不動産としてアパートやマンション、あるいは店舗などを持っていると、その建物を維持していくために修理やメンテナンス作業を行うことが必要です。
建物のメンテナンスには、目的によってさまざまな種類がありますが、その中でも特に外壁塗装は、建物の美観を保つだけでなく、建物そのものの劣化を防ぐ目的もありますので、定期的に行っていかなければなりません。
基本的に、建物の修理やメンテナンスにかかった費用は、修繕費という名目で経費として計上できますので、外壁塗装にかかった費用は修繕費として計上できますが、塗装の目的によっては、修繕費として認められないケースもあります。
外壁塗装の費用は、その目的や内容によっては高額になってしまうこともあり、どのような形で費用処理をするかによって、支払う税金の額なども変わってきますので、いつ、どのような内容で工事をするかを慎重に検討していく必要があります。
ここでは、外壁塗装にかかった費用をどのようにして費用として計上していくのかを、実際の例なども交えながら、注意点やメリットなどについて考えていきたいと思います。
ちなみに外壁塗装は、使用可能期限が1年未満ではなく、所得価額が10万円未満でもないので、国税庁が定める少額減価償却資産にはなり得ないと考えられます。
目次
外壁塗装の必要性
オフィスビルやマンション、アパートなどの建物を不動産として所有していると、建物自体に発生するさまざまな劣化に対して、修理やメンテナンスを行っていく必要があります。発生する劣化は、建物のいろいろな場所で発生していきますので、内容の大小にかかわらず対応していかなければなりません。
例えば、年月が経つにつれて、外壁にひび割れや剥がれなども発生しますし、床や畳などの傷みや屋根のき損なども出てきますし、設備の交換をしなければならない場合もあります。
このように、建物を維持していくためには、このような外壁の補修や塗装、き損してしまった床の取り換えや畳の表替え、屋根(屋上)の防水工事、設備の点検交換などの修理やメンテナンスを行わなければならないわけです。
特に、建物の外壁に関する劣化は、建てたばかりならば、多少の汚れなどを無視しても大きなトラブルにはつながりませんが、年月が経つにつれて、ひび割れや剥がれなどの劣化が発生してくるようになります。もし、このような劣化を何もせずにそのまま放置しておくと、塗装面に発生したクラックから水が内部に浸透し、漏水へとつながってしまうことにもなりかねません。
こうなってしまうと、単に外壁塗装だけの問題ではなく、建物内部の劣化へとつながってしまいます。劣化に対して、適切な修理・メンテナンスを行わなかったことが、結果として、建物の大きなトラブルの原因となり、所有する資産の価値を下げることになってしまう原因にもなります。
つまり、不動産として建物を持っている以上は、劣化したところを修理・メンテナンスして、建物を維持していかなければならないわけです。
外壁塗装は修繕費として経費計上が可能
資産として所有しているマンションやアパート、店舗などの建物を修理・メンテナンスする場合、その内容にもよりますが、多額の費用がかかることがあります。このような場合に、かかった費用をどのような方法で経費として計上するかは、税金の面などで大きな問題となります。
建物の修理やメンテナンスを行った場合の費用計上の方法は以下の二つに分けることができます。
- 修繕費:建物の維持、管理、あるいは原状回復を目的とするもの
- 資本的支出:建物の価値や性能、耐久性を向上させることを目的とするもの
事業用の建物の場合、外壁塗装にかかった費用は、確定申告をする必要があり、どのような目的で外壁塗装を行ったかによって、修繕費、資本的支出のいずれかで申告しなければなりません。どちらかの項目で計上するかによって、控除の方法が変わり、納める税金額が変わってくることがあります。普通、外壁塗装は建物の維持を目的として行われるため、経費処理上は修繕費として認められる場合が多くなりますが、外壁塗装を行った目的によっては修繕費として認められないこともありますので、注意する必要があります。
修繕費と資本的支出の違い
ここで、修繕費と資本的支出という二つの計上方法の違いについて考えてみたいと思います。修繕費と資本的支出の違いをまとめると以下のようになります。
修繕費
