住宅を保護している外壁は、表面を塗装でコーティングしておかなければ劣化してしまいます。
タイル材は塗装がなくても保護効果を保ち続けるため、「メンテナンスフリーの外装材」として宣伝されることがあります。
しかし、タイル材自体が劣化しなくても、タイル材の接着が不十分では意味がありません。
タイル外壁に発生している劣化を早めに見つけるためにも、タイル外壁に必要なメンテナンス方法を知っておきましょう。
目次
■タイル外壁はメンテナンスフリーではない
メンテナンスフリーとは、補修や修繕などを行う必要がないという意味です。
確かにタイル材は経年劣化を起こさない外壁材ですが、何もせず永遠に耐久性が保たれるわけではありません。
1.無機質のタイルは経年劣化が起きにくい
タイルがメンテナンスフリーとよく言われる秘密は、タイルの素材にあります。
そして、タイル壁がメンテナンスフリーではない理由は、タイル壁の作り方に隠れています。
●無機質と有機質の違い
タイルは無機質の建材です。
無機質、または無機物とは、石やガラス、金属など自然から採取できるもので、化学の力を使わずに生まれる天然素材のことです。
一方、樹脂やプラスチックなど化学の力でしか生み出せない化学物質は、有機質、または有機物と呼ばれます。
無機物は基本的に、紫外線や雨水に長期間晒されても激しい劣化が起きません。
経年とともに色あせや強度の低下などは多少生じますが、サイディング材やコンクリートなど有機質の外壁材に比べると、はるかに長時間耐久性を保ちます。
定期的なメンテナンスも、モルタルとタイルがしっかり壁に密着していれば、高圧洗浄作業の水洗いのみで汚れを落とすことができます。
2.タイル壁にもメンテナンスが必要
上記のように、無機質のタイル材は、耐候性(紫外線や雨水などの影響を受けにくいこと)に優れ、吸水性も低く、耐熱性も耐久性も非常に高いという、優秀な外壁材です。
しかし、タイル材は単品では壁に貼り付く力がありません。
そのため、モルタルなどを使って手作業で壁に接着させる必要がありますが、この、タイル材を壁に貼り付ける作業に注意が必要です。
貼り付け時に、下地となるモルタル材の品質が悪かったり、タイルの貼り付けが未熟だったりすると、タイルが剥がれてしまったり、雨水などが下地材に浸水したりして、様々な劣化症状を引き起こしてしまうのです。
つまり、タイル自体に劣化が起きていなくても、材料や施工内容に問題があれば必ず劣化は起きてしまいますので、定期的な点検とメンテナンスを行わなければなりません。
●クリヤー塗料を使った保護塗装もある
紫外線で劣化しないタイル材やレンガ材は、基本的に、塗装の必要がありません。
ちなみに、屋根材にも保護塗装を必要としないものがあり、磁器質の日本瓦などが該当します。
そのままでも耐候性を持つタイルは、通常の塗料で表面を保護しても何の効果もなく、塗料で塗りつぶしてしまうとタイルの質感が失われるだけで、意味がありません。
ただし、撥水、またはツヤ出し目的で、無色のクリヤー塗料によるタイルの保護塗装が行われることはあります。
クリヤー塗料でタイル表面に塗膜を作っても、タイル材自体の耐久性や防水性を向上させる効果はなく、あくまでも表面の保護に留まります。
また、モルタルやタイル材の割れなどを放置したままクリヤー塗装をしても、効果は低いため、クリヤー塗装を施していてもタイル壁のメンテナンスが不要になるわけではありません。
■タイル外壁が劣化するとどうなる
以下からは、タイル壁に生じる具体的な劣化の種類についてご紹介します。
1.タイルがモルタルに接着しなくなる
よほどのことがない限り、外壁にしっかり接着しているタイルが欠けたり傷ついたりすることはありません。
しかし、いかに丈夫なタイルでも、モルタルから浮いたり剥がれたりすると、外壁材としての効果は低くなってしまいます。
タイルが浮いているような気がする、壁からタイルが剥がれ落ちてしまった、ということに気が付いたときは、早めにタイルを施工した業者に連絡して、補修工事を依頼しましょう。
●タイルの浮き
タイル壁を断面にすると、
←奥 表面→
建物の構造材|下地のモルタル|タイル接着用のモルタル|タイル材
という構造になっています。
タイルの浮きは、単純に、接着用のモルタルとタイルが剥がれかけていることもあれば、構造材と下地のモルタルごと剥がれて、タイルが浮いた状態になっていることもありますので、原因を慎重に調べなければなりません。
タイルの浮きは、テストハンマーなどの専用の棒を使って、職人が叩いて判断しますが、このときに判断を誤ると誤った工事工程となりかねませんので、タイル補修は相当な技術力を擁する作業です。
●剥がれたタイルの交換
接着不良を起こしているタイルを放置し続けると、モルタルから剥がれ落ちて、地面に落下してしまうことがあります。
高所にあるタイルほど、地面に落下して割れてしまい、最悪の場合家族や通行人に当たって事故を起こす恐れもあるでしょう。
