面に留まります。
そこに、雨水が行き渡ることで、汚れが浮き上がり、簡単に流れ落ちるのです。
結果として、雨が降るたび、外壁が自動洗浄されるような効果が期待できるといわれています。
このセルフクリーニング機能のおかげで、新築時の美観を長期間保ちやすく、外壁の雨だれ汚れや黒ずみの蓄積を大幅に抑制できます。
高圧洗浄などの清掃頻度も減らせるため、長期的なメンテナンス負担の軽減につながる点は大きなメリットです。
紫外線に強く、色あせしにくい高耐候性

ナノテク塗料は、その成分設計により、紫外線に起因する樹脂の劣化(チョーキングなど)を抑制し、発色や光沢が長期間維持されやすいと考えられます。
一般的な塗料の場合、紫外線で樹脂が分解していくというメカニズムが働きますが、ナノテク塗料では、塗料中に含まれる無機微粒子がバリアとなり、劣化要因の進行を緩やかにすることで、塗膜の耐候性が向上しやすくなるのです。
具体例として、ナノテク設計の外装用塗料では、暴露試験やΔE(色差)の推移試験といわれる専門的な試験において、経年による色の変化(劣化)が小さい傾向が示されている資料が公開されています。
実施工でも、2〜6年程度の経過写真で美観維持が確認できる事例があります。
カビや藻が生えにくい防カビ・防藻性

ナノテク塗料は、防カビ・防藻性にも優れているといわれています。
というのも、塗料自体に防カビ剤・防藻剤が配合されていることが多く、塗膜表面にカビ菌や藻類の胞子が付着しても繁殖しにくい設計なのです。
特に、外壁北面や日当たりの悪い場所は湿気がこもりやすく、従来塗料だと経年で黒カビや緑藻が発生しやすいですが、ナノテク塗料ならこれを抑制できます。
また前述の通り、ナノテク塗料の塗膜は無機質に近いため、有機物を栄養に育つカビ・藻にとっては定着しづらい環境でもあります。
雨によって表面の汚れも洗い流されやすいので、胞子が留まらず流されてしまう効果も期待できます。
こうした理由から、ナノテク塗料で仕上げた外壁は長期間にわたり清潔感を保ちやすいのです。
環境と健康に優しいエコな塗料

ナノテク塗料は、環境負荷の低減や健康への配慮といった面でもメリットがあると考えられています。
独自の技術により、塗料に含まれる樹脂の使用量を約半分に抑えているため、塗料の製造時や廃棄時に発生するCO2の排出量を大幅に削減できるのです。
通常、塗料に含まれる樹脂(有機成分)は、原油由来で、製造や焼却処分の際に大量の温室効果ガスを出す材料ですが、その樹脂の含有量が半分であるナノテク塗料は、地球温暖化対策に貢献できる塗料といえるでしょう。
さらに、多くのナノテク塗料は、水性塗料(溶剤を有機溶剤ではなく水で希釈するタイプ)です。
これにより、塗装作業中や乾燥時に揮発するVOC(揮発性有機化合物)が非常に少なく、刺激臭も抑えられています。
有害なホルムアルデヒド放散量が最も少ないことを示す「F☆☆☆☆(エフフォースター)」等級を取得している製品も多く、室内への影響や周辺環境への臭気も軽微です。
シックハウス症候群(建材由来の化学物質で体調不良を起こす現象)のリスクも低減でき、住む人の健康に優しい点は安心材料でしょう。
VOCについて詳しくはこちらの記事もご覧ください。
加えて、ナノテク塗料の塗膜は、難燃性(燃えにくさ)を持つことも特長です。
無機質成分を含む塗膜は、一般に可燃性が低く、万が一、火災が発生した場合でも塗膜が延焼しにくい性質があります。
防火材料ではありませんが、通常の有機塗料よりは火に強い傾向があり、そうした安全面での利点も評価されています。
工期短縮につながる速乾性

ナノテク塗料には、速乾性(乾きやすさ)がある点も現場で喜ばれるメリットです。
塗料に含まれる超微粒子のシリカが、塗膜中の水分を効果的に蒸発させるため、塗装後の乾燥時間が短く済む、という仕組みです。
一般的な水性塗料よりも乾きが早いため、二度塗り・三度塗りの際のインターバルが短縮でき、工期の短縮や急な雨に対するリスク低減につながるといわれています。
特に気温や湿度の条件が整っていれば、ナノテク塗料は、塗布後数時間で表面乾燥し、翌日にはしっかり硬化しているケースもあります。
これにより、施工期間中の天候制約を緩和でき、施主様にとっても工事がスムーズに終わる恩恵があります。
ただし、乾燥が早い分、塗り広げの作業は迅速に行わなければムラになりかねないため、職人には手際の良さが求めらる塗料でもあるのです。
ナノテク塗料のデメリット・注意点

