モルタル外壁の特徴と塗装を行うときのポイント

モルタルの外壁を塗装するときは、塗装の一般的な工程だけでなく、モルタルに合った塗料や工法を知っておくことで、見積書の内容や業者とのやり取りがスムーズになります。

 

特に、モルタルはひび割れが起きやすい素材ですので、ひび割れに強い塗料や、ひび割れの補修方法なども知っておくと、リフォームの時に「予想より費用が高くなってしまった」「知らない用語が見積もりに書かれていて不安」という出来事にも対処することができるでしょう。

 

今回は、モルタル外壁の種類や特徴と併せて、塗装のポイントや注意点をご紹介します。

■モルタル外壁の特徴

モルタルは、古くから住宅の外壁として使われてきた素材です。

防水シートが張られたラス板の上に金網を固定し、それを土台にして、セメントと砂を混ぜたペースト状のモルタルを塗って外壁にします。

 

モルタルは、外壁材として使われることもあれば、レンガやタイルの接着剤や目地材として使われることもあり、建築では非常に使用頻度が高い資材です。

 

見た目や使い方が似た建築資材に、コンクリートがあります。

コンクリートとモルタルは、作る時の材料に違いがあります。

モルタルを作る時に混ぜる砂のことを「骨材」と呼びますが、コンクリートの骨材には「砂利」も加わります。

この砂利が加わることで強度が増すため、コンクリートはセメントよりも高い強度を発揮することができます。

 

1.モルタル外壁の種類

ペースト状のモルタルは、様々な形で仕上げることができます。

仕上げ方によって耐久性や価格なども異なりますので、それぞれの種類や特徴を把握しておきましょう。

参考:外壁塗装における仕上げの種類

●リシン仕上げ

リシン仕上げは、モルタル外壁の中でも非常にオーソドックスな仕上げ方です。

リシン吹き付けともよばれ、セメントに小さな砂利や砂、さらに樹脂を含む塗料を混ぜたものを、スプレーガンで吹き付けて、ざらざらした表面を作ります。

あえて表面をブラシや尖った部材で引っ掻いて粗く仕上げる「リシン掻き落とし仕上げ」なども選ぶことができます。

 

リシン仕上げは比較的ローコストですが、凹凸の隙間にコケなどの汚れが溜まりやすく、ひび割れが起きやすいというデメリットがあります。

そのため、リシン仕上げではクラックを防ぐために、衝撃に対して柔軟に動いて割れを防ぐ「弾性リシン」が使われることがあります。

●スタッコ仕上げ

スタッコ吹き付けとも呼ばれ、セメント、合成樹脂、骨材を混ぜて、専用のスプレーガンで吹き付けたり、コテやローラーなどで塗ったりして作ります。

リシン仕上げ同様に、弾力性のある「弾性スタッコ」も登場しています。

 

表面を加工せずに仕上げたスタッコは「吹き放し仕上げ」と呼ばれ、乾かないうちにローラーで表面を押さえて加工する仕上げ方は、「ヘッドカット」または「ヘッド押さえ」などと呼ばれています。

 

スタッコ仕上げの外壁は厚みがあるため、重厚感のある立派な外観デザインになります。

しかし、リシン仕上げよりも凹凸の大小が激しいため、汚れが入り込むと除去しにくいというデメリットもあります。

また、スタッコの凹凸が塗料の乾燥を阻害し、塗膜の強度にムラが生じる恐れがあります。

そのため、スタッコ外壁の塗り替えでは、シーラーと呼ばれる下地材で凹凸をしっかり保護することが推奨されています。

 

ちなみに、語源の「スタッコ(stucco)」は本来、「しっくい」を意味する言葉ですが、現在はモルタルで作る外壁を指す言葉として定着しました。

●吹き付けタイル仕上げ

「吹き付けタイル」とは、1枚ずつ組み合わせる磁器タイルのことではなく、タイルガンという機械で作る、ランダムな模様を持つモルタル外壁を意味します。

「ボンタイル仕上げ」または「複層模様吹き付け」と呼ばれることもあります。

 

リシンやスタッコよりも不規則な凹凸を作ることができ、凹凸の調整は、吹き付けガンの口径で調節することができます。

表面を押さて凸部を少し平らにする「凸部処理仕上げ」が行われることもあります。

 

吹き付けタイル仕上げでは合成樹脂が加わるため、つるつるとした陶磁器のような見た目になるため、水を弾きやすい外壁表面となります。

さらに、「弾性タイル仕上げ」を選ぶことによって、ひび割れにも強く、防水性も備えた外壁を手に入れることができます。

 

