建物に使われる素材としては、外壁であればサイディングボードやガルバリウム鋼板、モルタル、屋根であれば瓦屋根やトタン板、金属系ボードなど様々なものがありますが、木材も、外装の至る所で使われている素材のひとつです。
木材は、金属やコンクリートとは異なるメンテナンスが必要になるため、他の素材と一緒くたにしてしまうと、外装の重大な劣化を引き起こしてしまう恐れがあります。
そこでこの記事では、木材のメンテナンスに関する基礎知識を踏まえながら、失敗しない木部塗装についてご説明します。
目次
■木材はメンテナンスが欠かせない建材
家の外装の大半は、セメントを主成分とした「モルタル」と呼ばれる壁(俗に言う塗り壁)や、「サイディングボード」と呼ばれる釜で焼いたパネルをはめ込むものなどが主流ですが、
- ぬくもりのある家にしたい
- 意匠性が高い家にしたい
という場合には、天然の木で作られた木材は、ぴったりの素材です。
また、外壁全体に木材が使われた家もあれば、
- 軒天
- 破風板
- 鼻隠し
- ウッドデッキ
- 瓦屋根の木部
など、家の一部分のみを木で仕上げるケースもあります。
1.天然素材ゆえの悩みを持つ木材
独自の風合いを持つ天然の木は、人に暖かみを伝える素材ですので、家の全体、もしくは一部に、無垢材などの木材をぜひ取り入れたいという方は後を絶ちません。
しかし、
- 鉄
- 金属
- コンクリート
- セメント(モルタル)
など、人間の手で生み出される素材と違って、木は、生きていた天然の木を加工して使う材料です。
そのため、木材だけが持つデメリットも多くあり、その点をしっかりと理解しておかなければ、メンテナンスに非常にお金がかかってしまったり、数年ですぐに劣化してみっともない外見になってしまったりするといった弊害が起こってしまいます。
木の性質を確認した上で、暖かみのある家の外観を長期間維持するためにも、木材のメンテナンスの大切さを理解しておきましょう。
2.木材の塗装は効果が低い
どのような形で使うにしても、木材は、何も塗装せずに放置してしまうと、紫外線や雨、風、空気中のゴミなどによって徐々に汚れていき、劣化してしまいます。
そのため、木造住宅で、外壁などの外観部分に木材をそのまま使ってしまうと、
- 雨
- 風
- ホコリ
- 太陽光に含まれる紫外線
などが原因で、木材がすぐに腐ってしまいます。
そのため、木材に保護塗料を塗って防腐対策をしたり、定期的に塗替えたりして耐候性を付けておいたりすることは、木材を長持ちさせるためには欠かせない作業です。
しかし、木材で出来た部分(木部)は、塗装するのが非常に難しく、外壁保護機能が10年と言われる塗料を使っても、木部の場合は、3~5年ほどしか保護膜を維持できないケースもあるほどです。
■木材塗装(木部塗装)で知っておきたいこと
家の木部の塗装を検討している方は、木材の性質を知っておかなければ、せっかくの塗装で失敗してしまう恐れがあります。
他の外壁材とは異なる、木材独自の性質を知って、外壁塗装業者との打ち合わせに役立てましょう。
1.木は呼吸して膨張したり収縮したりする素材
木材の塗装では、木材の、呼吸をして膨張したり収縮したりする性質がネックとなります。
ここで言う呼吸とは、森などに生えている木々のように、生物として呼吸しているという意味ではなく、あくまで、水分を吸い込む、はき出すという性質という意味での「呼吸」です。
木は周りの湿度が高いと、湿度が高くなりすぎないように湿度を吸い取り、逆に、自身が水分を持っており、周りがからっと乾燥しているときには、内部の水分をはき出して、湿度を調節してくれます。