建物の維持や管理、あるいは原状回復を目的とした、建物の外壁塗装や畳の表替え、床の張り替えなど、工事の内容が建物の維持管理、あるいは原状回復として通常必要とされる修理・メンテナンスであれば、それにかかる費用を修繕費として工事を行った年度内に一括で経費として処理できます。
修繕費とみなされる工事例
- 建物の維持を目的とした外壁塗装
- き損してしまった床の取り換え
- 傷んでしまった畳の表替え
- き損してしまったガラスの交換、障子、ふすまの張り替え
- き損してしまった屋根の防水工事
このように、建物の損傷した部分を修繕し、原状回復を目的として行われたものや災害などの影響により損傷した部分の修繕として行われたものが、修繕費としてみなされるものとなります。
資本的支出
また、次のような場合は、資本的支出としてみなされます。
資本的支出としてみなされる工事例
- 外壁の耐久性を増すことを目的として、モルタル塗りの壁をタイルに貼り替える工事
- 非常階段を建物に後から取り付ける工事
- 事務所用であった部屋を居住用に用途変更する工事
このような工事は、建物の維持管理、あるいは原状回復を目的として行われたものではなく、あくまでも建物の価値や性能、耐久性をよりよくすることを目的として行われたものであるため、修繕費ではなく、資本的支出としてみなされることとなります。
工事の目的で処理方法が異なる
つまり、行われた工事の目的によって、経費の計上方法が修繕費と資本的支出の二つに分けられ、処理の方法が異なるわけです。
例えば、外壁塗装で100万円の修繕費用がかかったとすると、塗装にかかった費用全額が修繕費として認められた場合は、100万円を経費として年度内に一括で処理することができます。
しかし、かかった費用全額が資本的支出に該当するとみなされた場合は工事費用の100万円を固定資産として計上し、その後一定の期間で減価償却費として経費処理されます。つまり、耐用年数が10年であるとすれば、塗装にかかった費用の100万円は、10年かけて償却されますので、減価償却費として毎年10万円ずつ費用処理するということになるわけです。
修繕費として認められる外壁塗装と認められない外壁塗装の例
外壁塗装の場合、建物の維持を目的として行われることがほとんどなので、基本的には修繕費となり、年度内での一括経費処理が可能ですが、塗装の目的によっては修繕費としては認められない場合もあります。
まず、具体的に修繕費として認められる外壁塗装の例を挙げてみましょう。
修繕費として認められる外壁塗装の例
- 雨水が浸入しないように、外壁のひび割れや剥がれなどを補修することを目的として行われた外壁塗装
- 建物の美観を保つために、色があせてきた部分や傷がついてしまった部分を補修することを目的として行われた外壁塗装
- 災害によりき損してしまった外壁のひび割れや剥がれなどを補修することが目的の外壁塗装
このような場合、外壁塗装を行った目的が、建物の維持や管理、原状回復、あるいは災害によるき損部分の修繕ですので、問題なく修繕費として認められます。
一方、次のような工事は、建物の維持や管理、原状回復、あるいは災害によるき損を目的としていないので、修繕費としては認められず、資本的支出としてみなされてしまいます。
資本的支出とみなされる外壁塗装の例
- より美しい色や魅力的な色に塗り替えることが目的の外壁塗装
- より耐久性の良い塗料に塗り替えることが目的の外壁塗装
- より豪華で魅力的な外観にすることが目的の外壁塗装
これらの工事の場合は、その目的が、建物の維持ではなく、建物自体の価値や性能、耐久性を高めるものとなるため、修繕費ではなく資本的支出として経費処理されます。
例えば、新築の時は外壁塗装をアクリル塗装で行っていたものを、建物の耐用年数を長くするために、より耐久性の高いフッ素塗装に変えて外壁塗装を行った場合は、その目的が建物の資産価値を高めるものとしてみなされてしまうため、修繕費ではなく資本的支出になる場合もあります。
この場合は、塗装の材質がアクリルからより高耐久性をもつフッ素塗料に変更して塗装を行ったということが、建物の維持に必要な修繕なのか、建物の価値を高めるために行うものなのかが、ポイントとなってくるわけです。
このように、判断しにくい場合もありますので、事前に塗装業者や税理士などの専門家に相談しておくことも必要です。特に、マンションやビルなどの大きな建物で塗装作業を行う場合は、塗料や作業費用だけでなく、足場費用もかかり、多額の費用がかかることが考えられます。このような時に、費用をどこに計上するかという問題は、所有者が法人であれば、決算にも大きく響いてきますので、慎重に計画しておかなければなりません。