●パターンローラー仕上げ

凹凸が付いたローラーで、モルタル表面に模様を作る仕上げ方です。

 

選んだローラーの凹凸によって好きなパターンを作ることができ、渦巻き状や格子状といった定番の模様から、粗く不規則な手作業風の線、そのほか、花柄、蝶などといった特殊な模様のローラーも販売されています。

 

厚みのある弾性塗材を使って「弾性ローラー仕上げ」を行うこともできますが、弾性塗料の粘り気に対応するために、弾性用の厚みのあるローラーを使用しなければなりません。

●左官仕上げ

左官職人が、コテやくしなどを巧みに使って外壁表面に模様を作ります。

 

四角いコテの角を使って作る「スパニッシュ仕上げ」や、味のある縞模様を櫛で引っ掻いて作る「クシベラ仕上げ」、コテを車のワイパーのように動かして作る「扇仕上げ」などが有名です。

 

左官職人の腕によって出来栄えが左右されるため、職人の施工事例を、写真などであらかじめ確認しておく必要があります。

 

2.モルタル外壁のメリット・デメリット

モルタルは、比較的ローコストで施工できることから、住宅の外壁材として非常に重宝されてきた素材です。

しかし、サイディングボードなどの新しい外壁材が登場するにつれ、徐々にモルタルのデメリット面も目立つようになりました。

 

メリット面だけでなく、デメリット面も知っておくことで、再塗装の時の不安を和らげることができるでしょう。

 

●メリット

窯業系・金属系サイディングボードやガルバリウム鋼板は、工場から出荷される時は、パターンや色が既に完成されているため、既存のパターンからデザインを選ばなければなりません。

参考:サイディングボードのメンテナンス、ひび割れ等の補修方法

一方、現場で職人の手によって作られるモルタル外壁は、デザインを自由に選ぶことができ、手作りの風味も生まれるため、まさにこの世にひとつだけの外壁となります。

 

また、表面を好みにアレンジできるだけでなく、複雑な形状の壁にも比較的自由に施工できる点も、モルタル外壁の大きなメリットです。

サイディングボードやガルバリウム鋼板、タイル材などは、目地の形状が複雑になると、その形に部材を加工する工事費用が発生し、工事期間も長くなってしまいます。

しかし、ペースト状のモルタルであれば、どのような形状の外壁にも、比較的自在に施工することができます。

 

●デメリット

モルタル外壁の最大のデメリットは、ひび割れが起きやすい点です。

 

ひび割れの主な原因は、紫外線のダメージや水分の浸水などですが、そのほかにも、地震や強風、地盤の劣化による建物の揺れや歪みなども、深刻なひび割れの原因になることがあります。

 

また、モルタル外壁は吸水性が高く内部で水分の移動が起きやすい素材です。

そのため、雨水や湿気を吸水しやすく、この欠点が、ひび割れやモルタルの強度劣化などに繋がることがあります。

■モルタル外壁の劣化症状

モルタルだけでなく、どのような外壁材でも、約5~10年に一度はメンテナンスや再塗装のタイミングが訪れます。

 

塗替えを適切なタイミングで行うためにも、モルタル外壁の代表的な劣化症状の例を知っておきましょう。

 

1.クラック

 

クラックとは、ひび割れのことです。

クラックの種類によって、再塗装の必要性や補修方法の内容が異なりますので、それぞれの種類や原因、処理方法の違いを区別しておく必要があります。

 

●ヘア―クラック

ヘア―クラックとは、モルタルの水分が乾燥した時の収縮によって生じる、0.0.5~0.3mm未満の浅いひび割れのことです。

施工からある程度の年数が経過しているモルタル外壁では、比較的多く見られる症状です。

 

モルタル外壁は、約0.7mmの厚みがありますので、0.3未満のヘア―クラックが発生していても、すぐに外壁の構造材まで害を及ぼすことはありません。

しかし、外壁全体に多くのヘア―クラックが同時に起きているような場合は、徐々にひび割れが進行する恐れがあるため、経過観察が必要です。

 

ヘア―クラックは、特別な補修材を使わなくても、通常の塗装だけでほとんどカバーすることができます。

 

●構造クラック

構造クラックとはその名の通り、外壁や建物の構造部分まで届いている、0.4mm以上の深いひび割れのことです。

 

塗膜を通り過ぎて、モルタル内部の防水シートまでひび割れが達している恐れがあるため、雨水が浸水すると、モルタルそのものや、モルタル下地のラス金網の腐食の原因となったり、クラックからシロアリなど湿気を好む害虫が侵入したりして、外壁の強度を大きく落とす可能性があります。

 