優れた性能を持つナノテク塗料ですが、万能ではありません。
ナノテク塗料の導入にあたっては、注意すべき点やデメリットもあります。
ここでは、ナノテク塗料を検討する際に知っておきたい留意事項を解説します。
メリットと合わせて理解し、後悔のない選択をするための材料にしてください。
価格が高く初期コストの負担が大きい

ナノテク塗料最大のデメリットは、塗料価格の高さです。
一般的なシリコン塗料の施工単価が1㎡あたりおよそ1,800~3,500円程度なのに対し、ナノテク塗料は設計価格ベースで約2,300~4,500円/㎡が目安とされ、1.5倍前後の高額になります。
塗料グレードで言えば、費用的にはフッ素塗料(15~20年耐久で3,000~5,000円/㎡程度)に近い水準ですが、ナノテク塗料の耐用年数自体は11~17年程度とされ、シリコン塗料(約10~15年)と同程度です。
つまり、単に耐久年数だけを見るとかなり割高です。
価格が高いからといって飛躍的に長寿命なわけではなく、あくまで「汚れにくさ」「環境性能」といった付加機能に対して費用を支払うイメージです。
そのため、初期費用を抑えたい方にとってナノテク塗料はハードルが高い選択肢となります。
採用するかどうかは、その高機能に見合う価値を感じられるか、長期的なトータルコストでメリットが出るかを慎重に判断しましょう。
施工できる業者が限られ、熟練度が求められる

ナノテク塗料はまだ歴史が浅く、市場シェアも高くないため、対応できる施工業者が限られる点も注意が必要です。
様々なナノテク塗料がありますが、メーカーが指定した「認定施工店」のみ施工ができるという場合や、事前に講習を受けた職人でないと正しく施工できないというナノテク塗料もあります。
身近なリフォーム会社や塗装店でも、ナノテク塗料の施工実績がない場合は適切な扱いができないかもしれません。
また、ナノテク塗料の性能を十分に発揮するには、高度な施工管理が求められます。
規定の希釈率や塗布厚を厳守すること、下地処理を丁寧に行うこと、塗装後の乾燥時間を十分確保し気温・湿度を管理することなど、職人の技量と知識が仕上がりを左右します。
未経験の業者が見よう見まねで塗ったのでは、本来のセルフクリーニング性能が出ないばかりか、塗膜不良を招く恐れもあります。
そのため、ナノテク塗料を採用する際は施工実績が豊富な業者を選ぶことが重要です。
依頼前に「ナノテク塗料での塗装経験はありますか?」と確認し、できればメーカーの施工認定を受けている業者に任せるのが安心です。
「ナノテク塗料の塗装経験が豊富な」プロに施工してもらうことで、ナノテク塗料の効果を最大限に引き出せるでしょう。
選べる色や艶に制約がある場合も

ナノテク塗料は、製品によっては色や仕上げの艶に制約がある点にも注意が必要です。
例えば、水谷ペイントのナノコンポジットWは艶消し(つやなし)仕上げ専用の商品です。
一般に、艶消しの塗料はマットな質感ですが、表面に微細な凹凸が生じるため親水性のセルフクリーニング効果との相性が課題となります。
そのため、艶ありが選べる塗料に比べて、選択肢が少ない傾向があります。
また、メーカーによっては標準色のバリエーションが限られている場合もあります。
ナノテク塗料は特殊な技術を要するため、大手主要塗料のように何百色もの中から自由に選べるとは限りません。
もし、「この色で塗りたい」という強い要望がある場合、希望色がナノテク塗料で対応可能か事前に確認する必要があります。
高彩度の鮮やかな色や深い艶が欲しい場合には、通常塗料+クリアコートで艶や防汚性を補うといった代替案も検討すると良いでしょう。
このように、ナノテク塗料は機能優先のため、デザイン面で妥協が必要になるケースもあります。
施工後のイメージをよく確認し、納得した上で採用するようにしてください。
セルフクリーニング効果には限界がある

