(本記事は2017/2/13に更新されました)
木造住宅のリフォームで外壁塗装というと家の印象を変えたいとか、色が褪せてきたからなどという理由で行うという感じがしますが、実は適切な外壁塗装を行うことは快適な住環境を保つため、さらには家の耐久性を増すためにも大変重要な工事となります。
さらに、外壁塗装による住宅の改修工事を行うことは、建物の劣化を防ぎ美観を保つことにも繋がり、住宅の資産としての価値も下がりにくくなります。
また、木造住宅の塗装塗替えでは、外壁部分だけの塗り替えだけではなく、屋根、窓枠、ベランダやバルコニーなどの鉄部、軒天や庇などの木部の塗装も同時に行うことが普通です。
外壁塗装を行う際には、作業を行うための足場を家の周りに設置することになりますが、工事費用の中でも足場に関する費用は大きな割合になります。
外壁塗装を行なった後に、別の部分を塗装するために足場をかけるとその分費用がかさんでしまいます。
また、外壁塗装をする際は、事前に専門家が劣化状態を念入りに調査しますので、外壁だけでなく、鉄部や木部など住宅全体の劣化状態も把握し、適切な改修工事を行うことは、コスト面だけでなく住宅を長持ちをさせるためにも必要なことです。
目次
木造住宅の外壁塗装について
1.外壁下地材の種類と劣化の目安
戸建て住宅などの木造住宅の外壁には、さまざまな素材が使われますが、最近の家ではモルタル壁やサイディング壁が広く使われています。
このような外壁下地材は、10年程度で塗装を塗り替えるのが一般的です。
塗装塗替えの時期は、使用している塗料や環境によっても変わってきますが、自分で外壁のチェックをしてみて、次のような症状が見えるようであれば、塗替えの検討をしたほうがいいでしょう。
2.外壁塗装の劣化チェック
外壁の劣化は、さまざまな症状としてあらわれてきます。
自分自身でもチェックできることもありますので、まずは、ご自身の目で確認して見てはいかがでしょうか?
*変色、退色
紫外線の影響により塗膜の表面が劣化することにより発生する現象です。
*チョーキング(白亜化)
外壁を触ると手にチョークのような粉がつく現象をチョーキング(白亜化)と言います。
紫外線や雨の影響で塗料が劣化し粉状になってしまう現象です。
*藻やカビの繁殖、汚れの付着
外壁の劣化により、塗装の表面に水分がつきやすくなり、藻やカビが発生しやすくなったり、汚れが付着しやすくなったりします。
日射が当たりにくい場所で起こりやすい現象です。
*ひび割れ(クラック)
塗膜の経年劣化が主な原因である細いひび割れや下地自体の割れが主な原因である大きなひび割れがあります。
下地からひび割れが発生している場合、雨水が内部に浸入してしまい、建物の内部の劣化を進行させてしまうことになってしまいますので、注意が必要です。
*塗膜のはがれ
塗膜の劣化により、付着力が低下してしまうことが主な原因です。
塗装が剥がれてしまうと、下地の保護機能が失われてしまい、下地の劣化を進行させてしまいます。
3 塗装作業の流れ
実際の塗装作業においては、まず外壁の状態を詳しくチェックし、ひび割れやコーキングなどの防水性に関わる部分の補修を行います。
また、壁面に付着した汚れやカビなどを高圧洗浄機などを使ってきれいに除去していきます。
汚れなどが残ったまま下塗り、中塗りとローラー刷毛などを使った塗装作業を進めてしまうと、下地に塗装がうまく付着しない部分が発生し、剥がれや膨れなどの原因となってしまいます。
塗装は、さまざまな役割を持った樹脂層である塗料を正しい方法で塗り重ねていくことで本体の性能が発揮されるので、このような塗装作業を行う前の処理が重要な工程となるわけです。
外壁塗装で使う塗料について
1 外壁塗装で使う塗料の種類
外壁塗装用の塗料は、仕上げ塗料として外壁に着色をし、さらに美観を与えるという役割を持っており、さまざまな種類ものが塗料メーカーから発売されています。
また、最近では機能性を持った塗料の開発も進んでいて、選択の幅も広がっています。
機能だけでなくコストの違いもありますので、塗装業者の方と納得いくまで相談していきましょう。
外壁塗装で使用される塗料は、溶剤(油性・シンナー系)塗料と水性塗料の2種類に分けられ、さらにそれぞれの塗料は1液タイプと2液タイプの2つに分けられます。
塗料の主成分にはアクリル、ウレタン、シリコンなどのグレードがありますが、同じシリコン塗料でも2液油性シリコン塗料とか1液水性シリコン塗料のように溶剤の種類や使い方によって呼び方が変わってくるというわけです。
