外壁塗装の費用を調べるとき、必ず気にしなければならないのが、各工程の平米単価です。
なぜならば、外壁塗装業者が作る見積書というのは、ほとんどが1平米あたり何円という風に、平米単価で計算されていることが多いためです。
また、平米単価で記載されている方が、顧客は詳細な見積書と感じ、納得して工事を依頼する場合も多いため、業者としても、手間はかかってもしっかりと平米単価で計算しているという理由もあります。
外壁塗装の料金のおおよそは、平米単価と実際に塗る面積によって求めることが出来ますが、そうやって計算した金額が、そのまま外壁塗装業者に支払う金額になるのかといえばそうではありません。
この記事では、平米単価によって求められる項目と、そうでない項目、さらに、外壁塗装に影響する項目についてご紹介します。
■外壁塗装費用の決まり方と平米単価
外壁塗装の主役はなんといっても塗料です。
塗料を外壁に塗ることで家が保護され、美観も維持できます。
ただ、塗料は単体では商品にならず、職人が家に適切に塗ることによって初めて商品となるため、専門用語では「半商品」に分類されます。
そのため、塗料の価格だけでなく、職人が塗ることによって発生する人件費を組み合わせた費用を、依頼主は支払わなくてはなりません。
しかし、外壁塗装の見積書には、人件費という項目がないのが一般的です。
人件費は、塗料代、足場代、下地処理代など、それぞれの工程の作業料金に含まれています。
本来であれば、塗料の費用と、人件費は別に記載した「材工別」の見積もりの方がわかりやすいのですが、作業する人の勤続年数や、土日出勤かどうか、どれくらいその仕事に慣れているかなどによって人件費は大きく変わりますので、他の項目に含めて計算されています。
このように、様々な要素を含めて計算しなければならない外壁塗装において、計算をわかりやすくするために存在するのが、「平米単価」という考え方です。
1.外壁塗装に欠かせない「平米単価」とは
平米単価とは、1平米あたりの材料費、人件費などをすべて含めたものがいくらなのかを表したものです。
平米単価と施工面積を調べれば、外壁塗装のおおよその費用を計算することが出来ます。
ただし、実際の塗装費用はこれだけでは求められず、正しい見積金額は、施工箇所を見た業者しか計算できません。
また、平米単価はメーカーや業者が定めているもので、相場はあれど、価格設定した業者によってバラつきがあります。
そのため、平米単価によって算出した金額は、あくまでも料金目安として考えておきましょう。
ちなみに、多くの見積もり事例を見ておくと、平米単価のみでも、ある程度は価格相場を予測できるようになりますので参考にするとよいでしょう(参考:見積もり事例と注意点)。
2.平米単価を使った計算例
外壁塗装の概算費用は、平米単価を使って、以下の式で求める事が出来ます。
外壁塗装の費用=塗る面積×塗装の平米単価
●塗る面積の求め方
塗る面積は、家の総床面積(延床面積)に係数を乗じて求める事が出来ます。
塗る面積=総床面積 ×1.2
この1.2という係数は、家の形や窓の数などによって、1.1~1.7程度に変動するのですが、一般的な戸建て住宅の塗装面積を求めるときは、1.2を使用することが多いです。
先ほどの30坪二階建ての家なら、198×1.2=237.6となり、塗る面積は、237.6平米となります。
塗料は窓に塗らないので、窓や扉などの開口部の面積は、塗装面積から除外します(ただし、今回はわかりやすくするため、開口部の計算については省略しています)。
ただ、実際の見積もりにおいて、施主が見積もりの見方に詳しくないのをいいことに、塗らない開口部の塗料代まで請求する悪徳業者や、請求しておいて実際には塗装しない手抜き業者などもいますので、見積書の塗る面積には着目しておかなければなりません。
このような、金額通りに施工されないトラブルを防ぐためには、複数業者で見積もりを取って、それぞれがどのような計算で塗り面積を算出しているかに注目するようにしましょう。
●家の総床面積の求め方
総床面積とは、建物のすべての床面積を合算したものです。
例えば、平屋の家であれば、1階部分の床面積がそのまま総床面積になりますが、二階建ての家は、一階と二階の床面積を合計したものが、総床面積になります。
家の床面積を表す単位にはいくつか種類があり、平米の他に、「坪」、「畳」があります。
