悲しいことに、外壁塗装などのリフォーム工事において、悪徳業者の詐欺や手抜き工事による被害は後を絶ちません。
「そんな手口にひっかかるわけがない」「自分だけは大丈夫」のように、他人事と思ってしまうのは非常に危険です。
優しい態度と魅力的な営業トークで接触してきて、無駄な工事や法外な契約金を要求してくる悪徳業者から、大切な住まいと家族を守るためにも、悪徳業者の手口を知って、騙されないためのテクニックを身につけておきましょう。
目次
■悪徳業者による被害の実態
消費者問題を取り扱う独立行政法人・国民生活センターには、毎年6,500件以上ものリフォーム工事に関する相談が寄せられています。
悪徳業者から身を守るためには、何よりもまず、「自分たちの元に、そのような業者が接触してくる可能性は0ではない」と自覚しておくことが大切です。
万が一そのような業者と出会ってしまったとき、どのような被害が生じるのか、具体的にイメージできるようになっておきましょう。
1.品質を無視した手抜き工事
営利目的の悪徳業者は、お金だけもらってずさんな手抜き工事を行い、外壁や屋根がその後どうなっても、保証してくれません。
そのため、悪徳業者は外壁塗装など工事の専門知識がない者も多く、ひどい例では、住宅の基礎に穴を開けられてしまったり、雨漏りなどの劣化がさらに悪化してしまったりするケースもあります。
●外壁塗装の代表的な手抜き工事
外壁塗装において、よく起こる手抜き工事は、以下の4つです。
- 塗装前の下地処理を怠る
- 塗料の3回の重ね塗りを省く
- 乾燥する前に雑な重ね塗りをして施工不良
- 雨が降って塗料が使えない状態でも工事を強行する
上記の行為はいずれも、塗料の品質を落としてしまう行為ですので、優良業者であれば絶対にやりません。
しかし、下地処理や重ね塗り、乾燥や雨天の待ち時間を省くことができれば、工事を早く終わらせられるため、工事件数を稼ぎたい悪徳業者は、何のためらいもなく手抜き工事を選んでしまうのです。
●下請け業者任せのずさんな現場管理
悪徳業者の多くは、自社に工事スタッフを持ちません。
そのため、別の外壁塗装専門の業者を下請けとして現場に向かわせて、自分たちは現場に赴かず、施工管理もおろそかにしてしまいます。
また、下請け業者を利用すると、別の業者を仲介した分、中間マージンが発生します。
悪徳業者は、中間マージンをわざと高額に設定して、自分たちの懐に入れ、下請け業者への取り分は非常に少額にすることがあります。
そうなると、下請け業者の職人の不満は大きくなり、仕事への意欲も削がれて手抜き工事に繋がってしまい、結果として、悪徳業者以外、誰も満足しない外壁塗装となってしまうのです。
2.施主のせいにして取り立てを続ける
悪徳業者の恐ろしい点は、施主の弱みに付け込んでくる所です。
おかしいと気づいて、工事を中断しようとしても、
- 「契約書にこう書いてありますよね?」
- 「ここまでは無料でやったので、残りの代金は払ってもらわないと法律違反になる」
- 「支払わなければブラックリストに載ってしまいますよ」
など、半ば脅しとも言える言葉を使って、支払いを強行させようとします。
一度でも「施主が了承した」という事実さえ作ることができれば、悪徳業者は、お金が支払われるまで何がなんでも代金の請求をやめません。
悪質な例になると、家まで何度も訪ねてきたり、毎日のように恐喝や無言電話をかけ続けたりする恐ろしい業者もいますので、うかつに契約書に署名・押印することだけは絶対に避けましょう。
●判断不十分者契約の被害だけでも数百件
判断不十分者とは、高齢者や介護が必要な人など、契約に関する判断を行うのが難しい人のことですが、悪徳業者は、卑劣にも、このような人たちさえもターゲットにして大金を巻き上げようとします。
2016年に国民生活センターに寄せられた、リフォームに関する相談件数6,593のうち、判断不十分者契約は281件にも昇ります。
よくある例としては、一人暮らしの高齢者が、悪徳業者と契約をしてしまい、年金暮らしではとても支払えない金額を請求されたケースなどがあります。
自分たちだけでなく、離れて暮らす家族や知人を守るためにも、悪徳業者の実態を、家族・知人全員で共有しておかなければなりません。
3.お金だけ取っていなくなる
外壁塗装で本当に重要なのは、塗装後のアフター保証です。
塗装は、塗料の耐久性が落ちる前に再塗装しなければなりませんので、優良な業者は、施工後も半年や1年、5年後にアフター点検を行い、次の塗装時期を知らせてくれます。
しかし、利益優先の悪徳業者は、契約金さえもらえれば、施工後の品質はお構いなしですので、アフターケアもせず、地域から撤退してしまうことがあります。
●工事前の全額払いは絶対に断る
もし、外壁塗装業者から、工事を行う前に代金の全額支払いを要求されても、絶対に断りましょう。
代金だけもらって、工事をせずに消えてしまう悪徳業者である恐れがあります。
あるいは、契約金を全額先にもらっておきながら、不要な追加工事を勝手に増やし、工事が後に追加料金を請求してくるかもしれません。
