サイディングは張り替えが必要になる前のメンテナンスが大切

現在の日本の住宅では、工場で製造したパネル状の外壁材を張り付ける「乾式工法」と呼ばれる施工方法で仕上げる外壁が主流です。

外壁に張り付けられるパネル状の外壁材は「サイディングボード」と呼ばれ、施工しやすく耐久性も高いことからほとんどの木造住宅の外壁でサイディングボードが採用されています。

この記事では

  • サイディングボードの種類
  • サイディングボードのメンテナンス方法
  • サイディングボードのリフォーム

などについて詳しく説明します。

■サイディングボードの種類と特徴

一般的な木造住宅に使用されるサイディングボードは素材ごとに

  • 窯業系サイディングボード
  • 金属系サイディングボード
  • 木質系サイディングボード
  • 樹脂系サイディングボード

の4つのタイプに分けられており、それぞれのサイディングボードで特徴や施工費用の価格が異なります。

ここでは簡潔にそれぞれのサイディングボードの特徴について解説しますが、サイディングボードについてより詳しくおしりになりたい場合は、サイディングボードのメンテナンス、ひび割れ等の補修方法の記事をご覧ください。

1.窯業系サイディングボード

  • 施工費用相場:3,000円〜9,000円/㎡
  • メンテナンス周期:約10年
  • メンテナンス内容:シーリングの点検・交換、塗り替え

 

窯業系サイディングボードは、セメントや繊維質などを混ぜ合わせて形成したパネルです。

施工が簡単でデザインのバリエーションも多いため人気があり、現在では日本の住宅の約7割が外壁に窯業系サイディングボードを使用しています。

 

施工の際に生じるサイディングボード同士の継ぎ目(目地)は建物を雨水や外部の湿気から保護する上で弱点になってしまうため、施工する際は目地に樹脂製のシーリング材を充填する必要があります。

このシーリング材も約10年で劣化してしまうため、サイディングボードだけでなくシーリング材のメンテナンスも行う必要があります。

2.金属系サイディングボード

  • 施工費用相場:3,500円~8,500円/㎡
  • メンテナンス周期:約10年
  • メンテナンス内容:防錆処理、塗り替え

 

金属系サイディングボードには様々な金属が使用されますが、現在ではガルバリウム鋼板製のものが主流です。

金属製サイディングボードは、薄くて軽量なため、古くなったサイディングの上に新しいサイディングを張り付ける「カバー工法」でも使用されます。

 

金属製サイディングボードは近代的な落ち着いたデザインで人気がありますが、

  • 定期的な防錆処理を行わなければならず手間と費用がかかる
  • しっかり防錆処理をしてもサビを完全に防げるわけではない
  • 遮音性が低く、降雨時には室内でも雨音がうるさく感じられることがある
  • 太陽光で表面が高温になりやすい
  • 傷やへこみが目立ちやすいため、施工は高度な技術を持った業者に依頼する必要がある
  • 金属の質感に「無機質」「工場のように見える」「トタンみたい」などのマイナスの印象を持つ人もいる

などのデメリットもあることを覚えておきましょう。

参考:ガルバリウム鋼板のメンテナンス方法とメリット・デメリット

3.木質系サイディングボード

  • 施工費用相場:5,000円~9,000円/㎡
  • メンテナンス周期:約10年
  • メンテナンス内容:防腐処理、塗り替え

 

実際に木材で作られている木質系サイディングボードは、木材を模した窯業系サイディングには無い、本物の木のナチュラルな風合いがあります。

古来より木造が主流であった日本の建築文化に馴染む木質系サイディングは、他のサイディングよりも高額なうえに、定期的な防腐処理などのメンテナンス費用もかかるものの、根強い人気があるサイディングボードです。

外壁に木製のデザインを望んでいるけど、あまり費用がかけられないという場合は、木目調にデザインされた窯業系サイディングを選択肢に入れると良いでしょう。

 

木質系サイディングボードは他のサイディングボードに比べて火に弱いというデメリットもあり、防火地域や準防火地域にあたる土地の建物に木質系サイディングボードを使用したい場合、「防火構造認定」や「耐火構造認定」などを受けていなければ使用できないこともあります。

4.樹脂系サイディングボード

  • 施工費用相場:3,000円~5,000円/㎡
  • メンテナンス周期:約10年
  • メンテナンス内容:塗り替え

 

樹脂系サイディングボードは、

  • 劣化しにくい塩化ビニール樹脂製で耐久性が高い
  • シーリングを使用しなくてよいタイプのものもありメンテナンスの手間や費用を軽減できる
  • 他のサイディングボードよりも軽量で、施工しやすい

というメリットがあります。

 

樹脂系サイディングはアメリカやカナダなどでは普及しているものの、日本での普及率は1〜2%ととても低いため樹脂系サイディングを取り扱う業者は少なく、デザインの選択肢も少ないというデメリットがあります。