このような木材の湿度調整機能は「調湿作用」と呼ばれ、木材をあしらった部屋は、調湿作用により湿度が自動的に調節されるため、とても快適になります。
木が家の内装材によく使われるのは、見た目の穏やかさ以上に、この調湿作用が目的でもあります。
しかし、この調湿作用の際に生じる膨張と収縮が、外壁塗装においては非常にやっかいな物となるのです。
●木材の塗装はひび割れが起きやすい
基本的に、外壁塗装で使われる塗料は、塗装した面の上で固まり、「塗膜」という保護膜を形成することで、外壁を紫外線、雨、風から守ってくれます。
しかし、木材に塗装をしても、表面の塗膜は固まるものの、先にあげたような、湿度による膨張、収縮の動きによって、少しずつ塗膜が剥がれたり、塗膜だけがひび割れたりしてしまいます。
これが、木材の外壁塗装が長持ちしない大きな理由です。
2.木材は塗膜を長期間もたせるのが難しい
上記の調湿作用による膨張、収縮のため、木材の上に塗った塗装は、基本的に、あまり長持ちしません。
塗装を塗る下地をしっかり処理しているかどうかによって持続性も変わりますが、まじめで腕の立つ業者が適切な塗装を施したとしても、他のモルタルやサイディング部の塗装に比べると、木部の塗装の寿命は、その半分ぐらいとされています。
通常、モルタルやサイディングの外壁に塗装した塗料は、短くても10年ほど効果を維持することができますが、木材に関しては、たったの3~5年ほどで塗膜がだめになってしまう可能性があるのです。
基本的に、外壁塗装業者は「塗装後に施工箇所に何か不具合があれば、無償で直しますよ」という内容の保証を設けてくれますが、上記の理由から、木部に関しては、保証の対象外、もしくは対象だったとしても保証期間が非常に短く設定されている傾向にあります。
●木部の保証期間の例
よく利用される外壁塗装の保証制度として「ペインテナンス」といものがあります。
この保証制度では、通常のモルタル壁に一般的なシリコン系塗料を塗布した場合、5年の保証期間が設けられていますが、木部になると、シリコン塗料は保証の対象外となってしまい、密着力が高い別の塗料を使ったとしても、保証期間は2年しかありません。
塩害が多い沿岸部になると、その保証期間はさらに短い1年になってしまいます。(参考:外壁塗装の保証)
それほど、木部の上で塗料の保護膜を長期間維持し続けるのは、難しいことなのです。
どこにどのような塗料を塗るか | 保証期間 |
モルタル部へ1液型、水性、シリコンの塗料を塗装 | 5年 |
木材部へ1液型、水性、シリコンの塗料を塗装 | 対象外 |
木材部へ2液型、弱溶剤、ウレタンの塗料を塗装 | 2年 |
■木部の塗装に適した塗料の種類
上記のように、独自の性質を持ち、保証の対象外となりやすい木材は、木部に適した塗料を塗ることが非常に重要になります。
木材の塗装には、主に、
- 木目を生かす塗装
- 木目を消してしまう塗装
という、二通りの選択肢があります。
木目を生かす塗装のことを浸透タイプ、含浸タイプ、着色仕上げ、ステインなどと呼び、木目を消してしまう塗装のことは造膜タイプ、被膜タイプ、ペンキ塗装などと呼ばれます。
木材塗装の種類 | 木目 | 特徴 | 他の呼び方 |
木目を生かす塗装 |
木目は残る |
|
浸透タイプ、含浸タイプ、着色仕上げ、ステイン、木材保護着色塗料、木材保護塗料、浸透型塗料 |
木目を消す塗装 |
木目は残らない |
|
造膜タイプ(造膜型塗料)、被膜タイプ(被膜型塗料)、ペンキ塗装 |