そもそも外壁塗装をどこで行うべきか、税務に強い実績ある外壁塗装業者などに依頼したい場合は、外壁塗装駆け込み寺にご相談ください。
「確実に」修繕費として認められる場合
修繕費として認められる工事は、これまで述べてきたように、建物の維持や管理、原状回復、あるいは災害によるき損を目的とする工事となりますが、もし、どちらかに迷った場合は次のような項目に当てはまっているかどうかをまず確認してみましょう。
- 通常の建物の維持管理費やき損した部分の現状を目的として行われたものである。
繰り返しになりますが、これが最も重要なことです。 - おおむね3年以内の周期で行われる修繕費である。
3年以内に同じような修繕を行う必要があれば、その費用がいくらであるかにかかわらず、修繕費として経費計上を行うことができます。
このような内容にはてはまる工事費用であれば、かかった費用は修繕費として認められます。また、修理費用が60万円未満である、あるいは、修繕を行う建物の前期末取得価額の大体10%以下であれば、修繕費として認められる可能性があります。
もちろん、工事の金額や目的だけではどちらにあてはまるかを決めることが難しい場合もありますので、その場合は事前に税理士などの専門家に相談しておくことをお勧めいたします。そもそも外壁塗装をどこで行うべきか、税務に強い実績ある外壁塗装業者などに依頼したい場合は、外壁塗装駆け込み寺にご相談ください。
修繕費と資本的支出のメリット、デメリット
修繕費と資本的支出との費用計上の違いは、年度内に一括で処理できるか、あるいは複数年に分けて処理をしていくかの違いになります。
つまり、修繕費として処理する場合は、会計年度内の経費として一括計上できますが、資本的支出の場合は、工事にかかった費用を資産として計上し、減価償却の手続きとして複数の年度にわたって処理することになるわけです。
このように修繕費では、一括で経費として計上できるので、支払う税金の額を減らすことにつながる可能性があり、このことが外壁塗装として修繕費として扱うことのメリットの一つです。
銀行等から融資を受けたい場合は注意
修繕費として一括して費用計上をした年度に収入が少なかった場合は、銀行などから融資を受けようとしても、決算上、営業不振であるととらえられてしまい、融資を断られてしまう可能性が高くなってしまいます。事業への融資は、会社の業績が良い時に審査が通ることが多いため、塗装にかかった費用を資本的支出として資産に計上し、減価償却費として調整していったほうが、このような場合には有利になることも考えられます。
このように、一時的には節税ができると考えて修繕費として経費を計上する方法もありますが、近い将来に融資を申込む予定がある場合や、収入の変動が激しい会社の場合には、後から柔軟に対応できる方法である資本的支出による費用計上を選ぶことによってメリットが出てくることもあるわけです。
まとめ
所有する建物を維持していくために、建物を修理・メンテナンスすることは大変に重要なことです。特に外壁塗装は、建物の外観を維持するだけでなく、建物の劣化を防止するためにも重要なものになりますが、建物の大きさや内容によっては、大きな費用がかかる場合があります。
この場合に、かかった費用をどのように処理するかは、資産としてマンションやアパート、店舗などの所有者にとっては大きな問題となり、その処理方法によっては、節税にもつながります。
また、法人であれば、決算の状況によっても、どのように費用を計上するかは大きな問題となってきますので、売り上げの変動が大きい会社の場合などは、いつ外壁塗装を行うかを判断することも重要なこととなってきます。
一般的には、外壁塗装は建物の維持を目的に行われるので、修繕費として費用計上できますが、修繕費として計上することで、決算上不利になることもあります。
これから外壁塗装を行おうと考えている場合、どのような外壁塗装を、どのような目的で、いつ行うのかを十分考えて行うことが大切になるというわけです。もし、どのようにすればいいか悩んでしまうようでしたら、塗装業者や税理士などのスペシャリストにあらかじめ相談し、適切なアドバイスをもらうようにすると安心です。
そもそも外壁塗装をどこで行うべきか、税務に強い実績ある外壁塗装業者などに依頼したい場合は、外壁塗装駆け込み寺にご相談ください。