「雨で汚れを洗い落とす」と聞くと夢のようですが、セルフクリーニング効果にも条件があります。
まず、雨がまったく当たらない部分の汚れは当然ながら残ります。
例えば深い軒下や庇(ひさし)に守られて雨がかからない壁面は、いくら親水性塗膜でも雨水洗浄が働きません。
そのため、そうした箇所では汚れが徐々に蓄積する可能性があります。
また、砂埃や土汚れがひどく溜まる箇所では、一度の雨では落としきれないこともあります。
ナノテク塗料とはいえ「全く汚れない外壁」になるわけではない点は押さえておきましょう。
汚れが集中しやすい部分については、建物形状の工夫や部材の追加によって補助することも検討されます。
例えば、陸屋根の立ち上がり部分(パラペット)では、内側に水が流れるよう笠木に水切り板金を付けるなどの対策で、外側の汚れを付きにくくする工夫が考えられます。

部材の追加によって水はけを補助しているイメージ画像
いずれにしても、どんな高性能塗料でもメンテナンスフリーにはならないことを理解しましょう。
ナノテク塗料であっても、数年に一度はホースで水洗いしたり、手の届く範囲を軽く拭き掃除するなど、簡単なお手入れをしてあげることで、美観をさらに長持ちさせることができます。
技術的な信頼性は今後の実績次第

ナノテク塗料は登場からまだ20年足らずであり、長期的な信頼性はこれから蓄積される段階です。
メーカーの試験や初期施工例からは、優れた性能が確認されています。
しかし、例えば、実際に30年以上経過したナノテク塗料の施工事例は存在しません。
従来のシリコン塗料やフッ素塗料は、何十年もの使用実績とデータがあるのに対し、ナノテク塗料は、まだ10~15年程度の実地検証期間に留まるのです。
このため、「耐久年数○○年」というカタログ値についても慎重に見る必要があります。
ナノテク塗料だから特別長持ちするという保証はなく、条件次第では想定より早く劣化する可能性もゼロではありません。
実際、塗料業界では、「価格の高い高機能塗料=耐用年数が長い」と一概にはいえない場合があります。
特殊機能にコストを割いている分、耐久性自体は中程度という商品も存在するのです(ナノテク塗料や光触媒塗料、断熱塗料などが典型例です)。
もちろん、今後の技術改良や実績の蓄積で評価がさらに高まる可能性は十分あります。
現在のナノテク塗料も、すでに十分、高性能ですが、「未知の新素材」であることを念頭に置き、過度に過信しないことも大切です。
長期間効果を維持させるには、定期点検や、必要に応じたトップコート塗り替えなどのメンテナンスも検討するとよいでしょう。
シーリング材の選定に注意が必要

ナノテク塗料の防汚性能を活かすには、使用するシーリング材(目地の充填材)にも配慮が必要です。
一般的なシーリング材には、柔軟性を持たせるため可塑剤(かそざい:樹脂を軟らかくする添加剤)という油分が含まれています。
この可塑剤が、時間とともにシーリング材の表面へ移行し、塗膜を汚染する恐れがあるのです。
もし、通常のシーリング材の上にナノテク塗料を塗装すると、シーリングから移行した可塑剤が、ナノ塗膜を局所的に軟化させ、せっかく汚れにくい塗膜が、逆に汚れを吸着しやすくなるケースが報告されています。
特に目地部分だけ黒ずんだり埃が付着しやすくなったりする現象が起きかねません。
これを防ぐため、ナノテク塗料を使う際は、可塑剤の溶出が少ないシーリング材を選ぶことが推奨されます。
具体的には、変成シリコーン系でも低可塑剤タイプの商品や、塗料メーカーが推奨する専用シーリング材を使用するのが望ましいでしょう。
信頼できる塗装業者であれば、その点も踏まえて材料選定してくれるはずですが、施主としても頭の片隅に入れておくと安心です。
ナノテク塗料の費用相場と他の塗料との比較

ここでは、ナノテク塗料の費用面について整理し、一般的な塗料とのコスト・耐久性比較をしてみます。
初期費用だけでなく、長期的なサイクルで見た場合のコストパフォーマンスも考えてみましょう。
主要塗料の耐用年数と価格の比較