1.浸透タイプの塗料
浸透タイプの塗料は、木に塗料が染みこんで、木の内側から保護してくれます。
木部表面に塗膜ができないため、「木」が持つ質感を塗料が損ねず、塗装後も残すことができます。
通常、木材を外壁全体や家の一部に使用するときは、「暖かみのある印象を与えたい」という目的であることが多いため、塗装する際も、木目は残したいという方が多いようです。
そのようなケースでは、木目を生かす塗装を行う必要があるので、浸透タイプの塗料を使用することになります。
ただし、浸透タイプの塗料は、木の表面に保護膜が作られないため、保護膜を作る塗料に比べると耐久性が低く、3年に一度は再塗装をしなければ、木材を守り続けることができません。
また、家の外部にさらされている木部は、雨やホコリ、紫外線の刺激を受けていますが、それが原因で、カビが発生することがあります。
さらに、そこから害虫が侵入することもあるため、外装の木部には、防藻、防虫効果のある防虫塗料も必要になります。
しかし、浸透タイプの塗料には、カビがつきにくいという防カビ効果はあるものの、防水効果は弱く耐水性に劣っているものが多く、結果的に保護力はあまり期待できないため、耐久年数は短めと考えておいた方がよいでしょう。
浸透型塗料では、石油系、天然油脂を含ませたものが多く、近年では、水性ステインなど水性塗料も開発されてきています。
2.造膜タイプの塗料
造膜タイプの塗料とは、木材の表面に塗膜を造る塗料で、撥水性を持つため耐水性も高く、耐久性に優れている点が魅力です。
ただし、先述の通り、木材の塗膜強度は強くないため、下地調整や下地塗料の施工が悪ければ、木材の伸縮に塗膜がついていけず、すぐに割れたり剥離したりする可能性があります。
また、このタイプの塗料は、DIYでの利用には難しく、使用する場合は、専門家に依頼して仕上げてもらうことをおすすめします。
通常、造膜タイプで塗装すると木目が消えてしまいますが、中には、木の模様を消さないクリヤー(透明)の造膜タイプ塗料も存在します(参考:クリヤー塗料)。
そのほか、防カビ機能や、通気性を損なわない機能などを持つ、機能的な木部塗料もあります。
あるいは、木材の呼吸をして伸び縮みする性質に対応した、弾力性の高い弾性塗料なども選択肢の一つです。
造膜型の塗料には、合成樹脂調合ペイントと天然樹脂塗料があります。
●合成樹脂調合ペイント(合成樹脂系塗料)
家の外壁や屋根を塗ることを、「ペンキ塗り」と言う方も多いのではないでしょうか。
古くからペンキとして使われてきたものは、「油性調合ペイント(OP)」と呼ばれるものです。
OPは、価格の安さから、家庭用塗料として主流でしたが、現在は、乾くまでに時間がかかり施工期間が長くなるため敬遠されるようになりました。
そのOPよりも乾燥時間が短めで、現在、主流で使われている塗料が、「合成樹脂調合ペイント(SOP)」と呼ばれるものです。
顔料に樹脂ワニス膜を混ぜて作る透明な塗料で、DIYでも馴染みの材料となっています。
SOPの中でも、汚染性が低く、危険性が少ないアクリル樹脂塗料は、シックハウスの対策にもなることから、住宅内部の塗装にも勧められています。
そのほか、ウレタン樹脂塗料なども、耐久性が高く、木部の伸縮に対応する弾性を持つことから、室内外を問わず、木部の塗装に優れた塗料として知られています。
●天然樹脂塗料
環境問題やシックハウスが問題となっている昨今、天然樹脂の造膜塗料も注目されています。