優良な業者は、追加工事が発生しても、契約時の見積もりとは別に、追加工事分の見積もりを作って、施主が納得してから追加工事に着手してくれます。
もっとも、腕のよい業者は、追加工事が発生しないように、工事前の事前調査で、劣化箇所や補修が必要な箇所を隅々までチェックしますので、そもそも追加工事自体、発生する頻度は少ないものと考えておきましょう。
■悪徳業者を見分ける3つのポイント
卑劣な悪徳業者の手口にひっかからないためにも、悪徳業者かどうかの見分け方を押さえておくことが大切です。
以下からは、悪徳業者の特徴について、優良業者の正しい振る舞いの例と比較しながらご説明します。
1.急にやってきた訪問業者
外壁塗装だけではなく、リフォーム業界全般において言えることですが、アポイントもなく急にやってきた訪問業者とは、絶対に即決してはいけません。
国民生活センターに寄せられた相談の中でも、訪問販売による被害は突出していますので、悪徳業者に引っかからない第一の方法は、訪問販売業者と接触しないことに尽きると言えるでしょう。
●訪問販売業者は不安を煽ってくる
急にやってきたセールスマンと、単なる雑談をするだけでは契約には至りません。
しかし、以下のような指摘をされたら、どのように感じるでしょうか。
- 「たまたま通りがかったら、外壁がすごく危険な状態だったので、心配で訪問しました」
- 「他の家はとっくに工事を済ませているけど、お宅は工事をしなくて本当に大丈夫ですか?」
- 「この低価格で工事できる枠が、年内はもう残り1件だけです」
このように、訪問販売業者は、不安を煽ることで施主との会話を盛り上げようとします。
「他の家はリフォームに意欲的で、喜んで契約してくれましたよ」など、他人と比較して焦らせて、契約に持っていこうとする点にも注意が必要です。
●優良業者ならこうする
通常、初めて訪れた家を数分見た程度では、壁や屋根の劣化はわかりません。
つまり、急にやってきたセールスマンが、たまたま通りがかっただけで、建物全体の状態を分析できるわけがないのです。
優良業者は施主の悩みをしっかり聞いたあと、時間をかけて建物の診断を行い、必要な工事内容と適切な価格のもとで見積もり書を作ってくれます。
また、例え施主から依頼された工事でも、手を加える必要がなかったり、技術的に不可能だったりするときは、工事品質を優先して、「できない」とはっきり言ってくれますので、いたずらに不安を煽って、無駄な工事を勧めることもありません。
2.過剰な値引きや低価格が売りの業者
キャンペーンや無料といった言葉も、内容をよく調べずに信じてしまうのは危険です。
外壁塗装でよくある例に、「足場代が今なら無料」というものがあります。
20~30万円という高額な足場工事費用を無料にして、契約させようとする手法ですが、見積もりをよく見ると、下地処理や養生など、本来数十万もかからない作業に、無料や値引き分の金額が上乗せされていることがあります。
また、そもそも値引きとして提示された額自体が、外壁塗装業界の価格相場を大きく上回っているというケースもありますので、無料や値引きを提示されたときは、金額が引かれる前の金額をしっかり確認しておきましょう。
●外壁塗装の相場を知っておこう
外壁塗装の費用には、相場というものが存在します。
標準仕様の外壁塗装で、約30坪(100㎡)の戸建て住宅であれば、70~90万円が一回あたりの相場費用です。
フッ素塗料や機能性塗料など、性能が高い塗料を使うと100~120万円になることもあります。
200万円を超えるのは、よっぽど建坪が広い家か、外壁材の劣化があまりにも激しく、補修工事だけで塗装の倍以上かかってしまうような家です。
●優良業者は安易に値引きを行わない
外壁塗装において、提示した見積もり額から、数万円や数十万円の値引きを行おうとすると、塗料や作業のグレードを下げなくてはならず、それはつまり、工事品質が下がることを意味しています。
端数調整で値引きをしてくれる良心的な業者もいますが、数千円や数百円など、工事に支障が出ない範囲です。
また、工事品質を下げずに過剰な値引きを続けていれば、塗料代や人件費、車両費などを回収できず、最悪の場合、業者は事業を続けられなくなってしまいます。
そのため、外壁塗装業者は、地域内で事業を長く続けながら、かつ、多くの人に利用してもらうための適正価格を考えていますので、多くもらい過ぎることも、過剰に値引きすることもないのです。
3.嘘・大げさ・あいまいな表現を多用する
悪徳業者は、大胆な嘘をつくこともあれば、重要な説明をぼかして、大げさ、またはあいまいな表現を使うこともあります。
嘘の例としては、
- 「当社が開発」した「オリジナル塗料」です
- 「永遠に」メンテナンスフリー
- 「キャンペーン価格」のモニターを募集しています
などがありますが、カッコ内の言葉が嘘の部分になります。
オリジナル塗料の開発を、大手塗料メーカーでもない施工会社が行えるはずもなく、永遠に劣化しない塗料なども存在しません。
「キャンペーン価格」についても、無料や値引きと同様に、元の金額がわからない状態では、うかつに信用してはならない言葉です。
