外壁塗装に使う道具の種類一覧と用途別解説

外壁塗装を行う際には、実にさまざまな道具・工具が必要です。

万能な道具は存在せず、プロの業者であっても、DIYであっても、工程ごとに適切な道具を使い分けることが重要になります。

例えば、塗料を塗る作業にはローラーや刷毛(はけ)、スプレーガンなどの塗装道具を使用しますし、古い塗膜を落とす下地処理には、皮スキやサンドペーパーといった下地処理用の道具が欠かせません。

 

また、塗装しない部分を保護する養生(ようじょう)には、マスキングテープやビニールシートといった養生用の道具を用います。

中には、業務用の高圧洗浄機や仮設足場など、高価で個人では入手しづらい専門機材もあります。

こうした道具を上手に活用することで、安全で効率的に高品質な外壁塗装を実現できるのです。

 

この記事では、外壁塗装で使用される代表的な道具の種類を工程別に詳しく解説します。

一般の施主様やDIY初心者の方にも分かるよう、専門用語は丁寧に説明しながら進めます。

塗料(ペンキ)そのものの種類や選び方については本記事では扱いませんので、興味のある方はこちらの塗料の種類に関する記事もご参照ください。

洗浄工程で使用する道具

塗装の最初の工程は、外壁の洗浄作業です。

塗装面の汚れや、古い塗膜をきれいに落とすことで、新しい塗料がしっかり密着し長持ちします。

そのために使われる代表的な道具を紹介します。

高圧洗浄機

高圧洗浄機は、強力な水圧で壁面の汚れを洗い流すための道具です 。

プロの現場では、エンジン式などの業務用高圧洗浄機が使われます。

その水圧は、家庭用(電気式)の機種よりもはるかに高く、15MPa(メガパスカル)以上の圧力で洗浄できるものもあります。

 

この高圧水流により、頑固なホコリやコケ・カビ、古い塗膜の一部までも洗い落とすことができます。

しっかり洗浄することで、後から塗る塗料の密着が良くなり、仕上がりの耐久性も高まります。

 

ただし、業務用の高圧洗浄機は、購入費用が高額で、一般の方が一度のDIY塗装のためだけに揃えるのは現実的ではありません。

DIYの場合は、家庭用の電気式高圧洗浄機(比較的安価)を使用したり、必要に応じて業務用の機種をレンタルする方法もあります。

 

外壁と屋根の洗浄だけ業者に依頼するという選択肢も有効です。

また、高圧洗浄時には、水しぶきが飛び散るため、後述する養生シートやメッシュシートで周囲を覆っておくことも大切です。

バケツ・ブラシ・外壁用洗剤

洗浄箇所が手の届く範囲で、汚れが比較的軽度な場合や、高圧洗浄機が用意できない場合には、バケツブラシによる手洗いで外壁を清掃することも可能です。

外壁用の洗浄剤(バイオ洗浄液など)をバケツの水に希釈し、ブラシで壁面をこすって汚れを落としていきます。

家庭用のデッキブラシやスポンジブラシでも代用できますが、外壁材を傷めない柔らかめのブラシを選ぶと良いでしょう。

 

高圧洗浄に比べると手間はかかりますが、水道と最低限の道具だけでできる手法です。

洗剤はホームセンターで「外壁洗浄用」「カビ取り用」などの製品が市販されています。

 

洗浄後は、洗剤成分が残らないよう十分にすすぎ、水分をしっかり乾燥させてから次の工程に進みます。

高圧洗浄機ほどの洗浄力はありませんが、小規模な塗装や部分補修程度であれば手作業洗いでも対応可能です。

下地処理に使う道具(ケレン作業など)

洗浄後、塗装前に行うのが下地処理です。

既存の塗膜が剥がれかけている部分やサビ・汚れが残っている部分を取り除き、塗装面を滑らかに整える工程を一般にケレン作業と呼びます。

ケレンを丁寧に行うかどうかで塗装の持ちが大きく変わるため、「外壁塗装はケレン作業が命」と言われるほど重要です。

ケレン作業に使用される代表的な道具を紹介します(ケレンの目的や重要性については、ケレン作業の解説記事も参考にしてください)。

サンドペーパー・ワイヤーブラシ等の研磨道具

サンドペーパー(紙やすり)や研磨パッド類(工業用たわしのマジックロンなど)、金属製のワイヤーブラシは、細かな部分の古い塗膜やサビを手作業で落とすための基本的な道具です。

塗装面をゴシゴシと擦り、表面のザラつきや浮いた塗膜を除去したり、逆に表面をわずかに傷つけて(これを「目荒し」「足付け」と言います)塗料の食いつきを良くする目的でも使われます。

 

紙やすりには、目の粗さ(番手)があり、#60~#120程度の粗めを使って古い塗膜を削り落とし、#180~#400程度の細かいもので、表面を滑らかに仕上げるといった使い分けをします。

ワイヤーブラシは、金属部分のサビ落としに有効です。

ただし、手作業では広範囲を処理するのに限界があるため、大面積のケレンには後述する電動工具も併用します。

電動サンダー(研磨機)

電動サンダー(電動研磨機)は、広い面積の塗膜を効率よく、研磨・剥離するのに用いられる電動工具です 。

手持ち式で、平らなヤスリ面が、高速振動または回転し、壁面に当てることで、古い塗料やサビを削り落とします。

大きな外壁面や、フェンス・鉄部など、手作業では大変なケレン作業も、電動サンダーがあれば、短時間で均一に処理できます。

 

DIYで一度きりの塗装作業のために、高価なサンダーを購入するのは負担ですが、必要に応じて工具レンタルを利用することも可能です。

電動サンダーを使用する際は、粉塵が大量に発生するため、防塵マスク保護メガネを必ず着用してください。

また、周囲に粉塵が飛び散らないよう養生シートで覆うなどの配慮も必要です。

皮スキ・スクレーパー(ヘラ状の削り道具)

皮スキ(皮剥き)やスクレーパーと呼ばれるヘラ状の道具も、下地処理の現場で活躍します。

 

木べらや金属製ヘラの先端を使い、浮いてしまった古い塗膜や錆の塊などを削り取るために用います。

細かな部分や角ばった部分など、サンドペーパーだけでは落としきれない塗膜をこそげ落とすのに適しています。

 

皮スキは、特に金属部のサビ取りや、木部の古い塗膜剥がしに使われます。

先端が鋭利なので、塗装面を傷つけすぎないよう注意が必要ですが、大きくめくれている塗膜やペリペリと剥がれる塗料を効率よく除去できます。

 

スクレーパーにも、幅広タイプや先の尖ったタイプなど、様々な形状があり、状況に応じて使い分けます。

コーキング材・コーキングガン(シーリング道具)

モルタル外壁のひび割れ補修や、サイディングボードの継ぎ目シーリング補充などには、コーキング材(シリコンシーラントなどの充填剤)とコーキングガンが必要です。

一般的なカートリッジ式のコーキング材を、コーキングガン(コーキング用の専用押出し工具)にセットし、トリガーを引くと、先端からペースト状のシーリング材が押し出されます。

 

外壁塗装のタイミングでは、経年で劣化した古いシーリング材を一度すべて剥がし、新しいコーキング材を充填し直すのが一般的です。

充填後は、ヘラで表面を平滑にならし(これも広義では下地処理の一環です)、乾燥硬化させてから塗装します。

コーキング材は上から塗装可能な外壁用のものを選ぶ必要があります。

DIYでも市販のコーキングガンとシーリング材で小さな隙間程度なら補修できますが、大規模なシーリング打ち替えは技術を要するため、必要に応じてプロに依頼すると安心です。

コーキングに関しては、こちらの記事にも詳しく解説しています。

養生に使う道具(塗装箇所以外の保護)

塗装作業に入る前に、塗料を塗らない部分を保護する養生(ようじょう)作業が欠かせません。

養生とは、塗料の飛散や塗りムラが他の箇所につかないように覆い隠すことです。

しっかり養生することで。「塗料が窓ガラスについてしまった」「隣家の車に塗料ミストが飛んでトラブルに…」といった事故も未然に防げます。

ここでは養生に使われる代表的な道具類を紹介します。

マスキングテープ

マスキングテープは、塗装しない部分との境目に貼って塗料のはみ出しを防ぐためのテープです。

幅や材質にいくつか種類がありますが、一般的には塗装用の和紙テープが使われます。

 

例えば、窓枠やドア枠と外壁の境界線、コンセントカバーや配管など細かな部分の縁取りに貼り付けて、刷毛やローラーの塗料が付着しないようにします。

 

マスキングテープは、手でまっすぐ簡単に切れること、剥がしたときに糊残りしにくいことが特長です。

一時的に貼って塗装後には綺麗に剥がせるので、塗装現場では欠かせないアイテムとなっています。

ホームセンターで安価に購入でき、色も目立つ黄色や青色などが多いため、作業箇所が分かりやすい利点もあります。

養生シート・マスカー

養生シートは、ビニール製の薄いシートで、塗装しない部分の広い範囲を覆うために使います。

建物の床や壁、植木、窓ガラス、玄関ドアなど、飛び散る塗料ミストやホコリから保護したい箇所をシートで覆っていきます。

シートの端を先述のマスキングテープで固定して密閉することで、隙間から塗料が入り込むのを防ぎます。

 

マスカーは、この養生シートとテープが一体化した便利な道具です。

ロール状になったテープにビニールシートが折りたたまれて付属しており、テープを貼ってからシートを広げるだけで簡単に覆うことができます。

窓や床面の養生をスピーディーに行えるため、プロの現場でも頻繁に使われます。

ブルーシート(床養生用)

ブルーシートは青色の厚手のシートで、主に地面や庭先を広範囲に覆うのに使われます。

外壁塗装では、建物の外周に足場を組み、その下に地面養生としてブルーシートを敷きます。

これは、塗料が飛んで地面を汚したり、洗浄水や剥がれた塗片が散乱するのを防ぐためです。

 

ブルーシートは、防水性が高く丈夫なので、塗装期間中ずっと敷きっぱなしにしておいても破れにくく安心です。

敷地の広さに応じてサイズを選び、必要なら複数枚をガムテープなどで繋いで隙間なく覆います。

特に足場を立てる場合は、足場全体にメッシュの飛散防止ネット(下記参照)を張りますが、地面への養生としてもブルーシート併用が基本です。

養生カバー(自動車・植木用カバーなど)

移動が難しい物や塗料飛散で汚したくない大型物には専用の養生カバーを使います。

 

例えば、敷地内に駐車しているお車やオートバイには車両用の大型ビニールカバーをかぶせ、植木や植栽には植木用の専用カバーで覆います。

建物に隣接していて動かせない物ほど念入りにカバーリングしておくと安心です。

 

