サイディングボードは現在の日本において主流の外壁材ですが、どのような種類があり、どれくらいの頻度でメンテナンスを行うべきか、わからない人も多いです。
この記事では
- サイディングボードの基礎知識
- サイディングボードの劣化症状
- サイディングボードの再塗装でどのような塗料を使えば良いか
などについてまとめています。
目次
■サイディングボードの基礎知識
サイディングボードとは、家の外壁を形成するパネル型の外壁材のことです。
工場で作られたサイディングボードを外壁に貼り合わせ、その貼り合わせたサイディングボード同士のすき間をゴム状の建材で埋めることで外壁を形成しています。
工場で作られたサイディングボードを外壁箇所に貼り合わせるだけの作業なので、手作業で外壁を形成するモルタル外壁の工事よりも工事期間やコストを抑えることができます。レンガ調やタイル調などの様々なデザインがあるので、住宅のデザインや雰囲気を自分好みにアレンジすることもできます。
- 施工しやすく工事期間が短い
- コストが安い
- デザインのバリエーションが多い
というメリットにより、サイディングボードは現在の日本において主流の外壁材です。
1.目地のコーキング
外壁に貼り合わせたサイディングボードにはすき間ができます。
そのすき間に樹脂でできたゴム状のコーキング材を充填して、すき間を埋めることで外壁は作られます。
コーキング材は弾力性があり、サイディングボードが受ける衝撃を逃がす効果があるため、外壁の耐久性を高める緩衝材といえますが、経年劣化するため、工事後10年を目安に定期的なメンテナンスが必要です。
2.直貼り工法と通気工法
サイディングボードを外壁に貼り合わせる施工方法には
- 直貼り工法
- 通気工法
の2種類があります。
直貼り工法は防水シートが施された外壁の上に、直接サイディングボードを張り付ける工法です。
直貼り工法は、工程が少なく済みますが、外壁の上に直接サイディングボードを張り付けるため、外壁の内側に通気性を確保することができません。
そのため、外壁の内側に湿気が溜まって内部結露やカビの発生が起こり、外壁やサイディングボードの劣化を早めてしまいます。
上記の理由により、直貼り工法によるサイディングボードの施工は、今現在あまり行われていませんし、直貼り工法の家をリフォームする際は、塗装の塗り替えではなく、サイディングボードの張り替えが推奨されています。
通気工法は、防水シートが施された外壁とサイディングボードの間に、空気が通るすき間を作ることで通気性を確保した工法です。
外壁の内側に通気性を確保することで水分や湿気を逃がし、結露やカビ発生による外壁やサイディングボードの劣化を防ぐことができます。
■サイディングボードの種類
サイディングボードは材質の違いにより種類分けされます。
それぞれの材質の特徴を把握し、自身の住宅に合ったサイディングボードを選びましょう。
1.窯業系サイディングボード
窯業とは、土や砂などを窯で高熱処理してガラスやセメントを製造する工業の事を指します。
そしてその窯業で製造したセメントに繊維を混合して、軽さと強度をかね合わせたサイディングボードの事を「窯業系サイディングボード」といいます。
窯業系サイディングボードは、
- デザインのバリエーションが豊富なので外壁を理想のイメージに近づけられる
- 火災を抑制する性能である防火性能が高い
- 重量が軽く、地震発生時などに住宅にかかる負担を軽減できるため、耐震性に優れているといえる
- 施工が楽なので工事期間を短縮でき、その分工事費用も安くなる
- 導入コストが安い
- 工場で同じ品質のものを製造するので品質が安定している
など、様々なメリットをもっており、現在の日本で最も使用されるサイディングボードです。
一方で窯業系サイディングボードは、
- 防水性能がないため、防水塗装が必要である
- 熱を吸収しやすいため、夏は外壁の表面温度が高くなる
などのデメリットがあります。
2.金属系サイディングボード
(引用元:https://www.igkogyo.co.jp/syohin/detail.html?id=48)
最近建てられた一般住宅の屋根には、ガルバリウム鋼板という、とても軽くて断熱性や耐久性に優れた屋根材が使用されていることが多いです。