代表的な外壁塗装用塗料の耐用年数(持ち)と施工単価の目安をまとめると、以下のようになります。
| 塗料の種類 | 耐用年数 | 施工単価(目安) |
|---|---|---|
| アクリル塗料 | 5~8年 | ~1,500円/㎡前後 |
| ウレタン塗料 | 8~10年 | 1,600~2,400円/㎡ |
| シリコン塗料 | 10~15年 | 2,000~3,000円/㎡ |
| ラジカル塗料 (低汚染型シリコン) |
12~15年 | 2,300~3,700円/㎡ |
| フッ素塗料 | 15~20年 | 3,000~5,000円/㎡ |
| 光触媒塗料 | 16~22年※ | 3,800~5,000円/㎡ |
| 無機塗料 | 15~25年 | 5,000~6,000円/㎡ |
| ナノテク塗料 | 10~15年 | 2,500~4,500円/㎡ |
※光触媒塗料の耐用年数は製品により幅があります(上記数値は高耐久タイプの場合)。
以上の表から分かるように、ナノテク塗料の価格帯はフッ素塗料と同等かやや安い程度ですが、耐用年数はシリコン塗料並みです。
一方、無機塗料は、価格が飛び抜けて高いものの、耐用年数も最長クラス、シリコン塗料は価格・耐久バランスが優れたコストパフォーマンス重視型といえます。
では、ナノテク塗料は、コスト面で損なのでしょうか?
実は、ナノテク塗料の価値は単純な「1年あたりコスト」では測れない面があります。
ナノテク塗料は美観維持やメンテナンス軽減という点でメリットを発揮するため、トータルコストで見れば遜色ないケースもあります。
例えば、シリコン塗料なら、汚れや色あせが目立ってきて、10年ほどで塗り替え検討となるところ、ナノテク塗料なら15年程度綺麗な状態を保てて、再塗装までの期間を延ばせるかもしれません。
長期的に見れば、30年でシリコン3回塗替えするところを、ナノテク2回で済む可能性があります。
塗替え回数が減れば、足場代や人件費などの付帯費用も削減できます。
さらに、高圧洗浄や外壁クリーニングの頻度も抑えられるため、その分の費用や手間も浮きます。
もちろん、建物の立地条件や個々の状況によりますが、ナノテク塗料は「初期費用は高いがランニングコストを抑えやすい塗料」と位置付けることができます。
初期投資に見合うリターンがあるかどうか、ぜひ長い目で試算してみると良いでしょう。
他の高機能塗料との違い(光触媒塗料・無機塗料など)

ナノテク塗料とよく比較される塗料に、光触媒塗料と無機塗料があります。
いずれも高性能な機能性塗料ですが、仕組みや適性に違いがあります。
光触媒塗料との違い

光触媒塗料は、酸化チタンなどの光触媒物質を塗膜に含み、紫外線によって汚れを分解・除去する塗料です(セルフクリーニング効果)。
仕組みとしては、光触媒が紫外線に当たると活性酸素を発生させ、外壁に付着した有機汚れ(排気ガス中のNOxやSOx、カビや藻の菌など)を化学分解します。
そして、塗膜は超親水性になるため、雨水が汚れを浮かせて洗い流すのです。
このように、ナノテク塗料と同様、「汚れを雨で流す」点は共通していますが、光触媒塗料は、紫外線が当たらないと機能しない点が決定的に異なります。
北側の壁や軒下の陰になる部分では、光触媒塗料は、性能を発揮できず、通常塗料と変わらない汚れ方をする可能性があります。
そのため、日照条件が悪い立地では、光触媒塗料は十分な効果が期待できません。
これに対し、ナノテク塗料は、紫外線に頼らないため、日陰でも防汚効果が得られるのが利点です。
ただし、光触媒塗料は、有機物を化学的に分解できる分、強力な防汚・防臭効果を発揮する場合もあり、条件が合えば抜群の美観保持力を示します。
コスト面では光触媒塗料も、非常に高額で、施工価格はナノテク塗料と同等かそれ以上です。
また、光触媒もまだ普及途上で実績が少なく、屋根に使えない製品があるなどの制約もあります。
簡単にまとめると、
- 家の立地が日当たり良好で、予算に余裕があり、とにかく汚れを分解してでも落としたい場合は、「光触媒塗料」
- 日当たりに関係なく安定して汚れにくくしたい場合は、「ナノテク塗料」
といえます。
光触媒塗料についての詳細は、こちらの記事も参考にしてください。
無機塗料・フッ素塗料との違い

無機塗料やフッ素塗料は、耐久性を高めた高級塗料として知られています。
無機塗料は、シリコンやセラミックなどの無機成分を含むため、紫外線劣化しにくく、フッ素塗料は、フッ素樹脂により、塗膜が強靱で長寿命です。
耐用年数は、無機塗料が20年前後、フッ素塗料が15年前後と非常に長持ちします。
その反面、これらの塗料は、基本的には、ナノテク塗料ほどのセルフクリーニング機能を持ちません。
無機塗料の中には「超低汚染〇〇」と銘打ち、親水性や防汚性を高めた製品も存在しますが、塗膜自体で雨水洗浄するというよりは、汚れが付きにくい程度に留まります。
フッ素塗料も表面がツルツルして汚れを弾きやすいとはいえ、やはり定期的な洗浄なしに汚れを防ぐことは難しいでしょう。
そして、施工価格は、無機塗料、フッ素塗料ともに高く、ナノテク塗料と同程度かそれ以上です。
したがって、
- 耐用年数最優先で塗り替え回数を減らしたいなら、「無機塗料やフッ素塗料」
- そこそこの耐久性に加えて常に綺麗な外観を維持したいなら、「ナノテク塗料」
が候補です。
もちろん、予算や好みにもよりますが、美観維持という付加価値まで考慮すると、ナノテク塗料には、他の高耐久塗料にない魅力があるといえるでしょう。
ナノテク塗料は採用すべき?失敗しない塗料選びのポイント