また、「一式」「その他」といった、あいまいな表現が見積書や契約書に記載されているときは、必ず計算の根拠を尋ねておきましょう。
塗装面積を実際よりも多く計算されていたり、価格が安い低グレードの塗料を高額にされていたりすることがあります。
●優良業者は客に隠し事をしない
優良業者は嘘をつくことの恐ろしさを知っています。
一度でも「客を騙した」という事実ができてしまえば、営業エリア内で噂が広がり、その後どんなに誠実な仕事をしても、地域内で不信感が消えることはないからです。
万が一、銀行や他の業者にも悪い評判が伝われば、地域内での事業継続に大きなダメージとなるでしょう。
そのため、優良業者は、客から指摘を受けたときはすぐに改めてくれますので、業者との打ち合わせで気になる点があればどんどん質問しましょう。
一方、悪徳業者は、高額なお金さえもらえれば、地域内の評判など気にする必要はないため、平気で嘘をついて、客を騙そうとしてきます。
時には、架空の連絡先を使っていることもありますので、怪しいと感じたときは、業者の住所や電話番号をネットで検索することをおすすめします。
■悪徳業者に騙されないために知っておくこと
以下からは、万が一、悪徳業者と接触してしまったときの対策について解説します。
対策を事前に知って、少しでも不安に感じたり、怪しさを感じたりしたとき、すぐに動けるようにしておきましょう。
1.強気な姿勢で断ること
- 「自分たちのほうが素人だから、工事業者に任せるしかない」
- 「強引に工事を決められたけど、専門家が言うのだから間違いない」
と弱気になって諦めてしまうと、悪徳業者に付け入られてしまいます。
施主の意見を無視したり、強引に工事を進めたりする業者に従う必要はありませんので、不信感を抱いてしまったときは、遠慮なく強気の姿勢で断りましょう。
●警察への通報も視野に入れる
しかし、「断って相手の態度が豹変したら…」と不安に感じてしまうこともあるかもしれません。
万が一、何度断ってもしつこく営業してきたり、脅しや暴力などの行為に及ばれたりしたときは、速やかに最寄りの警察署や自治体へ報告しましょう。
自分の家族を守ると同時に、同じような被害報告が他にもあれば、悪徳業者の早期摘発にも繋がります。
2.第三者に相談すること
悪徳業者の被害は、被害を受けた本人ではなく、知人や家族が不審に感じて発覚することがあります。
「感じのいい営業マンだったから、悪徳業者ではないだろう」と本人は思い込んでいても、第三者であれば、話の違和感や矛盾点に気づきやすくなります。
外壁塗装業者との契約で不信感を抱いたときは、家族や知人だけでなく、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」や、自治体の窓口なども相談相手として選択肢に入れておきましょう。
参考:外壁塗装の相談はどこへするべきなのか?トラブル、見積もり
●優良な外壁塗装業者からアドバイスをもらう
悪徳業者に騙されないためには、専門家の正しいアドバイスを元に、塗装の知識を身につけることが何よりも重要です。
信頼できる業者が見つからないときは、知り合いや近隣の住民など、外壁塗装を実施した経験がある人に、利用した業者を紹介してもらうとよいでしょう。
もちろん、その業者だけで即決してしまわず、自分自身が最も納得できる業者を選ぶために、複数社から見積もりを取る作業も大切です。
3.もしも悪徳業者と契約してしまったら
もし、訪問販売業者と既に契約書にサインをしてしまったときや、工事が始まってしまったときは、クーリングオフ制度を利用できないか、まずは調べましょう。
クーリングオフとは、契約日を含めて8日以内であれば契約を解除できる制度です。
クーリングオフは、施主が自ら業者を訪問して契約したときや、過去1年以内に契約したことのある業者と契約したときは対象外となってしまいますが、訪問販売で契約した外壁塗装は、クーリングオフの対象となります。
●8日過ぎても解約できることがある
契約して8日を過ぎていても、以下の条件に当てはまっていないか確認しましょう。
- 契約書自体が発行されていない
- 「解約できない」「塗装工事はクーリングオフの対象外」など虚偽の説明を受けていた
- 契約書の記載に不備がある(住所、代表者指名、契約日、契約金額、クーリングオフに関する説明)
これらに該当する場合は、8日を過ぎても解約の対象となります。
もし、どの条件にも当てはまらなくても、リフォーム相談窓口や自治体への相談によって、契約金の減額や工事中止なども不可能ではありませんので、すぐに諦めずに、できる限り専門家に相談しましょう。
■おわりに
悪徳業者による被害は、決して遠い世界の出来事ではなく、ごく身近な所で確実に発生しています。
万が一悪徳業者と接触してしまっても、手口の例を知っているときと知らないときでは、対応の速さや被害レベルにも大きな違いが生じます。
悪徳業者に騙されて、大切な家の寿命を縮めたり、資産を失わったりしないように、いつそのような業者が近づいてきても、回避するための知識を身につけておきましょう。