ガルバリウム鋼板やアルミなど金属の鋼板を使用し、軽さ、優れた断熱性、耐久性などをかね合わせたサイディングボードの事を「金属系サイディングボード」といいます。
金属系サイディングボードのメリットは
- 内側に断熱材が貼り付けられているので、住宅が外の寒さや暑さの影響を受けにくい
- 非常に軽い金属が使用され地震発生時に住宅にかかる負担を軽減できるため、耐震性に優れている
- 窯業系サイディングボードは塗膜が劣化すると雨水が外壁に染みこみやすいが、金属系サイディングボードは金属の板なので雨水が外壁に染みこみにくく、防水性に優れているといえる
という点です。
一方で金属系サイディングボードは
- 気候の影響や塗装の劣化によりサビ、汚れ、傷などが付きやすい
- デザインのバリエーションが窯業系サイディングボードに比べて少ない
- 導入コストが比較的高い
- 施工が難しいため、適切に施工してくれる業者を探すのに時間がかかる
- 金属なので音が伝わりやすく、防音性が低い
などのデメリットがあります。
3.その他のサイディングボード
まだ日本での施工実績や取り扱える店は少ないですが、サイディングボードには上記以外に
- 木質系サイディングボード
- 樹脂系サイディングボード
などがあります。
木質系サイディングボードは天然の木材を素材にしたサイディングボードです。
(引用元:https://www.prairie.co.jp/archives/product/phpn0072-2)
木質系サイディングボードのメリットは
- 天然の木材にしか出せないデザイン性が感じられる
- 断熱性に優れているので、住宅が外の寒さや暑さの影響を受けにくい
- 自然の素材なので人工物特有の不自然さがなく、温もりが感じられる
という点です。
一方、木質系サイディングボードのデメリットは
- 天然の木材を使用するため導入コストが非常に高い
- 木材は燃えやすいので火災を抑制する防火性能が低い
- 水分が侵入したまま放置してしまうとカビが発生して腐ってしまうので定期的なメンテナンスが必要である
という点です。
樹脂系サイディングボードは腐食やひび割れが起きにくい塩化ビニール樹脂で製造されたサイディングボードです。
(引用元:http://www.zeonkasei.co.jp/product/c/intro.html)
樹脂系サイディングボードのメリットは
- 耐用年数が高いのでメンテナンスの回数が少なくて済む
- 変色しにくいので施工した状態の見た目をずっと保つことができる
- 火災を抑制する防火性能が高い
- 重量が軽く地震発生時に住宅にかかる負担を軽減できるため、耐震性に優れている
という点です。
一方、樹脂系サイディングボードのデメリットは
- 音が伝わりやすく、防音性が低い
- 取り扱い業者が少ない
- 塗料が表面に定着しにくいので上塗りができない
- デザインのバリエーションが少ない
という点です。
■サイディングボードの劣化症状
サイディングボードは、施工してからある程度の年数が経つと劣化していきます。
サイディングボードの劣化症状を見落としてしまうと、適切なメンテナンスのタイミングを逃してしまい、サイディングボード自体の劣化を早めてしまう可能性があるので、定期的に劣化しているかどうかを確認する必要があるのです。
1.塗装剥がれ
サイディングボードの塗装は施工してから年数が経つことで徐々に劣化していき、塗装の剥がれが発生します。
サイディングボードの塗装の剥がれが起こった場所を補修せずに放置しておくと、そこからどんどん剥がれの面積が広がってしまいますし、剥がれが発生したということは塗膜の接着力が落ちている時期であると考えられるので、早めに外壁塗装会社の調査を依頼しましょう。
参考:外壁塗装が剥がれる原因と補修方法
2.チョーキング現象
チョーキング現象とは、経年劣化した外壁の塗料に含まれる顔料が、外壁の表面に粉として現れる事を指します。
チョーキング現象は外壁に手で触れて、手に粉がつく事で確認できます。
外壁にチョーキング現象が現れた場合、高圧洗浄機で外壁の表面についた粉を洗い流し、塗装の塗り替えを行う必要があるので、外壁塗装会社に調査を依頼しましょう。
3.サイディングの反り(そり)
サイディングボードは、雨水を吸ったり、乾燥したりを繰り返すことで変形してしまい、部分的に沿ってしまう場合があります。