構造クラックが起きているモルタル外壁は、ひび割れの部分をV字に削り、シーリング材を充填したあと、追従性の高い弾性塗料で保護するリフォームが行われます。

 

2.エフロレッセンス

エフロレッセンスは「白華(はっか)」とも呼ばれます。

モルタル外壁の表面に白い粉が付着する現象のことですが、モルタルの強度が落ちているわけではなく、表面を洗浄することですぐに目立たなくなります。

 

モルタルには水酸化カルシウムが含まれていますが、内部に浸水した雨水と反応することによって、水酸化カルシウムが雨水と一緒にモルタルの表面に溶け出すようになります。

すると、水酸化ナトリウムを含む水分が、空気中の炭酸ガスと結合して炭酸カルシウムとなり、外壁表面に白い粉となって付着するようになります。

 

エフロレッセンスは、空気が乾燥していて、高温で水分が蒸発しやすい夏場はあまり発生しませんが、気温が低い冬場や、雨が多く湿度が高い梅雨などに発生しやすくなります。

 

3.モルタルの浮き・剥がれ

モルタル内部に浸水した水分や、外部からの強い衝撃、構造クラックの放置などが原因で、モルタルが付着力を失い、ぷかぷかと浮き上がってしまうことがあります。

 

浮いてしまったモルタルは、ピンを打ち込んで下地材と固定し、エポキシ樹脂などの接着剤を注入して補修するピンニング工法などが行われます。

 

また、浮き上がったモルタルが剥がれてしまうと、見た目が悪くなるだけでなく、外壁も保護することができなくなり、落下によってケガや事故を招くなど、様々な症状を引き起こす恐れがあります。

 

完全に剥がれてしまったモルタルは、下地のラス金網や防水シートも腐食していることが多く、下地の補修も再塗装とセットで行われることがあります。

ほとんどの場合、外壁にしっかり付着しているモルタルはそのまま残すことができるため、モルタルが剥がれた箇所の補修のみで工事は完了しますが、この時に全体のひび割れなども漏れなく点検しておかなければ、浮きが再発してしまう恐れがあります。

 

4.カビやコケ

湿度が極端に高い位置にあるモルタル外壁は、カビやコケが生えることがあります。

カビやコケは、すぐに耐久性に害を及ぼすことはありませんが、どんなに新築の家でも美観が一気に落ちてしまい、衛生的にもあまりよい状態ではありません

 

5.塗料の劣化

以下は、モルタル自体の劣化ではなく、モルタルを保護している塗料が劣化した時の症状です。

 

●チョーキング

チョーキングとは、「白亜化」とも呼ばれ、手で触れると、チョークのような白い粉が付着する現象のことです。

 

塗料は、紫外線のダメージによって徐々に耐久性を失っていきます。

耐久性を失った塗料は、顔料が白い粉となって表面に浮き出るようになります。

 

つまり、外壁でチョーキングが起きているということは、塗料が耐久力を失っており、外壁が守られていないことを意味しているため、早めに再塗装をしなければなりません。

参考:外壁塗装のチョーキング現象が起こる原因と対策

●塗膜剥離

ひび割れや目地シーリング材の隙間から浸水した水分によって、モルタルと塗料の付着力が落ちることがあります。

付着力が落ちた塗膜は、外壁表面から剥がれて、ぼろぼろとめくれてしまうことがあります。

参考:外壁塗装が剥がれる原因と補修方法

●塗膜の膨れ

モルタル内部に溜まった湿気により、塗膜が気泡のように膨れ上がることがあります。

主に、施工不良が原因で起こりやすく、塗装前の下地調整不足や、高圧洗浄後の乾燥不足、誤った下塗材の使用や、塗料の希釈率間違いなどが考えられます。

 

■モルタル外壁塗装のフロー

モルタル外壁の塗装では、サイディングボードやガルバリウム鋼板とは異なる処理が発生します。

 

基本的な流れや使用する塗料は、サイディングボードやガルバリウム鋼板と共通していますが、モルタルに適した工法や塗料が存在することを押さえておきましょう。

 

足場の設置や養生などはサイディングボード等と大きな違いはありませんが、高圧洗浄から下地処理、塗装の工程の中で、モルタルに適した作業が発生します。

 

1.高圧洗浄

モルタル外壁の表面にある汚れや、古い塗膜、鉄部のサビなどを、業務用の高圧洗浄機で一気に洗い流します。

非常に威力が高い水圧がモルタル表面にかかるため、経年劣化が激しく、浮きや剥がれが生じているモルタルは、この高圧洗浄で剥がれ落ちることがあります。

 