特に高所は普段目視でチェックしにくいため、高所にあるタイルの点検は、定期的に済ませておくのが望ましいと言えます。
2.モルタル内部から劣化するようになる
下地モルタルや接着用モルタルそのものが劣化してしまうと、再表面に位置するタイルや、建物の構造体にまで劣化の影響は及んでしまいます。
モルタルの劣化は、素人では判断できませんので、この点についても、専門家を呼んで以上の兆候を見極めてもらわなければなりません。
●モルタルが内部から剥がれる
モルタルが内部から剥がれ、タイルごと剥がれ落ちてしまうことがあります。
モルタルが欠損した外壁は、当然、耐久性が全く無い状態ですので、雨水や紫外線に晒されて、建物に深刻なダメージを与えることになります。
3.伸縮目地のコーキングの劣化
サイディングと違って、タイルは目地をコーキング(シーリング)で埋める必要はありません。
その代わり、伸縮目地と呼ばれる、外壁に加わる衝撃を吸収し、被害を最小限にするための目地が設けられることがあり、そこにコーキングが充填されています。
タイル壁を見ると、タイルとタイルの隙間が他の目地よりも広く、色も違う箇所がありますが、その部分が伸縮目地です。
この目地部分に詰められているコーキングは紫外線で劣化しやすく、塗装よりも早く劣化するため、5~8年で点検が必要と言われます。
伸縮目地材のコーキングを劣化したままにしておくと、地震などの衝撃が建物に加わったとき、広範囲のタイル材に衝撃が加わってしまいますので、こちらも早めに補修しておかなければ、建物の耐久性を低下させてしまうでしょう。
■タイル外壁のメンテナンス方法
タイル外壁で行われるメンテナンスは、主に、損傷が起きたタイルの交換や、モルタルの補修などです。
よほど広範囲で申告な劣化が起きていない限り、これらの補修は部分的にしか行われませんので、外壁全体を塗り直す塗装リフォームよりメンテナンス費用や維持コストを抑えることができます。
ただし、劣化というものは放置するほど範囲が進行しますので、定期的にメンテナンスが行われなかった外壁は、大規模な修繕工事が発生してしまう可能性があります。
1.タイルの浮き補修
タイルが浮いている箇所は、ピンニング工法で補修が行われます。
タイルがモルタルから浮いている部分に、目地から細い穴を開けて樹脂などを詰め、アンカーピンなどでしばらく固定し、浮きを解消するという施工内容になります。
穴を開ける位置を間違えたり、穴にごみなどの異物が入ってしまったりすると、余計に浮きを拡げてしまいかねませんので、専門的な技術と経験が必要です。
2.タイルの交換
「粗悪品のタイルが使われていた」などのよほどの事情がない限り、タイル材を全面交換するケースはまれです。
そのため、タイル材自体の補修では、基本的に、剥がれ落ちて割れてしまった部分的なタイルを交換するのみに留まります。
ただし、交換するタイル材が見つからないときや、既存タイルの色が施工時よりも色あせしてしまったときなどは、貼り換えた箇所が目立たないように、新しいタイルをバーナーであぶって調整するなどの工程が発生します。
3.モルタルの補修
タイル壁において最も重要なメンテナンスが、接着材のモルタルと下地モルタルの補修です。
下地のモルタルさえしっかり施工されていれば、タイルはカンタンに剥がれるものではありません。
そのため、「タイル壁にリフォームしたのに、半年であちこちのタイルが浮いてきた」というときは、施工不良を疑った方がいいかもしれません。
モルタルに不良が起きているときは、まず、それが広範囲で起きているか、部分的な経年劣化かを見極め、症状に合わせた補修方法を調べることが大切です。
●部分的なモルタル補修の例
部分的なモルタル補修となるのは、外壁の一部で、モルタルにひび割れ(クラック)などが起きているときです。
タイルが剥離して、モルタルが剥き出しになったときなどに発覚することがあります。
ひび割れが見つかったときは、割れの全体が確認できるまでタイルを剥がし、ひび割れに沿ってモルタルを削り、内部を清掃してコーキング材を充填し、セメントで孔を塞いで補修します。
3.伸縮目地のコーキング補修
はじめに、伸縮目地に充填されている古いコーキングを、カッターなどを使って剥がし、内部を清掃して下地調整を行います。
次に、目地内部にプライマーなどの下地材を塗布して、新しいコーキング材が目地内部にしっかり密着するようにしておきます。
最後に、ガンを使ってシール材を充填し、仕上げに平らに処理して、コーキングの補修は完了です。
■おわりに
タイルは、素材の耐久力や対候性が優れているというだけで、決してメンテナンスフリーの外壁材ではありません。
正しく施工されていなかったり、タイルの周りに施工不良や劣化が生じたりすれば、タイル材は本来の耐久力を発揮できなくなるでしょう。
知らない間にタイルが落下しかけていたり、躯体付近のモルタルに浸水したりして、建物や周りの人に被害が及ばないように、専門業者を読んで、定期的にタイルの点検を行いましょう。