ここまで、ナノテク塗料のメリット・デメリットを見てきましたが、最終的に「自分の家にナノテク塗料を使うべきか」を悩まれる方もいるでしょう。
そこで、塗料選びの判断ポイントを整理してみます。
こんな方にナノテク塗料がおすすめ

- 外壁の美観を最優先したい方:汚れにくく色あせしにくいナノテク塗料は、美しい外観を長く保ちたい希望に応えます。
- 工場地帯や幹線道路沿いなど汚れやすい環境にお住まいの方:排ガスや粉塵が多い場所ではセルフクリーニング性能が大きな効果を発揮します。
- 将来的なメンテナンス回数を減らしたい方:やや初期費用は高いものの、再塗装周期を延ばせる可能性があり、長期的なトータルコストを抑えられます。
- 環境や健康面に配慮したい方:CO2削減や低VOCによる住環境改善など、エコで安全な塗料を求める場合に適しています。
こんな場合は一般塗料で十分かも?

- 予算をできるだけ抑えたい方:ナノテク塗料は高価なため、コスト重視なら標準的なシリコン塗料でも十分に外壁と屋根を保護してくれます。
- 周囲がさほど汚れやすい環境でない場合:郊外の閑静な住宅地など、汚染要因が少ない場合、ナノテク塗料が持つセルフクリーニングの恩恵は小さく、通常塗料でも問題はありません。
- 鮮やかな色や光沢仕上げにこだわりたい方:色・艶に自由度が高い無機塗料やフッ素塗料の方が、希望の色味や雰囲気を実現しやすい場合があります。
- 実績のある安心感を重視したい方:何十年もの使用実績がある塗料が良いなら、定評のあるシリコン・フッ素系を選ぶ方が無難です。
結局のところ、ナノテク塗料を採用するべきかどうかは、塗料に何を求めるかで変わってきます。
「見た目を長く綺麗に保ちたい」、「多少高くても、最新技術を試したい」という方には、ナノテク塗料は魅力的な選択肢です。
一方、「費用対効果をシビアに考えたい」「確実に安心できる実績を重視したい」なら、従来の高耐久塗料でも十分でしょう。
どのような状況であっても、最も重要なのは、信頼できる施工業者とよく相談することです。
専門家の意見を聞けば、自宅の外壁材や立地条件に本当にナノテク塗料が適しているか、的確なアドバイスが得られます。
また、もしナノテク塗料を採用するなら、施工ポイント(シーリング材や下地処理など)も含め細かく確認しておきましょう。
なお、防汚性能に関してはナノテク塗料以外にも様々なアプローチがあります。
塗料選びだけでなく、外壁材の種類や色選び、定期的なお手入れなど総合的に工夫することで、汚れにくい家づくりが可能です。
その点については、こちらの記事も参考にしてみてください。
この記事のまとめ

ナノテク塗料は、ナノテクノロジーの応用によって「汚れにくさ」と「環境性能」を次世代レベルで実現した高機能塗料です。
雨によるセルフクリーニング効果で外壁の美しさを長く保ち、紫外線やカビにも強く、さらには低VOCで地球と人にも優しいという数々のメリットがあります。
一方で、従来塗料に比べ価格が高く、扱える業者が限られる、新しい技術ゆえの注意点もあります。全くメンテナンス不要になるわけではないため、メリット・デメリットを正しく理解して採用を判断することが大切です。
選択に迷う場合は、外壁の汚れやすさ・予算・重視するポイントを整理してみましょう。
「汚れにくい外壁で家を美観長持ちさせたい」「最新の塗料でより良い性能を得たい」という方にはナノテク塗料は有力候補です。
逆に「費用を抑えても十分綺麗にできればよい」という場合は、従来のシリコン系などでも満足できるでしょう。
最後に、塗料の性能を活かすも殺すも施工次第です。
信頼できる塗装業者選びも忘れずに行い、過度な期待や不安を避けつつ、最適な塗料で大切なお住まいを守ってください。
参考サイト