なお、高圧洗浄の後は、表面の水分を乾燥させるために約1~3日の乾燥時間を挟みます。

参考:高圧洗浄で知らないと損な作業時間、圧力、単価、水道代の話

2.下地処理

紙ヤスリやナイロンタワシ、電動工具などを使って、鉄部のサビや古い塗膜など、高圧洗浄で落ちなかった汚れを手作業で落とします。

この工程は、「ケレン作業」または「素地調整」と見積もりに記載されています。

参考:外壁塗装はケレン作業が命!ケレンの大切さや作業内容

この下地調整作業によって、モルタルの表面と塗料の密着性を高めていきます。

 

また、下地調整では、モルタル表面に生じているクラック補修も併せて行われます。

クラック部分に沿ってV字にカットしてコーキングを打ち、フィラーと呼ばれる下地材で表面をカバーし、仕上げ塗り材がしっかり付着できるようにします。

3.塗装

下地補修が済んだあとは、塗装に入っていきます。

塗装は全部で3回行われますので、塗装だけでも約3~6日の施工期間となります。

参考:外壁塗装は三度塗りが基本!手抜き工事を防ぐためには?

 

まずは、外壁の表面に「下塗り」を行います。

下塗り塗料は上塗り塗料と外壁下地の接着剤のような存在です。

そのため、モルタル、木部、鉄部それぞれに適した下塗り塗料を選んでおかなければ、どれだけ優れた塗料メーカーの一流の塗料を仕上げ材に使っても、塗膜の耐久性が一気に落ちてしまいます。

 

表面にクラックが生じやすいモルタル外壁の下塗りでは、微弾性フィラーや弾性シーラーなどが多く使われます。

微弾性フィラーは厚い塗膜を作るため、クラックをカバーする力がありますが、上塗材との密着性を高めるために、弾性シーラーが選ばれることもあります。

参考:ゴムの性質でクラックを防止する複層、単層、微弾性塗料とは

 

下塗りの工程が終わったあとは、すぐに次の工程には進みません。

施工不良を防ぐために、約1日の下塗り材の乾燥期間が設けられます。

 

下塗り塗料が乾燥したら、「中塗り」の作業に入ります。

中塗りでは、その次に行う「上塗り」と同じ塗料が使われます。

参考:下塗り、中塗り、上塗りなどの塗りの役割は?

■モルタル外壁に適した塗料とは?

外壁材には、それぞれ適した塗料や工程が存在します。

例えば、意匠性が高いサイディング材や、そのままの風合いが魅力を持つタイル材などは、透明なクリヤー塗料で素地を塗りつぶさないように仕上げることができます。

 

同じようにモルタルにも、適した塗料や工法があります。

 

1.塗料の分類

はじめに知っておかなければならないのが、塗料には、「樹脂の違い」「希釈液の違い」「1液形・2液形の違い」という3段階の分類が存在するということです。

参考:外壁塗装用塗料の様々な種類

 

●樹脂の違い

まず大きな分類に、「樹脂の違い」があります。

塗料には、アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、フッ素系塗料の4種類が存在し、これらそれぞれがさらに希釈液の違いで分かれ、またさらに、1液形・2液形の違いで分かれます。

 

上記4種類のうち、最も耐久性が低い塗料はアクリル樹脂塗料で、住宅の外壁塗装ではあまり使われなくなっています。

参考:アクリル塗料が使われない理由とシリコン、ウレタンとの比較

 

また、最高位グレードのフッ素塗料には、「光触媒塗料」と呼ばれる、汚れをセルフクリーニングするタイプなどがあり、塗料そのものも高い耐久性を発揮しますが、強固な塗膜を作ることが、かえってデメリットになることもあります。

参考:光触媒塗料の価格相場、メリット・デメリット

 

特に、ひび割れが起きやすいモルタル外壁では、フッ素樹脂塗料は塗膜が割れやすくなってしまいます。

参考:フッ素塗料の価格相場やメリット、デメリットを確認しよう

 

ほとんどの住宅の外壁塗装で使われるのは、シリコン樹脂塗料です。

シリコン樹脂塗料は「アクリルシリコン樹脂塗料」と記載されることもありますが、アクリル樹脂塗料の耐久性の低さはなく、アクリル樹脂とシリコン樹脂が反応することで、より高い耐久性を備えた塗料となっています。

また、フッ素樹脂塗料が適さない塗面へ塗装する時に使われることもあります。

参考:外壁塗装で使うのはシリコン塗料ウレタン塗料どちらが良い?