戸建住宅では「○○坪」のように、坪数で坪表記されていることが多いですが、一般的に、塗料などの単価は「○円/平米」で表されることがほとんどです。
そのため、家の広さを坪や、畳でしか知らない場合は、計算式を平米でそろえるために、まずは家の床面積を平米に直す必要があります。
1坪=3.3平米
1畳=1.8平米
※どちらもおよその値です
例えば、30坪で一階建ての家であれば、30×3.3=99という計算になり、99平米に変換することができ、階数は一階だけですので、総床面積は99平米です。
さらに、建物の大きさが階数ごとに違いがなければ、単純にこの99平米を倍にすれば、建物のおおよその総床面積が求められます。
つまり、30坪で二階建てなら、99平米の二倍の198平米、三階建てなら三倍の297平米が、建物の総床面積です。
●塗装の平米単価とは
アクリル系樹脂塗料 | 1,000~1,200円/㎡ |
ウレタン系樹脂塗料 | 1,600~2,000円/㎡ |
シリコン系樹脂塗料 | 2,200~3,500円/㎡ |
フッ素系樹脂塗料 | 3,000~4,500円/㎡ |
断熱系樹脂塗料 | 4,000~5,500円/㎡ |
光触媒系樹脂塗料 | 4,000~5,500円/㎡ |
使用塗料別の平米単価は、上記のような相場になっています。
ただしこの価格は、屋根(スレート屋根、コロニアル屋根など)、仮設足場費用、飛散防止ネット、養生、下地処理(ケレン、コーキング(シーリング)の交換)、高圧洗浄、下塗り(シーラー、プライマー、フィラーなど)などを含めた、かなりおおざっぱな数字です。
使用する塗料の種類を調べ、相場費用を確認したら、さきほど求めた塗る面積と乗じて施工費用を計算します。
30坪で二階建ての家で、塗る面積が237.6平米、塗装単価が約3,000~4,500円のシリコン塗料を塗ったと仮定すると、外壁塗装の総額は、712,800~1,069,200円がおおよその価格と考えることができます。
ただし、三階建ての家や、屋根が急勾配で屋根足場が追加で必要な家などは、相場よりも費用が高くなります。
ご自身の家での適切な塗装費用を知りたいときは、業者を家に呼んで、しっかりと建物の大きさを計ってもらうしかありません。
もし、すでに業者に見積もりを出していて、金額が正しいかどうか不安なときは、不安なまま塗装を依頼してしまわず、別の業者に同じ条件で見積もりを作ってもらったり、外壁塗装駆け込み寺のような相談機関に確認したりして、納得した状態で工事を決めることがポイントです。
■塗料のグレードは平米単価を大きく左右する
外壁塗装の平米単価を最も左右するのは、使用する塗料の平米単価です。
塗料には
- アクリル系塗料
- ウレタン系塗料
- シリコン系塗料
- フッ素系塗料
などがあります。
また、それ以外にも、機能性が加わった
- 光触媒塗料
- ラジカル塗料
- 無機塗料
- 断熱塗料(遮熱塗料)
- 防水塗料
といった特殊塗料もあります。
種類ごとに、価格だけでなく耐久性や保証年数も異なりますので、塗料選びは、家を末永く長持ちさせるためにはとても重要な要素です。
1.同じグレードでも種類が存在する
例えば、シリコン樹脂系塗料といっても、水性シリコンなのか、溶剤シリコンなのかなど、液タイプによって材料代が異なり、さらに、弾力があって伸びがよい弾性タイプなどもあり、弾性の特徴によっても種類が異なります。
そのため、単純にハイグレードなフッ素塗料を選べばすべて長持ちするとは限らず、家の状態に合わせて機能や特徴を選ばなくてはなりません。
●シリコン塗料はコストパフォーマンスに優れたおすすめ塗料
塗料は、グレードが高くなるほど施工代が高くなりますが、例え費用が高額になっても、グレードの高い塗料のほうが耐久年数は長いため、結果的には最も安全です。
しかし、そうは言っても、施工単価が高ければ高いほど費用が掛かり過ぎるため、フッ素樹脂系塗料などのグレードの高い塗料は敬遠されてしまいがちです。
そのため、価格が高すぎず、ほどよい耐久年数を発揮するシリコン系塗料は、コストパフォーマンスに優れるとして、現在使われている主流の塗料となっています。
また、シリコン塗料は、アクリルとシリコンが混ざり合っていることから「アクリルシリコン塗料」と呼ばれることもありますが、下位グレードのアクリル塗料とは別物ですので、区別しておきましょう。
参考:水性・油性、1・2液型、ツヤ等の塗料タイプは何が良い?