特に、近隣の住宅の車が近い場合などは、施工業者にお願いしてそちらにも養生カバーをかけてもらう配慮が必要でしょう。

万一、塗料ミストが飛んで他人の所有物を汚してしまうと大きなトラブルになりますので、塗装前の養生段階で防げるリスクは徹底的に対策します。

こうしたカバー類もホームセンター等で購入できますが、DIYの場合は使い捨てになることも多いため、安価な汎用ビニールシートで代用するケースもあります。

塗装に使う道具(塗り方別)

いよいよ塗料を塗る工程で活躍するのが塗装用の道具です。

外壁塗装の現場では、広い面積はローラーで塗り、ローラーで塗りにくい細部は刷毛で塗るという方法が一般的です。

また、模様付けや特殊な仕上げには、スプレーガンを用いた吹き付け塗装が行われることもあります。

それぞれの道具の特徴や種類を見ていきましょう。

ローラー(各種ローラーと関連道具)

塗装用ローラーは、毛のついた回転ローラーで、塗料を広範囲にムラなく塗れる道具です。

外壁塗装全体の作業の中でも、約8割を占める主力道具で、今や刷毛よりローラー塗りが主流になっています。

ローラーは、大きく分けてウールローラー(羊毛ローラー)砂骨ローラーの2種類がよく使われます。

 

ウールローラーは、羊毛のように柔らかな繊維でできたローラーで、塗料含みが良く伸びも良いため、均一できれいな仕上がりになります。

毛足(毛の長さ)に短毛・中毛・長毛の種類があり、短毛は平滑な面を滑らかに塗るのに適し、長毛は壁の多少の凹凸も一度で塗れるため模様付き壁面に向いています。

中毛ローラーは、汎用性が高く、一般的な外壁で最もよく使われる標準サイズです。

 

砂骨ローラー(さこつローラー)は、内部がスポンジ状で多孔質になっており、一度に大量の塗料を含ませられるローラーです。

ドロッとした粘度の高い塗料や、厚塗り仕上げをする際に活躍し、塗料を厚く塗ることで独特のザラザラした模様(砂骨模様)を付けることもできます。

 

ウールローラーと砂骨ローラーは目的に応じて使い分けられており、最近では模様を付けるためのパターンローラーや、気泡を抜くための脱泡ローラーなど、特殊用途のローラーも存在します。

 

ローラーを使う際には、ローラーを差し込んで使う取っ手部分のローラーハンドルと、塗料を入れておくバケツである下げ缶(さげかん)も用意します。

 

一般的な建築塗装では、持ちやすく小回りの利くスモールサイズのローラーとショートハンドルの組み合わせが使いやすいです。

柄の長いロングハンドルは、高所や奥行きのある部分を塗れる利点がありますが、初心者には均一に力をかけるのが難しいため、扱いに注意が必要です。

 

なお、ローラーのサイズ(太さ・長さ)はレギュラー、ミドル、スモール、ミニスモールといった種類に分かれ、日本の住宅塗装ではスモールローラーが主流です。

素材も羊毛以外にナイロン製ローラーなどがあり、水性塗料に適したものや、模様を出さない滑らかな仕上げが得意なものもあります。

塗装箇所や使用する塗料に応じて最適なローラーを選ぶことが、仕上がりに直結すると言えるでしょう。

刷毛(はけ)

刷毛(はけ)は、細かな部分の塗装に欠かせない昔ながらの塗装道具です。

ローラーでは塗りにくい隅や角、細部を塗るのに用います。

刷毛だけでも非常に多くの種類がありますが、代表的なものを挙げると以下のようになります。

 

  • 平刷毛(ひらばけ):毛先が平らな最もオーソドックスな刷毛。一度に塗れる幅が広いので、手すりや細長い板、広めの面などに適します。ベタ刷毛とも呼ばれ、昔はこの平刷毛で壁一面を塗装していましたが、現在では広面積はローラー塗装に取って代わられています。
  • 筋交い刷毛(すじかいばけ):持ち手から毛先が斜め45度程度に曲がって植えられた形状の刷毛。日本独特の形状で、コーナーや隅、細い溝などを非常に塗りやすいため重宝します。
  • 寸胴刷毛(ずんどうばけ):毛先が丸みを帯びて膨らんだ形状の刷毛。毛量が多く塗料の含みが良いため、一度にたっぷり塗料を含ませて塗れます。粘度の高い塗料(油性塗料や高粘度の下塗り材)を塗る際に適した刷毛です。
  • 目地刷毛(めじばけ):先端が細く、小さな刷毛。サイディングの目地(ボードの継ぎ目)や細い溝を塗るための専用刷毛で、幅数ミリ程度の毛幅のものもあります。
  • 隅切り刷毛:その名の通り隅(端部)を塗るための刷毛。先端が極細になっており、窓枠の縁や配管の裏など細かい補修塗りに使われます。ダメ込み刷毛とも呼ばれ、縁を「切る」用途に特化しています。

 

この他にも、塗装以外に掃除用途で使うラスター(ダスター)刷毛や、鉄部塗装用の鉄骨刷毛、水性塗料専用の化学繊維刷毛など多種多様な刷毛があります。

職人はこれらの中から塗料や塗る場所に応じて最適な一本を選び取って使い分けています。

毛の素材にも注目すると、伝統的には馬毛・豚毛・ヤギ毛などの獣毛が多く使われますが、水性塗料を扱う際は固まりにくいナイロン等の化学繊維製の刷毛(「水性刷毛」)が便利です。

スプレーガン(吹き付け塗装用機材)

スプレーガンは、塗料を霧状に噴射して塗装面に吹き付けるための道具です。

ピストルのような形状をしており、引き金を引くと先端ノズルから塗料のミスト(霧)が勢いよく噴き出します。

広い面積を非常に短時間で塗装できるため、かつては外壁塗装でも広く用いられていました。

現在でも、モルタル外壁に凹凸模様をつける「リシン吹き付け」や、「スタッコ(ざらざら模様)」仕上げなど特殊な意匠には専用のスプレーガンが使われています。

 

スプレーガンには、方式の違いによりエアスプレーエアレススプレーの2種類があります。

エアスプレーはコンプレッサーで圧縮した空気を使い、その空気の流れに塗料を乗せて霧化(ミスト状)させる方式です。

圧縮空気式とも呼ばれ、重力式・吸上げ式・圧送式など塗料カップの位置や供給方法によってさらに種類が分かれます。

 

一方、エアレススプレーは空気を使わずに、塗料そのものに高圧をかけてノズルから噴射する方式です。

空気を混ぜない分だけ一度に大量の塗料を噴出でき、粘度の高い塗料でも安定して噴射できるというメリットがあります。

また、エアレスの方が霧の拡散が少なく塗料の無駄が減る利点もあります。

 

ただし、スプレー塗装にはいくつかデメリットもあります。

塗料が微粒子になって周囲に飛散しやすいため、養生を非常に広範囲に厳重に行わなくてはなりません。

 

また、コンプレッサーの作動音や霧吹きの音が大きく、シンナー臭も発生しやすいため、住宅街ではご近所への配慮が必要です。

加えて、ムラなく吹き付けるには熟練した技術が求められるため、DIYでのスプレーガン使用はあまり推奨されません。

現在の一般的な戸建て塗装では、ローラーと刷毛による手塗りが主流であり、スプレーガンは特殊な場合に限られると言えるでしょう。

ヘラ・コテ(塗装模様付け用の道具)

左官職人が用いるコテや、先端の平たいヘラも広義には塗装関連の道具に含まれます。

例えば、厚めに塗った塗材をコテで、拭き取るようにならして独特の模様を出す「こて押さえ仕上げ」や、砂壁調仕上げの際にコテでパターンを描くケースです。

 

DIYでコテを使う場面としては、ひび割れ補修に充填剤やモルタルをコテで埋め込んだり平らにならしたりする作業が考えられます。

ヘラについても、コーキング充填後のならし作業や、ペンキ缶のフタ開け・攪拌など細かな用途で出番があります。

ヘラ・コテ類は木製・金属製・樹脂製など素材も様々です。

なお「ケレン」という言葉は上述のように、下地調整全般を指しますが、狭義には皮スキやスクレーパーでの手作業剥離のことを指しますので、ヘラ・コテとは区別して考えてください。

その他の必要な道具・備品

前項までは、塗装作業の各工程ごとに使用する主な道具を紹介しましたが、それ以外にも安全作業や作業効率のために用意しておきたい道具・備品があります。

脚立・足場

2階以上の高所の外壁を塗るには、足場の設置が基本です。

ただし、DIYで平屋部分を少し塗る程度であれば脚立でも作業自体は可能でしょう。

脚立は移動や設置が手軽ですが、高所での姿勢が不安定になりやすく、塗装できる範囲も狭いため効率が悪くなります。

 

一方、足場を組めば建物周囲に安定した作業スペースが確保され、手元・足元がぐらつかないので安全かつ丁寧な作業ができます。

さらに足場には塗料飛散防止用のメッシュシートを張ることができるため、周辺環境への影響も軽減できます。

 

一般の方が自力で足場を組むのは危険が伴うため現実的ではありません。

必要な場合は、足場専門業者に依頼して組んでもらうか、無足場工法(ブランコ作業など特殊高所作業)を検討することになります。

 

ただ、無足場工法も高度な安全対策が必要なため、基本的には戸建て塗装では足場設置が前提です。

足場のレンタル費用は、建物規模によりますが決して安くないため、DIYで高所全面を塗り替えるのはコスト面・安全面からもハードルが高いと言えます。

 

足場の重要性や費用感について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

ヘルメット・保護メガネ・マスク・手袋などの安全保護具

外壁塗装作業では、安全対策も非常に重要です。

特に、脚立や足場を使った高所作業では、必ずヘルメットを着用しましょう。

高い所から万一転落した際に命を守る最後の砦になります。

 

また、塗料が飛び散ったりサンダーの粉塵が舞ったりしますので、保護メガネ防塵マスクで目や呼吸器を守ることも必要です。

塗料には、有機溶剤(シンナー)を含むものもあるため、防毒マスクを使うケースもあります。

 

服装は汚れても良い作業着を着用します。

袖口や裾がだぶつかない動きやすい服装が望ましいです。

塗料は、飛沫が衣服に付くとなかなか落ちないため、専用つなぎやポリ製の使い捨て防護服を着る職人もいます。

 

靴は、滑りにくくつま先の保護された安全靴か運動靴で、決してサンダルや踵の高い靴で作業しないでください。

長靴は一見良さそうですが、重く動きづらいため塗装作業には不向きです。

加えて、塗料缶を開封する缶切り(ペンキ缶オープナー)や、塗料をよく攪拌する撹拌棒(かくはんぼう)、塗料を入れるカラーバケツなど、小物類も用意しておくとスムーズに作業できます。