1液タイプの塗料は、塗料缶をあけるとそのまま塗装をすることができる塗料で、2液タイプは、主剤と硬化剤の二つの材料に分かれていて、それぞれの材料を混ぜ合わせることで、初めて塗装をすることができます。
塗装する対象によっても変わってきますが、一般的には溶剤2液型タイプの塗料は耐久性・密着性に優れていて仕上がりもよいとされています。
しかし、2液型の塗料を使うためには、主材と硬化剤を混ぜる手間もかかる上、混ぜた後は使い切らなければならず、技術的にも難しく人件費もかさんでしまいます。
このため塗料缶をあけるとすぐに使える1液型の塗料を採用する業者も増えてきているようです。
また、最近では環境保護の観点から、油性塗料ではなく水性塗料を選択する場合も増えてきています。
塗料メーカーも新しい塗料をどんどん開発していますので、予算や仕上がり具合などを総合的に判断して、使用する塗料を決めていくことが重要です。
2 主成分の違いによる塗料別の特徴
*アクリル樹脂塗料
主な成分としてアクリル樹脂を用いた塗料です。
相場価格が30坪で約60万円と安価ですが、耐用年数が5から7年と短く、紫外線や湿気への耐久性も弱いために最近では外壁塗装用の塗料としてはほとんど使われません。
*ウレタン塗料
主な成分としてウレタン系樹脂を用いた塗料です。
30坪の相場価格が約72万円とアクリル塗料と比べると高価になりますが、紫外線にも強く密着性も高く耐用年数も10年ほどでコストパフォーマンスが良いので、少し前まで外壁塗装用の塗料としてよく使われてきました。
しかし、最近ではより良い性能を持つシリコン系の塗料の値段が下がってきたために、使用する場面が少なくなってきています。
*シリコン塗料
アクリル系塗料の一種でもあるシリコン樹脂塗料は、近年最も使われている外壁塗装用の塗料です。
30坪の相場価格は約87万円となりますが、耐用年数がアクリル系塗料やウレタン系塗料と比較して12〜15年と長いため、外壁塗装用の塗料として主流となっています。
戸建住宅の塗装の場合、溶剤のニオイを避けるために耐久性の高い油性の2液シリコン塗料ではなく水性シリコン樹脂塗料を使うことも多いのですが、1液水性シリコン塗料であれば、ウレタン塗料以上の耐久性を持っているので、このような場合にもおすすめです。
*フッ素塗料
フッ素樹脂塗料は飛行機の塗装にも使われることのある、大変に耐久性のある塗料です。
30坪の相場価格も約110万円と他の塗料と比べて大変効果になりますが、15から20年という耐用年数の長さを考えるとトータルコストとしては有利となることもあります。
しかし、耐用年数は塗装業者の施工技術にも左右されてしまいますので、フッ素塗料の塗装に実績ある業者を選ぶようにしましょう。
*ラジカル制御型ハイブリッド塗料
ラジカル制御型ハイブリッド塗料は、水性塗料でありながらシリコン塗料よりも耐久年数が長く、フッ素塗料よりも価格が安いという新しい塗料です。
これまでの塗料では紫外線の影響により劣化が発生してしまいますが、この劣化の原因となる成分を科学的に制御することで塗膜の寿命を延ばす効果があります。
*光触媒塗料
光触媒塗料は、機能性塗料と呼ばれる特殊な塗料で、太陽光が当たると壁面に付着した汚れを分解し、雨が降ったときに洗い流してしまうという機能を持っています。
自然の力を利用して、外壁の汚れを落とすという機能は大変に魅力的ですが、一般的な外壁塗装の1.5倍ほどの施工価格となってしまいます。
また、光触媒塗料の塗装は大変に難しいため、経験を持った塗装業者でないと施工をすることができません。
塗装を依頼する場合には、過去の実績も確認しておくようにするといいでしょう。
*その他の塗料
これらの塗料の他にも、モルタル壁にひび割れが発生している場合に使う塗料として、2液型のシリコン塗料やフッ素塗料に硬化剤を入れることで弾性機能を持たせた弾性塗料というものもあります。
塗膜が伸び縮みするのでひび割れの再発を防ぐことができるというメリットがありますが、サイディング壁では、塗膜が熱により膨れてしまうことがあるため普通は使用しません。
さらに、最近注目されている塗料として、外部の熱を室内に伝えないような効果がある断熱塗料もありますが、一般的な塗料と比較して面積あたりの塗料の価格も高価で、施工にも手間と時間もかかるため施工費用も高くなってしまいます。
外壁だけでなく付帯部分の塗装も必要
外壁塗装を行う場合、単に外壁だけを業者に依頼するということはほとんどありません。