ゴムの性質でクラックを防止する複層、単層、微弾性塗料とは
外壁塗装で使うのはシリコン塗料ウレタン塗料どちらが良い?
2.高機能だが割高な特殊塗料
機能性を持った特殊塗料は、通常の塗料よりもさらに割高になります。
例えば、太陽の光が当たることで外壁の汚れを分解して浮かせ、雨で洗い流し、汚れが付きにくい外壁を作る「光触媒塗料」は、耐久性も耐候性も抜群ですが、施工価格もかなり高額になります。
そのほか、太陽熱を反射させ、夏場のエアコン効率を高める遮熱塗料や、暖かい空気が屋外に逃げないようにする断熱塗料「ガイナ」などは、省エネ塗料として近年注目されていいます。
そのほか、防音仕様になっていたり、艶が長持ちするように色あせしにくく作られていたりする特殊塗料もあり、いずれも耐久性や耐用年数が非常に優れています。
参考:外壁塗装での断熱は誇張表現が多いので騙されないように注意
ただし、特殊塗料は施工単価も約1,000円ほど高くなっていますので、塗装面積が広ければ広いほど、一般的な塗料(シリコン塗料など)で塗る費用の相場よりも、施工金額は高くなります。
例えば、10平米を塗装したとき、3,000円の一般塗料であれば費用は30,000円ですが、4,000円の特殊塗料だと40,000円となりますので、10平米だけでも10,000円の差が生じ、100平米塗れば10万円にもなります。
また、特殊塗装は塗装するのが難しいため、塗料メーカーから認定された施工店だけでしか塗装ができません。
そのため、塗装できる業者も少なく、さらに、確実に丁寧に塗装してもらうためには、信頼できる認定店を選ばなくてはならないため、非常に高級な塗料と言えるでしょう。
3.塗料名を知ることの大切さ
見積書に塗料メーカーが明記されていれば、メーカーホームページで公開されている設計価格表から、おおよその参考価格を知ることができます。
特に、大手塗料メーカーはほとんど設計価格を記載していますので、使用する塗料が大手メーカーのものであれば安心です。
また、塗料ごとに、メーカーが標準仕様を定めていますので、メーカー名と塗料名が分かれば、使用量、希釈率、乾燥時間など、材料代以外のことを知ることができ、どのような工事が行われるのかも少しイメージしやすくなるでしょう。
このように、塗料についての基礎知識がなくても、塗料名が明記された見積書があれば、自分で工事についてリサーチすることも可能です。
反対に、メーカー名はおろか、塗料名すら書かれていなような不明瞭な見積書になると、塗料の良し悪しも判断できず、どのような工事が行われるかもわかりません。
工事前の不安を少しでも解消するためにも、具体的に詳細まで記載された見積書を作ってもらうようにしましょう。
●パック料金を選ぶ前に知っておきたいこと
業者のなかには「シリコン塗料プラン」「コミコミシリコンパック」などのパック価格を設定している所もありますが、一式表記になっているため平米単価や塗装面積がわかりづらく、塗料の詳細もあいまいなため、安易に選ぶのはオススメできません。
悪徳業者になると、質の悪いシリコン塗料を使用している恐れもありますので、このようなパックプランを選ぶときでも、必ず、使われている塗料の塗料メーカーを確認して、どういった性質の塗料なのか確認しておきましょう。
外壁塗装駆け込み寺でも、よいシリコン塗料かどうかをお調べしてご案内いたしますので、お気軽にお問合せください。
■塗装費用が平米単価の計算より高くなる理由
平米単価で計算した塗装費用は、実際の外壁塗装工事費用とは若干異なります。
それは、外壁塗装には、塗る面積や塗料の価格以外にも、費用に影響する要因が他にいくつも存在するためです。
例えば、複雑な場所に家が建っていて、特注の足場を専門業者に発注しなければならないケースなどは足場代が高めになったり、下請けがたくさん入る工務店やハウスメーカーの場合は、中間マージンが発生する分施工料金が高めになったりすることがあります。
あるいは、近所の家との距離が非常に近く、足場を組むことが困難な現場の場合や、家までの道路が狭すぎて工事車両が入れない場合、家の前に通行量が多い大きな道路があって、職人の作業に差し支える場合など、様々なケースに配慮した結果、別途諸費用を支払う必要もあるでしょう。
このような、平米単価に関係なく費用に影響する、様々な要因を知っておきましょう。