ただし、現在はドイツなどの海外製品が主流で、日本ではまだあまり普及しておらず、国内で生産されている天然塗料も、完全な天然由来の成分はまだ多くありません。
●造膜タイプは付帯部塗装にオススメ
屋根と外壁の間の部分の事を破風板(はふいた)といい、屋根がつきだしている裏側の部分を軒下、軒天井、軒天などと言いますが、これらの部分は、木で作られていることが特に多い箇所です。(参考:軒天塗装に関して)。
その他にも、家の外装には、木材が使われた箇所は多く、鼻隠し、玄関ドア、縁台(縁側の木の部分)、ウッドデッキ、ラティス、窓枠、戸袋、枕木、木製サイディングボードなども、木材が使われる代表的な箇所として挙げられます。
これらの木部の塗装に関しては、木目を消してもデザイン性に影響を及ぼさないことから、木目を消してしまう造膜タイプの塗料が使われることがあります。
造膜タイプとはその名の通り、塗料が保護膜を造って木を守る塗料のことです。
一般的に外壁塗装で使われる、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素などの有名な合成樹脂塗料も、この造膜タイプに分類されます(参考:塗料の種類)。
造撒くタイプの塗料は、木の模様を消してしまう代わりに、強力な保護膜を表面に形成するため、浸透タイプの塗料よりも高い耐久性を持っています。
3.水性、溶剤などの分類の違い
塗料には、水性タイプと溶剤タイプがありますが、それらはさらに、1液型や2液型などに分類されています。
例えば、ひとくちに油性タイプのシリコン塗料と言っても「1液型シリコン塗料」「2液型シリコン塗料」では、それぞれ特徴が違い、価格や耐久性、取扱い方法、施工の手間なども変わってくるのです。
- 1液型
水、あるいはシンナーを薄めて使用します。
混合に手間がかかりませんが、密着度が2液型に劣ることから、塗装する場所によっては使用できないこともあります。
- 2液型
塗料と硬化剤を、現場で混ぜ合わせて作る塗料です。
固まりやすく、耐久性のよい塗膜を造り出してくれる塗料ですが、使用の際に手間がかかり、価格も高めになるというデメリットがあります。
参考:水性・油性、1・2液型、ツヤ等の塗料タイプは何が良い?
■木部塗装の基本的な流れ
外壁塗装をするときは、原則として、三度塗りが行われます。
木部を塗装する場合においても、下塗り前に下地調整を行い、仕上げ用塗料を2回塗布する、三度塗りが必要です。
1.下塗り作業
まずは、木部用の下塗り塗料を塗ります。
下塗り材には、上塗り塗料が密着しやすくなる「接着剤」としての効果があるので、塗装後、しっかり乾燥させて丈夫な下地を作っておくことが大切です。
なお、既存塗膜の傷みが激しいときは、塗装前の下地調整が必要になります。
もし、劣化してしまった既存塗膜の下地調整を行わないまま、上から新しく塗装をしても、下地からダメになってしまい、耐久性は期待できません。
2.中塗り、上塗り作業
下塗り塗料が乾燥したら、次に、仕上げ用塗料を使って、中塗り、上塗りという仕上げ塗りを施していきます。
基本的に塗膜が脆くなりやすい木部塗装では、水性シリコン塗料よりも溶剤系のものを上塗り用塗料に使うと、耐久性が高まります。
しかし、溶剤系塗料は、シンナーの臭いが強く環境にも害があるため、使用前にその点を確認しておきましょう。
基本的に、強い刺激臭を伴うものは「強溶剤」タイプですが、刺激が少ないシンナーを使う、環境にも優しい「弱溶剤」タイプもあります。
参考:下塗り、中塗り、上塗りなどの塗りの役割は?
外壁塗装では油性塗料(溶剤)と水性塗料どちらが良いの?