まとめ

外壁塗装に必要な道具類を、洗浄・下地処理・養生・塗装・安全対策の各段階に分けて詳しく見てきました。

使用する道具の種類は多岐にわたりますが、それぞれに役割があり、適材適所に使い分けることで塗装作業の品質と効率が飛躍的に向上します。

 

ローラー・刷毛・スプレーガンといった塗装方法の違いによって、仕上がりの風合いも異なりますし、下地処理を丁寧にするかどうかで塗膜の寿命も大きく変わります。ど

の道具が優れているということではなく、外壁の状態や塗料の性質に合わせて最適な道具を選ぶことが重要だと言えるでしょう。

 

DIYで外壁塗装に挑戦する場合は、ここで挙げた道具の中から必要なものを揃える必要があります。

高圧洗浄機や足場など個人では用意しづらいものは、レンタルや部分的な業者依頼も検討しましょう。

道具を一通り買い揃える費用や労力を考えると、場合によっては最初からプロに任せた方が結果的に安く安全に済むこともあります。

DIYか業者依頼かを判断する際には、道具の準備や管理、作業の難易度もしっかり考慮してください。

 

外壁塗装に必要な道具の種類と特徴を理解することで、塗装工程への理解も深まったかと思います。

適切な道具を使い、正しい手順で施工すれば、美観を保ち建物を長持ちさせる高品質な塗装が可能です。

ぜひ本記事をお役立ていただき、安全第一で外壁塗装作業に取り組んでみてください。

外壁塗装の仕上げの種類とパターンを徹底解説

外壁塗装では、色選びだけでなく「仕上げ」の模様(パターン)によって建物の印象は大きく変わります。

単に塗料を平坦に塗るだけではどの家も似たような外観になってしまいますが、仕上げ方にこだわることでお住まいに個性やデザイン性を持たせることが可能です。

 

特に日本家屋で使われてきたモルタル壁は、塗装時に様々な模様をつけられることが特徴であり、ぜひお好みの仕上げパターン(外壁の最終的な表面仕上げの模様や質感のこと)を検討したいところです。

 

壁に凹凸模様をつけたり、多色の塗料を使って石材風に仕上げたりと、その種類は多岐にわたります。

近年主流の外壁材であるサイディングボード(工場生産された板状の壁材)にはあらかじめ模様が付けられていますが、一方でモルタル壁など「塗り壁」の場合は、職人の手作業によって自由に模様を表現することができます。

モルタル壁ならではの味わい深い意匠性は、サイディングにはない魅力と言えるでしょう。

 

こうした仕上げ模様を実現するには、通常の塗料に加えて専用の仕上げ材(主材)を使用する必要があります。

一般的な外壁塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3工程で行いますが、特殊な模様仕上げを行う場合、下塗り後に主材を用いて模様を作り、さらに上塗りで保護・艶出しを行うなど合計4〜5工程になることもあります。

その分、使用する材料費や手間が増えるため費用は割高になりますが、独自のデザインを楽しみたい方には検討する価値があるでしょう。

 

本記事では、外壁塗装における代表的な仕上げパターンの種類を網羅し、モルタル外壁とサイディング外壁それぞれで可能な仕上げ方法について詳しく解説します。

一般の施主様向けに、専門用語もできるだけわかりやすく説明しますので、外壁の模様仕上げに興味のある方はぜひ参考にしてください。

 

なお、外壁に使用される素材(モルタル、サイディング、ALCパネルなど)によって適した塗装方法や仕上げが異なります。

外壁材の種類ごとの特徴については、詳しくは「モルタル、サイディングなどの壁の種類について」の記事も参照してください。

モルタル外壁の仕上げパターンの種類

まずはモルタル外壁の仕上げパターンから見ていきましょう。

モルタル外壁とは、セメントに砂と水を混ぜたモルタルを下地に塗り付けて仕上げた壁のことです。

日本の戸建て住宅では1990年頃まで広く採用されており、左官職人が現場で壁にモルタルを塗り付けて造形する「塗り壁」です。

 

モルタル壁は職人の腕によって自由に模様をつけることができるため、外観デザインにこだわりたい方に適しています。

モルタル壁の仕上げ工法には、大きく分けて

  • 吹き付け仕上げ
  • ローラー仕上げ
  • コテ仕上げ(左官仕上げ)

の3種類があります。

それぞれの工法によって作れる模様が異なり、使用する材料や道具も違います。

以下で主な仕上げパターンの種類と特徴を順に解説します。

吹き付け仕上げ(外壁の吹付模様工法)

吹き付け仕上げとは、スプレーガン(塗料噴射器)を使って塗料を霧状に噴き付ける工法です。

塗料に骨材(細砂や小石など)を混ぜ、コンプレッサーで壁面に吹き付けることで独特の凸凹模様を形成します。

ガンの種類や設定により模様の出方が変わり、比較的短時間で広い面積を施工できるという利点があります。

ただし、

  • 噴霧した塗料が周囲に飛散しやすく塗料ロスが出やすい
  • 作業時に音や臭気が発生するため、近隣への配慮が必要

などのデメリットもあります。。

 

モルタル外壁の吹き付け仕上げには、以下のような種類があります。

リシン仕上げ(砂壁状の吹き付け模様)

リシン仕上げは、最も一般的な吹き付け仕上げであり、砂壁状のざらざらとした質感が特徴です。

アクリル系やシリコン系の塗料に細かな砂利(骨材)を混ぜ、リシンガンと呼ばれるスプレーで壁一面に吹き付けます。

凹凸のある落ち着いたつや消し模様になり、昔から新築時の外壁仕上げによく採用されてきました。

 

骨材の粒の大きさによって仕上がりの雰囲気が変わり、大きな石を混ぜれば荒いパターン、小さければきめ細かいパターンになります。

リシン仕上げのメリットは、

  • コストが比較的安価
  • 模様がシンプルで周囲に調和しやすい

などの点です。

一方、デメリットとして、塗膜が薄付きなため耐久性が低く、ヒビ割れ(クラック)が発生しやすい点が挙げられます。

一般にリシン仕上げの外壁の耐用年数は8年程度とされ、経年で細かなひびが入ってくることがあります。

こうした欠点を補うため、弾力性を持たせてひび割れしにくくした「弾性リシン」という改良タイプの仕上げ材もあります。

 

なお、リシン吹き付け後に表面の凸部を金属ブラシやヘラで削り落とす「リシン掻き落とし」という工法も存在します。

吹きっぱなしのリシンよりもザックリとした荒い質感になり、骨材の粒子が大きい場合はより力強いデザインになります。

掻き落とし加減によっても微妙な表情の違いを出すことができ、職人の技が光る仕上げ方です。

スタッコ仕上げ(厚吹き仕上げ)

スタッコ仕上げは、リシンよりも厚く吹き付けることで重厚感のある凹凸模様に仕上げる工法です。

簡単に言えば「厚吹きリシン」で、リシン塗装の5〜10ミリ程度厚塗りバージョンと考えると分かりやすいでしょう。

セメント系や合成樹脂エマルション系の専用主材を用い、壁に厚みをもたせるため耐久性も向上します。

 

スタッコ仕上げのパターンは凹凸が大きく立体的で、高級感のある風合いになります。

仕上げた直後の印象が長持ちしやすく、20年以上経っても劣化を感じにくいという意見もあります。

ただし、表面が粗い分、埃や汚れが溜まりやすく再塗装の下地処理が大変になるというデメリットがあります。

 

スタッコ仕上げにも、吹き付けたまま仕上げる「スタッコ吹き放し」と、吹き付け後にコテやローラーで突出部分を軽く押さえ平滑に整える「スタッコ凸部処理(押さえ仕上げ)」があります。

後者は凸凹が若干抑えられるため、少しおとなしい印象になりますが汚れが付きにくいという利点があります。

吹き付けタイル仕上げ(ボンタイル)

「吹き付けタイル仕上げ」は、砂粒よりも大きめの骨材を含む練り状の材料を吹き付けて模様を作る工法です。

ボンタイルとも呼ばれ、リシンやスタッコと同様に壁面へ専用ガンで噴霧して施工します。

 

デザイン上の特徴は、凹凸模様でありながら表面にツヤがあり、陶器のようになめらかな質感になる点です。

従来のリシン仕上げがつや消しでザラザラした質感なのに対し、ボンタイル仕上げは光沢があるため、高級感があります。

 

吹き付けタイルにも、ゴム質で弾力性を持たせてひび割れを起こしにくくした「弾性ボンタイル仕上げ」が存在します。

下地の動きに追従しやすくなるため、モルタルのひび割れリスクを軽減できるメリットがあります。

多彩模様仕上げ(石目調・多色仕上げ)

多彩模様仕上げは、2色以上の塗料やカラー粒(チップ)を混ぜて吹き付けることで、天然石のような風合いを表現する塗装工法です。

単色で塗装した場合に比べ、色の奥行きや深みが生まれ、高いデザイン性を持たせることができます。

吹き付けた塗膜中に異なる色調の粒が散りばめられることで、見る角度や光の当たり方によって表情が変わる外壁に仕上がります。

 

多彩模様仕上げは、既存の外壁を石造り風やタイル風にイメージチェンジしたい場合に適しています。

モルタル外壁だけでなくサイディング外壁にも施工可能で、下地の模様を活かしつつ新たな質感を加えることができます。

その一方、使用する材料の種類が多く職人の手間もかかるため、施工コストは通常の塗装より高めになります。

また仕上がりが職人の技術に左右されやすい点にも注意が必要です。

 

代表的な多彩模様仕上げ用の塗料には、スズカファイン社の「WBアートSi」や日本ペイント社の「ダイナミックトップ(多彩模様塗料)」などがあります。

メーカーごとに表現できるパターンが異なるため、施工業者とカタログを見ながら好みの仕上がりを相談すると良いでしょう。

ローラー仕上げ(外壁模様のローラー工法)

ローラー仕上げは、塗装用のローラーを使って模様をつける工法です。

ローラーで塗装すると、刷毛塗りに比べ作業効率が高く塗料の飛散も少ないため、現在の外壁塗装ではローラー塗りが主流になっています。

通常のローラー塗装では平滑に仕上げますが、特殊なローラーを用いて意図的に凹凸をつけることで模様仕上げにすることも可能です。

 

ローラーには表面の素材や毛の長さによってさまざまな種類があり、毛足が短いものは平滑面の塗装に適し、長いものは凹凸面にも塗料を行き渡らせやすいという特徴があります。