1.家の形が入り組んでいる
家の形がきれいな真四角であるほど、凹凸が少なくなるため、外壁塗装費用は安くなります。
反対に、極端な長方形や、入り組んだL字型など、形が複雑になるほど外壁塗装費用は高くなります。
また、入り組んだ形の家は、仮設足場を設置するのも大変になり、足場だけで人件費と部材費を必要とするだけでなく、さらに、塗る面積も増えます。
例えば、上記の画像ですと、左右の建物はどちらも、外周は44mで、高さが3mという、同じ条件を持っています。
どちらの家も外周は同じですので、シリコン系塗料を選んだ場合は、単純に塗る面積×塗料代で、塗装費用は290,400円~462,000円となるように思えます。
しかし、上記2つの家は建物の形が違いますので、実際は、家の大きさが全然違います。
左の家は、建物の大きさが36.6坪あるのに対し、右の家は、30.55坪しかありません。
このように、外壁の塗装面積は、家の形によって左右されるため、実際に建物の大きさを計測して求めた見積もりでなければ、ほとんど当てにならないのです。
2.隣家との間隔が非常に狭い
形が入り組んだ家と同様に、隣家とのスペースが極端に狭い施工場所では、足場を組むのに時間がかかり、塗装作業も手間取るため、その分、人件費がかかってしまいます。
本来、50センチは隣家との間に隙間がほしいですが、「30センチあれば足場を組むことが出来る」という業者さんもいますでの、隣家との隙間が狭い場合は、まずはその点を必ず業者に相談しておきましょう。
隣家が足場を組めないほど近い場合は、隣家の方に協力をお願いして、相手の敷地内に足場を組ませていただく必要があります。
中には足場の設置を断られる方もいますが、民事上は、工事のために足場を組む側が優位ですので、なんとかお願いして、トラブルにならない方法で許可をもらうしかありません。
もし、拒否し続ける相手を無視して、隣家の敷地内に強引に足場を組むと、住居不法侵入となってしまい、犯罪行為となってしまいますので絶対に避けましょう。
また、最近では足場工事をあえて省き、費用が安くなることを売りにしている塗装業者もいます。
確かに、塗装工事の見積もり金額を見たとき、足場費用の高さにびっくりする人は少なくなりません。
そのため、足場工事がない分価格が安くなれば、嬉しいと思ってしまいます。
しかし、足場なしの施工方法は、上からロープでぶら下がって施工することになるため、風に煽られたり手元が不安定になったりして、どうしても作業性に欠け、職人も的確な仕事をできません。
このように、安全の面から見ても、外壁塗装において足場は必須ですので、なんとか許可をもらいましょう。
3.補修箇所が多い、劣化が激しい
外壁は、虫歯と同じで、放っておいて状態が良くなることは絶対にありません。
劣化してしまった外壁は、すぐに処置を行えば、重大な劣化に繋がらず、補修費用も安く済むのですが、そのまま放っておいてしまうと、補修費用は高くなり、外壁よりもさらに奥まで劣化が広がってしまいます。
新築であれば、安価なアクリル塗料が使われている事が多いため、約5年前後での塗り替えが望ましいとされます。
2回目の塗り替えであれば、大半の塗料の期待耐用年数と言われる10年前後を目安にして、適切な時期で、塗替えや防水工事などのメンテナンスを行いましょう。
4.大通りに面している
大通りに面している家の場合、工事中は、車や人の通行を妨げないように、警備員(交通誘導員)を配置しなければならないことがあります。
警備員は1日あたり14,000円~18,000円ほどですが、外壁塗装工事は最低でも約2週間前後の施工期間となりますので、警備員への人件費だけで約20~30万円が発生するため、平米あたりの施工単価が高くなる恐れがあります。
5.近隣にコンビニや公園のトイレがない
通常、外壁塗装業者は、家主のトイレを借りることは滅多にありません。
家主に使用を勧められても、近隣に使用できる公共のトイレがあれば、優先してそちらを使用するのが、ほとんどの優良業者が備えているマナーです。
しかし、近隣に公共トイレがない場合は、その都度作業を中断するわけにはいきませんので、現場で簡易トイレの仮設工事を行わなくてはなりません、。
簡易トイレの費用は約数万円ですが、工事がはじまる前に、自宅の近くにトイレが利用できるコンビニや公園がないか、一度思い浮かべておくとよいでしょう。