■木部塗装で注意したい3つのポイント
取り扱いが難しい木部は、熟練の外壁塗装職人でも、頭を悩ませる存在です。
大切なのは、木部も含めた家全体の耐久性を長持ちさせるために、塗装する家ごとの、症状に合わせた工法と塗料を選ぶことです。
そのために覚えておきたい3つのポイントを、以下からご紹介します。
1.業者によって塗装のやり方が違う
木材塗装は、
- 木の劣化具合の複雑さ
- 適切な塗料が少ないこと
- 適切な塗料を塗ったとしても耐用年数が短いこと
から、各塗装業者は、独自の施工方法を取り入れています。
そのため、一つの業者が
「木部の塗装には、ウレタン塗料が適しているが、塗膜が堅いシリコン塗料は木部と相性が悪いので使わない方が良い。」
と言っていたとしても、もう一つの業者が
「木部と外壁に使う塗料の寿命を合わせておくと、再塗装のタイミングが同じになるので、木材の塗装にはシリコン塗料が良いでしょう。」
といった具合に、全く逆の回答をするケースも少なくはありません。
しかし、これはどちらの業者が正解、不正解というわけではなく、どちらも適切なアドバイスをくれているのです。
最初の業者が言っている、「ウレタン系塗料がひび割れをしにくく、木材の塗装に向いている」という意見は真実であり、後の業者が言っているように、他の部分と付帯部を同じ塗料で塗装しておくと、次の再塗装がまとめて行えるため、メンテナンスの頻度も減り、足場設置も1回で済むという点も、適切な外壁塗装の考え方です。
そのほか、塗り回数でも、木部の重ね塗りを2回で終わらせる業者もいれば、念入りに4回行う業者もいるなど、木材の塗装に関しては、完全なベストアンサーというものが存在しないのが実情です。
何よりも大切なのは、それぞれの施工業者の考えを聞いた上で、予算などと相談しながら、ご自身が最も信頼できると感じた方法を選ぶことです。
2.ケレンなどの下地処理が非常に大事
木材塗装に限った話ではなく、外壁塗装全般において言えることですが、木材塗装では、ケレンや目粗しなどの下地処理作業が特に重要です。
この作業をしっかり行わなければ、施工後数週間で、塗装が剥がれてしまう恐れがあります。
外壁塗装における下地処理とは、後から塗る塗料をしっかりと密着させるための工程を指します。
下地処理ではまず、サビやコケなどの異物をしっかり除去し、剥がれかかっているような「死膜」を取り除いていきます。
このとき、密着性がまだ残っている「活膜」は残しておきます。
そのあと、サンドペーパーや工具を使って、塗料が密着しやすいようにわざと傷をつけていきます。
なぜこのようなことをするかと言うと、あえて表面を傷つけることによって、木材と塗料の接触面が増え、密着性が高くなるためです。
もし、つるつるした面を目粗しせず、そのまま塗装をしても、塗料がうまく密着できずに剥がれてしまう可能性があります。
下地処理に使用する道具は、サンドペーパーと呼ばれる紙やすりのような道具のほか、電動サンダー(電動研磨機)という電動工具、剥がれかかっている塗膜をそぎ落とす皮すきなどが使われます。
3.太陽の当たり方で劣化具合が変わる
木は、コンクリートやモルタルに比べると、紫外線に敏感な物質を多く持っているため、太陽光の影響を非常に受けやすい素材です。
太陽光には、紫外線という電磁波が含まれており、この電磁波が悪さをして、木の中にある様々な物質を変異させ、変色などの劣化現象を起こしてしまいます。
また、太陽光によって分解されて、ぼろぼろになってしまった木の繊維は、雨によって流されてしまい、より劣化が進行してしまいます。
このような劣化現象を防ぐためにも、先ほどご紹介した塗料を使って、表面を保護しておかなければなりません。
一方、家の中の木材は、紫外線や雨の影響がほとんど無く、風にも晒されないため、屋外にある木材に比べると、非常に長持ちします。