ローラー仕上げ用の専用ローラーにはスポンジ状の「マスチックローラー」などがあり、塗料をたっぷり含んで厚膜を作ることができます。

 

以下、代表的なローラー仕上げの種類を紹介します。

マスチックローラー仕上げ(厚塗り模様仕上げ)

マスチックローラー仕上げは、スポンジ状のローラーで塗料を厚く塗りつけて凹凸模様を形成する仕上げです。

「砂骨ローラー仕上げ」とも呼ばれ、マスチック(砂骨)ローラーという特殊なローラーを使用します。

 

スポンジ状の多孔質ローラーが塗料を大量に含み、壁面に押し当てることで塗膜に厚みを持たせつつ粗い凹凸を作ります。

モルタル壁でひび割れが多い場合に下塗りとしてマスチック仕上げを施すと、膜厚でクラックの進行を抑え雨水浸入を防ぐ効果も期待できます。

 

マスチック仕上げによって作られる模様の一例に「ゆず肌仕上げ」があります。

ゆずの皮のように細かな凹凸が一面に均一に現れる仕上げ方で、ローラーを丁寧に転がすことで規則的なさざ波模様が形成されます。

一方で、施工が雑になると意図しないムラ模様が出てしまうこともあるため、職人の熟練度が重要です。

コテ仕上げ(左官模様仕上げ)

コテ仕上げ(左官仕上げ)とは、熟練の左官職人がコテ(鏝)を使ってモルタルや意匠性塗材を塗り付け、自由自在な模様を描き出す仕上げ方法です。

 

コテや櫛(くし)、ブラシ、ローラー、吹き付けガンなど様々な道具を組み合わせてテクスチャを表現することも可能で、デザインの幅が非常に広いのが特徴です。

カタログに載っているパターンサンプルを参考に選ぶこともできますが、職人の技術力によって対応できる仕上げとできない仕上げがあります。

高度な意匠性と高い技術力を要するため、施工費用は他の工法よりも高価になる傾向があります。

 

コテ仕上げに用いられる代表的な材料に「ジョリパット」があります。

ジョリパットとはアイカ工業株式会社が販売する意匠性塗材の商品名で、近年人気が高まっている仕上げ材です。

 

次項でジョリパット仕上げについて詳しく説明します。

ジョリパット仕上げ(意匠性塗り壁材)

ジョリパット仕上げは、カラーや質感のバリエーションが豊富な高意匠仕上げです。

ジョリパット(Jolypate)とは、近年外壁の塗り替えにも用いられるようになってきた塗り壁材で、元々は1970年代に発売され約15年前から新築住宅で広く使われ始めた比較的新しい仕上げ材です。

 

国内ではアイカ工業の製品が有名で、モルタル下地に直接コテで塗り付けて模様を作ります。(参考:アイカ工業

現場ごとに自由なデザインで仕上げられる点が魅力で、一般的なパネル系外壁材にはない独自の風合いと温かみがあります。

 

ジョリパット仕上げのメリットは、デザイン性と耐久性の高さです。

多数のカラーバリエーションや質感から好みのパターンを選べ、唯一無二の外観を演出できます。

耐用年数も長く、一般的な塗装仕上げが10〜15年程度なのに対し、ジョリパット仕上げは15〜20年とされます。

一方デメリットとして、左官職人の手作業ゆえに施工コストが高くなること、表面に細かな凹凸ができるため汚れが付きやすいことが挙げられます。

ジョリパット外壁の塗り替えに関する詳しい情報は、「外壁塗装のジョリパットに関する基礎知識」も参照してください。

 

ジョリパット以外にも、伝統的な「漆喰(しっくい)塗り壁仕上げ」や、珪藻土(けいそうど)を使った塗り壁、欧風の「プラスター仕上げ」など、左官材を用いた様々な塗り壁仕上げがあります。

仕上げのバリエーションは非常に多いため、気になる模様があれば事前に施工業者に相談し、対応可能か確認しましょう。

その他の左官仕上げパターン

前項で述べた通り、左官仕上げにはジョリパット以外にも数多くのパターンがあります。

 

例えば、コテで横筋模様を描く「トラバーチン仕上げ」、櫛(くし)で引っかいて連続模様をつける「櫛引き仕上げ」、スタンプ型を押し当ててタイル状模様を転写する「スタンプ仕上げ」など、多彩なバリエーションが存在します。

塗料メーカー各社も意匠性仕上げ材のシリーズを展開しており、エスケー化研の「ベルアートシリーズ」などは豊富な模様を実現可能です。

これらの仕上げはモルタルならではの凝ったデザインを追求できる反面、高度な技術が必要となるため、施工できる業者が限られる場合もあります。

興味がある仕上げ模様があれば、事前に施工会社に相談してみるとよいでしょう。

サイディング外壁の仕上げ方法と塗装パターン

次に、現在主流となっているサイディング外壁の仕上げ方法について解説します。

サイディングボードは工場で製造されたボード状の外壁材で、レンガ調や石積み調、木目調など様々な模様が表面に刻まれています。

新築時にサイディングを使用する場合、現場ではボードを張り付けるだけで模様が完成する「乾式工法」といわれる工法で仕上げられます。

 

サイディング外壁を塗り替える際、一般的には単色の塗料で塗りつぶす塗装工法が行われます。

しかし塗りつぶす塗装工法の場合、塗料でせっかくのサイディング表面の凹凸模様や色分けが覆われて単調な印象になってしまうという難点があります。

 

そこで、サイディングのデザインを活かしたまま美観を維持・向上させるために、以下のような仕上げ方法が用いられます。

クリア塗装仕上げ(透明塗料による保護)

クリア塗装仕上げは、無色透明の塗料(クリヤー塗料)を外壁に塗る方法です。

現在のサイディング外壁の色柄を気に入っており、「模様をそのまま残したい」という場合に適しています。

透明な塗膜で覆うことで外壁を保護しつつ、既存の意匠(デザイン)をそのまま生かすことができます。

施工後は外壁に光沢が出て、新築時のような美しさが蘇ります。

 

ただし、クリア塗装ができるのは、既存外壁の状態が良好な場合に限られます。

経年劣化で色あせが進んでいたり、チョーキング(塗膜の粉吹き)やクラックが生じていたりする外壁には透明塗料は密着しにくいため不向きです。

 

築10年以上経過し劣化が見られるサイディングには、クリア塗装ではなく通常の塗り替えが選択されます。

また、外壁に光触媒コーティングや撥水処理がされている場合も、クリア塗料が弾かれてしまうため施工できません。

 

クリア塗装に使用される塗料には、紫外線から色柄を守るUVカット機能を持つものがあります。

代表例として、日本ペイントの「UVプロテクトクリヤー」や菊水化学工業の「ロイヤルセラクリアー」などがあり、透明ながら外壁の耐久性を高める効果が期待できます。

多色塗り仕上げ(ダブルトーン塗装)

多色塗り仕上げ(ダブルトーン仕上げ)とは、凹凸のあるサイディング外壁に 2 色以上の塗料を重ね塗りして、陰影のある模様を表現する方法です。

まずベースカラーとなる色を外壁全体に塗装した後、乾燥してから凸部のみ別の色で上塗りします。

凹部と凸部で色を塗り分けることで、単色塗りでは平坦に見えていた外壁に立体感と奥行きを与えることができます。

この手法は「2色仕上げ」とも呼ばれ、単調な外壁をおしゃれに変える人気の工法です。

 

使用する色の組み合わせによって仕上がりの印象は大きく変わります。

ベースと差し色を同系統の落ち着いた色調でまとめれば穏やかな陰影が生まれますし、あえて対照的な色を選べば個性的な外観になります。

既存のサイディングデザインを生かしつつガラリとイメージチェンジしたい場合におすすめの方法です。

 

多色塗り仕上げは、通常の単色塗装に比べて材料と手間が余分にかかるため費用は割高になります。

また、2回以上の重ね塗り作業が必要なため施工期間も長くなります。

それでも「せっかく塗り替えるならおしゃれにしたい」という方にはおすすめの仕上げです。

 

多色仕上げ用の塗料には、日本ペイントの「ドレスアップコート」やスズカファインの「WBアートSi」などがあります。

特殊な塗料を使わずに職人の手作業で 2 色に塗り分けることも可能ですが、専用塗料を用いることでより美しい仕上がりと作業効率の向上が期待できます。

多彩模様塗装(サイディングの石目調仕上げ)

サイディング外壁にも、前述の多彩模様吹き付け塗装を施すことが可能です。

単色塗りではのっぺりしてしまう外壁でも、多彩模様にすることで疑似石材調の高級感ある仕上がりになります。

特に無地調のサイディングや、元のデザインを変えたい場合に有効な工法です。

下地のサイディングの形状はそのまま活かされますが、表面に散りばめられた色粒によって全く異なる表情の壁面に生まれ変わります。

 

モルタル外壁の場合と同様に、サイディングへの多彩模様仕上げも高い技術と手間を要します。

材料費・施工費が割高になる点に加え、仕上がり品質が職人の腕に大きく左右されます。

施工例の豊富な業者を選ぶとともに、施工前にカタログやサンプル板でイメージを確認しておくことをおすすめします。

外壁塗装の仕上げパターン選びのポイント

最後に、外壁塗装の仕上げ模様を選ぶ際に押さえておきたいポイントを解説します。

 

■デザインとコストのバランス: 凝った仕上げほど材料費・施工費が高くなります。

予算と相談しつつ、「多少費用がかかっても独自のデザインにしたい」のか「できるだけ安価に標準的な塗装で済ませたい」のか、優先順位を明確にしましょう。

模様を付ける場合、標準塗装に比べて費用はおおむね1.2〜1.5倍程度になると考えられます(模様の種類や施工法により変動)。

 

■仕上がりイメージの確認: 模様仕上げの場合、完成後のイメージがつきにくいことがあります。

事前に施工業者からカタログやサンプルを取り寄せ、実際の模様の大きさ・質感・色味を確認しておきましょう。

特にジョリパットなどパターンが多岐にわたる材料では、業者と十分打ち合わせを行うことが大切です。

 

■施工業者の技術力: 意匠性の高い仕上げは職人の腕によって仕上がり品質に差が出ます。

施工実績が豊富で、希望する仕上げに対応できる業者を選びましょう。

高度な左官模様の場合、熟練の職人自体が少なくなってきているため、対応可能な業者探しに時間を要することもあります。

 