■見積もりを見るときの7つのポイント
ここまで解説したように、建物の面積や形状によって、施工面積や足場架面積、その他諸費用は変動します。
また、「どんな外壁にしたいか」という希望や目的は住宅によって異なるため、使用する塗料の種類や施工内容もその都度変わり、塗装費用も異なります。
このように、様々な事情を考慮しなければならない外壁塗装において、見積もりの内容を比較するためには、複数社へ見積もりを依頼し、平米単価を割り出すに値する、正しい見積書を作ってもらうことが大事です。
「値引きしてくれたからいい業者」「他の業者よりも半額になった」など、見積もり価格の安さだけで判断して、悪徳業者を選んでしまわないように、以下の点についてチェックしておきましょう。
1.足場工事が見積もりに記載されているか
足場工事の相場費用は、足場面積だけでなく、足場の種類によっても変わります。
足場には、次のような種類があります。
- 単管足場
- 単管ブラケット足場
- クサビ(ビケ)足場
これらのようにパイプを組み合わせて作る「鋼管足場」は、基本的には、「足場の組立て等作業主任者」という国家資格を持つ人が行わなければなりません。
外壁塗装業者の中には、資格も足場部材も所持し、自社で足場仮設が行える所もあります。
しかし、ほとんどの業者は、資格を持つ足場屋を外注しており、足場費用を安くできないという事情を抱えています。
足場の架け方や種類によって、足場の平米単価は変わりますので、複数の会社に見積もりを依頼して、できるだけ適正価格を調べておきましょう。
2.下地調整をしているか
塗装を成功させるカギを握るのが、下地調整(下地補修)という工程です。
この工程を省いてしまうと平米単価は安くなりますが、せっかくの外壁塗装が耐久性を発揮しなくなってしまいますので、見積もりに記載されていることを確認しておきましょう。
モルタル壁の家では、外壁に、「クラック(ひび割れ)」が発生していることがあります。
クラック箇所は、シーリング補修という方法で割れ目を埋め込み、塗面の凸凹を補修しておかなければ、塗料が外壁に密着できなくなります。
このとき使われるシーリング材には、一般的なシリコンのほか、耐久性が高い変性シリコンなどもあり、下地調整においては、家の症状に合わせた部材選びも重要です。
そのほか、サイディング材で仕上げられている家の外壁には、ボード間の目地にシーリング材が詰められていますが、この部分は塗料よりも早く劣化する箇所ですので、塗装する前に、シーリング工事を済ませておかなければなりません。
あるいは、屋根材や付帯部にある鉄部のサビ補修、外壁の古い塗膜を整える「ケレン作業」なども、耐久性が高い塗装を行うために、省かないでやってもらいたい大切な工程です。
参考:目地のコーキング材補修は専門業者が存在するほど難しい作業
外壁塗装はケレン作業が命!ケレンの大切さや作業内容
3.三度塗りが含まれているか
塗装作業は、基本的に、下塗り、中塗り、上塗りの三回の塗装が行われます。
下塗り材を塗面に塗ることで、中塗り、および上塗りの塗料と外壁との密着性が高まりますが、こちらも下地調整と同様に、省いてしまうと塗装が剥がれたり膨れたりして、すぐに劣化してしまいます。
見積書を見るときには、「下塗り・中塗り・上塗り」や「三度塗り」というワードがあるか確認しておかなければなりません。
中には、「あなたのお家は丈夫だから、1回塗りで済むので安くできますよ」と嘘をつく業者もありますが、必ず基本の三度塗りを踏まえて見積もりを作ってもらい、平米単価が適切かどうかを確かめておきましょう。
4.付帯部も塗装してもらえるか
家の外装には、屋根や外壁だけでなく、雨樋、軒天、雨戸、破風板、シャッター、ベランダといった付帯部も存在します。
外壁だけを塗装しても、付帯部が傷んだままだと塗替え後の美観が損なわれますので、しっかり塗装のプランに入れておかなければなりません。
付帯部は金属製のものが多く、錆びていると腐食が起こり、見た目も耐久性も相当悪くなり、他のパーツまで腐食させてしまいます。
そのため、塗装のときには、外壁だけでなく付帯部も一緒に、塗装や錆止めを行ってもらえるか見積のときに確認し、それらも踏まえたうえで平米単価を比較することが大事です。
参考:雨樋の塗装は本当に必要?目的に応じて塗装か交換を判断する