■サイディングリフォームを検討すべきタイミング

サイディングボードを長持ちさせるためには、外壁を定期的に点検し、劣化の兆候が見られたら、その症状に応じた適切な対策をとることが不可欠です。

新築もしくは前回のリフォーム工事から5〜10年経過すると、耐久性の高いサイディングボードにも下記のような劣化現象が表れはじめます。

1.塗装の劣化「チョーキング現象」

塗装の表面に手や指で触れるとチョークの粉状の汚れが付着する症状を「チョーキング現象」といいます。

これは塗膜を形成する分子の結合力が紫外線の影響で失われ、壊れた分子が表面に浮き出てくる現象で、チョーキング現象が見られる外壁は塗料の保護力が低下しているため、下地であるサイディングボードも紫外線や風雨などから来るダメージを受け始めている状態です。

塗装面にチョーキング現象が見られるからといってサイディングがすでに劣化しているというわけではありませんが、外壁のチョーキング現象を長期間にわたり放置していた場合、紫外線や風雨によるダメージがサイディングにまで及んでいる恐れもあるため、点検が必要です。

参考:外壁塗装のチョーキング現象が起こる原因と対策

2.シーリングの割れや縮み

窯業系サイディングボードの継ぎ目(目地)やサイディングボードと窓・ドア周りのすき間などには、防水のためゴムのような弾力のある樹脂製のシーリング材(コーキング材)が充填されています。

一般的なコーキング材は紫外線に弱く、施工から5〜6年するとひび割れや縮みで目地に隙間が生じ始め、徐々に外壁内部に雨水や湿気が入り込むようになります。

外壁内部に水分が入ると、

  • 水分に弱い木材の土台や柱、梁などが濡れてカビが生じたり腐敗して強度が落ちたりする
  • サイディングボードに反りが生じる

などの症状により、家屋は雨漏りや耐震強度の低下などの深刻なダメージを受ける恐れがあります。

参考:外壁塗装の目地のコーキング材補修を徹底解説

3.サイディングボードの反り

雨風や太陽の紫外線の影響で少しずつサイディングボードは変形しますが、さらに時間が経つと少しずつサイディングボードが反ってしまうことがあります。

サイディングボードが反ると目地のすき間が大きく広がってしまい、前項のコーキング材の劣化と同様、沿った部分から雨水が入り込み、雨漏りやカビの被害が拡大する恐れがあります。

弾性のないサイディングは一度反り返ってしまうと元の状態に戻すことはできないため、修繕のためには大規模で費用も高額な張替え工事しか選択肢がなくなってしまいます。

 

■窯業系サイディングリフォームの事例

この項では、最も普及している窯業系サイディングのメンテナンスについて説明します。

自宅のサイディングが新しい状態でも、いつ頃、どんな工事が必要になり、どれくらい費用がかかるのか把握しておけば、メンテナンスを計画しやすくなるでしょう。

1.シーリング材の打ち替え

  • メンテナンス内容:劣化した古いシーリングを撤去した後、新しいシーリング材を充填する
  • メンテナンス周期:5年〜10年
  • 費用相場:600~1,200円/m(シーリング部分の総延長を元に計算)
  • 工事のメリット:工事費用は高額にならず、工事に時間がかからない。
  • 工事のデメリット:高所作業も含まれるため、設置費用が高額な架設足場を設置する必要がある。

 

サイディング自体の寿命が30年〜40年ほどであるのに対して、シーリングは10年ほどで劣化し防水性能を失ってしまうため、こまめに点検・メンテナンスする必要があります。

 

シーリングの劣化が軽度であれば、古いシーリング材を残したまま上から新しいシーリング材を被せる「増し打ち(打ち増し)」と言われる工法でも防水性能をある程度回復させることができます。

しかし、増し打ち工法は打ち替え工法よりも安く施工できるものの、打ち替えと比べて耐久力が劣るため、またすぐに打ち替え工事を行わなければならなくなる可能性もあることを覚えておきましょう。

●単独でシーリング補修を行うと割高になる

シーリングの打ち替え・増し打ち工事には高所作業が含まれるため、シーリング補修工事を単独で行う場合にも全体的な外壁塗装工事を行う時と同様に架設足場を設置する必要があります。

架設足場の設置費用は1回で15万〜20万円程度になるので、足場代を節約するために次項のサイディングボードの塗り替え(外壁や屋根の塗装リフォーム工事)と同時にシーリング補修工事を行うのが一般的です。

2.サイディングボードの塗り替え

  • メンテナンス内容:新しい塗料で外壁全体を塗り直す
  • メンテナンス周期:10年〜12年(一般的なシリコン塗料で塗装する場合)

※選択する塗料の耐用年数によってメンテナンス周期は異なる

  • 費用相場:1,800~5,000円/㎡

※塗料のグレードによって相場価格は異なる

  • 工事のメリット:適切なタイミングで塗装リフォームを行えば塗膜の保護力は保たれ、サイディングは長持ちし費用の節約になる。
  • 工事のデメリット:架設足場を設置する必要がある。後期は2週間ほどになり、悪天候などで延長することもある。施工方法や塗料の選択を間違うと施工不良の原因になるため、適切な業者を選ばなければならない。