■機能性との両立: 外壁の仕上げ模様に気を取られがちですが、外壁塗装本来の目的は建物の保護にあります。

耐久性・防汚性などの機能も考慮し、使用する塗料のグレードを選ぶことも重要です。

どんな塗料を選べば良いかについては、「外壁塗装で使われる塗料の種類と選び方」も参考にしてください。

外壁塗装仕上げの種類まとめ

モルタル外壁は、吹き付け・ローラー・コテの各工法で多彩な模様仕上げが可能です。

既存の意匠を活かした再塗装もでき、イメージを変えたい場合はジョリパットや多彩模様などの意匠材で表情を大きく変えることができます。

 

サイディング外壁は、単色で塗り替える場合、元の凹凸や色柄が埋もれやすい点に注意が必要です。

意匠を保ちたいときはクリア塗装を、陰影や立体感を強めたいときは多色塗りや多彩模様塗装を検討すると良いでしょう。

 

意匠性の高い仕上げは標準塗装に比べて材料費・手間が増えやすく、総費用は上がる傾向にあります。

ただし、周囲と差別化したデザインや塗り替えの満足度を重視する場合には、投資効果が高い選択肢です。

 

関連知識の整理には、こちらの記事も参照してください。

 

仕上げごとに適合する下地処理や塗料グレードが異なるため、事前の打ち合わせで仕様と期待する見た目を外壁塗装業者と十分に共有してください。

施工実績が豊富で、希望するパターンに対応できる業者を選定し、見本板や過去事例で最終イメージを確認することが仕上がりの満足度を高めることができるでしょう。

外壁塗装で塗る場所はどこ?塗装箇所と範囲を徹底解説

外壁塗装を検討するとき、多くの方が「どこまで塗ってもらえるのか?」と疑問に思います。

「外壁塗装」という言葉から、家の壁だけをイメージしがちですが、実際の塗装工事では、外壁以外のさまざまな箇所も含めて塗装するのが一般的です。

外壁だけ新しく塗り替えても、周囲の部位が古いままだと、見た目にちぐはぐになったり、塗装していない部分の劣化が早く進んで後々後悔するケースもあります。

 

本記事では、外壁塗装工事で実際に塗るべき主な場所と、塗装しない(できない)場所について詳しく解説します。

さらに、見積もり時に塗装範囲を確認するポイントや、付帯部(ふたいぶ)も含めて塗装するメリット・注意点も紹介します。

 

初めて塗装工事を依頼する方でも、この記事を読めば「どの部分を塗るべきか」「何を事前に確認すべきか」など、外壁塗装工事で塗る場所に関しての知識が明確になります。

大切なお住まいを長持ちさせ、仕上がりにも満足できるよう、塗装範囲の考え方をしっかり押さえておきましょう。

外壁塗装で塗る場所:基本は家の外側全体

外壁塗装工事の塗装範囲は、基本的に、建物の外側に露出している部分全体と考えてください。

一般的な戸建住宅の場合、メインとなる外壁本体はもちろん、屋根(※別途依頼時)や付帯部(ふたいぶ)と呼ばれる細かな付属部分も含め、家の外側の様々な箇所が塗装の対象になります。

 

塗る場所は、契約内容によって決まりますが、通常は外壁に面するあらゆる箇所を塗装すると考えて良いでしょう。

例えば、2階建て住宅なら、1階も2階も全ての外壁面を塗りますし、ベランダの外側壁面も外壁の一部として塗装します。

 

また、雨樋(あまどい)や破風板(はふいた)などの付帯部分も、多くの場合は見積もりに含まれており、一緒に塗り替えを行います。

契約内容によっては、「外壁塗装 一式」「付帯部 塗装一式」などと一括表記されることがありますが、その場合でも、実際には具体的な箇所すべてを塗装するのが一般的です。

 

重要なのは、工事前にどの箇所まで塗るのかを施主と業者で明確にしておくことです。

後から、「ここは塗られていなかった」という行き違いがないように、契約前の打ち合わせ段階でしっかり確認しましょう。

 

次章から、外壁塗装で具体的に塗る場所について、外壁本体と付帯部に分けて詳しく見ていきます。

外壁塗装で塗る場所一覧:外壁本体と付帯部

外壁塗装工事では、塗装範囲を大きく二つに分類できます。

まず家の「外壁本体」、そして外壁や屋根に付属する「付帯部」です。

 

この章では、外壁本体、および主要な付帯部について、それぞれ塗装する理由やポイントを説明します。

普段、聞き慣れない部位の名称も出てきますが、一つ一つ確認していきましょう。

外壁本体(建物の壁面部分)

まずは、塗装工事の主役である外壁本体です。

建物の外周を囲む壁面そのもので、家の「顔」となる部分になります。

 

外壁には、窯業系サイディング、モルタル壁、ALCパネルなど様々な素材が使われていますが、いずれも年月とともに劣化し、防水性能や美観が損なわれていきます。

塗装により、外壁表面に新しい保護塗膜を作ることで、防水性・耐候性を回復させ、外壁材の寿命を延ばすことができます。

 

外壁塗装を行う主な目的は以下の通りです。

  • 雨風や紫外線から建物を守り、内部への水の浸入を防ぐ(防水性の確保)
  • チョーキング現象(壁を触ると白い粉が付く)や色あせ、汚れをリセットし、美観を取り戻す
  • ひび割れや欠損を補修し、構造躯体へのダメージを防止する

 

適切な時期に外壁を塗り替えることで、雨漏りや構造材の腐食といった重大なトラブルを未然に防ぐことができます。

一般的には、新築後10年程度が最初の塗り替え目安とされ、それ以降も、定期的なメンテナンス塗装が推奨されます。

 

なお、外壁の素材によって、使用する塗料の種類が異なる点にも注意が必要です(モルタル壁にはモルタル用、サイディングには相性の良い塗料など)。

家の素材に合った塗料選びをすることで、塗膜の密着性と耐久性が高まり、より長持ちする塗装になります。

 

外壁本体の塗装は、外壁塗装工事の要であり、この部分をしっかり塗り直すことで、建物の保護と見た目の刷新が達成されます。

しかし、それだけでは完全とは言えません。

続いて、外壁や屋根を取り巻く様々な付属部分「付帯部」の塗装について見ていきましょう。

付帯部とは?外壁塗装で塗るべき付帯部

付帯部(ふたいぶ)とは、建物の屋根や外壁「そのもの」以外に取り付いている付属部位の総称です。

簡単に言えば、家の外側にある細かなパーツ類が付帯部にあたります。

 

付帯部には、住宅を雨風から守る上で重要な役割を持つものが多く、材質も外壁とは異なる木部や金属部品でできていることが一般的です。

そのため、放置すると劣化が進み破損や機能低下を起こす恐れがあり、外壁塗装の際にはこれら付帯部もまとめて塗装するのが通常です。

 

付帯部を塗装せず、外壁だけ新しくすると、外壁以外の部分の古びた色やサビがかえって目立ってしまい、せっかくの塗装効果が半減してしまいます。

美観と耐久性の両面から、付帯部塗装は外壁塗装とセットで行うのが望ましいと言えます。

 

ここからは、主な付帯部ごとに塗装の必要性や注意点を解説します。

雨樋(あまどい)

雨樋は、屋根に降った雨水を受けて、地上まで排水するための縦横に設置された筒状の部材です。

雨樋は、戸建住宅で必ず設置されているもので、外壁塗装時には塗装範囲に含めるのが一般的な箇所です。

 

もし、雨樋だけ古いままだと、外壁を塗装して新築同様に綺麗になったとしても、雨樋の色あせや汚れが際立ってしまいます。

そのため通常、外壁塗装工事では雨樋も外壁と同時に塗装します。

 

雨樋の素材には、塩化ビニール(塩ビ)製と金属製があります。

近年は耐久性のある塩ビ製が多いですが、どちらも紫外線で塗膜が劣化し、退色や表面の粉吹き(チョーキング)を起こします。

塩ビ製雨樋は、塗装しないまま、長年経つと、素材自体が硬化・脆化し、割れやすくなることもあります。

 

塗装によって、雨樋表面に新たな保護膜を作ることで、色ツヤが蘇るだけでなく樋自体の耐久性も向上します。

雨樋塗装には、通常、下塗りにプライマー(塩ビ用接着剤塗料)を使用し、上塗りには耐候性の高いウレタン系やシリコン系塗料を用います。

素材に適した塗料を選ぶことで、塗膜剥がれを防ぎ美観を長持ちさせることができます。

 

なお、雨樋は建物の高所にあるため、足場設置時でないと塗りにくい部位です。

足場を組んで行う外壁塗装の機会に一緒に塗っておくのが効率的と言えるでしょう。

破風板・鼻隠し(はふいた・はなかくし)

破風板(はふいた)鼻隠し(はなかくし)は、屋根の側面に取り付けられた板状の部材です。

簡単に言うと、屋根の縁を覆うように取り付けられた木の板のことを指します。

 

破風板と鼻隠しは、役割は似ていますが、呼び名が異なるのは場所による違いです。

雨樋が取り付けられていない側の屋根縁板を「破風板」と呼び、雨樋を固定する側の板を「鼻隠し」と呼びます。

 

破風板は、屋根裏に風雨が吹き込むのを防ぐ役割、鼻隠しは、屋根の垂木(構造材)を隠して見栄えを良くする役割があります。

どちらも、木材で作られていることが多く、外壁塗装時には標準的に塗装対象となる付帯部です。

 

木部である破風板・鼻隠しは、塗装せず放置すると雨水や紫外線による腐食や劣化が進みやすい箇所です。

塗膜が剥がれて、木地が露出すると、雨染みや腐り、さらには、シロアリ被害の原因にもなりかねません。

そのため、塗装工事の際には、忘れずに塗り替えて保護する必要があります。

軒先の高い位置にあるため、自分では気づきにくいですが、新たな塗膜でしっかり覆っておくことで防水性が高まり、木材の寿命を延ばすことができます。

 

塗料は、耐候性の高いウレタン系やシリコン系塗料が用いられることが多く、下地が木部の場合は、下塗りに木部用プライマーを使用します。

古い塗膜がある場合は、研磨(ケレン)でしっかり除去してから塗装することが重要です。

 

なお、屋根形状によっては、破風板や鼻隠しが存在しない家もあります(陸屋根や片流れ屋根などの場合)。

ただ、これらがある場合は、外壁塗装と同時に屋根塗装をする際は必ず塗装される部位です。

外壁のみ塗装の場合でも、業者に要望すれば、一緒に塗ってもらえますので、忘れずに依頼しましょう。

軒天井(のきてん)

軒天井(のきてん、軒天とも略称します)は、屋根の突き出し部分の裏側にある天井板のことです。

外壁から外に張り出した屋根の裏面、および、ベランダや玄関ポーチの天井部分も広い意味で軒天井に含まれます。

 

軒天井は、普段あまり目につかない箇所ですが、外壁塗装時には軒天もセットで塗装するのが一般的です。

軒天井板は、木質系ボードやケイカル板(ケイ酸カルシウム板)などでできており、こちらも経年で劣化します。

 