軒天(軒下・軒裏)塗装の単価相場や材料の種類に関して
5.屋根の塗装も見積書に含まれているか
一般的には、屋根塗装にも足場の設置が必要なので、屋根の塗替えも、外壁工事と併せて済ませるケースが多いです。
屋根は、家の中で最も直射日光が当たるため、外壁よりも劣化が激しい部分ですので、末永く建物を保護するのであれば、屋根は綿密なメンテナンスを必要とします。
屋根材にはたくさんの種類があり、一般的には、大まかに次のような種類に分けられます。
- スレート系
- セメント系
- 粘土系
- 金属系
屋根材は、塗装が必要なものとそうでないものがあります。
例えば、日本の家では馴染み深い、伝統的な和瓦(日本瓦)など、粘土系の屋根材は、色あせせず劣化しにくい素材でできているため、耐候性も寿命も長く、さらに、塗り替えの必要がありません。
ただし、屋根材自体の重量が重く、屋根面積が広いほど建物に重みがかかり、地震に弱くなってしまうとうデメリットがあります。
また、同じ瓦でも、金属系の瓦は軽くて丈夫ですが、錆びてしまうと塗り替えが必要になります。
さらに、セメント系の瓦屋根である乾式洋瓦(モニエル瓦)も、日本瓦と比較すると軽いというメリットがありますが、素材自体の防水性は粘土瓦より劣るため、劣化してくると塗り替えを行わなくてはなりません。
このように、屋根材の劣化具合に合わせた補修が、屋根塗装においては重要です。
屋根専用の屋根用塗料を使用することも大事ですが、家によって屋根の劣化状況は違うので、現場によっては屋根全面を塗り替える必要がなく、部分的な塗装で済む場合もあります。
外壁とセットで屋根塗装をするときは、必ず別の業者でも、屋根とセットの見積もりを作ってもらい、屋根の施工費用も含めた平米単価を計算しましょう。
参考:屋根塗装の知っておきたい基本事項と価格、費用相場について
6.訪問販売業者の見積もりには要注意
「そろそろ外壁塗装のタイミングだな…」と考えているときに、訪問販売業者がやってくることがあります。
外壁は、敷地外からでも見える位置にあることから、訪問販売のターゲットになりやすい箇所です。
訪問販売業者は、契約を取ることを目的としていますので、「モニター価格で施工するとお得」などの言葉で契約を勧めてくることがあります。
あらかじめ業者が用意した価格一覧表を見せられ、本来の料金とモニター料金を比較しながらセールストークが行われれば、大幅な割引をしてもらえるように感じてしまうでしょう。
しかし、訪問販売業者が用意した、大幅に値引きされたモニター料金は、何らかの落とし穴が待ち受けていることが多いため、即決するのは禁物です。
よく調べずに訪問販売業者の料金で施工した結果、
- 「他の業者の通常料金と変わらなかった」
- 「安くなっていたのは一部の工程だけで、他の工程に割増されていた」
- 「大切な工程を、値引きの分省かれて施工不良を起こしてしまった」
といった被害に遭ってしまった例もあるので注意が必要です。
●優良業者のモニター料金を利用しよう
同じモニター料金でも、優良業者が用意したものは、決して手抜き工事などは行われません。
優良業者の場合、大幅な値引きをすると工事の質が下がってしまうことを理解していますので、モニター分の値引きが行われたとしても、ほんの数万円程度です。
しかし、手抜き工事のリスクが潜む、訪問販売の大幅値引きよりは信頼性がありますし、モニターと言っても、施工写真やお客様の声を、最新施工事例としてホームページに掲載される程度ですので、こちらは十分利用する価値のあるキャンペーンと言えるでしょう。
参考:外壁塗装の訪問販売業者の営業トークに絶対にかからないコツ
■おわりに
外壁塗装は平米単価で計算されることが多く、各工程や、現場の状況によって平米単価は変動します。
また、㎡単価は業者によっても設定価格が異なりますので、複数社から見積を取り、適切な平米単価や計算方法で見積もりが作られているかを比較することが大切です。
このように見積もりの平米単価を調べていくうちに、塗装工事に必要な工程がきちんと準備されているかチェックすることもできますので、そういった意味でも、各工程の平米単価を分析する意味は大いにあります。
悪徳業者の誘いに乗らないように、一括見積もりなど、いくつかの業者へ同時に見積もりを依頼できるサービスを活用して、じっくり検討する時間を設けましょう。