このような、室内木部のイメージによって、「木材は長持ちする素材」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これまで解説してきた通り、木材は非常にデリケートな素材ですので、日々のメンテナンスや、定期的な塗装は欠かさず行わなくてはならないのです。
■木部塗装を業者に依頼するときのコツ
メンテナンスが繊細で、業者ごとに工法が異なる木部塗装において、「じゃあ一体どんな業者に頼めばいいの?」と、不安に感じてしまった方もいるかもしれません。
木部塗装を業者に任せるときは、最低限、以下3つのコツを押さえておくと、失敗しにくくなりますので、依頼した業者のアドバイスも参考にしながら、ぜひ取り入れてみるとよいでしょう。
1.同じ種類の塗料を使ってもらう
木部を塗り替える際は、現在表面に塗られているものと、同種類の塗料を使うようにしましょう。
例えば、以前塗られていた塗料が溶剤塗料で、塗り替えの際に水性タイプの塗料を塗っても、それぞれが馴染まず、塗料の硬化に悪影響を及ぼす恐れがあります。
2.用途に合わせて木部用塗料を選ぶ
木部塗装では、下記のように、目的に合わせて作られた塗料が存在します。
- 木部用下塗り塗料…木部の下塗りをするための塗料
- 木部用上塗り塗料…木部の上塗りをするための塗料
- 特殊木部塗料…ウッドデッキなど、特殊な屋外木部用の塗料
下塗り塗料と上塗り塗料を選ぶときは、水性タイプ、溶剤タイプなど、塗料の液タイプを合わせることを忘れないようにしましょう。
また、ウッドデッキなど外部木部用の特殊木部塗料には、浸透性の高い水性系のものから、防カビ・防虫に優れている溶剤系のものなどがありますので、ウッドデッキの強度に合わせて選ぶことが大切です。
このほかにも、木部用ウレタンクリヤーなど、木材の自然な風合いを表現できる、木部用の透明塗料もあります。
高い光沢を持つウレタンクリヤーは、仕上がりの美しい艶が特徴的な塗料です。
これらの塗料はいずれも、日本ペイント、エスケー化研株式会社、ロックペイントなど各塗料メーカーから発売されていますので、塗料そのものの耐久性も保証されています。
3.雨樋のメンテナンスもセットで行う
外壁と同じように、屋根からの雨水を処理してくれる雨樋も、紫外線などの外部からの刺激に耐えています。
この雨樋の点検はなかなか忘れてしまいがちですので、メンテナンスの頻度が多い木部塗装の際に、併せて点検してもらうとよいでしょう。
周囲の塗装が剥げたなどであれば、外壁塗装で足場をかけてもらっているついでに一緒に塗装を依頼することができます。
点検が早ければ、少々の傷みがあっても、早めに機能を回復することも可能です。
しかし、メンテナンスが長年おろそかにされてしまった雨樋は、本来の雨樋の役割が回復できないほど傷んでいることもありますので、そのようなときには、多少の費用が発生しても、早めに交換することをおすすめします。
参考:雨樋の塗装は本当に必要?目的に応じて塗装か交換を判断する
4.見積書は具体的に書いてもらう
木部塗装に限ったことではありませんが、業者から見積をもらったときに、「一式」や「セット」など、不明瞭な箇所があれば、具体的に記載してもらいましょう。
塗装業者の見積もりは、多くの場合、塗料の㎡あたりの単価に対し、住宅の㎡数を乗じる形で、塗装面積の価格を算出しています。
このとき、塗料名が明らかにされていないと、塗料代の価格の参考になりませんので、業者にお願いして、塗料名だけでも教えてもらうといいでしょう。
塗料名がわかれば、各メーカーのホームページに掲載されている、塗料缶あたりの設計価格から㎡あたりの単価を算出することができます。
また、現場の状況によって一概には言えませんが、塗装の見積もりは塗料以外にも足場、高圧洗浄、養生、付帯塗装など内容が盛りだくさんですので、これらの箇所にも、あいまいな表記や疑問点があれば、積極的に質問して参考価格を明らかにしておきましょう。
■DIYで木部塗装はできるのか?