軒天は、直射日光こそ当たりませんが、地面や壁からの照り返しの紫外線、風雨による湿気や埃の付着などで徐々に痛んでいきます。

特に、古い住宅では、軒天板に穴が空いたり、シミが広がるケースもあり、塗装前に板自体の補修や張替えが必要になることもあります。

軒天井を塗装することで、雨染みなどの汚れを隠して明るい見た目に一新でき、防カビ・防湿効果のある塗料を使えばカビや腐食の発生も抑えられます。

 

軒天塗装には、比較的湿気に強く透湿性(内部の湿気を通す性質)のある塗料が適しています。

白や薄いクリーム色など、明るい色で塗られることが多く、家全体の印象をさりげなく向上させる部分です。

 

なお、軒天に小さな穴(有孔ボード)が開いている場合は、それは屋根裏の通気口です。

塗装の際は、その穴を塗料で塞がないように注意しながら作業する必要があります。

経験豊富な塗装業者であれば、その点も踏まえて丁寧に塗装してくれるので、問題となることはありませんが、手抜き業者対策として覚えておきましょう。

幕板・帯板(まくいた・おびいた)

幕板(まくいた)帯板(おびいた)は、建物の外壁に設けられた横長の化粧板です。

これらは、2階建て住宅で、1階部分と2階部分の外壁色を変える際の境目に取り付けられることが多く、外観デザイン上のアクセントになっています。

 

幕板・帯板も、素材は木材や硬質塩ビなどでできており、多くの場合外壁塗装時に一緒に塗装する対象です。

外壁の一部ではありますが、独立した部材なので、塗り残さず塗装する必要があります。

 

幕板等を塗装せずそのままにしておくと、板表面の塗膜が劣化して色あせ、外壁とのコントラストが悪くなります。

また、塗膜の劣化が進むと防水性が失われ、木製の場合は内部に雨水が染み込んで腐食や反り、最終的には板がボロボロになる恐れもあります。

そのため、外壁を塗り替える際には幕板・帯板も忘れずに塗装して保護することが大切です。

 

塗装を行う際の塗料は、破風板と同様のもの(木部なら下塗りに木部用下地材+上塗り塗料)を用います。

幕板・帯板を綺麗に保つことで、外壁の色分け部分がくっきり映え、家全体のデザイン性が向上します。

小さな部分ですが、家の印象を左右する要素なので、きちんとメンテナンスしておきましょう。

窓まわりの小庇・霧除け、ベランダの笠木

窓の小庇(ひさし)・霧除けや、ベランダの笠木(かさぎ)も塗装対象となる付帯部です。

窓の上部に突き出している小さな屋根状の板金を「霧除け(きりよけ)」と呼びます(雨除けの庇の一種)。

 

また、出窓の上面に被さる板金も同様の役割を持つ部材です。

これらは、鋼板などの金属でできていることが多く、経年で錆びたり塗膜が剥がれたりします。

 

霧除けは、雨水や霧を防ぐ重要な部分で、劣化して錆穴などが開くと、そこから雨水が室内に侵入し雨漏りの原因になることもあります。

したがって塗装による定期的なメンテナンスが必要不可欠です。

 

塗装では、ケレン作業(サンドペーパー等での錆落とし)を十分に行った上で、防錆効果の高い下塗り塗料(錆止め塗料)を塗布し、上塗りを行います。

錆穴が生じる前に保護塗装することで、霧除け板金の寿命を延ばすことができます。

 

ベランダの笠木とは、ベランダの手すりや腰壁の最上部に被せてある仕上げ板金のことです。

こちらも金属製である場合が多く、塗装しないまま放置すると、錆びや塗膜の剥離が起こります。

笠木は、ベランダ内部に雨水が侵入するのを防ぐカバーとして機能しており、錆などで隙間ができると、雨漏りや構造腐食につながります。

塗装による表面保護で防水性を維持し、美観も整えることが大切です。

 

なお、アルミ製の笠木や手すりの場合は、塗装には不向きです(詳細は後述の「塗装しない箇所」で解説)。

金属部で塗装可能な場合に限り、塗り替えを行うと覚えておきましょう。

雨戸・シャッターボックス

雨戸(あまど)シャッターも、状態によっては塗装が行われる付帯部です。

家の窓を守る戸袋式の雨戸板や、近年多い巻き上げ式シャッターは、日光や風雨にさらされて色あせやサビが発生します。

 

一般的に、戸袋式の雨戸(鋼板製)については、定期的な再塗装が必要とされ、外壁塗装の際に一緒に塗ってもらうケースが多いです。

雨戸を塗装することでサビを防ぎ、開閉もスムーズに保つことができます。

塗装時は雨戸板を取り外し、スプレーや刷毛で両面を塗装するのが一般的です。

 

シャッターボックスとは、巻き上げ式シャッターの本体が収納されるボックス部分のことです。

こちらも金属製で、外部に露出しているため、塗装して保護します。

シャッターボックスに関しては、壁と同色やアクセント色に塗り替えると、建物全体が引き締まった印象になります。

 

一方で、シャッターの可動部分(スラット部分)は通常、塗装を行いません。

塗料で表面を塗ってしまうと、巻き上げた際にシャッター同士が塗膜で貼り付き、動かなくなる恐れがあるためです。

塗った直後は良くても、夏場の高温で塗膜が軟化・癒着し、シャッターが降りなくなるトラブル例もあります。

そのため、シャッターがある場合はシャッターボックスのみ塗装し、シャッター本体は塗装しません

 

木製の雨戸が使われている古民家などでは、専用の木材保護塗料で塗り直すこともありますが、一般的な戸建て住宅では金属雨戸の再塗装が主なケースとなります。

水切り・換気フード

水切り換気フードも見落としがちな付帯部ですが、塗装可能な素材であれば塗装しておきたい部分です。

 

水切りは、外壁と基礎コンクリートの境目に取り付けられたL字型の金属板で、外壁をつたって流れてくる雨水を、基礎部分へ流さずに、排出する役割があります。

位置的に目立ちにくい部分ではありますが、金属製の場合は、錆びて腐食すると機能を果たせなくなるため、塗装による保護が必要です。

 

換気フードとは、キッチンや浴室などの換気口に取り付けられた小型のフード(半円形や四角形のフタ)のことです。

こちらも金属(スチールやアルミ)製が多く、屋外側に露出しています。

金属製の換気フードは、塗膜が劣化すると錆びてきますので、外壁塗装の際に一緒に塗装するのが望ましいです。

外壁と同系色で塗り直すことで見た目もすっきりと綺麗になります。

なお、換気フードがアルミ製の場合は、無理に塗装しなくても大丈夫なケースもあります(アルミは錆びにくく、塗装しても剥がれやすいため)。

その場合は、高圧洗浄で洗う程度に留め、塗装しない選択をすることもあります。

 

水切り・換気フードは細かい部分で塗り残しが発生しやすいため、見積もり段階で契約内容に含まれているかを確認しておきましょう。

業者によっては、付帯部一式に含めていて、水切りや換気フードも塗ってくれることもありますが、契約時や塗装後にチェックすることで、「そこだけ塗られていなかった」という事態を防げます。

その他の塗装できる細かな箇所

上記で挙げたもの以外にも、状況によっては塗装を検討できる箇所があります。

ただし、これらは基本の見積もりには含まれない場合が多いため、塗装してほしい場合は事前に業者へ依頼する必要があります。

ウッドデッキ・濡れ縁

木製のウッドデッキや縁側(濡れ縁)は、日射や雨で劣化しやすいため、塗装可能です。

塗装せず放置すると、木材が腐ったり、シロアリの温床になったりする恐れがあるので、保護塗料や防腐塗料を塗布するでメンテナンスできます。

 

ただし、人工樹脂製デッキは塗装不要(というよりも塗料が密着しない)なので注意してください。

門塀(門柱・塀)

家の敷地にある門柱や塀がモルタル仕上げの場合、外壁と同様に塗装できます。

塀は、ひび割れが生じやすいので、塗装で表面を保護しておくと、劣化を抑制できるでしょう。

 

ただし、ブロック塀の場合は、内部から湿気を帯びて塗膜が剥がれやすいため、塗装はあまり推奨されません(どうしても塗るなら通気性の高い塗料を使用してください)。

玄関ドア・表札・門扉

金属製や木製の玄関ドアは、素材によっては塗装可能です。

ただし、木製ドアや鉄製ドアなら、再塗装で美観を取り戻せますが、アルミ製のドアは塗装が乗りにくく、耐久性も下がるため通常は塗りません。

また、意匠性の高い玄関ドアの場合、外壁塗装業者ではなく、ドア塗装専門業者に依頼するほうが失敗しないでしょう。

詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

 

門扉や表札も同様で、塗装できる素材かどうかを確認しましょう。

ポスト(郵便受け)

鋳鉄製やスチール製のポストなら塗装で錆止め・美装が可能です。

外壁塗装と同時に塗り替えることで、ポストも新品同様の見栄えになります。

 

ただし、アルミ製・ステンレス製のポストは、塗料が密着しにくく剥がれやすいため、基本的に塗装には向きません。

犬小屋・物置

家屋付属の小型の犬小屋や木製物置なども、希望すれば塗装してもらえる場合があります。

これらも、素材次第ですが、木部であれば防腐塗装、トタン製であれば錆止め塗装などが考えられます。

エアコン室外機・配管カバー

エアコンの室外機本体や配管用ダクトカバーについても、依頼すれば塗ってくれる業者もあります。

ただし、通常は塗装範囲に含まれません

 

特に、配管カバー(樹脂製)は塗装すると、メンテナンス時に塗膜が割れて外しにくくなるため、業者側の考えで、あえて塗らないことも多いです。

室外機も、塗装自体は可能ですが、塗装が剥げたとしても内部機能にはあまり関与しないので、見た目を気にしなければ、無理に塗らなくても問題ありません。

 

以上のような細かな箇所を塗装したい場合、必ず契約前に業者と相談しましょう。

基本プラン外の作業になることが多いため、追加費用が発生するかどうかも含め、確認しておくことが大切です。

塗装しない・塗装できない箇所

ここまで、外壁塗装で塗るべき場所を見てきました。

しかし、家には塗装しないほうが良い部分や、そもそも塗装できない素材も存在します。

 