反ったサイディングボードを無理やり力で戻そうとすると割れてしまうので、新しいサイディングボードへの張り替えが必要です。
サイディングボードの張替えはDIYなどで修復する事はできず、自身で直そうとするとサイディングボードの破損や施工者のケガなどにつながる可能性があるので、サイディングボードの反りを発見したら業者に調査を依頼するようにしましょう。
4.色あせ
サイディングボードの色は施工してからある程度の年数が経つと薄くなり、色あせが発生します。
サイディングボードに色あせが発生しているということは、塗装の耐久力が落ちているということであり、そのまま色あせを放置してしまうと、サイディングボードのひび割れや塗装剥がれなど、サイディングボード自体の劣化を早めてしまう可能性があるので対処が必要です。
単色のサイディングボードが色あせた場合は、色あせた部分を塗り直すことで対処できますが、複数色のサイディングボードが色あせた場合は、
- 複数色のサイディングボードの補修が得意な業者への依頼
- サイディングボード自体の張り替え
などを健闘する必要があるため、外壁塗装業者に調査を依頼しましょう。
5.ひび割れ
サイディングボードのひび割れはモルタル外壁よりも起こりにくいですが、住宅に振動がかかった際の圧力などが原因で発生します。
サイディングボードのひび割れが起こった場所を補修せずに放置してしまうと、雨水がひび割れから染み込む事で雨漏りになったり、外壁材の内側にカビが生えるなどの原因になりかねないので対処が必要です。
- サイディングボードの部分的な張替え
- サイディングボードのひび割れへの補修作業
- 小さいひび割れの場合は補修せずに様子見する
など、いずれの対処が必要か、業者に調査を依頼するようにしましょう。
参考:外壁塗装におけるクラック補修の重要性
サイディングボードのメンテナンス、ひび割れ等の補修方法
6.苔、藻
サイディングボードのデコボコの部分に水と汚れが溜まることで苔、藻が発生してしまう場合があります。
色あせと同様に、苔、藻が発生した外壁は塗装の保護能力が失われているということなので、苔や藻が発生したサイディングボードを長期間放置してしまうと、サイディングボード自体の劣化を早めてしまう可能性があり、早めに除去する必要があります。
サイディングボードに発生した苔、藻は家庭用の高圧洗浄機で落とせる場合もありますが、強固に付着した苔、藻を無理に落とそうとするとサイディングボード自体を傷つけてしまう可能性がありますので、近隣の業者に連絡し、施工が必要かどうかを調査してもらうようにしましょう。
参考:外壁のコケは放置厳禁!定期メンテナンスや塗装で予防
外壁にカビが生えてしまう原因と状況別対策方法
7.目地の劣化
貼り合わせたサイディングボード同士の間の目地のコーキング材にもサイディングボードと同じように、
- 築年数が経過すると、柔軟性が失われ、コーキングのひび割れが発生する
- 築年数の経過で、コーキングの厚みが減ってしまう「コーキングのやせ」という減少が発生する
- コーキングのひび割れや「やせ」を放置すると、それらが進行し、コーキングの剥がれが発生する
などの劣化症状があります。
目地の劣化の補修方法は
- 新しいコーキングに打ち替える方法の打ち替え
- 既存のコーキングに上に新しいコーキングを充填する方法の増打ち(ましうち)
の2種類があります。
増打ちは施工費用を安く抑えられるというメリットがありますが、コーキング材を長持ちさせ、長期間家を保護するということが難しいため、推奨されません。
増打ちは既存の劣化しているコーキングを撤去せずに行う補修なので、既存のコーキング材をきれいに除去して新しいコーキングに打ち替える「打ち替え」と比べて、コーキングの耐久性が低いのです。
上記の理由により、コーキングの劣化症状が現れたときは、コーキングの耐久性を考慮して、劣化したコーキングを撤去して新しいコーキングを充填する「打ち替え」が推奨されます。
サイディングボードの再塗装に合う塗料
上記で紹介したサイディングボードの劣化症状が発生したら、サイディングボードの再塗装やサイディングボードの交換などのリフォーム工事が必要です。
再塗装による外壁リフォーム工事を行う場合によく使用される塗料の種類は大きく分けると以下の4種類です。