屋外用木部のうち、ウッドデッキや木製の玄関ドア、玄関屋根の軒天、木製フェンス、木製窓枠など、足場を組むほどでもない高さであれば、自分でDIYに挑戦しようと考える人もいるかもしれません。
しかし、これまで解説した通り、木部の塗装は決してカンタンではなく、DIYのメリットだけでなく、デメリット面も知っておかなければ、大きな後悔をしてしまう恐れがあります。
参考:外壁塗装をDIY補修する方法手順と事故を避ける為の注意点
1.専用塗料を使うことが成功の秘訣
ウッドデッキや木製玄関ドアを塗装する際は、見た目を綺麗にすること以外に、木材専用の塗料を使って仕上げることも忘れないようにしましょう。
例えば、ウッドデッキ専用の塗料であれば、小さい子供が寝転がったり、ペットが舐めたりしても安全な成分で作られていることがあります。
特に、ウッドデッキや玄関ドアは、常に人の手や足が触れる場所ですので、単なる木製塗料を使うだけではなく、環境と人に優しい塗料を使うことが望ましいででしょう。
●ウッドデッキの塗装について
ウッドデッキには、天然の木材で作られたもの以外にも、近年は、木材の質感に似せて作られた樹脂デッキも登場しています。
樹脂は天然の木材と違って腐らないため、カビや腐食などを気にする必要がなく、色落ちしたときは、色付きの塗料を塗ればよいため、メンテナンスの手間がかかりません。
天然の木材か、樹脂性か、お使いのウッドデッキの素材を確認し、それに合った仕上げ塗料で塗っていくようにしましょう。
2.木材塗装をDIYでするメリット
DIYで塗装をする最大のメリットは、工事費用を抑えられることでしょう。
職人の人件費や車両の運搬費、業者に支払う利益も発生せず、自分たちで材料を工面するため、原価もわかるため悪徳業者に余分なお金を取られてしまう心配もありません。
また、「DIYで塗装した」という成功体験は、住まいの歴史の中でいつまでも、輝かしく残り続けます。
時間に余裕があれば、お子様や友人・知人などを誘って挑戦することも可能です。
3.木材塗装をDIYでするデメリット
小さな木部であれば、簡単に塗装できそうなイメージをお持ちかもしれません。
しかし、DIYをする際は、「責任」の2文字をおろそかにしてしまうと、重大な事故や損失に繋がってしまう恐れがあるのです。
●事故が起きてもすべて自己責任
ウッドデッキやフェンスであれば、足場を設置する必要がなく、ある程度高さがある玄関屋根でも、足場とはいかなくても、ハシゴなどを用意すれば塗装は可能でしょう。
ただし、高所での作業は、高さの度合いに関係なく、落下事故の可能性と常に隣り合わせであることを、頭に入れておかなければなりません。
例えば、玄関屋根くらいであれば、地上から見るかぎり、それほど高さは感じられないでしょう。
しかし、万が一ハシゴや屋根から落下して、打ち所が悪く大怪我をしたり、私物が破損したりしても、もちろんすべて自己責任です。
極端な例をあげると、落下したときに、通行人にぶつかって相手がケガをすれば、刑事責任に問われてしまう可能性もゼロではありません。
高所での作業に慣れていない人が、いくら細心の注意を払っても、やはり毎月何十件もの足場作業をこなすプロの塗装職人と同じという訳にはいかないのです。
●保証の対象外となっても自己責任
もし、DIYで塗装した木部が急に劣化して、取返しがつかない状態になってしまったとします。
このような状態になると、塗装業者の保証も外装材メーカーの保証も、「自己責任の結果」と処理されて、保証の対象外となってしまう恐れがあります。
安易なDIYをした結果、本来必要ではなかった高額なリフォームを発生させてしまわないためにも、小規模な箇所でもDIYは避けて、外壁塗装や屋根塗装のついでに、塗装のプロにやってもらうことをおすすめします。
■おわりに
木部の塗装は、カンタンなように見えますが、実は、どの外装材よりも慎重に行わなければならない、難しい作業です。
熟練の塗装職人でも、保証の対象外とするほど、施工後の状態を見極めるのは難しいため、「適したタイプの塗料を使う」「劣化が始まるタイミングを覚えておく」といった、失敗を最低限防ぐポイントを押さえて実施する必要があります。
木部の塗装に詳しい優良業者と出会って、大切な住まいの外装を、腐食や劣化から末永く守り続けましょう。