 

窯業系サイディングボードの寿命は30年〜40年と言われていますが、これは適切な時期に塗装リフォームを行った場合の寿命であり、塗装メンテナンスを怠るとサイディングの寿命はもっと短くなってしまいます。

外壁塗装のメンテナンス周期は一般的なシリコン塗料で塗装した場合を例にあげると10年〜12年ほど(グレードの高い塗料であれば20年ほど)ですが、1回の総工費は70万〜100万円ほどの高額になるため、いつ外壁塗装リフォームを行う必要が生じるかを十分に前もって計算し、予算を積み立てておくようにしましょう。

●外壁塗装は信頼できる外壁塗装業者に依頼すること

外壁塗装リフォームはサイディングの張替えに比べれば規模が小さい工事ですが、

  • 下地の素材に合わせた塗料の選択
  • 塗料に合わせた塗装方法

などを間違えると、塗装後に塗膜が膨れたり剥がれたりする施工不良が発生することがあるため、塗装は信頼に値する技術と実績を持つ業者に依頼しなければなりません。

塗装業者の中には、施工品質よりも利益を重視し適切な手順や施工方法などを守らない悪徳業者も存在しますので、業者選びは慎重に行うようにしましょう。

3.サイディングボードの重ね張り(カバー工法)

  • メンテナンス内容:古いサイディングを撤去せず、上から新しいサイディングを張り付ける
  • メンテナンス周期:30年〜40年
  • 費用相場:150万円~(延床面積120㎡の場合)
  • 工事のメリット:既存のサイディングも撤去する必要がないため、張替えと比べて費用が安くつき、工期も短くなる。
  • 工事のデメリット:外壁の重量が増加するため、地震に対する強度が低下する。サイディングを剥がさないため、カビや腐食などの劣化が外壁内部に進行していても気付きにくい。

 

カバー工法は既存のサイディングの撤去や処分の費用がかからないため、張替えに比べて安く施工できるサイディングリフォームです。

しかし、家全体の強度を保つためには上から張り付ける新しいサイディングは軽量の金属系サイディングでなければならず、それ以外のサイディングボードを重ね張りすることはできません。

また、外壁を剥がさない工法なので、工事に合わせて外壁内部の状態を点検することはできません。

●外壁下地を点検したうえでカバー工法を選ぶこと

カバー工法は費用の節約になるものの、

  • 既存のサイディングボードの劣化が激しく、下地となる壁面にカバー工法に耐えられる強度が残っていない
  • サイディングボードが反っている

という場合にはカバー工法を選択することができません。

 

カバー工法を検討する際は、カバー工法が施工可能かどうか確認するため、まず専門業者に既存の外壁の点検を依頼してみましょう。

4.サイディングボードの張り替え

  • メンテナンス内容:古いサイディングボードを撤去し、新しいサイディングボードに張り替える
  • メンテナンス周期:30年〜40年
  • 費用相場:200万円~(延床面積120㎡の場合)
  • 工事のメリット:強度を保ったまま外観を刷新できる。外壁内部の状態を点検することができる。
  • 工事のデメリット:大掛かりな工事で廃材も多く出るため、費用はサイディングボードに関係するリフォーム工事の中で最も高額になる。

 

サイディングボードの張替えは高額な工事ですが、家全体の外観を新築のような状態に刷新することのできる工事です。

前項の重ね張り工法のように外壁が重くなって耐震強度に問題が生じることもなく、家屋全体の防水機能や耐久性を元通りかそれ以上に高めることができますし、工事に合わせて外壁内部の状態を点検することも可能です。

●部分的な張替えは割高になる恐れがある

サイディングボードの張替えを外壁全面ではなく部分的に行うことも可能で、部分的な張替えでも可能な限り似たデザイン・似た色に施工してもらえますが、既存のサイディングボードと全く同型のサイディングボードが手に入るとは限らず、部分的な張替えリフォームでは既存のサイディングボードとの違いが目立ち、違和感が出てしまうこともあります。

さらに、メーカー・規格が異なるサイディングボードを同一の外壁に張り付けている状態では

  • すき間が生じやすく雨漏りが発生しやすい
  • サイディングボードの継ぎ目の形状の違いが干渉し、ひび割れが生じやすい

というデメリットがあることを覚えておきましょう。

 

すぐに不具合が生じる可能性や、張替えなかった古いサイディングもいずれは張替えなければならないことを考えると、部分的に張替えるより全面的に張替えを行った方が良いといえます。

参考:サイディングボードの張り替えが得意な優良外壁塗装業者を探す

■おわりに

取り扱いやすくデザインのバリエーションも豊富で30年〜40年という高い耐久性を誇るサイディングボードは優れた建材です。

しかし定期的に適切なメンテナンスを行わなければ家屋へのダメージが進行してしまい、サイディングの寿命より早く重ね貼りや張替えといった大規模で高額なリフォーム工事が必要になってしまいます。

まずはこまめな点検やシーリング補修・外壁塗装といったメンテナンスをしっかり行うように計画しましょう。

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