 

●希釈液の違い

次に、それぞれの塗料を薄める「希釈液の違い」ですが、塗料は「水性塗料」「油性塗料」のどちらに該当するかで、使用する希釈液が異なります。

外壁塗装用の塗料は、液体で薄めて塗りやすい状態にしなければなりません。

希釈液は塗装後、乾燥によって蒸発するため、外壁に残るのは純粋な塗料のみとなります。

参考:水性・油性、1・2液型、ツヤ等の塗料タイプは何が良い?

 

水性塗料は、水道水で薄めることができる塗料です。

作業時に強いシンナー臭がなく、カンタンな換気で気にならない程度の臭いです。

人体や環境にも害が少ないことから、水性シリコン塗料や、水性アクリルシリコン樹脂塗料などが多く使用されています。

 

油性塗料は、溶剤と弱溶剤の2つに分かれており、どちらもシンナーを希釈液とします。

ただし、弱溶剤のシンナーは、臭いや人体への害が少ない仕様になっており、シンナーと呼ばず「ペイント薄め液」と呼ばれることもあります。

 

溶剤のシンナーは強い刺激臭を伴うため、現在は外壁塗装ではあまり使われなくなりました。

 

●1液形・2液形の違い

1液形とは、単独で塗装が行える塗料のことで、2液形とは、2種類の塗料を組み合わせた時にはじめて使用可能となる塗料のことです。

 

2液形は、2種の塗料を混ぜなければならず、さらに1度混ぜてしまうとその場で使い切らなければならないため、非常に手間がかかりますが、強度の高い塗膜を作ることができるため、1液形に比べると長持ちします。

参考:塗料における1液型と2液型の違いとメリット、デメリット

 

2.弾性塗料と工法

「弾性塗料」とは、ゴムのような弾力性があり、ひび割れが生じそうになった時に伸びて割れを防ぐ力を持った塗料のことで、ひび割れが起きやすいモルタルに、非常に適した塗料です。

弾力性がやや弱い「微弾性塗料」もあります。

 

なお、サイディングボードは熱を溜め込みやすいため、ゴムのような弾性塗料は高温で変形してしまい、塗膜の膨れや破れなどを引き起こしますので、塗装はおすすめできません。

 

モルタル外壁で弾性塗料を塗る時は、3種類の工法を選ぶことができます。

参考:ゴムの性質でクラックを防止する複層、単層、微弾性塗料とは

 

●単層弾性工法

シーラーを下塗り材にして、その上に単層弾性塗料を2回塗って仕上げる工法です。

基本的な塗料の塗り方と同じ工程で仕上げます。

 

単層弾性工法で仕上げた場合、通常の塗装と工程がほぼ変わらないため、あまり高い効果を得ることができません。

また、ほとんどの塗料メーカーの弾性塗料は、アクリル樹脂かシリコン樹脂しか取り扱いがないため、耐用年数は約3~5年と低くなる傾向にあります。

そのため、ひび割れが特に著しいモルタル外壁では、せっかくの塗装が無駄になってしまう可能性があります。

 

●複層弾性工法

シーラーを1回塗る所までは単層弾性工法と同じですが、その後、中塗りと上塗りをそれぞれ2回ずつ行うことで、複層の塗膜を作ることができます。

 

厚い複層仕上げ塗り塗料で、しっかりモルタルの外壁面をカバーすることができるため、ひび割れに非常に強く、複層型アクリルシリコン樹脂弾性塗料などを使用することで防水性も高めることができるため、単層弾性工法の約2倍から4倍長持ちさせることができます。

 

ただし、工程が長くなり、使用する複層塗材の量も増えるため、施工費用も高額になることに注意しましょう。

 

●微弾性塗料工法

下地材に「微弾性フィラー」と呼ばれる微弾性塗料を使い、その上に、弾性の上塗り材を2回塗る工法です。

単層工法・複層工法と違って、下地材に弾性系塗料が使われるため、モルタル外壁表面のひび割れに強い効果を発揮します。

 

ただし、複層弾性塗料のように厚い塗膜を作ることはできませんので、耐用年数は仕上げに使う上塗り塗料のグレードに左右されます。

 

■まとめ

職人の手によって作り上げるモルタル外壁は、サイディングボードやガルバリウム鋼板では生み出せない、味わい豊かな意匠性を持っています。

 

しかし、劣化や塗装時の注意点も、他の外壁材にはないものがあるため、外壁塗装の際は、必ずモルタル外壁に適した塗料や工法を選ばなければ、その意匠性を長持ちさせることはできません。

 

特に、モルタル外壁の意匠性と耐久性を脅かす「ひび割れ」にしっかり配慮して、適切な工法を提案してくれる外壁塗装業者に依頼するようにしましょう。

 

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