窓枠や軒天、庇などの木部やベランダやバルコニーなどの鉄部も同時に塗装していくことになります。
外壁塗装ではどうしても外壁に使用する塗料のほうに目がいってしまいがちですが、木部や鉄部も外壁と同様に劣化していきますので、家を長持ちさせるという意味でもこれらの付帯部分への塗装は重要ですし、同時に作業を行うことで足場工事代の節約にもつながっていきます。
素材ごとに塗料を選ぶことが必要
付帯部分の塗装は、素材の違いや場所などによって、それぞれの目的にあった専用塗料を使って塗装していきます。
1.木部の塗装について
軒天や庇などの木部の塗装は、外壁や鉄部と異なり木材の持つ調湿機能による伸縮性や、木目を生かしたデザイン性を考慮して塗料を選んでいく行う必要があります。
そのため、調湿機能を妨げないような浸透型塗料や木目を生かすことができるクリアー塗装など、木材の機能を活かしたり、デザイン性を活かしたりする塗料を使って塗装を仕上げていきます。
外壁塗装や屋根塗装では、下塗り、中塗り、上塗りというように素材を塗膜で覆うように何回も塗料を塗り重ねていきますが、木部にこのような塗装を行ってしまうと木材が持つ調湿機能を妨げてしまうことになってしまい、木が湿気を吸ったり吐いたりする機能を妨げてしまうため浸透性塗料と呼ばれる塗料を使うことがあります。
浸透性塗料は塗膜を作らずに内部に浸透していくことで着色していきますので、木の質感や機能性は残りますが、塗膜を作るタイプの塗料と比べると耐水性や耐久性は劣るので、塗装後のこまめなメンテナンスも必要です。
塗膜を作るタイプの木部用塗料を使うこともできますが、表面に塗膜を作ることで下地材を保護するので、木材が持つ質感や調湿機能は失われてしまいます。
しかし、塗膜で保護されるため耐水性や耐久性には優れていますので、用途やデザインなどに応じて選択していくようにしましょう。
ウレタン樹脂塗料が耐久性にも優れていて最も使われています。
透明のクリアー仕上げや木目を活かしたまま着色できる着色仕上げなど、さまざまな仕上げ方法を選ぶこともできます。
このような塗膜を作るタイプの塗料は、浸透性塗料と比較すると耐久性は長いのですが、木材の伸縮により、塗膜にひび割れや剥離が起こることがあります。
このような劣化を防ぐためにも塗装前の下地処理が大変重要な作業となります。
2.鉄部の塗装について
最近の住宅では、雨戸やベランダはアルミが主に使われていますが、古いものでは屋根や雨戸、ベランダ、フェンスなどに鉄が使用されています。
鉄部は腐食が進みやすく劣化しやすいので、塗装などの定期的なメンテナンスが必要です。
鉄部には、まずは鉄部専用のエポキシ系錆止め塗料で下塗りをします。
エポキシ系塗料は、防食性、接着性に優れたエポキシ樹脂を主な成分とした塗料で、鉄などの錆びやすい場所での塗装に使われます。
鉄部の塗装では、下地調整が大変重要です。
サンドペーパーやワイヤーブラシ、サンダーなどを使い、鉄部に付着した錆を綺麗に落とすケレンという作業を行なってから錆止め塗料による下塗りを行っていきます。
また、ケレンによって鉄部の表面に傷がつき塗装の密着力が高まるため、鉄部に錆が発生していなくてもこの作業は行います。
下塗りに使う錆止め塗料は、下地への密着力や錆を抑える効果はありますが紫外線には大変弱いため、下塗り塗料を塗った後、保護のために中塗り、上塗りと鉄部用の塗料を塗っていきます。
外壁では水性の塗料が使われることも最近では増えてきていますが、屋根やバルコニーなどの外部の鉄部には耐久性を考慮して溶剤系の2液型鉄部さび止め塗料が使われることが多いようです。
鉄部の塗装は、美観を良くすることだけが目的ではありません。
鉄は腐食が進んでいくとボロボロになってしまい、見た目はもちろんのこと、安全性の面でも問題が起こる可能性があります。
鉄部の塗装は、塗膜を作ることで素材である鉄を保護します。
見た目ではなく、寿命を延ばすことにもつながっていくわけです。
木造住宅の塗装まとめ
木造住宅の外壁塗装は、単に外観を良くするだけでなく、住宅全体を守るためにも必要なことです。
年数が経つにつれて、外壁は劣化していきますが、そのまま放置してしまうと塗装面だけでなく下地素材の劣化にも繋がり、結果的に家全体を傷めてしまうことにもなりかねません。
また、外壁だけでなく付帯部分の塗装も家を長持ちさせるためには重要です。
日頃から家の周りの様子を観察しつつ、定期的なメンテナンスを行っていくようにしていくことが大切です。