これらの箇所は、塗装を施さず既存の状態のまま残すのが一般的です。

塗装しない理由を知っておくことで、「なぜここはそのままなのか」と疑問に思った際にも納得できるでしょう。

代表的な「塗らない箇所」とその理由について解説します。

アルミ製の窓枠・サッシ、手すりなど

窓サッシ(窓枠)アルミ製の手すり玄関ドアなど、アルミニウム製の部分は、通常、塗装しません

理由は、アルミ素材は、表面に特殊な被膜処理(アルマイト処理等)が施されており、塗料を塗っても密着しにくく、剥がれやすいためです。

また、アルミ独特の金属光沢が塗装によって失われ、見た目が悪くなることもあります。

 

そのため、住宅の窓枠や玄関ドアがアルミ製の場合、外壁塗装工事でもその部分は塗らずに残すのが一般的です。

玄関ドアに関しては、最近の住宅では、アルミやスチールの複合材に、木目調やカラーの化粧シートを貼ったものが多く、塗装で色を変えるより、メーカー仕上げの風合いをそのまま活かすケースがほとんどです。

 

 

なお、こうした塗装しない部分の色は、新しい外壁色とのコーディネートを考慮する必要があります。

特に、窓サッシの色(黒やシルバー、ブロンズなど)は変えられませんので、外壁や付帯部の色を選ぶ際にはサッシとの調和を意識しましょう。

塗装後に「窓枠の色だけ浮いて見える」といった失敗を避けるため、業者とも相談しつつ配色を決めることが大切です。

コンクリート部分(基礎など)

建物を支える基礎コンクリートの部分は、基本的に塗装しないことが多いです。

一般的な住宅では基礎部分(地面から立ち上がって外壁を支えるコンクリート)は無塗装の灰色のまま仕上げられています。

 

基礎を塗装しない理由はいくつかあります。

まず、コンクリート自体が堅牢で、塗装による保護が必須ではない点です。

さらに、塗装してしまうと基礎に生じたひび割れや劣化を発見しづらくなるという側面もあります。

無塗装であれば、万が一、基礎に構造上の問題(クラック等)が生じても早期に目視確認できますが、塗膜で覆ってしまうと内部の異常を見逃す可能性があります。

 

また、基礎部分は地面に近く湿気が溜まりやすいため、普通の外壁用塗料を塗っても、塗膜が剥離しやすいという問題もあります。

日当たりや風通しが悪い基礎面に塗装すると、塗膜とコンクリート表面がうまく付着せず、しばらくして膨れや剥がれが発生しやすいのです。

 

こうした理由から、多くの塗装業者は、基礎部分を塗らない方針を取ります。

ただし、「基礎も綺麗に色を付けたい」「ひび割れ防止に塗装したい」という要望がある場合、専用の基礎保護塗料を用いて塗装することも可能です。

透湿性が高く、コンクリートに適した塗料を使えば、塗膜剥がれのリスクを減らしつつ基礎表面を保護できます。

 

基礎部分の塗装には賛否両論ありますので、希望する場合は業者とよく相談しましょう。

安易な塗装はせず、正しい方法で行えば、基礎の美観向上や保護効果を得ることもできます。

とはいえ、通常の外壁塗装プランでは、基礎部分の塗装は含まれないため、「基礎も塗りますか?」とこちらから確認するくらいで丁度良いでしょう。

無塗装の木部(白木部分)

白木(しらき)部分とは、ヒノキや杉などの無垢材で、表面に着色塗装を施していない木部のことです。

和風住宅の軒下や玄関柱など、木目の美しさを活かすためにクリアな仕上げ(または無塗装)になっている部分が該当します。

 

このような白木部分は、原則として塗装しません

理由は、塗料で塗りつぶしてしまうと木の風合いが損なわれるためです。

せっかくの自然な木目を見せるデザインであるのに、不用意にペンキを塗ってしまうと台無しになってしまいます。

 

白木部分のメンテナンスとしては、塗装ではなく洗浄や漂白剤によるクリーニングが一般的です。

経年で灰黒色に日焼けした木部は、白木専用の洗浄剤で洗ったり削り直したりすることで元の明るい色に戻せる場合があります。

塗装専門の業者では対応しないかもしれませんが、白木の洗い専門業者やハウスクリーニング業者が対応するケースもあります。

 

ただし、白木部分でも例外的に塗装する場合があります。

それは、過去に一度でも塗装されている木部です。

既に塗料が塗られてしまって木肌が見えなくなっている場合、その塗膜が劣化して剥がれてくれば、新たに塗装し直した方が見栄えも保護効果も良くなります。

「元が白木だから塗らないほうがいいですよ」と案内されるのは、あくまで未塗装で木目を生かした部分に限った話です。

 

まとめると、白木の意匠部分は極力現状維持、塗装歴のある木部は再塗装、と覚えておくと良いでしょう。

判断に迷う場合は、施工業者にその木部の材質や仕上げ状態を伝え、適切な対応方法を相談してください。

木部の塗装に関して、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

その他:塗装しない箇所の例

上記以外にも、「ここは塗らないの?」と疑問に思う箇所がいくつかありますので補足します。

  • エアコンの配管ダクトカバー: 前述のとおり、多くの業者は塗装しません。塗ると、後のメンテナンスで不都合が出やすいためです。無塗装でも樹脂素材なので大きな問題はありません。
  • シャッターの可動部: こちらも先述の通り塗装NGです。塗装すると巻き取り時に不具合が出るためです。
  • ベランダの床面: ベランダの床面は外壁塗装ではなく、防水工事の領域であり、通常の塗装では対応しません。防水機能を持つ特殊な塗料による専門的な施工が必要なので、外壁塗装とは別工事です。知識のない業者が塗料で床を塗ってしまうと逆に雨漏りの原因になるため注意が必要です。ベランダの防水工事に関しては、こちらの記事もご覧ください。
  • 屋根瓦: 瓦屋根の場合、瓦自体は塗装しません(瓦は素焼きや釉薬で仕上がっており、塗料は弾かれます)。スレート屋根やトタン屋根なら塗装対象ですが、瓦屋根は塗りません。

 

このように、素材や用途によって、塗らない方が良い箇所が存在します。

塗装工事後に、「あれ、ここは塗ってないけど大丈夫?」と気になったら、遠慮なく業者に確認してみましょう。

優良業者であれば、理由も含めて丁寧に説明してくれるはずです。

見積もり時に塗装範囲を確認するポイント

外壁塗装工事で後悔しないためには、契約前の見積もり内容の確認が非常に重要です。

特に、「どこまで塗装してくれるのか」という範囲の部分は、細かくチェックしておきましょう。

塗装範囲を確認する際のポイントを以下にまとめます。

見積書の項目を細部まで確認

見積もりに、「外壁塗装 一式」「付帯部 一式」とだけ書かれている場合、その中身(具体的な塗装箇所)を業者に説明してもらいましょう。

「一式」とは、複数作業のまとめ表記ですが、「何が含まれていて、何が除外されるのか」が不明確です。

例えば、雨樋・破風・軒天など付帯部は全て含まれているか、ベランダ防水や鉄部塗装は別途か、などの説明を求めましょう。

塗装する箇所の明細を書面で残す

可能であれば、塗装予定の部位を明細に記載してもらいましょう。

「破風板塗装〇〇円、雨樋塗装〇〇円…」といった形で書いてもらえれば、それぞれの塗装が相場から見てどうなのかを判断できます。

そこまでは難しい場合も、口頭で確認した内容を契約書やメールに残してもらうだけでも、後から「言った、言わない」などのトラブルを避けることができます。

オプション箇所の有無

前章で挙げたようなオプション的箇所(室外機やポスト等)で塗ってほしいものがある場合、必ず事前に相談しましょう。

「それは今回は含まれていません」と後から言われないように、契約時に料金に含めてもらうか、追加費用で対応可能かを確認します。

ベランダ床の防水工事について

ベランダの床面は、先述の通り、塗装ではなく、防水トップコート塗り替えが必要です。

また、通常の塗装ではなく、防水用の特別な施工が行われます。

 

依頼した外壁塗装業者が、防水工事を手配してくれるのか、それとも別料金で同時に施工してくれるのかを確認しましょう。

同時に行わない場合、後日に別途、防水工事を検討する必要があります。

ベランダの防水工事は外壁塗装と同時に済ませよう

バルコニー・ベランダ・屋上防水工事の工法の違いや価格相場

足場や高所作業に関わる範囲

2階の高い位置や、屋根周りの付帯部(破風板や高所の換気口など)は、足場がないと作業困難です。

見積もりに足場代が含まれているなら、足場を使って届く範囲の部位は全て塗るよう依頼しましょう。

一度の足場設置で塗れるところを全て塗っておいたほうが得策です。

 

以上の点を踏まえ、契約前に業者とじっくり打ち合わせをしてください。

悪徳業者の場合、あえて必要な塗装箇所を見積もりに入れず、後から「〇〇は塗装が別料金になります」と追加契約を迫るケースも報告されています。

誠実な業者であれば最初から範囲を明示した見積もりを提示してくれますが、曖昧な場合はこちらから積極的に質問しましょう。

「ここも塗ってもらえると思っていたのに塗られていない」という行き違いを防ぐために、塗装範囲の明確化は施主側の大切な役目です。

 

また、工事完了後の最終確認時には、足場が残っているうちに、塗り残しがないか自分の目でもチェックしましょう。

見落とされがちな箇所(エアコン室外機の裏、雨樋の裏側、細かな隙間など)も可能な範囲で確認し、気になる点はその場で指摘してください。

 

しっかり契約範囲を定め、施工後に隅々まで確認することで、満足のいく塗装工事にすることができます。

付帯部も塗装すべき理由と塗らずに後悔するケース

コスト削減のために、「外壁だけ塗って付帯部は塗らなくていいのでは?」と考える方もいらっしゃいます。

しかし、付帯部を塗装しないことで後悔につながった例が実際にあります。

 

ここでは、付帯部を塗らなかったことで起きがちな問題点と、逆に付帯部まで含めて塗装するメリットを整理します。

付帯部を塗らずに後悔した例

付帯部を塗装しなかったケースでは、次のような後悔の声が聞かれます。

  • 「外壁だけ綺麗になったら、雨樋のサビや黒ずみがかえって目立つようになってしまった。」
  • 「外壁とベランダの色の差が顕著で、塗装後の仕上がりに統一感がなく不満が残った。」
  • 「破風板などを塗らなかったら、数年で劣化が進み、結局付帯部だけ後で塗装することになり、再度足場代がかかってしまった。」