1.シリコン樹脂塗料
シリコン樹脂塗料は樹脂の主成分にシリコンが使用された塗料です。
シリコン樹脂塗料は導入コストが安く、耐久年数も高いという費用対効果の点から、主流の塗料の中で最も人気があります。
シリコン樹脂塗料のメリットは、
- 耐熱性に優れているので、紫外線や暑さに強い
- 塗膜が固く、水をはじく性質を持つので、汚れにくい
- 耐久年数が10~13年と長く、単価が安いので施工価格を抑えられる
- 光沢やツヤのある仕上がりなので、キレイな塗膜を維持できる
などの点です。
一方、シリコン樹脂塗料のデメリットは
- 塗膜が固くて水をはじく性質を持つので、次回の塗装でさらに上から塗るには不向きである
- 塗膜が固いのでひび割れしやすい
という点です。
シリコン樹脂塗料の㎡単価の価格相場は2,300~3,000円/㎡です。
2.ラジカル制御型塗料
ラジカル制御型塗料は塗料の劣化を招くラジカル物質というものの発生を制御し、塗膜の劣化を防ぐ機能を持つ塗料です。
ラジカル制御型塗料は比較的新しい塗料なので知名度と施工実績は少ないですが、優れた性能を持つので徐々に普及しつつある塗料です。
ラジカル制御型塗料のメリットは
- チョーキング現象が起きにくく、塗膜が劣化しにくい
- 防カビ性や防藻性に優れているので、塗膜にカビや藻を発生させにくい
- 耐久年数が14~16年なので、シリコン塗料よりも耐久年数に優れる
- 多くの外壁に塗装が可能なので、下地を選ばずに塗装ができる
- 塗料の伸びが軽く飛散しにくいので、作業がしやすい
という点です。
一方、ラジカル制御型塗料のデメリットは
- 知名度と施工実績がまだ少ないので、適切に施工してくれる業者を探すのに時間がかかる
- ラジカル制御機能は白など淡色の塗料において発揮されやすく、黒など濃色の塗料においてはラジカル制御機能が発揮されにくい
という点です。
ラジカル制御型塗料の㎡単価の価格相場は2,500~3,000円/㎡です。
3.フッ素樹脂塗料
フッ素樹脂塗料は樹脂の主成分にフッ素系の合成樹脂が使用された塗料です。
主要な塗料の中で最も耐久性に優れており、価格も高額です。
フッ素樹脂塗料のメリットは
- 耐久年数が15~20年と塗料の中では比較的長い
- 紫外線に強いフッ素樹脂により、色あせや劣化を防ぐ
- 水に濡れやすく密着しやすい性質により、雨で自然に汚れを落とす
- 防カビ性や防藻性に優れているので、カビや藻を発生させにくい
- 塗膜がすり減りにくいので、長時間光沢を保つ
- 酸類に対して反応しにくいので酸性雨に強い
という点です。
一方、フッ素樹脂塗料のデメリットは
- 他の塗料と比較して価格が高い
- 一部ツヤを抑えた塗料はあるが、ツヤがないフッ素樹脂塗料はないので、ツヤがない外壁を希望する場合には選べない
という点です。
フッ素樹脂塗料の㎡単価の価格相場は3,800~4,800円/㎡です。
参考:フッ素塗料の価格相場やメリット、デメリットを確認しよう
4.クリヤー塗料
クリヤー塗料は色がついておらず透明な塗料です。
多くの塗料は、顔料という成分で様々な色を表現していますが、クリヤー塗料には顔料が含まれていません。
クリヤー塗料は透明なので
- レンガ調やタイル調などデザイン性の高いサイディングボード
- 何色も使われているサイディングボード
などの模様や色をつぶさずに外壁の表面を保護することができます。
クリヤー塗料のメリットは
- 顔料が含まれていないので、顔料が原因のチョーキング現象が起きない
- サイディングボードのデザインを残したまま、表面を保護することができる
- 他の塗料と比較して塗料を塗る回数が少なく済むので、施工期間を短縮できる
という点です。
一方、クリヤー塗料のデメリットは
- 色あせやチョーキング現象などが起きて、劣化が進んでいるサイディングボードには塗装できない
- 塗膜の表面を覆うコーティング加工が施されたサイディングボードには塗装できない
という点です。
クリヤー塗料の㎡単価の価格相場は2,000~2,500円/㎡です。
■まとめ
サイディングボードの種類や劣化症状、再塗装に合う塗料をお伝えしましたが、いかかでしたでしょうか?
後々のメンテナンスも考慮して、自身の住宅に合ったサイディングボードを選び、それらのサイディングボードに合ったメンテナンスを行いましょう。