このような事態は、最初に「どこまで塗るか」を十分検討せずに工事を進めてしまったことが原因です。

塗装工事は決して安い買い物ではありません。

後で「ああしておけば良かった…」と後悔しないためにも、初めの計画段階で塗装範囲の全体像をしっかり把握しておくことが大切です。

付帯部まで塗装するメリット

一度の外壁塗装工事で付帯部も含めてすることには、以下のようなメリットがあります。

  • 見た目の統一感向上: 外壁と付帯部がどちらも新しい塗膜で覆われるため、家全体のデザインに統一感が生まれ、美しい仕上がりになります。特に外壁に接する雨樋や破風板などを塗装することで、「外壁だけ新しく他が古い」というアンバランスが解消されます。
  • 素材の保護と長寿命化: 付帯部も塗装することで、それぞれの素材(木部・鉄部など)の劣化を防ぎ、部材自体を長持ちさせることができます。塗装せず放置すればいずれ交換が必要になるところ、塗装によるメンテナンスで交換時期を延ばす効果が期待できます。
  • 足場コストの節約: 足場を設置する塗装工事は、一度にまとめて行う方が費用効率が良いです。付帯部を別の機会に塗るとなると再度足場を組む必要があり、二重に仮設費用がかかってしまいます。一回の工事でまとめて塗装すれば、トータルコストを抑えられます。
  • メンテナンス周期の集約: 外壁も付帯部も同時に塗装すれば、次回のメンテナンス時期を揃えることができます。例えば外壁だけ先に塗って付帯部を後に塗った場合、それぞれ劣化してくるタイミングがずれて効率が悪くなります。同時に施工しておけば、再塗装の時期も一緒に迎えられます。

 

以上の理由から、プロの塗装業者の立場から見ると付帯部も含めて塗装するのが最も合理的だと言えます。

特に、雨樋・破風板・軒天あたりは、付帯部の中でも建物保護と美観維持に直結する重要部分ですので、最低限これらは必ず塗装しておくことをおすすめします。

 

付帯部まできちんと塗装された住宅は、遠目にも全体が新築同様に美しく、機能面でも安心感があります。

費用面ばかりに捉われず、将来の満足度を重視して塗装範囲を判断することが大切です。

屋根塗装も同時に検討を(足場の有効活用)

外壁塗装と併せて、よく話題に上がるのが屋根塗装です。

屋根は、家の最上部で日射や雨を一番受ける過酷な部分ですので、塗装による保護が重要になります。

 

スレート屋根(コロニアル)や金属屋根であれば、定期的な塗装が必要で、外壁と同じくらいの周期(10年前後)で塗り替えが推奨されます。

屋根塗装は、通常、外壁塗装とは別の工事契約になりますが、足場を共用できることから、外壁と同時に施工するのがおすすめです。

 

同時施工のメリットは大きく2つあります。

  • 足場費用の節約:外壁と屋根を別々に塗ると、足場設置・解体を2回行うことになり、費用負担が増えます。一緒に塗装すれば、足場は1回で済み、その分、コストダウンにつながります。
  • 仕上がりとメンテナンスの効率化:屋根だけ汚れて外壁が綺麗、またはその逆だと、外観のバランスが悪くなります。同時に塗装すれば家全体が統一感のある仕上がりとなり、次回メンテナンスのタイミングも揃えられます。

 

ただし、屋根塗装を行うかは屋根材の種類や劣化状況にもよります。

瓦屋根の場合は、基本的に塗装不要ですし、スレート屋根でも、痛みが激しい場合は、塗装よりカバー工法(新しい屋根材で覆う)が選択されることもあります。

 

重要なのは、現在の屋根の状態を専門家に点検してもらうことです。

外壁塗装の依頼時に屋根の無料診断をしてくれる業者も多いので、その結果次第で屋根も同時に塗装するか判断すると良いでしょう。

 

もし、屋根も時期的に塗り替えが必要であれば、思い切って外壁とセットで工事することを検討してください。

同時施工は一時的な出費としては増えますが、長期的に考えると割安になり、家全体の耐久性アップと将来のメンテナンス負担軽減に役立ちます。

屋根塗装に関しては、これらの記事でも詳しく解説しています。

木部・鉄部塗装の注意点(下地処理と適材適所の塗料)

外壁塗装工事では、外壁材だけでなく、木部や金属部への塗装も含まれます。

これらの素材を塗装する際には、下地処理適切な塗料選びがとても重要です。

最後に、木部・金属部塗装のポイントを押さえておきましょう。

木部塗装のポイント

木部(破風板や軒天、ウッドデッキなど)で使われる木は、呼吸する素材で、湿気の影響を受け伸縮します。

そのため、弾性(柔軟性)のある塗料を使うことが望ましいです。

木が呼吸して動いても、塗膜が追従し、割れにくい塗料が適しています。

木部は木が呼吸して動くので、弾性塗料を使う事で長持ちします。

また、塗装前には、木部が腐っていないか点検し、必要に応じて、腐食部の補修・交換を行います。

古い塗膜が残っている場合は、研磨紙でしっかり除去し、木部専用下塗り剤を塗ってから上塗り塗料を重ねます。

鉄部(金属部)塗装のポイント

金属部(雨戸、鉄柵、水切り金具など)は、何と言ってもケレン作業(下地調整)が命です。

ケレンとは、錆や旧塗膜をワイヤーブラシやサンドペーパーで落とし、表面をザラつかせて塗料の付着を良くする工程です。

この作業を怠ると、どんな良い塗料を塗ってもすぐに剥がれてしまいます。

鉄部はそのまま塗ると剥がれるので、わざと傷つけて(ケレン処理)から塗装をします。

適切にケレンした後、鉄部には錆止め塗料(エポキシ系など)を下塗りし、上塗りにはウレタン系・シリコン系といった密着力・耐候性の高い塗料を使用します。

ケレンに関して、詳しくは以下の記事もご覧ください。

適材適所の塗料選び

家の各部分に対して適切な塗料を使い分けることもプロの腕の見せ所です。

外壁には外壁用塗料、屋根には屋根用高耐久塗料、木部には木部用塗料、鉄部には鉄部用塗料…といった具合に、用途に合った塗料があります。

費用を抑えたいからといって、家のすべてを同じ塗料で塗るのはもちろん厳禁です。

逆に、場所ごとに最適な製品を選ぶことで、塗膜の寿命を揃えつつ、無駄なく施工することが可能になります。

 

以上のように、木部・鉄部塗装には外壁とは異なる注意点があります。

信頼できる業者であれば、これらを踏まえて施工してくれるので、心配はいりませんが、施主として「ちゃんと錆落とししているかな」「木部は適切な下塗りしてるかな」と工程を見守ることで、工事への理解も深まるでしょう。

 

DIYでの部分塗装を考える方もいるかもしれませんが、高所作業や専門下地処理を要する木部・鉄部の塗装リフォームは、プロに任せるのが安心です。

まとめ

外壁塗装において「どこまで塗るのか」を把握することは、施工後の満足度を左右する重要なポイントです。

おさらいすると、外壁塗装では、外壁本体はもちろん、軒天や破風板、雨樋などの付帯部まで含めて塗装するのが基本です。

塗装しないまま残すのは、アルミサッシ類や玄関ドアなど塗装不適な素材部分や、基礎コンクリートのように塗らない方が良い部分です。

 

施工前には、見積もりで塗装範囲を明確に確認し、塗り残しや想定外の追加費用を防ぎましょう。

付帯部も含めて塗装することで、見た目の統一感・建物保護・コスト効率の面で多くのメリットがあります。

 

逆に、付帯部を塗らずに外壁だけ塗装すると、仕上がりに不満が出たり、後で別途塗装が必要になって、結果的に損をする可能性が高いこともお伝えしました。

外壁と屋根の塗装を同時に行えば、一度の足場設置で済み経済的ですし、家全体が新品同様によみがえります。

 

大切なマイホームを長期間美しく保つためには、家全体を総合的にメンテナンスする視点が不可欠です。

「塗る場所」を正しく理解し、信頼できる塗装業者と十分に相談しながら、悔いのない塗装計画を立てましょう。

外壁塗装は三度塗りが基本!手抜き工事を防ぐためには?

マイホームの外壁塗装工事は何度も経験することではないため、ほとんどの人は、行われる作業の内容や工程の順番をよく知らないまま外壁塗装業者との見積もりに挑むことになるでしょう。

特に初めて外壁塗装をする時には、業者から言われるがまま工事を依頼してしまうということも少なくありませんが、そのような工事の任せ方では、手抜き業者に当たってしまったときに良いように利用され、割高の料金を支払わされる可能性があります。

 

塗装は仕上がりだけに注目しがちですが、塗っている最中に「何度重ね塗りするか」を重要視する必要があり、塗った回数によっては、今後の耐久性にも影響がでます。

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アパート外壁塗装の完全ガイド|費用相場・時期・注意点と業者選びまで徹底解説

アパートのオーナーにとって、建物の老朽化は深刻な悩みです。

特に築年数が経過したアパートでは、外壁の汚れやひび割れが目立ち、入居者からの印象低下につながることもあります。

 

しかし、適切なタイミングで外壁塗装を行えば、古くなった外観は、見違えるほど美しく蘇ります。

外壁塗装には、建物を保護し、寿命を延ばす効果もあり、長期的な資産価値の維持に欠かせません。

本記事では、アパート外壁塗装の必要性、適した時期、費用相場、工事期間、注意点、色選び、そして業者選びのポイントまで、初心者にも分かりやすく丁寧に解説します。

 

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外壁塗装におけるピンホールの原因や対策

外壁塗装をしたあと、塗膜の表面に、直径1mm~3mm程の小さな穴がポツポツとできてしまうことがあります。

この小さな穴は「ピンホール」と呼ばれ、施工業者が適切な手順で塗装をしなかったときなど、手抜き工事が行われたときに発生しやすい現象です。

なぜ、ピンホールは発生してしまうのか、また、ピンホールができてしまったとき、どのような対処法が必要なのでしょうか?

さらに、このようなピンホールのトラブルを回避するために、業者選びでは、どのような点に気を付ければよいのでしょうか?

 

この記事では、ピンホールのトラブルを未然に防ぐための対策についてお伝え致します。

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深刻な健康被害の原因になることが広く知られているアスベストは、現在では法律で使用が禁止されているためどんな製品にも使用されることはありませんが、禁止される以前に建てられた建物には今もアスベストを含有する建材が使用されたまま残っている可能性があります。

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サイディングは張り替えが必要になる前のメンテナンスが大切

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現在の日本の住宅では、工場で製造したパネル状の外壁材を張り付ける「乾式工法」と呼ばれる施工方法で仕上げる外壁が主流です。

外壁に張り付けられるパネル状の外壁材は「サイディングボード」と呼ばれ、施工しやすく耐久性も高いことからほとんどの木造住宅の外壁でサイディングボードが採用されています。

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屋根塗装には「縁切り」という作業があります。

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この記事では、屋根塗装の知識として知っておきたい縁切りの内容や、縁切りが行われなかったことによるリスクや注意点などについて解説します。

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